地獄の窯の底で   作:さよならフレンズ

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音速のソニック

 音速のソニックは、俺にとって不思議な存在だった。

 俺に興味を示さないフラッシュと違い、ソニックは何かにつけて俺を構う。

 一度俺が食あたりを起こした際、死にかけた俺のために薬草を取ってきてくれたのもソニックだった。

 

 ある日俺はソニックを呼び出し、施設から出たら敵同士にも関わらずどうして俺に甘いのかと問い詰めることにした。

 真意が分からない無償の善意程、気持ち悪いものはない。俺は気味の悪いものをそのままにする趣味はなかった。

 

 ソニックの答えは簡潔で、冷酷だった。

 

「お前を憐れんでいるだけだ」

「何……?」

 

 ソニックは、眉をひそめる俺に対してあっけらかんと告げる。

 

 

「薄々気付いているとは思うが、俺やフラッシュはわざと手を抜いて5班に居る。フラッシュの目的は知らんが今の俺には野望がある、身を隠して鍛錬の質も上がるから都合がいい。だからお前のように真剣に鍛錬を行っていても5班の奴を見ていると同情しか湧いてこない。真剣にやった結果が『それ』ならなおさらだ」

 

 気が付いた時、俺はソニックの胸倉を掴んでいた。

 僅かに驚愕の表情を浮かべるソニックに、俺は憤怒と激情を叩きつける。

 

「お前やフラッシュほどの才能がないことは、俺が一番分かってる!

なんで今まで生かされているのか分からないぐらいってこともな。

だが俺を馬鹿にするなよソニック、俺もお前と同じ44期生、訓練の質も同じなら条件は変わらない筈だ!いずれお前たちを追い抜いてやる……必ずだ!だから俺を憐れむな!」

 

 ふつふつと煮え立つマグマのような怒りをぶつけられたソニックの行動は、やはり冷酷だった。

 更に怒りをつのらせる俺に対し、ソニックはギラリと邪悪な笑みを受かべ容赦なく俺の鳩尾に拳を叩きこむ。

 

「その程度の腕でか、隙だらけだな!」

「うぐっ………」

 

 痛みすらも後から襲ってくるような拳の連撃。

 フラッシュと模擬戦を行った時と同じく、目にも止まらぬ早業だった。俺は何も分からずに攻撃を受け、蹲りながらギラリとした目でソニックを睨み付けることしかできなかった。

 

 ソニックは俺に向かって嘲るように、しかし言葉の節々に隠しきれない高揚感を持ちながら言い放つ。

 

「口だけは達者なようだが、今のお前には圧倒的に力も速度も足りていない。

俺に追いつきたいのなら、もっと実力をつけることだ」

「くっ……」

 

  それは、圧倒的な強者から叩きつけられた、どうしようもない現実だった。

 しかし俺はどこかソニックの言葉に違和感を感じ取った。今まで庇護目線で見ていた扱いとはあきらかに違う。まるで、いつもソニックがフラッシュに対して取る態度のような。

 そんなどうでもいいような、小骨が突き刺さったようなちょっとした違和感。

 

「俺の将来の夢――お前がもし本当に強くなったら教えてやるよ、終わりのエンド」

 

 ソニックは俺の頭を軽く足蹴にすると、フラッシュが鍛錬している方角へと向かった。俺を蚊帳の外にして有意義な訓練を行うつもりなのだろう

 俺は爪から血が出る程強く草の根を握りしめながら、ソニックを憎悪することしかできない。

 

「ちくしょう、強くなってやる、絶対に!」

 

 暗殺者としては不要なはずの感情……屈辱。

 そんなものを今更覚えるなんて、やはり己には殺しの才能はないのだろう。

生存本能がもたらしたものなのか、競争本能がもたらしたものなのかは分からない。それでも、強くなってみせると。

 

 土の味を味わいながら、血走った眼で。

 

 

 この時のエンドは、気が付いていなかった。

 毎日の定められた、一番厳しい特訓を特訓を非才の身でこなしている……こなせていることに。そしてあの音速のソニックの胸倉を、一時的にでも掴め驚愕の表情を浮かばせたということ、それが意味することに。

 

 ほんの少し、微々たるものだが―――

 

―――終わりのエンドのリミッターは外れようとしていた。




忍者の里のカリキュラムでの、凡人の決められたルーティンの努力なのでリミッターを外す条件は満たしています。
サイタマがアレだったのでもしかすると凡人が一番強くなれる説ありますね。
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