迷える狼/New Front line   作:筋肉バカ

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奪われた者/得られた者

時刻は夕方、薄暗い雰囲気が生徒会室内を包み、彼を夕日の淡い光が照らす。

 

いや~ん!もうちょっと怖い~! どんな生徒かな~って思って菜々ちゃんの許可取って、生徒会室から離れた所に隠れて彼が入った後にサプライズで登場って感じで入ったけど、めっちゃ怖いんですけど~!!!

 

え!?何!? すげぇ淡々と菜々ちゃん相手に喋るし、なんか「巨大な組織を動かすのは大変では?」みたいなカッコいい感じの発言とかしてるし、何!? どう考えても転生者でしょ!いや!あんな風格ある高校生いないよ!? だって菜々ちゃんみたいな美少女前にまったく動じてないもん!なんか落ち着いてるもん!大人の貫禄みたいな! いや!隠す気ある?

普通この世界っていうか、ちょっと世界に馴染もうとする感出すでしょ! もしかして、ラブライブラ知らない系男子!?

 

うわ!こっちめっちゃチラ見してる!なんか目だ!目が怖ぇ!なんか狩人みたいだもん! 

は!そうか! 今は落ち着いた雰囲気出してるけど、ホントは内心めっちゃはしゃいでるんだ! そりゃそうだよ、あんな可愛い娘前に落ち着けるわけないもの! あの黒曜石みたいな綺麗な瞳、さらさらのおさげ、そしてなによりも…あの豊満なおっぱい! ロリ巨乳だよ!最高!

きっと僕が入ってきて、菜々ちゃんの隣に立ったから嫉妬したのかな? まあ、僕の方が先にこの世界にたぶん入ってきたからね!でも大丈夫!僕の推しは歩夢ちゃん一択だから!他の娘も可愛いけど、やっぱ歩夢ちゃんが一番だよ! それに今は半分同棲みたいな感じだしね!グヘヘ/// 毎朝料理作ってくれたり、朝起こしてくれたり、一緒に学校行ったり…これはもう実質結婚では!?

 

おっと、脱線脱線! 真面目にやらないとね、テヘッ!

 

「初めまして、夢尾駆です。よろしくお願いしますね!えっと…「山上陸です。」 え?」

 

 

 

「普通科1年、山上陸です。よろしくお願いします。」

 

 

 

「あ、うん!1年生か。よろしくね、山上君!」

 

資料を見ながら彼を再び見る。 1年生感全然無ぇ~笑

うわ!またガン見してきた!ちょ!その眼やめろその眼!その渇いた瞳でこっちみんな!なんか眼ぇ死んでるんですけど~!

 

「ええ、よろしくお願いします、夢尾駆さん。」

 

 

 

「そんな固く呼ばなくても、駆さんとか、先輩とか、なんだったら呼び捨てでもいいよ!」

 

そして礼儀正しい!さすが!

 

僕より年上なのかな? もしや!普通に老衰で亡くなられて、転生したとか!? だとしたら人生の大先輩でしょ!まあでも!ここでは僕の方が先輩だから、タメ口でいかせてもらうけどね! でも良かった~、なんか礼儀正しい人で。

これで性格もひねくれてたらど~しよ~とか思ってたけど、なんか落ち着いてるし、大丈夫そうかな~。 眼は怖いけど。

 

「いえいえ、先輩ですからそのように呼ぶことは私にはまだできません。畏れおおくて。」

 

 

 

「真面目だな~!ま、とにかくよろしく!困ったら僕を頼ってよ!同じ男子生徒、仲良くしよう!」

 

ん~、しかも真面目。なんかめっちゃ堅物な感じ。仲良くなれるかな~? ま、ここからゆっくり知っていけばいっか!

 

僕は彼に握手を求めると、彼は快くそれに応じてくれた。

彼の手はどこか力強くて、なんだか頼もしい感じがする。

 

 

「さて!自己紹介も大体済んだし、どうする? 学園の案内は広くて今からだと周りきれないしな~…」

 

さて、これからどうしようかな?学園全体は大きいし~、と考えていると。

 

「ええ、驚きましたよ。こんなにも大きいと、明日から大変そうですし。」

 

なんて心配そうな答えがくる。 まあそうだよな~

 

やっぱり、心配な後輩を助けてあげるのが先輩の務め! ここはやっぱり僕が人肌脱ぎますか!

 

「良ければ、明日僕と一緒に登校しないかい?」

 

すると菜々ちゃんもどこか嬉しそうに

 

「良いですね!同じ男子生徒同士の方が、山上さんの気も楽でしょうし、学園の案内も駆さんにお願いしても良いですか?」

 

なんて提案してきた。「さすが駆さんです!」なんて目をキラキラさせる菜々ちゃん。う~ん可愛い! お~い、ちょっとせつ菜ちゃんモードが出てるよ~。

 

 

肝心の山上君は~… 腕を組ながらめちゃくちゃ考えこんでいた。 もしかして、菜々ちゃんに案内して欲しかった? ゴメンね山上君! これでも同好会の信頼とか厚いからな~。

 

まあでも!君が求めるなら僕は恋のキューピットになってみせるよ!だから安心して、今は僕に任せるんだ!

 

 

「確かに、お手洗い等も考えると、夢尾駆さんにお願いした方が良さそうですね。 お願いします。」

 

おお!めっちゃ的確な判断。 なんかやっぱ大人びてるな~。 なんか威厳?風格?があるよな~。

 

てゆーか

 

 

なんか"変"だな~。 

 

 

転生者なのはなんとなくわかったけど、なんかそれ以上の"何か"を持ってるってゆーか、見てるってゆーか。 なんか不気味だな~。 "特典"なんなんだろ? それが一番今気になるな~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやら学園の案内は彼が行ってくれるらしい。 ここまでトントン拍子だ。期待以上の成果だな。

あとは、これで彼が異世界から来たのかが解ればそれでいい。 説明して連れ帰ろう。 今回の演習は連隊の検閲だから、できれば妙な感覚に悩まされたくない。 心置きなく仕事に打ち込みたいのだ。さて、どこで探りを入れるか。 ここには中川菜々がいる。できれば異世界の住民を巻き込みたくはない。巻き込めばそれこそ面倒になりそうだ。彼のここまで築いてきた地位は彼女の反応から概ね推測できる。そんな彼をここでいきなり「こいつは違う世界から来た人間だから連れ帰る。」などと言えば俺は変人扱いだ。まあ、すぐ連れ帰れれば良いが、もし…もし仮に彼が拒否した場合、彼が俗に言う転生者ではなかった場合。よりこの世界での作業がやりにくくなる。 やはり、彼と2人きりのタイミングがベストだろう。 

 

さっさと帰ろうぜ、転生者よ。この世界には何も無い。俺たちの存在する理由も、価値も。お前がどれだけこの世界で高い地位を築こうと、俺たちの居場所はここには無い。戻るべき時が来たのだ。

 

少しつついてみるか。 まずは核心が欲しい。彼がこの世界の人間ではないという証拠を探さなくては。

 

しかし、そもそも彼が異世界の人間だとして、俺と同じ世界の人間なのか? そこも怪しい。 やはり、もう少しヤツに質問すべきだったな。 情報が足りない。 ここで少しでもハッキリさせたい所だが、中川菜々が邪魔だ。少しボヤかした質問でもするか。 確か、この世界には

 

「スクールアイドル?でしたっけ?…は、ここの学園にもいるんですか?」

 

まあ、この世界特有の存在から話を始めよう。これが凶とでるか吉と出るか。 あとは運命に任せてみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え!スクールアイドルを山上さんも応援してるんですか!?」

 

 

 

…違うのが引っかかったか。 まあ、ここまでは想定内だ。彼女も優木せつ菜としてスクールアイドル活動を行っていることは知っている。なら、必然的に他のスクールアイドルもマークしているか応援している可能性もあるだろう。 彼女と僅かに会話しつつ、的は夢尾駆に絞る。果たして上手くいくだろうか? 彼がこの世界で歯車として巻き込まれているならば…

 

「そうなの!? 僕、今スクールアイドルのマネージャーやってるんだよ!」

 

 

やはりそうだったか! 俺の予測は当たった。この世界に巻き込まれた人間は、必然的に彼女達の事情に関わるか、巻き込まれてしまう。 俺がかつてそうだったように。

 

「マネージャーですか、素晴らしい。やはり何事も裏方というのが一番見えないようで大変ですからね。」

 

「そうでもないよ! 確かに大変なことも多いけど、彼女達の頑張りとか無駄にしたくないし、僕には僕のできることをしているだけだよ。」

 

 

なるほど、彼女達のため…ときたか。

 

後ろで中川菜々が「駆さん…」とボソッと呟いてるのを見ると、彼女もしくは彼女達との関係はそれなりに深いのだろう。勿論、信用、信頼も。 まあ、君達がどれほど強い絆で結ばれていようと、信頼関係を築いていようと関係ない。俺は…俺達は居るべき場所に帰る、それだけだ。まあ、まだ彼であると断定はできていないが。

 

「実はもうすぐ第2回目のスクールアイドルフェスティバルがあるんです! 山上さんも是非見にきて下さい!」

 

おいおい、優木せつ菜がバレるぞ? まあ、彼の前ではもうバラしていそうだが。 

 

同じことを彼女も気づいたのか、彼女はハッとなり両手で口を覆い、コホンッと軽く咳払いをすると「失礼しました。」と静かなトーンで呟いた。

 

 

「生徒会長がそこまで仰っているということは、とても素晴らしいイベントなのでしょう。是非、私も見させて頂きます。」

 

今回そんなものに構っている暇はないが。というか、今回はスクールアイドルなど関係ない…はずだ。 "戻り方"のコツもある程度掴めている。

 

「僕は裏方だけど、細ったこととか、見たいライブとかあったら相談してよ!案内するからさ!」

 

「それは心強い。楽しみが一つ増えました。」

 

さて

 

「ところで、それだけ大々的なイベントならば警備などはどうなるのです?」

 

すると中川菜々はポカン?とした顔を、夢尾駆は少しハッとした表情となる。

 

「警備?ですか? 何故です?」

 

「暴動や、迷惑なファンの取り締まりなど、専門の方々を雇わなければ生徒独自の警備では穴だらけかと。」

 

すると更に中川菜々の顔は困惑した表情となるが、彼の顔は少しひきつる。

 

「そんな暴動なんて起きるわけないじゃないですか?」

 

この世界は不気味だな、相変わらず。そうだろ?

 

「そ、そうだよ!そんな危ないこと、ここではあり得ない!

スクールアイドルは、皆の夢を叶える場所、トキメく場所なんだよ!」

 

この世界に飲み込まれたか? わかってるぞ、お前の顔がほんの少しひきつったのを、不信感を持ったのを。

 

「なるほど。…まあ、そうかもしれませんね、この場所は。」

 

「「…」」

 

2人は顔を見合わせる。1人は訳がわからないと言いたげに。もう1人は僅かな不信感、不安を振り払うように。

 

お前、俺が別世界の人間だと気づいていたな? まあ、あれだけ分かりやすく雰囲気を作れば気づくか。

 

お前もわかったはずだ、この世界の不気味さに。 俺たちの考えとのギャップに。それは大きな苦しみになるはずだ。

 

「あの~、山上…さん?」

 

中川菜々が不審そうに俺に話かける。 君との会話はもうする必要は…

 

と彼女の机の上の物がふと目に入る。それは金色に光っていて、えらく見覚えのある物だった。 なんとなく自分の胸ポケットに手を入れると、やはり何故かコツりと机の上の物と同じ物が手に触れる。

 

(普通科徽章…完全なるパラレルワールド、というわけでは無いのか。)

 

「なんです、中川生徒会長。」

 

「あ、えっと…警備?のお話ですが…やはり見直した方が良いのでしょうか? その場合、どこにお話すれば?」

 

「あ~、教員の方にご相談すれば良いのでは?」

 

「あ!そうですね!」

 

まあ、教員もそこまで深く考えているか定かではないが。そもそも、教員らしい教員の存在を俺はほとんど覚えていない。それがまた不気味なのだ。 この世界ですれ違った存在も、風紀委員会で話をした存在も、あらゆる存在が、彼女達スクールアイドルという存在と、一部の存在以外があまりにも不鮮明なのだ。まるで霧がかっている森で見る人間のように。ただボンヤリと"いた"という事実しかない。

 

気味が悪い。さっさと出よう。なんだか寒気がしてきた。

 

「ッ。」

 

 

思わず軽く舌打ちが出る。まあ、今回は2人だ。任務を完遂すれば出れる。幾分か気楽だ。前は独りだったからな…

 

「山上君?」

 

「はい?」

 

夢尾駆が俺に話かける。

 

「ちょっと2人で話さないかい?」

 

ちょうど良い

 

「私も、同じことを思っていましたよ。」

 

彼は中川菜々の方を向き

 

「菜々ちゃん、ちょっと席外してくれる?」 というと彼女は快く承諾し、部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の発言は、この世界では考えたこともないものだった。

警備!? た、確かに全然考えてなかった! だってアニメでそんなこと考えてるシーンとか見当たらないもん! 確かに誘導とかそんな話もちょっとしてたけど、でも暴動とか迷惑かけるファンとかそんな話題は全然なかった。

 

かぁ~!確かに盲点でした! でも、ここラブライブだよ!考えてみ!絶対そんなことないって! でも、これで彼は転生者だってほぼ確定みたいなものだよ! せっかくだから彼の考えとか、この世界でやりたいことを聞いてみよ~!

人生の先輩かもしれないけど、この世界では僕の方が先輩だからね~! まあ、大船に乗ったつもりでいなよ!

 

と、ゆーわけで、菜々ちゃんには一回退場してもらおっかな!男同士の秘密の会話ってことで!

 

 

彼女が出るのを見て、僕は彼へと向きなおる。

 

「さて、何から話しましょうか?お互い、思うこともあるでしょうし。」

 

彼は腕を組ながら聞いてくる。 じゃ!ブチコんじゃいますか! 核心へ!間違ってたら上手くゴマかそ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君は…「異世界の存在を信じますか?」え?」

 

え!?なに!?そんなカッコよく始める感じ!!?

 

「いえ、ちょっとした戯れ言です。」

 

どうやら山上君は、僕がまだ転生者だって確信してるわけじゃないらしい。 どうしよっかな~…でも心細いかもしれないし、良いよね。

 

「…信じるよ。」

 

すると彼はフと軽く笑う。なんだ?バカにしてるのか~!

 

「ここ、この場所、どう思います?」

 

ここ? あ~、この世界ってことを濁しながら言ってるのかな?

 

「良いとこだよ! 彼女もいるしね!」

 

「彼女?中川生徒会長のことですか?」

 

すごい少しずつ詰めてきてる感じがする。なんか、刑事に尋問されてるみたい!なにこの人マジで!何者!?

 

「もそうだし、今仲良い幼馴染みもいるんだ。」

 

「つまり、お付き合いしてる…という認識で良いですか?」

 

「ま~、うん、そう…かな~///」

 

なんかそんな真っ直ぐ言われると恥ずかしい/// 照れるな~。

 

彼は更に難しい顔をして考えこむ。 何考えてるんだろ?なんかわかんないな~。

 

「君はどう思う?」

 

聞いてみよう。

 

「私は…気に入りませんね。ここの考え方も、価値観も。」

 

え!?うっそ~!? なんで転生してきたの!?

 

「君、転生者でしょ。」

 

「ええ。貴方もですよね?」

 

彼は探るようにそう質問してくる。

 

「うん、そうだよ!」

 

僕はハッキリとそう答えた。 すると、彼は思いもしない提案をしてきた。

 

 

「なら、話が早くて助かる。」

 

先ほどまでの敬語や、下手の姿勢は崩れ、どこか緊張感のある雰囲気になる。 

 

「えっと、山上君?「違う。俺の名は陸山衛。それが元の世界での名前だ。」…衛…さんは、なぜ転生を?」

 

なぜか僕の方が敬語になる。

 

「転生?ってのはわからないが、君を探していた。」

 

「僕を?」

 

彼はコクりと小さく頷く。そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夢尾駆、帰るぞ。」

 

 

へ?家に?じゃあ話はこれで終わりってこと? ただ僕が転生者だってことを確認したかっただけなのかな?

 

「えっと…」

 

嫌な汗が背中を伝う。なんだか、彼の「帰る」が普通の帰るじゃないような気がして。

 

「ここに俺達の居場所は無い。この世界の女と付き合ってるのかなんなのか知らないが、ロクなことにならんぞ。」

 

 

それって

 

「さっさと出ようぜ、ここの世界にいると頭がおかしくなりそうだ。」

 

出る? この世界から出るってこと?

 

「なにボーっとしてるんだ?まあ、確かに俺も以前この世界に迷い込まされて、急に帰れるってなったときは同じ感じになったが。まあいい、もう帰れるぞ。」

 

彼は嬉しそうに、優しく僕に笑いかけながらそう語る。

てゆーか、以前ってどういうこと? この世界は2回目?ってこと?

 

「以前って?」

 

なんだかそんな質問しか出てこない。いや、聞きたいこととか、言いたいこととか色々混ざってなんだか頭の中がぐちゃぐちゃになる。

 

「前にここと同じ世界にぶちこまれた。まあ、元凶をぶん殴って戻してもらったが、今回は君を探してくれって頼まれてな。あの野郎、適当すぎるだろ。」

 

彼はほんの少しイライラしたように語る。

 

「さ、さっさとズラかろうぜ。幸い、元の世界に戻ればこの世界の住民は俺達のことを忘れる。俺の経験上だが。この世界で彼女ができて、それを手放すのは残念かもしれないが、元の世界でまた見つければ良い。まあ、そんな単純じゃないかもしれないが、こればっかりはな~。」

 

彼は申し訳なさそうに頭をかく。

 

戻る?あのつまらない場所に? 何もないあの世界に?

そんなの…

 

イヤだ

 

 

「イヤだ。」

 

「ん?」

 

「イヤだ!」

 

「おいおい!確かに彼女は申し訳ないが、だが住む世界が違う。それに、ここは何か妙だ。それに、ここに居続けたところで俺達はこの世界の住人じゃない。異物だ。わかってるだろ?居場所は無い。家族も、仲間も、何も無いんだぞ?」

 

違う

 

「ある!ここが僕の居場所だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何を言ってるんだ、こいつは?

 

この世界の影響か?…いや もしやこいつ

 

 

「絶ったのか?」

 

「え?」

 

転生とか言っていた。迷ったとかではなく。転生…輪廻転生

 

「自分から命を絶ったのか?」

 

だとしたら、なぜ連れ帰る必要がある? まだ死んでない…ということか? だが、ここで戻してもまた同じことを繰り返す可能性もある。

 

すると彼は首を横にふる。

 

その様子をみて少し安心する。どうやら、自殺未遂はしていないらしい。

 

「なら、何故この世界にこだわる?」

 

「楽しいし、僕の好きな人がいるから。」

 

「…世界が違う。住んでいる世界が。」

 

「今は同じだ。」

 

確かにその通りだ。元の世界に、彼の愛する存在はいない…いや存在するかもわからない。それに、楽しい…か。

 

 

「どうしても戻らないか?」

 

彼は力強く頷く。 説得に応じる眼はしていない。

 

「元の世界は、嫌いか?」

 

「だってつまらないし、不安しかないも。将来とか、大学とか。就職しろとか、良い大学に入れとか、下らないよ。僕はもっと楽しく自由に生きたいんだ! 貴方が何者かは知らない。でも、僕はこの世界で生きる。生きたいんだ!」

 

まあ、若いからこその悩みってわけか。だが

 

「いつまでも楽しいことが続くとは思わない方が良い。いずれ終わりがくる。それに、不安から逃げるのもいいが、いつか立ち向かわなければならない時がくるんだぞ?この世界で生きるとして、君はどう生きる? どう生きたい? この世界で、君という人間が最後まで、命を終えるまでどう生きる? 結局、逃げても君の不安は追いかけてくる。どんな世界であろうとね。スクールアイドルだって一瞬だ。わかってるだろ?この時間が永遠に続くことがないと。」

 

 

「それでも、僕はここで生きる。ここには居場所があって、皆が僕を認めてくれる、必要としてくれてる。彼女達には今僕が必要なんだ!」

 

「そんなのはこの世界のまやかしだ。騙されるな、飲まれるな、この世界の甘さに。君は拐かされてるだけだ。」

 

「そんなことない!」

 

「なら、ここの連中は君のために何をしてくれたんだ? 君のどこを認めてくれた? 君の優しさか?そんなの、君でなくてもこの世界に迷いこんだ者全員に、この世界の住民は同じ対応をするぞ。きっとな。この世界はそんな世界なんだ。別に君を認めたわけでも、君が特別なわけでもない。この世界の特性だ。ここの連中は、皆そういう奴らなんだよ。」

 

 

「一回来て、この世界の感想がそれ?」

 

「…そうだ。」

 

「じゃあ、貴方は特別?」

 

「いや、俺は…悪人さ。この世界唯一の悪。きっとな。」

 

「そ、もう貴方と話すことなんてないよ。僕は同好会の手伝いをしなきゃいけないから。」

 

「交渉決裂…でいいか?」

 

「好きに捉えなよ。」

 

彼は俺の横を通り、ドアを開けて生徒会室を出ていった。

部屋を静寂が包みこむ。空はほんの少し星が浮かび、藍色に染まっている。

 

「…貧乏くじを引いたか。」

 

俺はため息をつきながら、ドアノブに手を掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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