迷える狼/New Front line   作:筋肉バカ

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Lonely Wolf Adventure

生徒会長、中川菜々から貰ったスクールアイドルフェスティバルについての資料を見つめ、その時に備える。

 

『1分前です。』

 

生徒会副会長からの無線が入る。

 

「各班に無線のチェックを行います。」

 

自分のチームに伝え、無線のスイッチを入れ、始まりに備える。

 

『Bチーム、Bチーム、こちらAチーム。無線を確認。良ければCチームへ。』

 

『Aチーム、こちらBチーム。無線異常ありません。Cチームに繋げます。』

 

 

時間が迫る。制限時間は7時間。12時から19時の間。充分すぎるな。

 

『こちら本部です。陸さん。Lチームまでの無線確認が終わりました。』

 

全部で12チーム。虹ケ咲学園のスクールアイドル9人に加え、藤黄学園、東雲学院のスクールアイドルに1チームずつ。総勢36人態勢で警戒を行う。そこに加え本部に10人、予備に24人、来賓対応に30人。これだけよく揃ったものだ。これも、彼女達の日頃の頑張り、努力というやつだろう。

 

時間は刻々と迫っている。

 

「楽しみですね!」

 

風紀委員の1人がそう、話しかけてきた。あまり委員会では話すことは無かったが、スクールアイドルフェスティバルに向けてよく一緒に仕事をするようになってから、緊張が解けたようだ。ここではチームワークが重要となる。緊張はできる限りさせない。協力しなければ、大規模イベントを行うなど不可能に近い。1人の力では難しい。故に協力し、力を合わせなければならない。全ては成功させるため。今、この学園は1つの目標に向かい進んでいる。目的は違えど…だが。

 

 

「ええ。後はスクールアイドルに託しましょう。」

 

メインは彼女達だ。我々はあくまで裏方、支援だ。彼女達が全力を出せるよう、力を貸すだけ。ただそれだけ、だがそれが重要だ。

 

時計を確認する。

 

「10秒前。」

 

無線でカウントダウンを行う。

 

『3』

 

それぞれの思いを。

 

『2』

 

願いを

 

『1』

 

思惑を胸に秘めながら。

 

 

『スクールアイドルフェスティバル、開催します。』

 

さあ、新しい始まりに/全ての終わりに

 

 

思いは違えど、願いは1つ

 

『了解、成功を祈りましょう。』

 

 

 

誰もが好きを好きといえる。夢を語れる楽しいの祭典。誰もが夢を持つ。時に現実とのギャップに苦悩することもあるだろう。時に理想と違い傷つくこともあるだろう。それでも謳うのだ、夢を見ることは美しいと、自分の好きを大切にしろと。

 

どれだけ苦しくとも時は進む。決して戻ることのない日々。

 

『こちらBチーム、近江彼方さんがライブ中に眠りだしてしまって…』

 

『起こしてあげて下さい。』

 

 

『こちらDチーム、朝香果林さん、エマ·ヴェルデさんとステージを交代します。』

 

『了解、次のステージに案内を。』

 

 

『こちらIチーム、天王寺璃奈さん、観客の皆さんとゲーム大会やってまして、移動に時間が!』

 

『藤黄学園をしばらく同じステージに、今対戦してる方が終わったら移動の声かけをお願いします。』

 

『わかりました!』

 

やはり小さくとも様々な問題が起きるようだ。

 

「思った通り、忙しいな。」

 

そんな陸の表情を見る風紀委員の1人は、何となく彼が楽しんでいるような気がしてならないのだった。

 

「私の顔、そんなに可笑しいですか?」

 

思わず微笑んでしまうくらいに。

 

「いいえ♪」

 

思わず微笑んでしまうくらいには。

 

初めての男子生徒、最初は皆、彼を恐れ、怖がっていた。だが、少なくとも今の自分は違う。不思議な親しみやすさがあった。これも、一緒に仕事をして、このイベントを成功させようという共通の目的があるからだろう。何となくだが。

 

優木せつ菜が用意されていた舞台に近づいてくる。

 

生徒会室で資料を受け取ったとき、是非ともと言われたのだ。良い関係を、信頼を得たい陸にとって、この話は断るに断れなかった。本来ならば、自分は本部で各チームからの連絡を中継、及び不測事態への対応を考え連絡するつもりだったのだが。まあ、そこは臨機応変にということだ。

 

 

「ぬっはっはっはっは!盛り上がってますね!」

 

そんな奇妙な声が会場に響きわたる。見れば、巨大なキャラクターの上に1人の少女がこれまた奇抜な衣装で腕組みをして立っている。

 

「なんじゃありゃ?」

 

素でそんな声がでてしまう。

 

「あ~、中須かすみさんですね。」

 

困り顔でそう言うチームメンバー。

 

陸もまた苦笑いをしてしまう。

 

「ですが!今日一番輝くのはかすみんとかすみんのファンなのです!」

 

そう叫ぶや否や緑のガスが会場に充満する。

 

「ぐお!あのクソガキ。」

 

思わず陸もそう言い、ハンカチで鼻と口を覆う。

 

「こんなの聞いてないぞ。」

 

頭が痛くなってきた。

 

会場にいる客や優木せつ菜も思わず咳き込む。有害なガスでないことは確かだ。そんなもの、子供が用意できるわけがない。とはいえ、少々お痛がすぎるようだ。

 

「そこまでです!」

 

そんなことを考えていると、その近くからまた声が響く。

 

「今度は何なんだ?」

 

見れば仮面を被ったヒーローのようなアイドルが仁王立ちで立っていた。

 

「桜坂さんですよ。」

 

「ああ、演劇部の。」

 

どうやら彼女は桜坂しずくらしい。何やらヒーローショーじみたことをやり、会場を盛り上げ、最後は優木せつ菜が締めを飾っていた。

 

 

 

 

 

 

だが

 

 

 

「…妙だ。ライブは行われている。」

 

戻らない。服装が戻らない。

 

そんなはずはない。いつもならば、ほんの僅かな時間だが服装が元に戻る。だがそれがない。

 

 

「やはり、違うのか。」

 

 

確かに意味のわからない話だ。アイドルが歌って踊るだけで元の世界へと戻れる。そんな都合のいい御伽話があるだろうか?やはり日頃の疲れが溜まっていただけで、そういった幻想を見ていただけなのではないか?

 

『こちらFチーム、陸さん!宮下愛さんのステージで機材トラブルが!今天王寺さんが見てるんですが…』

 

もしかすれば、もう元の世界に戻る方法など無いのかもしれない。勿論諦めたわけではない。選択肢が1つ消えた、それだけだ。消えたならば次の選択肢を考え、出せば良い。可能性は1つずつ潰していく。それで良い。別に期待してたわけではないじゃないか。

 

自分にそう言い聞かせていると

 

『陸さん!?』

 

無線からの声に引き戻される。

 

『あ、すいません。少し考え事を。機材トラブルですか。では、すぐに本部からパソコン同好会のメンバーを送ります。その間、時間稼ぎを。』

 

『わかりました!』

 

すぐに本部に繋ぎ、援軍を送るよう指示を出す。

 

雲行きが怪しく、雨が降りそうだ。そう考えていると、ポツポツと雨が降りだす。

 

『全チーム、一度態勢を立て直しましょう。雨が止むまで待機を。』

 

そう指示を出し、自分もまた本部の方へと戻るのだった。

 

「良い感じだったのに。」副会長がそう呟く。

 

本部の全員が残念そうだった。それはそうだ。皆で協力し、ここまで作り上げてきた。皆が楽しめるスクールアイドルの祭典。夢の時間。それを現実に潰される。

 

この雨は長く続くだろう。運が悪ければ夜まで。

 

「ふぅ。」

 

椅子にゆっくりと腰かける。もはや今の陸にとっめスクールアイドルフェスティバルもどうでもいいものとなった。陸にとって必要のない、価値の無い物だ。当然そんなことは口に出さないが。自分にとって価値が無かろうと、それはあくまで山上陸としての価値観でしかないのだから当然だ。彼もそこまで人でなしではない。ただ自分がそう思うだけ、彼女達と自分の価値観が違うだけだ。共用するものでもない。

 

周りがどうにか打開策を考えようとしているならば、手を貸す。ここで投げ出し、ここまで積み上げた信用などを失うほうがよほど非合理的だ。故に手伝い、考える。

 

「いくつかのライブは諦めて、最後に残っている大きなステージだけは行えるようにしたいですね。」

 

せめて、最後のステージだけでも。それは全員同じ思いだろう。ここまで彼女達も努力してきた、努力を台無しにされる悔しさは、彼も知っている。

 

陸は久しぶりに、自分の目的以外のために頭を使っている気がした。彼の根幹には、元の世界に戻るという目的がある。スクールアイドルフェスティバルがその鍵だと、そう考えたからこそ彼はこの一大イベントに手を貸した。しかし、結果は違った。いつもならば戻るはずの服装が戻らなかった。つまり鍵はスクールアイドルでは無いということだ。ならば、彼がもう彼女達に手を貸す必要はない。貸したとしても最小限度で良い。貸してるふりをすれば良い。その筈だ。だが、何故か彼は本気で考えていた。どうすれば最後のステージくらいは可能にできるか。

 

 

理由などわからない。ただ、彼の中にも誇りがある。自分以外の誰かのために、自分の力を奮うという誇りが。例え自分に得が無いとわかっていても、それが山上陸の。

 

 

俺の誇りだ。

 

 

「私にも、譲れないものがあるんですよ。」

 

会場の地図、腕時計とにらめっこをしながら考える。別の会場はどうか?屋内ステージは使用可能か?時間はどれだけ余っている?雨はいつ止む?

 

 

「延長は?」

 

生徒会副会長からそんな提案がでた。

 

「無理ですね。19時まで、そういう約束です。」

 

だが、恐らく厳しいだろう。ルールの中に自由がある。時間の延長などという措置を行えばそれこそ、他のクラブや同好会に不公平となる。スクールアイドルは特別扱いか?そんなことが許されるわけもないだろう。彼女達だけ特別扱いなどあり得ない。あってはならない。自由とは平等の中にもある。

 

「でも。」

 

「駄目です。時間は守る。その中でできることを考えるべきです。彼女達だけ特別扱いするおつもりですか?生徒会とは、生徒を平等に扱わなければならない、少なくとも私はそう考えますが。」

 

 

確かに彼女達だけ、スクールアイドルだけが特別扱いというのもおかしな話だ。誰もがそう感じた。

 

雨は上がったが、時間が迫り、時計が19時を示す。

 

「時間切れですね。残念ですが。」

 

淡々と語る陸に、本部や周りにいた支援の生徒達は少し腹が立った。何故そこまで淡々と言えるのか?何も感じないのか?所詮彼にとってはどうでもいいことだったのか?と

 

時間を、決められたルールを破ることはできない。そんな権利など我々には無い、陸はそう感じていた。ただ、これでは彼女達が少々不憫で、あんまりだろうとも感じていた。

 

「副会長、見てください!」

 

1人の生徒が会場の動画を見せる。もう時間はすぎているというのに、何故会場の動画が撮られているのだろうか?そんな疑問を思いつつ、動画をみる。

 

「ファンの人達がまだ!」

 

待っていた。大勢のファンが会場を満たしている。

 

思わず笑ってしまう。アイドルのファンというのは馬鹿だ。もう終わりだと言っているというのに、決まっているというのに、前の世界でも同じような様子をみた気がする。

 

「ファンの人達の期待を、裏切れませんよね?」

 

副会長が陸を見てそういう。陸は溜め息をつきながら、「そもそも」と始める。

 

「この計画のメインは風紀委員長です。私ではなく、最終決定権は委員長にあります。先ほどまでの意見は私の個人的な意見ですし…」

 

何故私が最終決定権を持っていると思ったんですか?とちょっと小馬鹿にするような返答。

 

そんな返答に全員が確かにと頷く。何故かわからないが、彼が最終決定権を持っているような、この計画を全て指揮しているような、そんな感覚があった。とても不思議だ。

 

「委員長、私はあまりよろしいとは思えませんが、貴女はどう思いますか?」

 

風紀委員長を見据え、そう聞く。

 

答えは決まっている。

 

「学園長や先生に掛け合って、延長して貰うよう聞いてみます。」

 

携帯ですぐに連絡をとる。

 

後は願うしかないだろう。

 

「あと1曲、良いそうよ!」

 

天幕が歓声に包まれ、すぐさまアイドル達に連絡が届く。連絡が届けば、彼女達はすぐに向かっていくだろう。

 

「ツイてますね。」

 

委員長は「そうね♪」と嬉しそうに答える。

 

「せっかくだし、皆で見に行かない?最後のステージ?」

 

不意に委員長からそんな提案があった。副会長が一瞬で「良いですね!賛成です!」とその提案に乗ると、全員が「観たい!」と賛成するのだった。

 

「山上君は?」

 

今の陸にとって価値の無い物だ。とはいえ、ノリが悪いのもまた問題だ。お付き合い、とでも思っておこう。

 

「まあ、せっかくですしね。」

 

「決まりね!」

 

天幕から出ると、空には星が浮いていた。星と月の明かりが、陸を優しく照らす。

 

 

全員が走っていくなか、陸は歩きながら会場へと向かっていく。

 

会場から歓声があがり、誰もが楽しそうに笑いあっている。会場がまるで輝いて見えた。スポットライトが眩しいのもあるだろうが、少なくとも彼女達一人一人が明るく光っていた。

 

風が陸を包む。森の香り、土の匂い。懐かしい。

 

月の光に優しく明るい音楽。不思議な感覚だ。奇妙な安らぎに目を瞑る。

 

身体に違和感がある。ズシリと身体全体に重量を感じる。ほんの少しゴワついた肌触り、硬い靴。

 

陸の全身をODカラーの迷彩服が身を包む。肩から黒く塗装された銃を下げ、上半身は分厚い防弾チョッキが身を守っている

ズシリと重量感のあるヘルメットが頭を覆う。迷彩柄の手袋が、真っ黒く光るブーツが、様々な慣れ親しんだ道具が陸の全身に戻ってくる。

 

目を開け、身体を見回すと懐かしい格好に目を細める。

 

ああ、やはり鍵は彼女達なんだと実感する。

 

違うと思ったが、やはり何か条件があるのだろう。

 

歌が続き、服装も制服へと変わらない。いつもなら一瞬なのだが、今日はなんだか長い。

 

それでも不思議とまだ元の世界へと帰れる気はしなかった。何故かはわからない。ただ、何となく勘だ。

 

その勘は当たったのか、曲が終わると少しずつ陸の服装は制服へと変わっていく。

 

 

「あと一歩。」

 

確実に前進している。それは確かだ。

 

会場の片付けを行うため、陸はそのまま会場に入り、指示をしながら手伝っていく。

 

会場の片付けが終わる頃には観客も生徒も誰もいなくなり、本部のメンバーや支援の生徒達だけが学校に残っていた。

 

「それでは皆様お疲れ様でした。気をつけて帰ってください。」

 

副会長からそう指示され、全員が自宅へと向かう。陸もまた、風紀委員会室の荷物を取り、鍵を閉め拠点へと戻ろうとした。

 

 

 

「陸さん?」

 

不意に後ろからそんな声がかけられる。

 

「中川会長。何かご用でも?」

 

彼は私の正体を知っている。しかしそれを口外しない。恐らくそれはこれからもだろう。彼にはそんな信頼があった。

 

「まだ残っていたんですか?」

 

「それはお互い様です。」

 

菜々を見ながらそう答える。

 

「ライブ、どうでした?」

 

少し緊張するが、やはり気になる。彼はどう感じただろうか?

 

「良かったですよ。」

 

淡々とそう答える陸に、さっきまでのちょっとした緊張感を返してほしいと思いながら彼を見つめる。

 

「何か?」

 

「あ、いえ!何もありませんよ!何も!」

 

ワタワタと手をふりながら何も意図がないことを示す。

 

そんな様子を少し可笑しそうに見ながら

 

「早く帰りましょう。今日は許可をとっていないでしょう?」

 

と少し馬鹿にするように言う。

 

「あ!そうでした!早く帰りましょう!」

 

陸は少し溜め息をつきながら彼女の後ろをついていく。

 

「陸さんの夢、私にはわかりません。」

 

そんな話が始まる。

 

「わかる必要はありません、と答えたはずですが?」

 

「そうですね。でも、いつかわかるようになりたいです。」

 

菜々からそんな意外な言葉が出てきたため、陸は少し驚く。

 

「何故です?貴女には関係ないじゃないですか?」

 

その質問に菜々は少しムっとしながら答える。

 

「陸さんこそ、関係無いなんて言わないで下さい。友達じゃないですか。」

 

友達?俺と君が?何を馬鹿なことを言っている。俺と君は違う。馴れ合う必要もない。この関係だって、俺はただ君を利用してるだけだ。

 

「友達?私と?」

 

「ええ!例え貴方がそう考えていなくても、私はガンガンいきますからね!」

 

そう言い拳を突き出す。

 

「…」

 

なんだこの娘は?奇妙な子だ。気味が悪いくらいに寄ってくる。

 

だが、

 

「友達…悪くありませんね。」

 

そう悪い気はしない。異世界の友か。

 

悪くないという陸の返答に、菜々は満足そうに笑顔で迎える。新しい自分の繋がりを。

 

「だから、何かあったら言ってください!協力します!」

 

彼女の理想を聞いた。

 

「世界を大好きで溢れさせることが、私の大きな野望!夢です!」

 

綺麗事だ。

 

「嫌いじゃないですよ、貴女の夢。」

 

そう微笑む。なんだか久しぶりに笑った気がした。

 

ならば

 

陸は菜々の前に立ち、真っ直ぐに彼女を見ると

 

「いつか君にもわかるよ。そして君に教えよう、俺のことも。」

 

 

「へ?」

 

急な言葉遣いの変化に菜々は呆ける。

 

「また学校で会いましょう、中川会長。」

 

呆けていると、彼はそう言いながら拠点へと戻るのだった。

 

 

 

 

拝啓】ー

 

運命の輪からは逃れられない。

 

拠点へと戻り、かつて使っていた身分証を見つめる。その近くには金色に装飾されたバッチのようなものが置かれている。

 

「はぁ。繋がりを作るつもりはなかったんだが。」

 

これもまた、孤独故か。やはり人との関係が恋しくなってしまうのだろうか?

 

いつか自分は帰る。心残りを残さないためにこの世界の人間とは関わりを避け、必要最小限にしてきた。だがここにきて。

 

「クソガキ。」

 

ボソリとそう呟く。最近まで鬱陶しいと感じていた彼女のお節介が、今日の出来事が満更でもない自分にも腹が立つ。

 

「一体どうすれば。」

 

 

深い闇夜、男は考える。果たして自分はこれで良かったのだろうか?

 

最近は中川菜々に会う頻度が多かった。良い塩梅としてのコミュニケーションなども裏目に出たのだろうか?

 

「まずいな。」

 

 

 

 

 

 

 

菜々は下校の時のことを反芻する。唐突すぎただろうか?とも思った。急に友達と宣言してしまった。

 

 

「はぁ、どうすれば良かったんでしょう?」

 

携帯を眺めながらそうぼやく。

 

何故彼にこれほど興味が湧いたのか?

 

彼は不気味だった。だがそれも最初だけだ。最近一緒に話したり、仕事をしているなかで、彼は寂しい雰囲気をしていると感じた。心を別の場所に置いてきてしまったようだとも。

 

そして、今日のスクールアイドルフェスティバルで彼の優しさに僅かに触れた気がした。彼が何を隠しているのか?好奇心だろうか?

それとも…

 

 

菜々はほんの少し頬が熱くなるのを感じた。

 

これが恋というものなのだろうか?彼を知りたい。もっと沢山。彼にもっと近づいても良いのだろうか?彼は許してくれるだろうか?

 

 

これからどうするべきか、何が正解か、それは誰にもわからない。いずれにせよ、正しい判断をすべきだろう。そんなものは存在しないかもしれないが。

 

 

 

 

 

 

 

身分証をじっくりと眺める。さらに決意を固めるために。迷わないために。迷ったとしても俺は帰る。ただ逃げ惑い、諦めるだけの子羊ではない。俺は必ず困難でさえも食い殺す。俺は狼だ。迷える狼。そうとも。その通りだ。

 

 

 

 

私は山上陸/俺は陸山衛

 

虹ヶ咲学園1年 普通科 風紀委員の生徒

 

陸上自衛隊 第1普通科連隊 2等陸曹

 

 

 

さっさと部隊に帰してくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 




陸山衛(りくやま まもる)43歳

陸上自衛隊 第1普通科連隊所属 
階級 2等陸曹

演習中に仮眠をとり、目を覚ましたらこの世界にいたらしい。

現在帰還方法を模索中。



アニメも終わって一段落ということで、陸の正体を。これから先の展開は考え中です。一応終わりは考えてるんですが、そこにいくまでが難しい!

敢えて半長靴とか鉄帽とか89式小銃とか名前は使わないようにしようかと思ってます。
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