炎の使い魔   作:ポポンタン

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今回から少しオリ展開・設定をはさみますがご容赦ください~

それとさすがにこの展開は無理があると自分でも思いましたが、やってみたかったもので(汗


第19話

「……甘かったか」

ワルドは密かにルイズ達とは別に借りていた部屋で一人ワインを煽り、敗北による失意の溜息を吐きテーブルにグラスを置く。

あの使い魔、エルクの『ガンダールヴ』としての実力を測るためにルイズを煽り手合わせに持ち込んだ。しかし、先住魔法を使わずともあの実力だ。先住魔法抜きであればこちらの魔法を持って容易く組み伏せられると思っていたがこの有り様だ。本気でかかったわけではなかったが、それは向こうとて同じだっただろう。己の二つ名である炎を全く使わなかったのだから。

 

(『虚無(ゼロ)のルイズ』とガンダールヴの力を得た『炎使いエルク』か…まずい奴等が引き合わされたものだな……)

「おやおや随分と落ち込んでいるようじゃない。そんなことで大丈夫なのかい?」

「……土くれか」

 

項垂れた様子のワルドに声をかけたのは、ノックもなしに部屋に入り込んできた女のメイジ、土くれのフーケであった。

 

「相手が化け物のように強いってわかっていた上での手合わせだろ? なにいちいち落ち込んでんだい。こっちだって好きで付き合っているわけじゃないってのに見苦しいね」

 

フーケが苛立った様子でワルドに話しかけた。

 

「ふん、貴様にはわかるまい。我々に置かれている状況が…それより例の実験部隊との連絡は着いたのか?」

「ああ、あの薄気味悪い連中だね。既に予定通り待機しているとさ。そう言えば、あの連絡役の小僧も例の人間と魔獣のキメラって奴なのかい? ただの平民にしか見えなかったけど」

「アレか…私も詳しくは知らんが、アレもまた変わった異世界からの異邦人らしい。なんの変哲もない平民だったようだが実験の貴重な成功例として奴等の盟主殿のお気に入りみたいだな。アレが今回の作戦の火蓋を切るそうだ」

「ふ~んそうかい。ただの平民がねぇ。おっかない話だよ」

 

さして興味ないようにフーケが答え、部屋から去っていった。

 

 

 

その頃、ルイズは部屋でベッドに横になっていた。

 

(なによ、エルクもワルドも結局、二人共私を放っておいて勝手ばかり。誰も本気で私のことを考えてないんだわ)

 

あの後、エルクは三人に誘われるまま酒場に連れて行かれ、ワルドは心配するルイズを尻目に、一人にしてくれと早々にどこかに去ってしまった。

 

(全部話してって言っても結局肝心なところははぐらかすし、使い魔のクセに…結局私がゼロだから信用されてないってわけ?)

 

ルイズは不貞腐れたようにベッドに潜り込む。誰にも馬鹿にされない証が、力が欲しかった。だからエルクが強いとわかったときは本当に嬉しかった。それに意外に優しくて頼りになって……

でも、それが仕方ないからだったら、ただの同情だったら、いずれ自分から離れていってしまいそうで怖かった。だから隠し事をされるとつい苛立ってしまう。

 

(いつも助けてくれるけど、ご主人様に対して敬いの気持ちは全く感じられないし、結局私達ってなんなのかしら……エルクは何のために戦っているの?)

 

そうグルグル考えているうちにルイズは眠りに落ちた。

 

 

 

 

ルイズはまた夢の中で迷っていた。周りには何も無い、ルイズただ一人だ。

 

「ここはどこなの? ちょっと! 誰かいないの!?」

 

ルイズが叫ぶと目の前に二人の人影が現れた。ボンヤリとしていて顔はよく見えないが、一人は軽鎧に赤い鉢巻きを巻いた若者と赤い衣装に紫がかった長い髪を束ねた女性だった。

 

「あなた達が私をここに連れてきたの? 一体何なのよ!」

 

二人はルイズの問いに答えることなく、後ろに振り返り歩き出した。

 

「ちょ、ちょっと! 待ちなさいよ!」

 

追いかけると辺りの風景が一変した。

 

「え、こ、ここは?」

 

周囲を見渡すと、そこはまさしく白、白い壁に囲まれた広い空間にいた。

 

「ほら! これから、お前はここで暮らすんだ」

 

後ろから男の冷たい声が聞こえた。

 

「何も不自由のない生活だ。まあ、せいぜい研究の役に立ってくれよ」

 

そう言うと男は去り、一人の男の子が取り残された。

 

(! この子ってエルクよね? まさかあの夢の続き?)

 

子供のエルクは虚ろな表情でただ、立ちすくんでいた。すると、エルクと同じくらいの二人の子供が近寄ってきた。金髪の可愛らしい少女とヤンチャそうな少年だ。

 

「何だ新入りか?」

「ジーンたら、えらそうに! あなた名前は?」

 

少女が優しくエルクに名前を聞いた。エルクは少し戸惑っていたが、なんとか答えた。

 

「…エルク」

「エルク、いい名前ね。私はミリル。この子はジーンよ。仲良くしましょうね」

 

少女はにっこりと微笑んで語りかけた。どうやら少女の名前はミリル、少年の名前はジーンと言うらしい。

 

「ここは、どこなんだ…なんでここにいるんだ…あ、頭が…」

 

エルクは頭を押さえ苦しみだした。

 

(エルク…あの時の記憶を失ってるの?)

「大丈夫?」

「こいつ、まだ薬が残ってるな」

「薬?」

「エルク、ここに来た子達はみんな薬を与えられるの。そのせいで、昔の事をみんな忘れているのよ。でも大丈夫。記憶なんてなくてもみんな楽しく暮らしているわ。さあ、こっちにいらっしゃい」

(どういうこと、ここにいる子達はみんなエルクと同じ境遇ということ? ここは孤児院なの? でもエルクはあの後、あの軍隊に連れ去られたのよね。ここは一体…)

 

辺りを見渡すと多くの遊具や玩具があった。よく見ると、ここにいる子供たちはみんな同じ無地の白い服を着ている。まるでそれ以外は必要ないというばかりに。一体誰が何のために作った施設なのか。

 

(子供達は楽しそうだけど、なんだか不気味ね。ずっとこんなところに閉じ込められていたら頭がおかしくなりそうだわ。ここから出たいとは思わないのかしら、ってそうか薬を盛られて…)

 

ここにいる子供達にとって世界とはこの白い空間のみなのだろう。ルイズは子供達に哀れみの気持ちを抱いた。

 

(エルク、ここで何があったの…?)

 

 

 

「……夢? やっぱりただの夢じゃないわよね」

 

ルイズは元いた部屋で目を覚ました。あたりはすっかり暗くなっている。なぜ自分はあんな夢を見たのだろうか。使い魔契約の力? いや、何者かが意図的に見せたものであるかのようにも思えた。

 

「……やっと起きたか」

 

ベッドの横で椅子に腰掛けていたエルクが声をかけてきた。

 

「エルク!? な、なんであんたがここに!? か、勝手に入ってこないでよ!」

「何言ってんだ。学院じゃ同じ部屋で寝泊りしてんだろうが…まあ、なんだ、あの後何も話してなかったしな。それに、まだルーンのことを黙ってたことも謝ってなかったしよ。部屋に来たらお前寝てたからさ」

「あ……」

 

正直、あんな夢を見ていたせいで苛立っていたことをすっかり忘れていた。

 

「べ、別にいいわよもう。あんただって悪気があって黙ってたわけじゃないんでしょ? それに伝説の使い魔だっていっても、まだピンとこないわよ…」

「そ、そうか」

 

二人の間で気まずい空気が流れた。その時、窓の外が騒がしくなってきた。

 

「何かあったみたいだな。ちょっと様子を見に行ってくる」

「わ、私も行くっ!」

 

宿の外に出ると、ワルドを含め全員揃っていた。辺りはすっかり日が沈んでいた。

 

「何があったの?」

「あらルイズ、やっとお目覚め? わからないわよ。ただ桟橋で何かがあったみたいよ。なんだか遠くの方で悲鳴が聞こえるし、衛兵達が皆そこへ向かっているわ」

 

ルイズの問いにキュルケが答えた。

 

「おいおい、ただでさえ足止め食らってるのに、そりゃまずいんじゃねぇのか?」

「うむ、とりあえず何があったのかを聞いてみるべきだな」

 

ワルドが桟橋へ向かう衛兵を呼び止める。

 

「これは何の騒ぎだ」

「なんだお前ら!! 今はそれどころでは…」

 

でかい態度で怒鳴った衛兵に、ワルドは杖を見せびらかすように杖を抜く。

 

「き、貴族様でしたか…」

「女王陛下の魔法衛士隊の隊長、ワルド子爵だ。私は今、王族の勅命で動いている。もう一度聞くぞ。これは一体何の騒ぎだ」

 

衛兵はワルドの静かな、そして迫力のある問いに青ざめて答えた。

 

「さ、桟橋付近で妙な先住魔法を使う男が暴れているのです!」

「先住魔法だと?」

「は、はい、エルフや亜人ではないようなのですが、いやむしろ見た目はただの平民なのですが強いのなんの…我々衛兵も既に出動していますが、とても手がつけられない状況です。このままではいつになったら片がつくのか……」

 

衛兵が力なく語る。どうやらのっぴきならない状況のようだ。

 

「なんだかなぁ、こんな状況前にもあったような…」

 

エルクが溜息を吐いて呟き、キュルケが呆れるように言った。

 

「ここに来てまた先住魔法? 最近どうなってるのよ…先住魔法の大安売りじゃない…」

「…………」

「ルイズ? どうしたの?」

 

ふとルイズを見ると何故か悲しそうな表情で俯いている。

 

「わからない……でもなんだか胸騒ぎがするの…」

「どちらにせよ放っておくわけにはいかないな。先住魔法ともなれば平民では役に立たないだろう。我々が片付けよう」

 

ワルドの言葉に全員が頷き一同は桟橋へ向かった。

 

 

 

桟橋へつながる大樹の麓で、少年と衛兵達が睨み合っていた。一見、衛兵達が少年を包囲しているように見えるが、戦況は少年の独壇場であった。衛兵たちは腰を引かせ遠巻きに見ているだけで、何も出来そうな気配はない。

 

「いいから全員ここから離れてろっての!! そうすりゃとりあえず何もしないって言ってんだろ!」

 

男が衛兵たちに怒鳴る。

 

「ふ、ふざけるな小僧!! ここをどこだと思ってやがる!! 大人しく投降を……」

 

そこまで言うと衛兵は黙った。少年の口から口語が漏れたからだ。

 

「大地よ。つぶての嵐となって敵を飲み込め」

「うわあああ! またあの先住魔法が来るぞ、逃げろぉ!」

 

とたんに辺はパニックとなった。衛兵たちが蜘蛛の子を散らすように四方八方に逃げだそうとしたが、それは発動した。

 

マッドストーム

 

その瞬間、土や小石が巻き上げられ激しい嵐となって襲いかかってきた。土や小石が横殴りの雨のように衛兵たちを打ち付け、たちまちズタボロとなった。

 

「ぎゃあ!」

「いてぇよぉ…」

「ひぃい」

 

死人は出ていないようだったが完全に戦意を喪失していた。

その様子を、ルイズ達一行が遠巻きに見ていた。

 

「アレが例の先住魔法の使い手か…地の利を得た魔法だな。範囲も広い、これは厄介だぞ」

「…魔法の威力自体はトライアングルクラスに匹敵」

 

タバサの推測にギーシュはゴクリと唾を飲む。

遠見の魔法で見ていたキュルケは興味無さ気に呟いた。

 

「ふ~ん、でもあまり好みのタイプじゃないわね~。どう見ても普通の平民の男の子じゃない。多分私たちと同じくらいじゃない?」

「こんな時に何言ってんだよ…」

 

エルクは呆れたように言ったが、確かに見た目はただの人間だ。だが、エルクはその気配で、少年がただの人間ではないことを感じ取っていた。それにあの魔法はエルクのいた世界での地属性の魔法だ。

 

(まさかあいつ、キメラ研究所の実験体なのか……)

 

少年は黒髪でハルケギニアでは見かけない青いパーカーの上にアーマーを身に付け、背にはカタナらしき剣を背負っていた。




はい、やってしまいました。魔改造(まんま)サイト君です。
そろそろキメラ研究所の犠牲者を出したかったのですが、やはり原作からして苦労して戦っているサイト君が似合うかなと考え、強引に登場してもらいました。
…いや本当すいません。
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