迷える狼/New Front line   作:筋肉バカ

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Say good bye my world

月明かりが闇夜を照らす。風の音だけが聞こえ、他は何も聞こえない。

 

「静かだな。」

 

時刻は午前1時をまわっていた。仮眠でもとろうか。仕事も交代し、今はゆっくり休むべきだろう。ここで無理をすれば後悔する。

 

外からは土と草の匂いがする。仮眠用の少し固く、寝心地のよくないベッドへと横になり目を瞑る。

 

 

 

 

どのくらい経っただろうか?

 

「…洗剤の香り?」

 

勤務していた場所とは違った香りに目を覚ます。

 

「…太陽?朝?マズい!」

 

寝過ごしたか?2時間程度の仮眠をとるはずだったが。携帯のアラームも2時間きっかりにセットしていたはず…

 

胸ポケットに入れていたはずのスマホを探す。

 

「無い!落としたのか!?」

 

そもそもこんなに寝心地が良かっただろうか?このベッドから起きると大抵身体が痛くて仕方がないのだが。

 

「夢…?を見てるのか?」

 

ベッドはフカフカ、太陽と洗剤の香り、腕時計を見ると6時を示していた。夢だ。有り得ない状況に脳を一気に覚醒させる。服装もいつの間にか仕事着からラフなパジャマに変わっていた。

 

「何なんだ?」

 

何が起きてる?

 

突然アラームの音が部屋に響く。驚いて少し辺りを見回すとベッドの上には目覚まし時計があり、音はそこから出ているようだ。

 

まずベッドから立ち上がり、部屋を確認する。

 

「机、本棚、クローゼット…俺の作業着は何処だ?」

 

クローゼットを探すが

 

「制服?何だこの制服、見たことないぞ。」

 

見慣れない制服がクローゼットに入っている。衣装ダンスもあったので確認をするがそこには私服や下着がいくつか入っているだけだった。

 

靴も無い。

 

「近くに置いていたんだが。」

 

夢にしてはリアルだ。自分の頬を軽くつねるが、痛みの感覚がある。軽く身体を動かしてみる、

 

「思うように動くな。」

 

つまり夢ではないのだろうなか?

 

机の上を再び確認し、自分の携帯をみつける。

 

「とにかく連絡しないと。」

 

職場に連絡し、状況を知らせる。冷静になれ、まだ夢を見てるだけかもしれない。とにかく何が起きているのか理解しなければ。

 

携帯から履歴を探り、職場や上司の番号、親の番号を見つけ出す…が、

 

「………無い?…………無い!?」

 

番号が無い。そんな馬鹿な話があってたまるか。何かの拍子に消えたのか?

 

携帯で自分の職場を検索し、そこから電話番号を探ることにする…

 

「無い!!!有り得ない!?どうなってる!!!」

 

存在するはずの場所が出てこない。つまり、存在しないということだ。

 

頭が真っ白になる。すると目線の端にある物を捉えた。

 

「テレビ…?」

 

何故テレビがあるのか?そんなことはどうでも良かった。この状況だ。

 

「テレビ!確認だ!情報を集めなければ!」

 

テレビの電源をつけ、とにかく何でもいいから情報を得たかった。

 

チャンネルをまわし、確認する。ニュース、バラエティ、スポーツ、とにかく全てを確認する。

 

「……何だ?」

 

違和感だ。何処か違う。似ているが何かが決定的に違うのだ。

 

「何だ…この違和感。」

 

ニュースを見ても、バラエティを見ても何か大切なパーツが抜けている、何かが欠けている気がする。大事な何かだ。

 

「…俺の知っている内容と、違う?」

 

そう、何か変だ。確証は無いが番組が奇妙なのだ。何だ、この、違和感は?何がかはわからない。ただ、決定的に違う。"何か"が違うのだ。そして

 

「すくーる…アイドル?学校のアイドルってことか?」

 

そんな内容が多く見られた。

 

学校にアイドルなんてあっただろうか?しかも、テレビでやる程にまで。確かに最近テレビはあまり見ていないが、チェックしてないわけではない。流行に少し乗り遅れることはあるが、少なくともスクールアイドルなるものは聞いたことが無かった。

 

携帯が鳴る。

 

すぐに通話をする。番号は見たことが無く、悪戯ならばすぐに切ってやれば良い。

 

「はい。」

 

相手は落ち着いた声の女性だった。

 

「おはようございます。虹ケ咲学園、学園長の西島です。」

 

「…はあ?」

 

学園?虹ケ咲?西島?聞いたことのないワードの連続に困惑する。

 

「山上さんの電話番号で合っていますよね?」

 

山上?誰だそいつは?間違い電話か?そう思い電話を切ろうとするが、机にいつの間にか置いてあった身分証に目がいく。

 

それを確認するとそこには

 

『虹ケ咲学園1学年 普通科 山上 陸』

 

と書かれているのを確認する。

 

「山上君?」

 

何を考えたか俺は

 

「はい。」と答えたのだった。

 

「3日後に君の面接があります。虹ケ咲学園初の男子生徒ということもあり、緊張すると思いますが落ち着いて来てくださいね。それから、腕章と生徒手帳を忘れないように。忘れると警備の方たちに止められて入れませんからね。」

 

机を確認すると『虹ケ咲学園 テスト生』

 

と書かれた腕章が"いつの間にか"置かれていた。

 

「…わかりました。お願いします。」

 

「はい。お待ちしております。」

 

通話が終わり、状況を整理する。

 

「ここは…何処だ?」

 

それが俺の最初に出した回答だった。

 

 

何か大きな力に動かされている、ほんの一瞬だがそんな気がした。奇妙な、気味の悪い感覚だ。とにかく今は、これが夢であると祈るしかない。随分長い夢だが。もしこれが現実なら、元の場所へ急いで帰らないと。やるべきこと、やりたいことがまだ沢山ある。家族や仲間、同僚、先輩とも離れてしまった。俺の頼れる場所、居場所、帰る場所が無いというのは、こんなにも心細いとは。今この瞬間、この現象が実際に起きていることならば、1人の闘いとなる。だが俺は屈しない、なんとしてでも俺は帰る。絶対にだ。

 

覚悟を決め、大きく息を吸う。俺は見慣れぬ制服をクローゼットから取り、袖を通してみた。

 

ああ、着心地が悪いな。そう感じながら。

 

「虹ケ咲学園、一体どんな学校なんだ?」

 

2度目の学校生活が始まる。

 

 

拝啓】ーようこそー

 

ヒラりと手紙が一枚机の上に落ちた。

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