「………」
地球の空を見上げる。青い空、そして白い雲。その空を飛行機が飛ぶ。ウルトラ族である紗和は大きくなればそれが間近に見えて、雲もただの煙に見えてしまう。だから、地球の空は不思議でたまらない。何故地球の空は青くなればただの真っ白になり、さらには黒くなるのだろう…と。そんな思いと共に紗和は街を散策する。
今日も本屋で気に入った作者の本を購入し、最近は生活のために裁縫や料理に関する本や雑誌を購入して読んでいた。
「………好みの味や好みの服はあるが…」
独り言を呟きながら本を読み続ける。他人から見ればヤバい奴かもしれないが、紗和の日常生活はこんな感じである。
だが今日の紗和はいつもと雰囲気が違った。ある覚悟を持ちながら、夜を待っていた。頭元に置いてある本は宝石に関する図鑑と、都内の中心にある美術館のパンフレットだった。
そして紗和の顔には…笑みが少しだけ溢れていた。
満月の夜が光り輝くものの、都会の光でその光は殺されているが星の光は光っていた。
その夜が、世間を騒がせるような事件が起きるとは、人々は知る由もない…
「…………フフッ」
謎の笑い声が、夜の街に響く…その瞬間だった。美術館から、警報が鳴り響く。
そこには…証拠も何も無く、ガラスの割れる音が聞こえないまま、展示ケースに置かれていた宝石が消えてしまっていた。
「これが…デンマークのイングリッド王妃が身につけたルビーのリング」
1人の少女は月の光に照らされながらそのルビーのリングを見つめていた。
「………初めてなのに…なんて豪華な成功」
少女は笑みを浮かべ、手にした獲物を月の光に照らす。美術館の入り口では警察と美術館の館長や警備員などが騒いでいた。
少女は美術館の屋上でその光景を眺めていた。
「予告状を置いておいたから、驚くだろうね…」
そう言って少女は─────怪盗少女シンシャは闇の中へと消えていった。
予告状
お初目にかかります。この世に存在する美しい宝石を我が物にする為に、怪盗少女シンシャがこの世界にやってきた。
今宵、ルビーのリングを手にする。
怪盗少女 シンシャ
怪盗少女シンシャは逃げるかのように闇のように暗い森の中を歩み続けた。
さらに森の奥へ進む、身につけていた黒い外套を一瞬で脱ぎ、本来の姿に戻る。
赤いメッシュがかかった黒髪が月の光に照らされると宝石のように輝き、そして一瞬にしてその輝きは闇のように暗くなる。
「家に着いた。さっさと寝て次に備えよう」
そういうシンシャは─────紗和は森に隠された家に入り、その日の夜は幕を閉じたのだった。
翌日、メディアは昨夜の怪盗少女シンシャのことで報道され世間は騒ぎ始めていた。
それをテレビのニュースで見ている紗和は満足げに笑っていた。
「聞いたことも見たこともない謎の怪盗少女が突然現れたらそりゃあこんなに騒ぎになるよね〜」
椅子に座って本を読みながらニュースを観ながら誰かに話しているかのようにそう言った。
「ああ、我ながら驚きだ。主は初めての怪盗を
「アルセーヌが怪盗だから知識とか色々と教えてくれたおかげだよ」
流石古くからの
脳内からは喜びから不安へと突如変わっていき、視界が真っ白になり出した。
「………主?」
アルセーヌの言葉に紗和は何も応答しない。脳内の不安という思考回路が回りに回り、心臓の鼓動も速くなっていた。
「アルセーヌ……ボクは……ボクは……」
「………」
「ボクは───────悪党になっちゃったんだね」
その瞬間、外は何やらひと騒ぎが起きていた。
息を整えながらカーテンを開いた瞬間、紗和の目の色は変わる。
「……やっぱ平和にさせるには時間かかるね…」
そう呟きながら外へ飛び出した。
「グィャァアアッンォェアア」
ベラムーが突如現れ、街を破壊していった。ペイル光線を放ち、辺りを燃やしていった。
『認証!ウルトラウーマンラピス!』
そんな機械音と共に青い光が現れる。紗和がラピスへと変身したのだ。
「ハァッ!」
顔面に蹴りをお見舞いさせ、戦闘は開始する。
「グィャァアア」
ラピスに向けてペイル光線を放つベラムーだが、バク転して回避された。そのままラピスは突撃して殴り続ける。
「ッ…デリャ!ハァ!」
「グィャァアアッンォェアア」
その隙を狙い、ベラムーが尾でラピスの腹部を叩いて吹き飛ばした。
「ダァッ!…ッ……デリャァ!ハァッ!」
何度も顔面に蹴りを当て続ける。痛みで叫びまくるベラムー。それで追い討ちを続けるラピスの蹴りは止まらない。
相手が怯んだ瞬間を狙い、ラピスはトドメのスターライト光線を放った。
「グィャァアアッンォェアア」
ベラムーの叫び声をと共に爆散した。
そして見届けたラピスはカラータイマーの点滅と共に青空へ飛び立った。
「……ふぅ…」と息を吐く紗和。自分のベットの上に倒れて溜めてしまった疲労を無くすために眠りにつく。
瞳を閉じると、闇の中…何もかもが暗い。
その闇の中から声が聞こえる。紗和のことを罵る…何かの声が。
「何故義賊に…」
「義賊なんかただの悪人じゃねぇか」
「光でもなんでもない」
「お前なんか……」
「いない方が良かったよ」
「ハッ…!?」
汗をかきながら上半を起こし、荒れた呼吸を整えるために深く息を吸ったり吐いたりする。
「………酷い夢だ…」
そう呟き、ベットから降りながら呼吸を整え続ける。だが、呼吸を整える度に鼓動の動きが増し、脳裏に夢の記憶が蘇ってくる。整えた呼吸も再び荒くなっていき、胸元を抑えた。
「主ッ」
紗和の身の危険を感じたのかアルセーヌが自分の意志でスマホから現れ、紗和の背中をさすった。そのおかげが少しずつ過呼吸が治まり始めた。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ………ありがとう…アルセーヌ」
アルセーヌに向けて笑みを浮かべて見せる紗和。だがアルセーヌはその笑みを見てギョッとした。笑顔が…本当の笑みではなく、瞳が漆黒に染まっていたが、微かなその漆黒の奥底には、叛逆の意志を意味する黄色い瞳が隠れていたのだった。