山上陸(16歳)
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会に所属。スクールアイドルに興味を持ち、日夜彼女達を追い、応援している。上原歩夢と高咲侑とは幼馴染みであり、小さい頃から仲良く遊んでいた。高校は別々になるはずだったが、親の都合により急遽虹ヶ咲学園に転入することとなった。ピアノを習っおり、時には自分で編曲を行ったりもする。
という設定であったが、陸山衛の帰還に対する想いの強さ、そして彼の異常な精神力によって、当初の設定は消え去り、山上陸という器だけが残った。山上陸とは器であり、陸山衛を元の世界へと返す方法を探るための道具である。
静かな時間が流れる教室。時計の針が時の流れだけを刻んでいく。
奇妙な空間、奇妙な時間…
静かな時間、静かな空間。
目の前にいる青年が口を開く。
「良い学校です。施設も、部活動も何もが充実している。生徒達も楽しそうだ。この学校に入れたことはこの上ない幸運…とでも言いましょうか。この巨大な学校という組織を1人で動かし、導くというのは大変なことでしょう?」
「ええ。私もそう思います。」
これは…夢?それとも現実?私は彼を、目の前の青年を知っている。何故かはわからないが、そんな実感がある。
顔はよく見えないが、彼の濁った黒い瞳が私の顔を写す。その瞳はとても寂しげで。何故かその寂しげな瞳を知っている気がして。男性となんて、私の父親以外関わったことなんて無いのに。
「この学校初の男子生徒、というわけですが、今の心情などお聞かせ頂けますか?」
「心情…ん〜、緊張と不安、そして幸運。なんとも言い難いですね。ただ、楽しみにはしてますよ。男1人というのは心細いですが。」
この会話、どこかでしたような…。とても不気味だと思うはずなのに、何故か私は彼をすんなりと受け入れようと感じた。おかしい、虹ヶ咲学園に男子生徒なんて、どう考えてもおかしなことなのに。
もう日が暮れる。生徒会室の窓から外を覗くと、夕焼けも傾き、空には星が浮かび始めている。
「面接、もう終わりましたか?」
無機質な彼の声にハッとする。一体どれ程彼をこの場に拘束していたのだろうか?そろそろ彼を家に帰さないと。
「ええ。では、明日からよろしくお願いしますね。」
あれ?おかしい、名前?そう、彼の名前は何だろうか?変だ。この空間も、この現象も、何かがおかしい。何よりも、彼の名前が出てこない。知っているはずなのに。
「では、失礼しますね。生徒会長。」
彼はゆっくりと椅子から腰を上げ、そのままスタスタと部屋のドアに手を掛ける。
(あ、えっと!?)
何だ?声が出ない!?いや、出せない!!?彼を呼び止めようと思うが、まるで金縛りのように体が動かないのだ。彼が出ていく。生徒会室の扉を開け、外へと出ていく。
何故だかそれが、とても寂しい未来な気がして、取り返しのつかない未来をみている気がしてならない。
(待って!行かないで!!!)
何故かそんなことを思う。見ず知らずの青年に。彼は振り返らない。まるで機械のように前へと進んでいき、そのまま部屋から出ていった。
「待って下さい!!!◯さん!!!!!」そう手を伸ばした瞬間
ジリリリッ!!!!!っとその空間に喧しい目覚ましの音が響き渡る。
「あ。」
私はそこで目が覚めた。何故か私は自分の部屋の天井に手を伸ばしている。眠たい目を擦ると、涙が溢れてきて、ほんの少し泣いていたことに気づいた。
「あれ?私、なんで?」
「菜々~、朝ごはんよ~!」
お母さんの呼ぶ声が聞こえる。行かないと。寝すぎたのか?何故か頭がクラクラする。おかしい、夜更かしなんてしてないはずだ。でも、なんだか長い夢を見ていた気がする。
制服に着替え、リビングに行くと、暖かい味噌汁やご飯の香りが部屋に広がっていた。
「おはよう。」
「おはよう。」
そんな簡単な挨拶をする。
「珍しいわね、私が菜々を呼ぶなんて。昨日、夜遅くまで何かしてたの?」
「ううん。なんでもないよ。」
私は席に座り、味噌汁に手をつける。暖かい。
「あらそう。なら良いんだけど。あんまり無理しちゃダメよ?」
そう優しく微笑みかけてくれるお母さんに、私は「うん。」と頷き返す。
「生徒会はどうなの?今年の文化祭の催し物とかで忙しいんじゃない?」
「うーん、ちょっとね。」
そう、今年は忙しい。何故なら今年の文化祭はスクールアイドルフェスティバルとの合同開催だからだ。果たして、この大規模イベントの実行委員に誰を選ぶべきだろうか?この人選は責任重大だ。個人的には、今年入ってきた1年生の三船栞子さんに頼みたいと思っている。彼女はとても真面目で、優秀だ。何よりも、生徒一人一人の為に行動できる人だと思う。無論、生徒会や協力してくれる生徒達の同意の上でだが。
「上の空で考え事?」
そんな事を考えていたら、朝食の手が止まっていたらしい。私はハッとしてご飯を食べ直した。
そういえば
「ねえ、お母さん?」
「な~に?」
今朝のことを話そうと思った。しかし、何を話そうと思ったのか思い出せない。何とか辛うじて、夢の話だったことは覚えてる。
「今日、変な夢を見たの。」
「変な夢って…どんな?」
どんな?それがわからない。ただ、ひどく変な夢だった。
「うーん、それがあんまり覚えてなくて。でも、凄く不思議な夢だったような?学校の夢だったかな~?」
ううーん。と頭を悩ます。何故ただの夢なのにこんなに必死に思いだそうとしてるのかわからない。ただ、何か大切なモノを忘れているような、そんな気がする。
例えるなら、漫画を買ったとして、それに付録が付いてくる。有っても無くてもどちらでもでもいいような付録。でも、有ったら嬉しい。それがたまたま付いてこなかった。そんなちょっとした物足りなさがあるのだ。
「菜々、学校大丈夫?」
「え?」
気がつくと、もう登校しなければならない時刻が迫っていた。
「いけない!!?」
私は大慌てで部屋からカバンを取ると、私は学校へと向かうのだった。
静かな時間が流れる教室。時計の針が時の流れだけを刻んでいく。
何処だ、ここは?いや、俺はこの場所を知っている?
「初めまして、陸山衛さん。」
目の前には、黒く巻かれたツインテール?のような髪の毛が特徴的な、眼鏡をかけた少女が高そうな椅子に座っていた。よく見ると、彼女は腕に腕章をしており、そこには「生徒会」と書かれていた。
(ここは何処だ?お前は何者だ?)そう言おうと思ったが
(声が出ない!!?どうなってる!?)
意味がわからない。とてつもないほど不気味だ。だがなんだ?俺は目の前の女を知っている…?これは夢?…か、それとも現実か?
眼鏡の奥に光る、黒曜石のような瞳がひどく不愉快だ。まるで、人生が輝いているような。みるからに「さあ!貴方も人生を楽しみましょう!」とでも言いたげな。そんな自信満々の瞳がえらく不気味で、不愉快だ。
「この学園、貴方はどう思いますか?」
「良い学校です。施設も、部活動も何もが充実している。生徒達も楽しそうだ。この学校に入れたことはこの上ない幸運…とでも言いましょうか。この巨大な学校という組織を1人で動かし、導くというのは大変なことでしょう?」
何故だかそんな言葉がスラスラと出てきた。まるで、最初からそう言うよう"決められていた"かのように。
「この学校初の男子生徒、というわけですが、今の心情などお聞かせ頂けますか?」
心情?そんなものあるわけない。さっさと俺をここから出せ!
そうか、これは夢だ。現実じゃない。今の俺は演習場にいる。頼れる部下や上官、仲間達と共に。
さあ、目覚めろ俺!
「心情…ん〜、緊張と不安、そして幸運。なんとも言い難いですね。ただ、楽しみにはしてますよ。男1人というのは心細いですが。」
なんなんだ?何が起きてる?お前は誰だ?いや、知っている気がする。だが名前が出てこない。
「面接、もう終わりましたか?」
「そうですね。明日から、共に頑張りましょう。」
彼女が手を差し出す。だが、俺はその手を取ることはない。失礼なことは承知しているが、何故かここで彼女の手を取るのは得策ではないと感じた。そう、取り返しのつかないことになると、直感的にそう思った。
(あんた、誰だ?)
そう再度問おうとするが、
(…やはり、俺が自分の意思で喋ることはできないのか。)
「では、また明日◯◯会長。」
やはり、目の前の女の名前が出てこない。しかし、会長と呼んでいるということは、彼女は生徒会長なのだろう。
俺はそのまま部屋の扉へと振り向き、そこへ進むことにした。彼女は黙って笑顔?で手を差し出している。その姿は滑稽に見えるが、不気味だ。
俺は扉に手を掛けると、そのままその部屋から出た。
すると今度は廊下だ。どこかの施設か?誰もが制服を着ているため、何処かの学校だろう。だがなんだ?この違和感は。見る限り女子女子女子。女子高か?何故だ?俺は女子高なんてこれまでの人生で一度も行ったことがない。そして、誰もが笑顔なのだ。あちらを見れば笑顔、こちらも笑顔?笑顔笑顔笑顔真顔?笑顔。なんなんだ?確かに学校生活は楽しいことが多い、笑顔で溢れ返っているだろう。だが、それにしては
(奇妙だ。)
それに加え、髪の色や目の色も。カラーコンタクトをしているとか、髪を染めているとか、そんなレベルでは、次元ではない。ひどく不自然に見えて自然なのだ。頭が痛い。
「おや、こんなところにいたんですか?衛さん!」
誰?いや、あの会長か?
目の前には、髪をとき、眼鏡を外した生徒会長がいた。見た目は変わったが、声の質感がどこか似ている気がした。
「同好会の皆さんが待ってますよ!」
同好会?何のだ?
「さあ!今日も最高のスクールアイドルを目指して、練習頑張りますよ!」
すくーる、あいどる?なんだそれは?聞いたことがない。
「なんなんだ、それは?」
そうボヤいた瞬間、ブルブルと胸ポケットに入れていたスマホの振動で目を覚ます。
時刻は午前3時。1時に仮眠を摂り、ちょうど2時間経過したようだ。
「行くか。」
俺は寝心地の悪い野外ベッドから体を起こし、近くに置いた小銃を手に取ると、天幕から外に出た。草木も眠る丑三つ時、周りはとても静かだ。外には星が浮かんでいる。歩哨の交代に行かなければ。しかし、頭がやけにクラクラする。なんだかとても長い夢を見ていた気がする。
俺はそのまま歩き、バディの陸士の元へと向かう。
「陸山2曹、お疲れ様です。」
少し眠そうな目をした陸士が俺に軽く敬礼をする。
「おう。じゃあ、交代に行くか。」
「はい。」
彼と共に俺は陣地の指定された場所へと向かい、見回っていたバディと交代をする。
「じゃ、お願いします。」
「失礼します。」
彼らは、俺に申し受けを行い、敬礼をするとそのまま天幕の方へと向かって行った。俺達はそのまま指定された場所をゆっくりと歩く。
「眠たいか?」
俺はそう問いかけると、彼は目を少し擦りながら「平気です。」と答えた。
「少し休むか。」
俺は辺りを少し見渡せる場所を探し、そこに向かうと、ちょうど良い木の根を見つけたので、そこに彼を誘導した。
「座ってて良いよ。」
「いえ、しかし!?」
彼は首を横に振るが、俺は「良いから。」と宥めて座らせた。2時間は長い。
「今日は多分、斥候も入ってこないさ。」
長年の経験と勘でそう判断する。ただし、完全に気を抜くわけじゃない。きちんと、周囲を警戒しながら、俺はさっきのことを彼に話そうと思った。時間はまだまだあるからと。
しかし、肝心なことにその内容をよく覚えていないのだ。ただ何か、そう、夢だ。多分夢の話だと思う。
「実はさっき変な夢見たんだよ。」
「夢…ですか?」
彼は少し緊張気味に、しかしどこか興味深そうに聞いてくる。この2時間は、この話題で潰すか。
「ああ。」
「どんな夢だったんです?」
そう、それが問題だ。なんの夢だったか。やはり、この話題で2時間は無理そうだな。
「それが、あんまり覚えてないんだ。ごめんな。」
「いえ。そんなことは…。」
俺が謝ると、彼が少し申し訳なさそうな顔をする。
「ただ、ひどく不気味だったのは覚えてる。あれはそう…悪夢だな。」
「悪夢…ですか?」
「そう。ひどく不気味で、不愉快な悪夢だった気がする。」
そんな話を彼としていると、自分がやけにホッとしていることに気づく。そんなに恐ろしい夢だったのだろうか?だとしたら、もう少し覚えていても良い気もするが。とにかく、覚えていないが、何故か夢で良かったと思っている。変な話だ。
「夢で良かったですね。」
「そうだな。」
心の底からそう思った。
学園に着き、授業を受ける。当たり前の日常のはずだが、何か、何かが足りない?いや、減っている?ような気がする。自分でもおかしなことを思っている自覚はある。だが、何か抜けているような、抜け出してしまったような気がするのだ。
授業が終わり、生徒会室へと向かう。今日は、文化祭、スクールアイドルフェスティバルの合同開催をするための実行委員として、三船さんを推薦する予定だ。
生徒会室に副会長や生徒会のメンバー達が集まり、その事について話すと満場一致で彼女が実行委員として相応しいと決まった。あとは、これを本人に伝えるだけだろう。いよいよ、この学園の一大イベントが始まる。新しく留学してきた、香港のスクールアイドル 鐘 嵐珠のパフォーマンスもあり、今や虹ヶ咲学園は以前にも増してスクールアイドルの人気が高まりつつある。これは私にとっても非常に嬉しいことだ。
なのに。
「はあ。」
「会長?」
副会長が少し不安そうにこちらを見てくる。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ。何でもありません。ただ…今日少し変な夢を見てしまって。」
「変な夢…ですか?」
彼女が少し興味がありそうに顔を寄せてくる。
「それって、どんな夢だったんですか?」
来ると思ってました。ですよね~。なんて少し自嘲気味に心の中で言ってみる。
「いや~、それが、あんまり覚えてなくてですね。」
タハハ。と少し苦笑い。
生徒会全員が私を不思議そうに見てくる。
「と、とにかく、今の話は忘れて下さい!合同文化祭、成功に向けて頑張りましょう!」
鉄帽に付けた暗視装置を覗き、周囲の様子を伺う。時より野生動物がカサカサと動く音がするが、それ以外は静かなものだ。
「何もないな。」
「そうですね。」
何だろうか、こうもこの演習の空間がホッとするなんて。風呂も入れない、睡眠だってまともに摂れない。なのに、こうも安心している。今までにない不思議な感覚だ。
「何の夢だったんだ?」
ボソりとそう呟く声が聞こえたのか、彼が「はい?どうかしました?」と聞いてくる。
「いや、やっぱり夢が気になってな。」
「はあ。」
彼は不思議そうに俺を見てくる。
勘弁してくれ、俺をそんな不思議ちゃんみたいな目で見ないでくれよ。なんて。
突然ポツポツと空から静かに雨が降ってくる。
「はあ。マジか。」
「最悪ですね。雨衣、忘れちゃいました。」
雨を防ぐ物は天幕にある。俺達は近くの木々が密集してる場所に行き、雨を防ぐことにした。
生徒会の会議も終わり、待ちに待った練習の時間だ。私は
中川菜々から優木せつ菜へと変身し、同好会の仲間に挨拶をする。
「皆さん!お待たせしました!会議が長引いてしまって!」
「お、せっつーお疲れ!」
「せつ菜ちゃんお疲れ様!」
愛さんや、侑さん達が明るくそう迎えてくれる。やはり、私の居場所は、生徒会とここにあるのだと強く実感する。
「会議、大変そうだね~。」
「そうね、この時期に生徒会とスクールアイドルの掛け持ちなんて、なかなかできることじゃないわ。」
果林さんやエマさんがそう労りの言葉をかけてくれる。
「いえ!皆さんの文化祭とスクールアイドルフェスティバルを合同で開催したいという強い想いを感じれば、大変でも何でもありません!」
「流石ですね、せつ菜先輩。」
「うん、やっぱり凄いな、せつ菜ちゃんは。」
歩夢さん、しずくさんの柔らかな微笑みが私の心を暖かく照らす。
「PVはもう少しで完成すると思う。璃奈ちゃんボード『あと一息!』」
「流石です、璃奈さん!さあ、今日も張り切って、練習行きますよ!」
そう宣言すると、
「せつ菜ちゃん、残念なお知らせなんだけど~。」
と歩夢さんが苦笑いでそう言う。何か問題があったのだろうか?
「どうかしましたか?」
「雨がね~。」
彼方さんが部室の窓から外を指す。
「そ、そんなぁ~!」
外は生憎の雨だった。決して練習が全くできないというほど強いわけではないのだが。それでも雨の中で練習をすれば身体を冷やして風邪をひいたり、滑って転んで怪我をするなんてこともあるだろう。
「じゃあ、今日は大人しく部室で柔軟でもしよっか。」
侑さんの一声に賛成し、今日は柔軟をすることになった。
「いち、に、さん、し、…ん?」
柔軟をしていると、練習着のポケットに何かが入っていることに気づいた。ポケットから出してみると。
「何ですかそれ?凄く高そうな…アクセサリー?に見えますけど?」
とかすみさんが聞いてくる。
何だろうか?
かすみさんの声を聞いて、皆が集まってくる。
「な~に?それ?」
「綺麗~!」
「なんか、カッコ良いですね。」
「そう?なんかそのアクセサリー、ちょっと怖いかな~。」
たどと様々な感想が飛び交う。
はて、こんなもの私は持っていただろうか?それは、金色で塗装されており、漫画やアニメでしかみたことがない、銃が交差している、その周りを何やら植物が囲っていて、その植物の中央には桜?がついている、とても不思議なアクセサリー?だった。
ただ、それは何だかとても大切で、貴重な物の気がして。
「せつ菜先輩、そのカッコ良いアクセサリー、次の衣装にでも付けるんですか?」
そんなかすみさんの問いが聞こえてくる。それに対して私は
「いいえ。」と首を振った。
「え!?付けないのせつ菜ちゃん?凄くカッコ良いと思うんだけど。」
侑さんもそう言うが
「そうですね。でも、なんだか勿体ない気がして。」
そう、このアクセサリーは、スクールアイドルの衣装には勿体ない、いや、相応しくないと思った。理由はわからない。でもこれは、私の部屋で大切に飾っておこうと思う。
そんなことを話していると。
「あ!雨!それに、侑ちゃん、皆来て!」
と歩夢さんが私達を呼ぶ。
「わーっ!雨が上がったからかな!」
侑さんが窓を開けて外を覗く。それは、とても不思議な光景だった。窓は夕日に照らされ、外にはうっすらと
時刻は午前5時近くなっていた。もう間もなく交代だ。雨の勢いは弱まっており、徐々に空が白んでくる。もうすぐ夜明けだ。
しかし、今日はどうもおかしい。今思い返せば、目覚めもおかしかった。確かに長い夢を見ていた気はしたが、それにしても僅か2時間しか仮眠を摂っていないにも関わらず、まるで何日も、いや、何ヵ月も眠っていたような感覚がした。別に目覚めがスッキリしていたわけではない。ただ、何と表現すればいいか。そう、まるで何ヵ月も眠っていたのではなく、どこか遠い場所に意識だけ出掛けていたような…そんな奇妙な感覚がした。
そんなことを考えていると
「陸山2曹、陸山2曹。」
と呼ぶ声が聞こえる。
「どうした?」
「雨、上がりましたよ。」
気づけば雨は上がっていた。小雨だけで済んでラッキーだ。
「それに、雨が上がったからですかね?ほら。」
彼の指をさす方向に目を向ける。それは明け方の空にうっすらと浮かんでおり、ひどく奇妙で、不思議な光景だった。
「「虹か(ですね)。」」
「ん?」
「へ?」
「陸山2曹?」
「せつ菜ちゃん?」
彼/侑さんがそう問いかけてくる。
「いや、今なにか奇妙な感覚が…。」
「いえ、今なんだか不思議な感覚が…。」
そう、なんだか懐かしいような感覚がした。そして、なんとなく今日の夢?の感覚を思い出す。やっぱりあの感覚。
「やはり、今日の夢は。」
「やはり、今朝の夢は。」
「「不思議な感じ/気味が悪かったな(でしたね)。」」
空にうっすらと浮かぶ虹を見ながら、私/俺はそう呟くのだった。
END
というわけで、遂に終わりました!ラストはお互いにお互いのことを忘れてエンドです!また、衛の世界の時間は止まっていましたが、せつ菜ちゃんの世界は若干時間が進んでいるという設定にしました(山上陸関連のことは全て無かったことになっていますが。)。これまで、応援ありがとうございました!ここまでこれたのも皆さんのおかげです。ありがとうございました!感想とうあれば、よろしくお願いいたします!