地球へ向かう時間が来た。
セブンとゼロはラピスを見送りに来てくれたようだ。
「……まさか父さんと兄さんと同じように地球へ行くことになるとはね…」
「安心しろ。俺たちは遠くに離れていても家族は家族。兄妹は兄妹だからな」
ゼロは安心させるようにラピスの頭を撫でる。
「ちょ、兄さん…恥ずかしいから」
ラピスは少し顔を赤くしながら照れ顔でそう言った。
「だがゼロの言う通りだ。地球は私たちウルトラ族にとっては第二の故郷だ。お前はお前らしく地球を守ってくれ」
セブンはラピスの肩に手を乗せて安心させるように微笑んだ。
「……うん、分かった。頑張るよ」
「達者でな!」
「健闘を祈る」
ゼロとセブンはラピスを応援し、ラピスは笑いながら背を向けて地球に向かって飛び去った。
「ハァッ!」
「……アイツ、前より変わったな…親父」
「だな…だがラピス。気をつけろよ……お前の心奥底にしまっているモノは…絶対に誰にも見せるな」
姿が見えなくなったラピスをセブンは忠告をした。
「ふぅー……アレが、地球…か」
光の国を離れて数分…地球に向けて飛び続けていたラピスはようやく地球が見えてきたようだ。
「……青くて、緑色…白いのは…雲?」
初めて見る地球を見たままのことを独り言のように呟き続けた。
ゆっくりと地球の地面に足をつけた。
セブンから教わった人間体になる方法を思い出しながらラピスは人間となる。
「………これが…人間のボク」
ラピスの人間体は普通の女子…にはあまり見えなかった。髪色か黒で血のように赤いメッシュがかかり、胸は巨乳で体全体が細い。何よりの問題が…右目だった。白いところが闇のように黒く、瞳孔が血のように真っ赤だった。
紗和は近くで見つけたトイレの鏡で確認していた。
隠すために右目は前髪を下ろして隠すことにした。
「……はぁー…」
紗和は溜息を吐いた。
右目を上手く隠せているのか警戒するように街を歩いた。前髪で隠した右目を見せないように近くて街に来る前に手にしたオレンジ色の半袖パーカーのフードを被って顔を隠していた。
「なんて悪運だ…」
本人は落胆していた。それでも街を歩き続けていた。
街を歩き続けて数時間、街の構造や道は大半覚えたようだ。歩き疲れたのか近くの喫茶店に入って休むことにした。
休みながら自分の名前も考えることにした。
コーヒーは美味いとセブンが言っていたが本人は飲めないため、メロンソーダフロートとパンケーキを頼んだ。
初めて食べるパンケーキに感激しながら名前を考えて続けていた。
ふと、窓の外から見えるビルに付けられたテレビに宝石に関する番組が流れていた。
食べていた手が止まる。瞳が宝石のように輝いていた。そう、彼女は誰よりも宝石に詳しく、大好きなのだ。
ここに来る前に、とある惑星に行って資金調達のためやコレクションのために宝石に数個も入手していた。それには理由がある、何故か宝石を見る度に謎のフラッシュバックが起き、脳内の消えた失った記憶の一部一部が闇から薄く蘇り、再び消えてしまうが…自分の記憶を取り戻すために様々な宝石を目にしては記憶を探し、自分の宝石箱の中にコレクションをしている。
テレビを見ながらついに名前が思いつく。
『宝』石のように輝かしく『生』きたい、そして名前が決まった。人間体では"
紗和の由来は偶然、その名前を付けた何故か不明。
名前を決め、喫茶店での会計を済ませたあと、再び街を歩く。自分の家が欲しいと思い、ついでながら色々と建物や土地を確認している。
「………平和…」
紗和は小声で呟いた。
だが、その平和はすぐに崩れた。街中に響く、突然現れた怪獣の雄叫び。その雄叫びを方向へ駆け足で向かった。
紗和は駆け足で怪獣の近くまで来た。
「はぁ…はぁ……アレ、は……ッ」
『ピガァアアアアアン』
宇宙怪獣リルギアス。
身長60m、体重39000t。
鋭い鍵爪が特徴の怪物である。
「どこから湧いて出てきたの…!?」
紗和は自分の変身アイテムを取り出した。地球ではよく見るスマホだった。しかし機能は地球とは違い、かなり未来のような別機能が満載だった。
画面を起動すると変身コードを入力し、空に向かって構えた。
「ラピスゥ!!」
紗和は変身をした。ゆっくりと拳を構えた。
「ハァッ!」
『キラキラKILLER!!ウルトラウーマンラピス!』
そんな電子音を掻き鳴らしながら、ラピスが降臨したのである。
『ピガァアアアアアン!』
リルギアスはそれに気づくや否や、頭部から生えた刃を飛ばした。
「ハッ!」
ラピスは刃を避けて殴りだす。拳より足を動かした。
ラピスは蹴り技が得意なのだ。膝蹴りをすればかかと落としもした。
しかし流石は宇宙怪獣、そんじょそこらの格闘術じゃ痛くも痒くもないらしく。グラりと一つ地を揺らしたかと思えばラピスの頭部めがけ胴回し回転蹴りが炸裂!
「グアッ…!?」
頭を抑えながら少しずつ距離を置くように下がった。
「ハァア…!」
ラピスは即座にスマホを取り出して、とあるコードを入力し始めた。
『OKAY、3,2,1...』
スマホがそう叫ぶ。
「ハァア!!『やるよ!アルセーヌ!』」
ラピスは再び空に向けてスマホの画面を上げると背後から怪獣が現れた。
「我は汝、汝は我…我が主のために、私も戦う」
『ピガァアアアアアン!?』
これには流石のリルギアスも心底たまげたろう。
リルギアスの動きが止まった。
「やるよ。アルセーヌ」
「御意!」
暗黒怪盗 アルセーヌ
ラピスのバトルナイザーに眠る怪獣。意志を持ち、ラピスの命令に従って行動する。言わば、ラピスのパートナーである。
何故だと、不可解だと、そう憔悴したように乱雑な突きを放つリルギアス。
「我がウルトラ族に味方になるのがおかしいか?」
アルセーヌは翼を広げて大きく羽ばたいた。
「ハァッ!!」
ラピスは勢いよく顎を蹴り飛ばした。
リルギアスにも脳味噌はある。それがグラグラと頭蓋骨内で揺れている。
脳震盪だ。
「アルセーヌ!」
「御意!」
アルセーヌは勢いよく下降してスラッシュを放った。
硬い皮膚であろうと、魔力的攻撃には叶わない。
大きく吹き飛ぶリルギアス。その時だ。
「(これで終わらせる…!)ハァ!」
ラピスはトドメを誘うとL字に腕を構えた。
その寸前、リルギアスはラピスたち目掛けて口からリルギバスターを照射した。
「ッ…!?」
「主ッ」
アルセーヌはラピスの前に立って庇おうとする。
リルギバスター、ウルバトで例えるならば『必殺技の直接対象となった相手の防御力を破滅的ダウンする、自身の必殺攻撃力が永続でウルトラアップする、発動後移動がアップする(+1)』の効果がある激強スキルである。恐らく(執筆当時ではあるが)現在のハイパーゼットンクエストでは高火力を叩き出すに違いない。
「アルセーヌ…ッ」
「ぐぅ…!無駄だ」
アルセーヌは確かにラピスを庇って直撃した。だがしかし、まだ健全の状態だった。
リルギアスはさらにヒートアップ!お得意の突進でラピスたちを襲う。
「ッ…!アルセーヌ!」
「御意!」
もはや何も言われなくてもすぐに行動するアルセーヌ。即座に背後に回って【夢見針】を放った。
『ピガァアアアアアン!』
リルギアスは痛みで動きを止めた。
「ハァア…!(チャンスはこれだけ!)」
ラピスは即座に腕をL字に構えて光線を放った。
「スターライト光線!」
ラピスの必殺技である【スターライト光線】は流星のような星の弾幕と夜空のような青い光線で、その光線はリルギアスに直撃する。
リルギアスはわけも分からずにもがき、爆発した。
「ハァア…」
「主…」
「アルセーヌ。ご苦労様」
ラピスは軽くアルセーヌの頭を撫でるとバトルナイザーに戻した。そしてそのまま空に向かって飛んで行った。
「地球での初討伐で肩が凝った…」
軽く肩を回しながら人気のない路地裏で変身を解除し、人間に戻った。
誰もいないか確認しながら紗和は再び街を散策しようとする。
その時、背後から自分を呼ぶ誰かの声が聞こえてきた。
「────誰?」
咄嗟に紗和は振り返った。しかし、誰もいなかった。周りにいるのは街を歩く人間だけだった。
だが確かに名を呼ぶ声が聞こえた。人間の時の名前ではなく────本当の名前を。
その答えは即わかった。自分専用のスマホを確認する。
アルセーヌが画面越しで笑っていた。名を呼ぶ声はアルセーヌだったのだ。
「アルセーヌ…人を騙すのが本当に上手いね」
「我は怪盗だ。他人の目を誤魔化し、ポーかフェイスを忘れないのだ」
「アルセーヌらしいね」
「我はいつまでも主の味方さ。あの日、主と戦い認められた時からな」
紗和はスマホの画面越しを見つめながら笑った。喜びを感じる笑みだった。
「主はそろそろ決めないのか?自分の住まいを」
「すぐに決めるよ。じゃないと来て早々に野宿は勘弁だよ」
「あの建物はなんだ?」
「高い建物だね。父さんはアレをマンションって言ってた。アレは高層マンションかな?」
「……主、金はいくらあるんだ?」
「高額じゃないけどかなりあるよ?」
周りから見れば画面越しで誰かと話しているように見えるが、紗和が今話しているのは怪獣なのは誰も分かるはずがない…
2人で話し合った結果、1つの一軒家を買うことにした。都会ハズレの住宅地にあるが、とても良い家だった。
こうして───宝生紗和、もといウルトラウーマンラピスは相棒のアルセーヌと共に、地球での暮らしが始まった。