「はぁ。」
「どうしたの、菜々ちゃん?」
珍しく菜々ちゃんが生徒会室でため息をついていて、心配になり声をかける。なんだか思い詰めたような、心配事があるような、そんな感じ。
以前、スクールアイドル活動を辞めた時ほど暗い感じはしないけれど。
この世界に来て、夢尾 駆(ゆめお かける)という新しい名前をもらってここまできた。アニメ1期も終わり、いよいよ2期に突入!嵐珠ちゃんやミアちゃん、栞子ちゃんという新しい仲間もこれから増え、スクールアイドル同好会はもっと賑やかになる!まあ、その前に色々揉め事とか、問題とかもあるけど、そこは僕のアニメ知識と、皆の力を合わせてなんとか乗り越えていきたいと思う! まあ、きっと大丈夫でしょ!ここまで来れたし、これからも皆とならうまくやっていける気がする!
アニメには無いようなこともあったけど、その通りだ!だって彼女達は間違いなくこの世界で生きている!そして、僕はそんな世界に存在できてる!これほど最高なことはない!あぁ!もう死んでもいい!…って、まあもしかしたら死んでるかもしれないけど笑! でも別になんてことはない!歩夢ちゃんもいるしね! っと、ちょっと色々思い出とかこの先のことを考えて長くなっちゃった笑 可愛い女の子を放っておくのはよくないねテヘペロ!
「駆さん、聞いて下さいよ。あまり生徒会以外の方には言ってはいけないのですが、いつも同好会と生徒会を手伝ってくれてる貴方を信用して言いますね。」
そう言い、菜々ちゃんは一枚の資料を見つめながら僕に話をしてきた。
「実は今日新しい生徒が入ってくるんです。」
嵐珠ちゃんのことかな?でも、彼女が入ってくることで心配事とかあるのかな?まだゲリラライブとかもしてないし。まあ、新しい生徒が入ってくるのは生徒会長として色々不安なこととかあるのかも。
「どんな人なの?」
彼女が放つ言葉に、僕は少し何も考えられなくなった。
いや、正確には、頭が追いつかなかった。
「ええ、まあ駆さんには朗報なのかもしれませんが
もう1人、男子生徒がくるんですよ。」
「…え?」
おかしい。
「駆…さん?」
何で?何が?変だよね?
「駆さん!?」
彼女のちょっと大きな声でハッとする。
「わ!び、ビックリした!!!」
「ビックリって、どうしたんですか?なんだか急に考え込んだ様子で、少し心配しましたよ?」
彼女が心配そうに喋りかけてくる。
「ご、ゴメンゴメン!なんでもないよ!」
「ホントですか?」
「うんうん!」
それで、気になるのは
「えっと、何の話だっけ?」
「ですから、新しく男子生徒が入ってくるんですよ。それで、今日生徒会長として、一応面接を学園長にお願いされて。」
面接か~…って違う違う!
「いつあるの?」
「今日の放課後なんですが、やっぱり不安で。まあ、駆さんとは歩夢さんと侑さんの幼馴染みですし、同好会のこともありますからお話しやすいのですが、今度の方はなんというか、全く知らないですし…」
「でも、僕と初めて会った時は、菜々ちゃん僕のこと全く知らなかったよね?」
「まあ、確かに言われてみればそうですが…でも、近くには侑さんや歩夢さんがいたのでもう少しお話しやすかったじゃないですか?」
なるほどね、確かに女の子が男一対一で喋るのは緊張するし不安になるよね。…そうだ!
「なら、僕も一緒にいてあげるよ!」
そう提案すると、菜々ちゃんは
「ホントですか!!!」
と、パァァ!っと明るい笑顔で応えてくれた。めっちゃ可愛い!もうね!よしよししたくなっちゃう!めっちゃ頭撫でてあげたい!
ナデナデ
「あ///ちょっともう!急になにするんですか!!!///」
照れながら怒る菜々ちゃんも可愛いね~!せつ菜ちゃんモードも可愛いけど、ちょっと落ち着きのある菜々ちゃんも捨てがたい可愛さ!
「と、とにかく今日の放課後、本当に来てくれます?」
「勿論!」
僕は胸を叩いてそう力強く言った。それに、新しい男子生徒。同じ転生者なのかな?だとしたら、同好会の皆に手を出してきたりするかも。それだけはさせない。彼女達を汚れさせはしない!絶対に僕が守ってみせる。
でも、もう1人にも僕と同じ"特典"を持ってたら…いや、諦めるな!きっと大丈夫!それに、僕には同好会の皆がついてる。この絆は絶対に、簡単には切れない!ようやく見つけた僕の居場所なんだ!
まさか、振り出しとはな。
正直驚いた。てっきり以前の続きでもさせられるのかと思っていたが、奴の言っていたパラレルワールドとかいうやつだろうか?にしても、新学期ではなく2学期からとは、えらく中途半端な期間に飛ばされたものだ。
「ふむ。やり易いのやら、やりにくいのやら。」
人間関係がゼロというのが少し困った。また、敵情を観察するためにどうにかして学園の中枢付近に潜り込みたいところだが。まあ、優木せつ菜/中川菜々との関係が完全に断ち切れているのはある意味プラスと捉えても良いだろう。彼女と喋ると、いささかこちらのペースも乱される。
「気味の悪い。」
相変わらず不気味な程明るい。なんというか、世界の雰囲気が妙なのだ。いつもの日常、空気、気配がほんの少し違う。違和感が酷いのだ。
面接は夕方から。おそらく最初に出会うのは彼女だろう。
次はどうしたものか。敵、というか目標は同じ男だろう、ヤツも彼と言っていた。そこまでは検討がついている。なら、別に中枢に潜らなくても構わないかもしれない。女子高に男1人は目立つ。それに、噂もあるだろう。まあ、敵の学園内での評価にもよるが良くも悪くも噂は必ずある。
「さっさと見つけて、首根っこ掴んで消えるか。」
面接は面倒だが、まずは出向いて敵の動向を探ろう。上手くいけば教師の部屋にでも入り、敵のこの世界での拠点を調べ、そこに潜伏して情報を得ることができればベストだ。
必成は目標の確認。望成は敵の拠点の解明だな。
今朝のヤツとの会話を思い出しながら、俺は扉にゆっくり手を掛けた。
『手段は問わない。彼をこの世界から連れ出すのだ。』
「相手の許可なくか?」
『それは君に任せる。力で訴えるも、説得して説き伏せるも自由にしたまえ。』
おいおい、随分なげやりだな。というか、
「他人任せだな。」
ヤツは珍しくため息を吐きながら、やれやれとばかりに首を横にふる。
『仕方ないのだ。先ほども言った通り、我々はそう簡単には世界に手出しできない。君は一度僕を破った実績がある。だから選ばせてもらった。』
つまり
「相手はあんたらレベルに人間離れしてるってことか?」
だとしたら厄介だ。なんでそんな奴をおいそれと入れたんだか。
『彼には君とは違いギフトが送られている。内容はわからないが、特別な何かだ。人間離れしている可能性はあるが、我々ほどではないだろう。』
ギフト?
「なら、俺にも以前ギフトってやつがあったのか?」
すると奴は首を横にふる。
『無い。君という存在が、無意識に拒絶していたのだろう。一応予定では、ピアノの天才、だったか…』
やつは『ううむ。』と少し考え込んでいるが、ここでまた疑問が浮かぶ。
「俺の姿が元に戻ったり、戻らなかったり、武器が戻ったり、あれはギフトってやつとは違うのか?」
『あれはこの世界の特性に近いものだ。我々の力ではないだろう。まあ、少しは関わっている可能性もあるだろうが。あれは君自身の本来の力だろ?』
確かに言われてみればそうだ。別に俺から漫画みたいに炎が出るわけでも、瞬間移動できるわけでもない。人間を超越した力なんてわけでもない。ただ、自衛官としての俺の持てる全力があれだ。
『最悪、彼の命を絶っても構わない。』
は?
「おいおい、人殺しはゴメンだ。俺はあくまで自衛官だ。自国民を殺めろなんて命令なら、他をあたってくれ。」
『最悪だ。それに、この世界で命を絶ったとしても彼は死ぬわけではない。この世界での存在が失われ、元の世界へと戻る。単純だろ?』
どこがだ。やってることは人殺しと変わらないだろ。
「倫理ってやつが欠如してるのか?」
『僕や僕の見せた存在には迷いなく銃口を向けただろ?』
「お前や、あの幻覚は人間じゃないってわかってたからな。だがそれでも…それでも…あの幻覚を撃った時は最悪の気分だったがな。」
今思い出しただけでも気分が悪くなる。
『とにかく、期待してるぞ。簡単だ、彼を見つけ、彼をこの世界からいなくなるよう導けば良いのだ。勿論、手段は自由。君の自由だ。』
ふざけた野郎だ。
俺の目の前には再びあの忌々しい光景が広がっている。相変わらずバカみたいにデカイ校舎だ。もはや校舎というよりは会社、いや組織だな。予算の出どころがやはり気になるが、そんなことは今気にするものではない。さあ、戦場に行こうか。またゼロからな。
俺は階段を登り、生徒会室と書かれたプレートの部屋の前に立つ。
息を吸い、息を吐く。繰り返しだ。全ては闘いの繰り返し。
俺は正義ではない。俺は悪でもない。ただの兵士だ。
ゆっくりとドアノブを回すと、ギィィっと扉の軋む鈍い音がする。
正面にはやはり彼女が座って待っている。さて、やはりな。最初に出会うのは、立ち塞がるのは君か、中川菜々。
「座っ下さい。」
少し重い雰囲気が流れる。あの時と同じだな。初めて来たときもそうだった。なら、また最初にこう言おう。
俺はゆっくり席に座り
「良い学校です。施設も、部活動も何もが充実している。生徒達も楽しそうだ。この学校に入れたことはこの上ない幸運…とでも言いましょうか。この巨大な学校という組織を1人で動かし、導くというのは大変なことでしょう?」
あの時、始まりを告げた言葉を発した。
なんだろうか、この違和感は?
中川菜々は戸惑っていた。彼は何がとはいわないが不気味だ。けど、それだけではないような気がする。そう
(私、知ってる?)
そう。なんだか少し懐かしいような気がする。出会ったことのない男性を前にして、彼女はとても戸惑っていた。この感覚に、感情に、違和感に。デジャブとでもいおうか。彼はどこか懐かしい。前にも会った気がする。それだけではない、こんなやり取りが以前にもあった…そう思うのだ。
「…この学校の男子生徒、というわけですが、今の心情などお聞かせ頂けますか?」
(あれ?なんで私こんな言葉?)
「心情? 心情…ん〜、緊張と不安、そして幸運。なんとも言い難いですね。ただ、楽しみにはしてますよ。男1人というのは心細いですが。」
あぁ、そうだそうだ。彼は不安らしいが、今一つの不安が取り除けるだろう。
「ご心配なく。男子生徒は貴方1人ではありませんよ。」
すると彼の瞳が、ほんの少し鋭くなったような気がした。いや、気のせいか?なんだか一瞬、ほんの一瞬だけ。
「と、いいますと?」
彼は少し興味があるように質問する。
「はい。この学園にはちょっとした事情でもう1人男子生徒が通っいるんです。なので、1人よりは心細くないと思いますよ。」
「それは心強い。是非お会いして、自己紹介したいですね。」
好調な出だしだ。まさか、こうも早く目標候補をみつけられるとは。さっさと終わらせて部隊に戻れる日は案外近いかもな。
あとは説得か、実力行使か。できれば穏便に済ませたい。変な奴でなければ良いが。まあ、女子高に1人で通い、中川菜々が俺に紹介してくるということは、この学園でもそこそこ信用があるといえる。紹介する時、彼女の顔から嫌な雰囲気は出ていなかった。まあ、今のところは…だが。もしかすれば話せば解ってくれるやつかもしれない。まあ、自分の世界とは違う世界に飛ばされたのだ、奴も早く戻りたいはずだ。
あの神擬きが『少しやり過ぎ』とか言っていたから警戒しておくにこしたことはないが。
そんなことを思っていると、俺の想像以上に話は良い方向に流れていた。
「ええ。せっかくなので今日来てもらいました。紹介します。夢尾駆さんです。」
ガチャっと扉が開き、後ろから足音が聞こえる。どうやら扉の前で待機していたらしい。何故かはわからないが。
スタスタと俺の横を通りすぎ、中川菜々の隣に立ち、彼女から俺の資料だろうか?なにか紙を受けとる。
「初めまして、夢尾駆です。よろしくお願いしますね!えっと…「山上陸です。」 え?」
「普通科1年、山上陸です。よろしくお願いします。」
「あ、うん!1年生か。よろしくね、山上君!」
どうやら彼は俺より上の学年らしい。なるほど、黒い髪、少し茶色い瞳。顔はまあ普通か?背は約175cm…平均より少し高いか。身体は、制服で解りづらいが細身で少し筋肉質だな。体重は70?いや、もう少し細いな65kgか? 足の方が腕より長いのか…。立ち方は安定している。少し右過重か?紙を受けとる時右から取ったということは利き手は右手だな。筋肉質のように見えるが、少し鍛えてるのか?運動、格闘技経験は…まだ解らんな。
「ええ、よろしくお願いします、夢尾駆さん。」
「そんな固く呼ばなくても、駆さんとか、先輩とか、なんだったら呼び捨てでもいいよ!」
彼はおちゃらけた雰囲気でそう言う。
少し無理をしているような、違和感のある明るさだな。なにかトラウマでもあるのか? まあ良い今のところそれ以外特に違和感は無い。
「いえいえ、先輩ですからそのように呼ぶことは私にはまだできません。畏れおおくて。」
「真面目だな~!ま、とにかくよろしく!困ったら僕を頼ってよ!同じ男子生徒、仲良くしよう!」
彼が俺の前で手を伸ばす。
マメや拳だこは無し…か。
俺はその手を軽く握り握手を交わし、会釈をし、「明日からよろしくお願いします。」と部屋から出た。
「まあ、好感触かな。」
出だしは好調、あとは彼をいかに言いくるめるか、あるいは狩るか。
さあ、任務開始だ。