「あーあ、ホントどうしてこうなっちゃったわけ?」
中国代表候補生である凰鈴音は空に向かって愚痴をつぶやく。
現在何が起きているのか、それは世間的に『白騎士事件再来』と言われている。
簡単に説明すると、日本に向けて再び全方位からミサイルが発射されたのだ。
流石に政府は『白騎士事件』の教訓を受けて少なくない資金をもって兵器群のセキュリティは非常に強化している。
一部しか知らない首謀者がそれをはるかに上回る頭脳を持っていたので無意味となったのだが。
そのため遠距離武器を積んだ日本に在中している専用機持ちがこの件に駆り出された。
鈴もその一人として海岸に立っているのだが、実際のところ乗り気ではなかった。
そもそも、『白騎士事件』とは違い現在は最盛期より数は減ったものの日本に対して全方位からミサイルを打たれても数台のISがあれば防衛自体は簡単にできるのだ。
それなのに数々のISが数か所に集まっていることがおかしいのである。
ちなみに、一夏は別の位置に配置されてしまっていることが鈴のやる気を削いでる原因でもある。
「そもそも私、近接メインなんだけど。ほかに安全に破壊できるISがあるはずなんだけどなぁ」
友人どころか知り合いもいないため一人きりで呟く。
目標が日本に到達するまで既に30分を切っている、にもかかわらず指令はまだ出ていない。
ギリギリで破壊して有用性を見せろということなのか、上の考えていることなんて現場の人間には全く分からずただただ空気が悪くなる一方である。
「ああもう!いつになったら終わらせてくれるのよ!もうこっちは何時間待たせられてると思ってるの!」
誰かが叫んだ。鈴も全く同じ心境である。
ミサイルごとき、たとえ近接をメインにする鈴のISでも簡単に破壊できるし複数人いればあっという間に終わらせて帰ることもできるだろう。
待機に時間をかけすぎたせいか、ハイパーセンサーで見える位置に野次馬が集まってきているのが見えた。
もはやこれは見世物なのだ。そう考えるとイライラが収まらない。
ISとは何なのか?アクセサリーか?宇宙に行く道具なのか?それとも、操縦者含めて何かを壊すための道具なのか?
いつ誰が癇癪を起こしてもおかしくはなかった。叱責覚悟で無断で飛んで一人で破壊しに行く人間が現れてもおかしくはなかった。
ハイパーセンサーがミサイルを補足しても命令は来ない。
こうなればどうしても行くしかない、そう決意した時だった。
「あ。あああ~!ちょ、ちょっと待って!」
知っているような男の声が聞こえた。
それと同時に鈴の足元に何かコインのようなものがぶつかった感触があった。
「ん?これって…………」
拾い上げたのは紫色のメダル。そのメダルにはティラノサウルスのような恐竜のレリーフが彫られており、見ているだけで少し寒気がする。
「ごめん、それ俺のメダル」
走り寄ってきたのは胸に赤い羽根が付いたスーツを着た男性。どこかで見たようなことがあるような気がするが、関係者ではないような気がしたので注意することだけは決めた。
「ちょっとあんた、一応ここは戦場みたいになるんだからもの落とすとかはやめなさいよ」
「分かってる、もうこんなことはしないよ」
「そもそもここ立ち入り禁止!さっさと出ていきなさい!」
鈴も少なくないストレスが溜まっていたせいでつい怒鳴ってしまった。しかし違反を犯しているのは彼であるためおもちゃのようなメダルを落とした時点で非は向こう側にあるだろう。
それに待機しているほかのIS視線もあったが鈴は特に気にすることはなかった。
「ああ、この事件解決してからな」
メダルを持ちながら腰に不思議なベルトを巻きつけ、
『キン・キン・キン!』
どこかで見たような、絶対に目を離してはいけない仕草をし、
『プテラ!トリケラ!ティラノ!プ・ト・テラ~ノザウル~ス!』
誰もが予想しなかった最悪の存在が、現れた。
『ウオオオオオオオオオ!』
「お、おおお、オーズぅ!?」
誰が気づくものか、先ほどまで人がよさそうな青年が紫の怪物に変身するなんて、というかわざわざ敵地にまできて変身する強行はなんなのか。
誰もが唖然としている中、オーズは地面を蹴り大跳躍した。跳躍した先の空中で大きく翼を羽ばたかせたため堕ちることはなく、ミサイルが飛んでくる方向に向かっていった。
もう何が何だかという状況で一つ通信が届いた。
「…………え、あ、はい?ミサイルじゃなくてオーズを優先しろと?この状況で?ふざけてるの!?」
誰かが怒鳴るのも無理はない。そもそも彼女たちが集められた理由は飛んでくるミサイルの処理のはずなのだ。
わざわざIS学園の生徒まで動員して誰かのために戦うのではなく、オーズの抹殺を命じてきたのだ。
ここで何人かは気づいた、これはミサイルを囮にしてISを合法的に集められる手段をつくり、オーズを倒すことが本当の作戦だったことに。
しかし、ミサイルは本当に飛んできているしオーズを優先すればミサイルのうち漏らし、もしくは破壊した時に出る破片で被害が出てしまう。
人命救助よりも抹殺に励めと、言われているようで悔しかった。
それでも国の命令ということで『仕方なく』従うしかない。
多くのISがオーズを仕留めんと飛び立っていく。最も早く飛び立ったのは名誉を優先する欲深い者であったが、特に注目することもない。
そのような木端程度、オーズが気にすることもないのだから。
『ガブッ!ガブッ!ガブッ!ガブッ!ゴックン!』
飛行しているオーズはいつの間にか持っていた斧に体から排出したセルメダルを飲み込ませる。
そして変形した斧を変形させてバズーカのようなものになった後に、
『プ・ト・テラ~ノ・ヒッサ~ツ!』
極太のレーザーを射出してミサイルを薙ぎ払った。
射程距離、とんでもなく長い。威力、少なくともミサイルを容易く消滅させるくらい。
「「「「「「何これ無理ゲー!?」」」」」」
実弾、徹甲弾、ピットから放たれるレーザーよりもはるかに威力の高いモノを見てしまってはどうにもならない。
オーズの斧にオーバーヒートのような熱も籠っていないし、カシャっと斧に戻しても問題ないくらいの強度を持っていたことから何発でも打とうと思えば打てるのではないかという推測が頭をよぎってしまう。
そして結論に至ってしまうのだ、『あ、これ勝てる未来が見えない』と。
「無理!撤収!仕事終わったから解散!」
彼女らが取った行動、それは戦略的撤退!
このまま何もせずに帰ったらオーズが自分たちに何もしない可能性は存在する!(微粒子レベル)
もし見逃してくれたらほんのちょっと手に入った戦闘データっぽいのを持ち帰れる!
後オーズあがめてる外国の方々を敵に回さずに済む!
あと生還したら自慢できる!
そのような打算まみれの考えだが下手にISを破壊されて後ろ指刺されるよりはいい、少なくとも今耳元で命令を下してるうるさいやつらに対して始末書を書くだけで済む。
こうして撤退していったISらを見てオーズは構えていた斧を下ろしていた。
もう何もすることはないと言わんばかりに翼を羽ばたかせ、冷気を纏いどこかへと飛び去って行った。
「…………一夏の言っていた通り、ね」
その様を最後まで見届けていた鈴は一夏がオーズと接触した時に言っていた事を思い出す。
『怖いってのはあった。でもなんていうかさ、怪物じゃないんだ、こう、目的を持って動いているというか、悪い奴だけを叩きのめしてる感じ?』
あの時はふわっとしていて訳か分からなかったが、こうして対面したらなんとなく分かった。
既に中の人間がふわっとした感じなのに力に飲まれていない、そういうことが分かっただけで収穫だろう。
そして、ISに記録されていた映像でオーズの中の人間が判明した。
その人相、服装からたどり着いた人間…………
日野英二、ISの大量破壊の犯人でありオーズの変身者が全世界に公開された。
日野英二、身バレする(確信犯)
宝生永夢ゥ!
何故日野英二がISを破壊し続けたのか。
何故オーズに変身し続けたのか。
何故!戦意がない者を追わないのかぁ!
その答えはただ一つ…。ハァ…。
宝生永夢ゥ!
ピーーーーーーーーーー ピーーーーーーーーーーー
彼が、常に手を伸ばし続け、あがき苦しみ続けているからだぁ―――ははははははっ!
はぁーはははは!!
See you Next game.