範馬勇次郎が行く、SCP財団の機密施設見学会 作:テキーラ11
また、今回の事件は、エージェント佐久間が英雄譚に入る前の話だと思ってください。
勇次郎が、財団の施設を半ば見学でもするかの様に楽しんでいる頃、東京某所の借家にてそれは起こった。
この家の住人である18歳の少年が、帰宅してそれに気付いた。
この少年一見すると普通の高校生の様に見え、顔は整っており、某名前が強そうな女性タレントに似ている。
だが、問題はその下に隠された凝縮された人間離れした肉体にある。
大小様々な傷があり、無駄な肉は殆ど存在しない超肉体であり、一瞬にして強いと分からせる肉体である。
この少年こそ、東京ドーム地下闘技場最年少チャンピオンであり、あの範馬勇次郎の実子である、範馬刃牙だ。
そんな、刃牙は自宅の郵便ポストに入れられている謎の黒い本を前に、困惑の表情を浮かべていた。
「なんだこれ.....?新手の聖書とか.....?」
そんな独り言を呟きながら、その黒い本を手に取って見ようと触れる。
その瞬間、刃牙はこの世界から忽然と姿を消してしまった。
そして、黒い本はポストから落ちてタイトルが明らかになる。
『地上最強の生物に殺されかけた息子を命を賭けて救った、愛と勇気を持った母親の英雄譚』
この黒い本こそ、アイテム番号:SCP-268-JP 、オブジェクトクラス: Euclid、通称:終わらない英雄譚なのである。
この終わらない英雄譚は、命を犠牲に救われたAとAを救ったBに対して異常を起こすSCPだ。
内容は、Aがこの終わらない英雄譚に触れると、この本の中に閉じ込められ、そこに死んだ筈のBが現れる。
そして、Aの危機的状況に、BがAを助けるかどうかの選択を迫られるのだ。
Aを救うために、Bは命を賭けねばならず、救ったとしてもまた、同じ状況の繰り返しとなる。
そして、Bには死んだ時の苦痛や恐怖を覚えたまま、また、選択を迫られる。
仮に、Aを助けなければ、Aは死体となって、終わらない英雄譚の横に現れ、タイトルがBを侮辱するものに変わる。
とどのつまりは、A、B共に救われないという胸糞悪いSCPなのである。
刃牙はそんな終わらない英雄譚に取り込まれ、目を覚ますと、縄で拘束され地面に横たわっていた。
だが、刃牙はそんな事よりも、自身の傍らにいる女性に目を奪われていた。
「か、母さん.....!?」
そう、刃牙の傍らにいたのは5年前、勇次郎から刃牙を庇って死んだ彼の母親である朱沢江珠だったのだ。
「ば、刃牙.....刃牙なの!?」
驚く2人を他所に、どこからともなく、声が響き渡ってくる。
『縄で拘束された少年の頭上から鉄骨が大量に落ちてくる。誰かが庇わなければ死んでしまうだろう。』
そんなナレーションとも言える、説明口調で2人は鉄骨がビルから落ちてくるのに気付く。
「刃牙っ!!」
「離れてろッッ!!母さんッッ!!!」
我が子を助けようと、近付こうとする江珠に、刃牙はそう怒鳴ると、縛られていない足で立ち上がり、鉄骨を蹴り飛ばす。
57本目の鉄骨を蹴り飛ばした所で、刃牙と江珠の視界は暗転する。
これは、2人がダメージを負ったからでも、死んだからでもない。
英雄譚がこれは、危機的状況になり得ないと判断し新しいシチュエーションを用意したためだ。
次のシチュエーションは、超高層ビルから落ちる寸前の刃牙とそれを助けようとする江珠。
ナレーションの様な声曰く、刃牙を助ければ江珠は落ちるらしい。
だが、刃牙はこう江珠に伝えた。
「大丈夫だよ、母さん。」
そのまま、落ちていく刃牙は、落ちていく途中でビルを蹴ると、車の上に衝突する。
以前にも同様の事があり、その時と結果は変わらず、無事に生還したのだった。
これを受け英雄譚はまた、別のシチュエーションを用意する。
今度は、火災の発生した牢屋に閉じ込められる江珠と刃牙。
耐火スーツは1つしかなく、江珠が犠牲になり、刃牙に着せろとでもいう様なシチュエーションだ。
だが刃牙は念の為、江珠に耐火スーツを着せると、コンクリートの壁をぶち破り、無事に2人で脱出する。
すると、またシチュエーションが変わり、今度は、銃火器を持った数人の男達に囲まれる刃牙と江珠。
刃牙は、江珠を伏せさせると、瞬く間に全員を返り討ちにする。
その後も、ライオンの群れを倒し、虎を倒し、電車には見よう見まねの
英雄譚が課す、無理難題の尽くを、刃牙はその肉体を武器にねじ伏せていった。
そして、今、現在、刃牙はある男と対峙していた。
「む、無理よ.......絶対に勝てるはずがない.......」
江珠は、半ば絶望したかのようにフラフラと立ち上がり、刃牙を庇おうとする。
「邪魔しないでくれッッ!!母さんッッ!!!」
そんな江珠に、刃牙は声を荒らげてそう伝える。
「久しぶりだなぁ.......親父ィィ.....いや、昔の親父か.......」
刃牙が対峙しているのは、範馬勇次郎その人だった。
「少し、前から不思議だったんだ.......独歩さんやピクルや武蔵さんやオリバさんや花山さん.....みんなに、襲いかかられれば、俺だって敵わないのにって.........でも、漸くわかった.......出てくる危険やシチュエーションは、母さんの記憶や想像以上の事はできないみてぇだな.........?」
そう、今対峙しているのは、刃牙が13歳の頃の範馬勇次郎なのだ。
「やめなさいッッ!!刃牙ッッ!!!」
勇次郎に立ち向かおうとする刃牙を泣いて止める江珠。
だが、しかし...............
「大丈夫だよ、母さん。親父の最高潮があの頃のままなら.......俺は、あんなに苦労しなくて済んだはずだから。親父が本当に凄いのは、膨張し続ける宇宙の如く、成長する所.....ってのは、ストライダムさんの言葉だけどね。」
そういうと、姿勢を低く構える刃牙。
「行くぞッッ!!!親じィ〜〜!!!」
そういうと、放ったのは、刃牙のオリジナル技の1つ、
筋肉を気化させる程のイメージ力で超脱力した筋肉は、初速から最高速度を叩き出す。
そのスピード、実に270キロッッ!!!新幹線に匹敵するッッ!!!
その速度で勇次郎を吹き飛ばし、更には追撃で、顎の皮のみを掠らせる超絶なテクニックによる打撃。
今の勇次郎ならいざ知らず、愚地独歩との戦いで打撃を避けられなかった頃よりも前の勇次郎では、当然避ける事が出来ず倒れ伏すのみ。
勇次郎を倒すと、不思議な事に刃牙の身体が、霧のように消えていく。
「どうやら、全て終わったみたいだね.......」
「刃牙.....こんなにも強くなったのね.........私は、母親として、貴方に何もしてこなかった.......許されるとは思ってないけど.....」
江珠が謝ろうとするのを、刃牙は制して、言葉を続ける。
「母さんは、親父から命懸けで、俺を
刃牙はそう言って江珠に頭を下げた。
そんな刃牙を抱きしめる江珠は泣きながら、笑っていた。
そして、刃牙の身体は完全に霧散して、英雄譚の中から消えた。
こうして、現実世界に戻ってきた刃牙は日付を確かめるが、あれから1日も経過していなかった。
それは、英雄譚の用意したシチュエーションを全て、救助される側の刃牙が乗り切ってしまったからだろう。
そして、英雄譚の題名も大きく変化していた。
『なろう系も真っ青なクソ厨二野郎がただオナニーの如く活躍した気になってるだけの物語にすらなっていない読む価値がミジンコ程もない糞の塊』。