これはとても短い物語。
空白の12年、そして物語のその後は二度と綴られることの無いもの。読者の皆さんのご想像通りに進み、刻まれます。

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かみひこうき

あれは遠い夏の事、僕が長野県にある祖母の家にお泊まりに行っていた時の話。

する事もなく、ただ新聞の広告で紙飛行機を折り飛ばしていた。

そんなある日、祖母の家の隣に住む多恵おばさんが亡くなった。多くな人が集まり、涙を流していた。

僕は人が死ぬという事はどういう事なのか、まだわかっていなかった。

それはあの子も同じだったようだ。

その子は他の子供達とは離れた場所で、ただひたすらその手に持つグリム童話を読んでいた。

その子の髪に付いた、大きな髪飾りが、何故か印象的だった。

あの子がどうしようも無く気になった僕は、紙飛行機を折る手を止め、声をかけに近づいた。

 

「君は、他の子と遊ばないの?」

 

「……。」

 

言葉は帰ってこなかった。僕は少し腹を立てまた元の場所へ戻り紙飛行機を折り始めた。

折り終えた紙飛行機を持ち、またあの子の元へ行った。

 

「この紙飛行機で遊ばない?」

 

あの子はチラッとこっちを見た。そして不思議そうな顔をして、

 

「紙飛行機?」

 

「そう!知らない?お父さんに教えてもらったんだよ!お父さんはね、すごく飛ぶ紙飛行機を作るんだ!」

 

「お父さん…。私にはお父さんはいないの。だから紙飛行機を知らない。」

 

僕は子供ながらに何かを察し、謝ろうとした。

だが、遠くから名前を呼ばれあの子はどこかへ行ってしまった。

 

 

12年後の夏の日、僕は高校の屋上で1人弁当を食べていた。僕の座るすぐ横には、授業中に不良が吸っていたであろうタバコの吸殻が捨ててあった。

法を犯してまで吸いたくなるタバコとはどの様なものなのか、興味はあった。だが、手を出す勇気はない。

弁当を食べ終わり、保冷バッグに片付ける。

教室にいるのが憂鬱だ、教室に僕の居場所はない、ひたすらそう思い、生きていた。

昼休みの屋上は僕の楽園だ。誰にも邪魔されること無く、夏に吹く爽やかな風を全身で感じることが出来る。

だが、そんな1人の時間を、今日初めて壊された。

屋上の扉が開き、どこかで見覚えのある髪飾りをした女が出てきた。

彼女は僕を見るなりこう言った。

 

「あなた何処かで会ったことある?」

 

僕はその声を知っていた。でも思い出せない。

何処か懐かしく、1度しか聞いた事のないはずの声、1度しか聞いていないけどハッキリと覚えている声。

何処かで聞いたことある。だが、全く思い出せなかった。

でも、何故か1つ、言葉が頭に浮かんだ。そしてその言葉を口に出した。

 

「紙飛行機で遊ばない?」

 

「うん、いいよ。」

 

今なら、紙飛行機の折り方、わかるよ?


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