M78星雲──
様々な星でヒーロービジネスが起こる中、この星も例外ではなかった。
派遣ヒーローとしてのウルトラマンはブランド化され、M78星雲のウルトラマンが様々な星を渡り歩いていた。
昨日も今日も平和である。
「はぁ……はぁ……(は、早く報告書を提出に行かないと…!)」
彼女の名は「ウルトラウーマンラピス」。
U40で生まれたウルトラ戦士である。
好奇心旺盛でとても慈悲深いウーマンではあるが、仕事真面目で頑張りすぎるところがあり、無茶をすることもしばしば…そして今日も……
「ッ…!はぁー…はぁー…」
視界がフラつき、走るのが限界に近かった。
だがラピスは足を止めずに報告書の提出に向かった。
「失礼します…!ウルトラの父」
3回ノックをし、入室していいのか確認の合図が聞こえるのを待って数秒で帰ってきた返事とともにドアを開けた。
「ウルトラの父……報告書の提出に来ました。ゾフィーさんにも出しました」
「うむ、ご苦労。いつも動き回って大丈夫なのか、ラピス」
「……いいえ、大丈夫ですよ。よくこんな風に動いていたはず、ですから…」
ラピスは働き者だった。そう、昔からそうだった…
ラピスには昔の記憶を失っていて、微かな記憶しかない。働き者なのは身体が覚えているからだろう…
「……それなら良いが、無茶はいけないからね?」
ウルトラの父が報告書を受け取り、軽く頭を撫でた。
「……!!」
ラピスの脳裏に何かが蘇る。失った記憶の一部が闇と一緒に浮かび上がる。だが、その記憶は一瞬で消えた…ウルトラの父が頭を撫でられるのをやめたからだ。
「……大丈夫かい?」
「あ、はい…大丈夫です。では、失礼しました」
ラピスは会釈をして部屋を出た。ドア越しからでは分からない、小さな溜息を吐いた。
「………まだ、やるべきことは…ある…」
自分に言い聞かせるような口調で呟き、通路を歩き出した。
「……はぁー…」
ようやく仕事が全て終わり、ひと段落をしたようだ。疲れた溜息を吐きながら家族の元へ帰宅した。
「ただいま〜……」
「よぉ、おかえり!お疲れさんだ」
迎え入れたのはラピスの兄、ウルトラマンゼロだった。どうやら今日は非番だったようで家で休んでいたようだ。
「お帰り、ラピス。お前を待っていたぞ。飯が出来上がってるからな」
ゼロの後ろから赤い戦士、ウルトラセブンが姿を見せてラピスを迎え入れた。セブンはラピスの父親だ。
「ただいま、父さん」
「ラピス、ちゃんと休んでいるか?ここのところずっと任務に…」
「大丈夫。こんくらい平気だよ」
ラピスは笑顔を絶やさずそう言った。
「お前…無理するなよ?」
「分かってるよ兄さん。大丈夫だから……ッ」
それでも身体が正直だった。それでもラピスは休まず、任務に遂行、仕事を続けていた。
今日も今日とで疲れた身体を倒すためにベットの上に横になった。
「はぁー……疲れた…(明日のために休まないと…)」
このような毎日が続く。そして明日に備えて、今日もゆっくりと眠った。
そんな日々が毎日続く、続くはずだったー
ラピスは今日も仕事に没頭していた。
「なぁ、あのウーマンって…」
「あぁ、そうだ…」
ラピスを見ながらヒソヒソと話す2人のモブトラがいた。
「あのウーマン…あのセブンとゼロの養女なんだろ?」
「でもアイツ…本当は相当ヤバい力を待っているんだろ…?」
「あぁ、なんでも…レイブラットらしいぞ?」
「ッ……」
モブトラ2人はワザとラピスに聞かせるように小声で話しているように見えた。それでもラピスは気にせずに仕事を続けた。自分の息を殺して耐えるように…
「レイブラット…あのベリアルのような感じか?」
「そうだ……怪獣を操る力を持つアレだ。アイツ、噂によれば一部の怪獣とは仲が良くて仲間にするらしいぞ」
「ならヤバくない…?アイツも同じことを…」
「いやいや、大丈夫だろ…普通に働くウーマンだ。暴走とかそういうのはないだろう…」
ラピスは背を向けたまま仕事を続けた。話はそこで途切れた。
「……はぁ…」
溜息を吐き続ける。よほど疲れているのだろう…
いや、それだけではない…先程の話が頭に残り、脳裏に無意識に蘇ってしまい、頭を抱える仕草を何度もした。疲れと自分の記憶の片隅で頭痛に襲われているからだ。
「っふぅ〜……帰ろう…」
ゆっくりと立ち上がり、家に向かった。完全にフラめいて、今にも不味い状態だった。
「はぁー……疲れてるのかな?(それでも…それでもボクは……)」
「ちゃんと休めバカ」
「イダッ」
帰宅早々にゼロにチョップを喰らった。
それもそうだ…ここんところ寝てはいたが睡眠時間が少ない、正確には不眠不休でずっと仕事をしているせいでさらに心配をかけたようだ。
「ごめん…」
「ったく、これ以上心配かけるなっつーの…」
「そうだぞ、ラピス…俺たちも無理をする時はある。だが…無理をすればそれ以上に迷惑をかける。分かったな?」
案の定、2人に叱られた。心配する気持ちは分かるが…と、ラピスは思った。
だが、ラピスにとってはこのような日々が毎日あるのが嬉しかった。
天涯孤独だった彼女を救ったのがこの2人だったからだ。このような日々が続けばラピスは幸せだった。
あの任務を頼まれることになってしまうまでは…
いつもの仕事にいつもの任務…ラピスにとっては当たり前のような光景になっていた。
今は仕事がひと段落がしたようで、休んでいるようだ。
「………プラズマスパークタワーが…今日も眩しい…」
完全に上の空で独り言を呟いていた。
そんな時だった。
上を見上げると、ウルトラの父からのウルトラメッセージが届いた。
『話したいことがある。私の元へ来なさい』
ラピスは何か任務なのかと思い、ウルトラの父のところへ向かった。
「失礼します…ウルトラの父」
「よく来てくれたラピス。君に話したいことがあって呼んだんだ。君だけの任務だ」
ラピスは軽く頷いて用件を聞いた。
「実は…私たちウルトラ族の第二の故郷である地球の危機なんだ。そこでだ、君に地球に行ってもらい、守ってもらいたいんだ」
「地球に……ですか?」
ラピスは当然のごとく驚いた。突然地球に行ってほしい、地球を守ってほしい、と…ラピスは承諾して良いのか思考回路を回していた。
「ボクでよろしいのですか?ボクはまだ若い身で、半人前…ですよ?(それにボクの事体に流れる血は…ッ)」
「…君だからこそ、行ってきてほしい。君は確かにまだ若い身だ。ゼロと同じくらいに…ゼロも若い身で地球に何度も行ったんだ。君でも守ることは出来る。だから、頼む」
ラピスはあまり理解が出来なかった。頭の良いラピスには珍しいことだったが、言われたからには受け入れることにした。
「分かりました。ボクはその任務を…受け入れます」
「ありがとう。幸運を祈る」
ウルトラの父はそう告げてラピスを退室させた。だがラピスは…顔が真っ青になり、人形のように動かなくなった。
自分が本当に地球で活躍して良いのか…自分の血は……