2020年になったのでドラゴン狩りじゃぁぁぁ!!!   作:蒲焼丼

40 / 55
帝竜戦開始。ザ・スカヴァーの実際の体長って何十メートルあるんでしょうね。
6章と7章は帝竜戦を先に終わらせ、NPC・サブクエ回が続くような形になります。
尾と胴は余裕だったけど頭部分との戦闘でスキルか行動封じを喰らって一気に全滅を繰り返したのはいい思い出(?)


30.巨竜と小人 - VS ザ・スカヴァー -

 

 

 

「こん……のっ!!」

 

 

 シキがナックルで殴りつければ、海老の身を折るような音と共に尾の先がひん曲がる。

 帝竜の尻尾は激しくのたうち、最後っ屁のように壁や水面を叩いてから動かなくなった。

 

 

「やった!」

「よし、尾は破壊──」

 

「うおおおっ、止まったぁ!? ヤベえ、超カッコいいぜおまえたち!」

 

 

 ケイマが雄叫びを上げる。

 戦闘員でなくともムラクモ、彼も彼で肝が据わっていた。戦闘中、尾が突き刺さって陸部に空いた穴も物怖じせずに飛び越え、自分たちの傍まで走ってくる。

 

 

「おれたちが作った武器がよぉ……こんな風に活躍してんだな……! おまえたち見てたら、なんか感動しちまったよ……! へへっ……ぐすっ……」

 

 

 そばかすのある頬を紅潮させ、きらきらと輝いていた彼の目が不意に潤んだ。手袋をはめた指で鼻の下をこする。続いてミロクがよしと手を叩く音が聞こえる。

 

 

『デカい図体も、暴れられなきゃただの置物だな……! あとケイマ、もう泣き止めよ。まだ序盤だぞ?』

「ホント、おまえだぢみでだら、おでもうずげーがんどうじだのなんのゴホッ! ゲフガホガッ! コンコンッ!」

「うわ、ちょっと泣きすぎ」

「うぇっ……ど、胴体と頭も頼むぜ!」

 

 

 涙を拭い、苦笑してケイマは親指を立てる。直後、隣に繋がる壁の穴からきゃーっと甲高い悲鳴が聞こえてきた。レイミは相変わらずのへっぴり腰みたいだ。

 

 

『13班様ー!! 来て、早く来てー!!』

 

「あー、ほら、行ってやってくれ。レイミずっとあの調子なんだよ。あ、薬と装備は大丈夫か? なんだったらここでメンテと補充ができるけど」

「問題ない。胴に行くわよ!」

「うん! レイミさーん! 今行きますよー!」

 

 

 ケイマに手を振って走りだす。

 穴を潜り抜けると、地面にがっちり固定されたランプの陰で涙目のレイミが震えていた。

 

 

「無理無理無理無理……はやくブッ飛ばしちゃってください~~っ!!」

「ビビりすぎ! もっと後ろ下がって!」

 

 

 もちろんですとレイミは陸部の奥にすっ飛んでいく。

 

 

「わっとと、揺れる……!」

 

 

 破壊された尻尾の分までというように、帝竜の胴が上下して貯水池を振動させた。波が生まれ、ザンザンと音を響かせながら押し寄せて足もとを濡らす。

 先刻ミナトが言っていたとおり、都庁から持ってきた道具の出番だ。足を滑らせないよう、靴の裏側にスパイクが付いたソールを装着する。

 

 

『さっきの戦いでわかったけど、こいつの甲殻は厄介だ。なるべく腹部を狙ったほうがいい。潰されないように気を付けろよ!』

「了解!」

「頭でも尾でもないから比較的簡単ね。さっさと潰す!」

 

 

 スパイクを鳴らしてシキが駆け出す。

 目がないのにどう反応しているのだろう。足が地面を蹴る衝撃でも感知しているのか、帝竜の胴は硬い甲殻をこっちに傾けた。

 光沢のある白い殻は瓦のように連なり、間からは紫の結晶が生えている。尾を攻撃するときも、この盾に防がれて少し苦戦した。

 

 シキはちっと舌打ちして、力を溜めて拳を振りかぶる。

 

 

「っんの!!」

 

 

 ギイィィンと、頭痛がするくらいの硬い音が貯水池に響く。

 シキはアッパーで傾いていた胴を打ち上げた。続いて、表れた腹に連撃を叩き込む。分厚いゴムを叩くような衝撃に空気が震え、奥からうなり声のような低い音が聞こえてきた。

 

 

『警戒! 帝竜が動くぞ!』

 

 

 シキの拳の勢いを利用するように胴が宙に上がり、思い切り陸部に叩きつけられる。

 凄まじい衝撃に体が浮かび、バランスを崩して膝を着く。

 

 

『シキ、ミナト! 頭上注意!』

 

「え……うわ!?」

 

 

 顔を上げると、目の前にごつごつした岩石が迫っていた。

 慌てて転がる。すぐ傍で岩石は砕け散り、鋭い欠片が体を打った。

 

 

「痛つっ……ちょっと、これ、貯水池崩れないよね!?」

『大丈夫だ。でももうずいぶん手入れされてないからか、天井や壁の脆い部分が剥がれてる。今の衝撃で刺激されただろうから、落石には注意しとけ!』

「了解……! わ、また動き出した!」

 

 

 勢いを付けて胴が回った。タイヤのように回転して迫ってくる胴にシキが身構える。

 この胴は貯水池の端から端まで通っている。横への逃げ場所はないし、縦に跳んで逃れられるのはフィジカルに優れたシキくらいだ。こいつは後衛とレイミが潰されないように前衛が押さえるしかない。

 

 

「レイミ! 死にたくないならランプを守れ!」

 

 

 巨大な胴が転がる音に負けないようにシキが声を張り上げ、ひーっと叫びながらもレイミが動く。

 ナックルの持ち手を強く握ったシキに帝竜が衝突し、

 ドシュウッ、と音がして、殻の隙間から黄色い粉が噴出された。

 

 

「な──」

 

 

 すでに接触しているのだから避けられるわけがない。

 黄色く染まった空気の中で、かくんと手首から力が抜け、膝が折れる。

 

 

「シキちゃん!!」

 

 

 ミナトの悲鳴と同時に、大木よりもずっとずっと巨大な胴が頭上から落ちた。

 

 ドズン。

 

 帝竜の胴が隙間なく着地する。

 

 

「……っ──」

 

 

 右手を突き出していたミナトは、もう片方の手で冷気を操った。

 氷の柱を突き上げるように生やし、帝竜の胴を下から打つ。

 浮いたとは言い難い。ほんの少し、数センチだけ生まれた隙間。

 

 そこに、がっと小さな拳が割り込むように生えてきた。

 

 

「……ぁ、ぶ、」

 

 

 ドムッと帝竜の胴が跳ねる。

 ドムッ、ドムッ、ドムドムドムドドドドドド、

 

 

「重……いっ!!!」

 

 

 布団をはねのけるように、シキの傷だらけの脚が胴を蹴り上げた。

 セーラー服をぼろぼろにした少女は、仰向けの状態から後転して帝竜の下から抜け出す。

 

 

「うわああシキちゃん生きてたぁぁあ!」

「勝手に殺すな! 危なかったけど!」

 

 

 ああそういえば、池袋でジゴワットと戦ったときは電車の車両を叩きつけられたんだっけか。どちらも体一つで跳ね除けるなどデストロイヤー恐るべし。

 シキは怒鳴りながらバックステップで自分の隣まで下がってくるが、動きがぎこちない。

 額から血を流し、花のかんばせを歪めて彼女は苦しそうに身じろぐ。

 

 

「油断した。手足痛い。骨折とか脱臼はしてないけど」

「ご、ごめん、フォローが遅れて……」

「おどおどしないでよ。ちゃんと麻痺治してくれたでしょ」

 

 

 シキが帝竜の下敷きになる直前、発動したリカヴァは間に合っていたみたいだ。それがあったから防御ができたのだとシキに言われてほっと息を吐くも、すぐに油断するなと注意される。

 

 

「ちょっと……体に違和感がある。このまま手足がもげるの嫌だし、少しの間確認したい。ミロク、バイタルチェック。レイミも手伝って」

『わかった。動くなよ、隅まで調べてやるから!』

「あわわわ……シキさん、大丈夫ですか!?」

 

「……え、帝竜は?」

「あんたが押さえるしかないでしょ」

「あ、はい」

 

 

 そんな無茶なと異を叫ぼうとした自分を頭の中で握りつぶす。

 思えば、さっきはもっと早く動けたかもしれない。シキが帝竜の胴に巻き込まれずに助かるフォローができたかもしれない。

 責任を感じているなら、やるしかないのだ。もう、無理とかできないなんて口にしない。うじうじするな。

 両手で思い切り頬をはたく。バチンと音が響いた。

 

 

『ミナト、聞こえますか?』

 

 

 ミロクがシキの体をチェックしている間はミイナがナビを交代するみたいだ。可憐な声が耳に流れ込んできて顔を上げる。

 

 

『相手は麻痺攻撃をしてくるみたいです。アクセサリーをパラスカットに換えてください』

「うん、了解」

『……大丈夫。あなたなら時間稼ぎくらい、簡単です。サイキックの強みは複数属性の使い分けと火力の高さ。その超能力ならどんな状況でも対応可能です』

 

 

「私じゃ頼りないかもしれないけど」とこぼし、ミナトが否定するより先にミイナは力強く言う。

 

 

『ナビとしての研鑽は怠っていません。シキが戻ってくるまで、私たちで戦いましょう!』

「……うん、そうだね」

 

 

 帝竜はあと二体。そいつらを狩って、自分たちは人竜ミヅチに勝たなければならない。こんなところで足踏みしている暇はないのだ。

 

 

「やろう、ミイナ! サポートお願い!」

『はい! ……警戒! 帝竜が動きます!』

 

 

 地面を揺らし、帝竜の胴が一本の血管のように波打つ。

 耳にはまる通信機からキーボードを弾く音が聞こえ、ミイナが声を上げた。

 

 

『この動き……早速ですね、麻痺攻撃がきます! アクセサリーは大丈夫ですか?』

「もう交換してある! でもこのままだと、」

『ええ、シキとレイミも巻き込まれてしまいます』

「だったら……」

 

 

 状態異常はとてつもなく厄介なもの。どんな状態でも、一種類だけでも体を蝕まれれば全滅に繋がりかねない。ウォークライにジゴワット、ロア=ア=ルア戦では危うく死にそうになったし、スリーピーホロウは多すぎる犠牲が出ている。

 

 しかし、その状態異常をもたらす物が粉の形なら。

 

 

『来ます!』

 

 

 ミイナの声からワンテンポ遅れて、帝竜が甲殻の隙間から黄色い粉を噴出した。貯水池の空気が麻痺を引き起こすそれに浸食されていく。

 二度も同じ手を食らってたまるか。クロウにマナを集中させ、指先に火を灯す。

 

 

「逆巻け、猛火!」

 

 

 号令するように手を薙ぎ払う。

 導かれて巻き起こった火炎が宙に広がり、ランプで白く染まった空間に赤が差した。

 火は導火線のように麻痺粉を伝って前進し、そのまま帝竜を襲う。腹が爛れ始め、また帝竜の苦悶の鳴き声が響いた気がした。

 胴はその場で激しく回転し、貯水池の水を利用して消火する。ドシュウと大きな音を立てて水蒸気が上がった。

 

 

「水辺じゃ効果が望めないか……!」

『帝竜の回転が止まらない……さっきと同じです、こっちに転がってきます!』

 

 

 飛沫を散らし、甲殻で貯水池のコンクリートをガリガリ削って帝竜の胴が動き出す。

 このまま潰されるわけにはいかない。クロウの先で揺らめかせていた火を引っ込め、今度は冷気を呼び出した。

 マナを溜められるだけ溜め、霜に包まれる両腕を突き出す。

 ずっ、と貯水池全体の空気を持ち上げ、氷の津波が立ち上がった。

 

 

「荒ぶれ、氷嵐!!」

 

 

 ドッ、と地を揺らして氷は敵に殺到する。

 絶対零度の剣山が甲殻を削り腹を刻んでいく。しかし帝竜は攻撃をやめなかった。小さな地震を連続して起こし、荒れた氷原を砕いて進む。

 

 

『ミナト!』

「大丈夫!」

 

 

 ミイナと後ろにいるであろう三人にも聞こえるように声を上げ、片手で自分の体にマナをまとわせる。

 いくらか勢いは削いだものの止めきれなかった胴が持ち上がった。それだけで地球が砕けるんじゃないかと錯覚するほどの重圧に襲われる。

 でも避けない。

 

 ゴッシャッ、と、シキのときよりたしかな潰れる音が響いた。

 

 レイミが絶叫する。シキは顔色を変えず、手足にテーピングを施しながら静観していた。

 

 

「シキさん! ミナトさんが……!」

「大丈夫」

 

 

 初めて見る手じゃない。首都高で一度目にしたことがある。

 帝竜は獲物を潰した感触に満足したのか、ゆっくりと転がり、陸部から貯水池に戻っていく。

 よっこらせというようにたゆむ腹が見えた瞬間、地面から湧いた冷気が氷の杭となって表皮に突き刺さった。

 

 今度こそはっきりと帝竜の叫びが轟く。疑問と恐怖の混ざったレイミの悲鳴が加わって不協和音が地下を震わせた。

 氷の杭が生える場所、帝竜が体を敷いていた、たしかにミナトがいたはずの場所には何の名残もない。

 何度か瞬きをくりかえす中で少しずれた位置に人影が現れる。それがミナトだと確認した瞬間、今までで一番激しい地響きを帝竜が起こした。

 

 

「きゃああー!! 死ぬ、死ぬ~~っ!!」

 

 

 それ以上は戦場を直視できなくて、レイミは何度目かの悲鳴を上げて縮こまった。

 

 

『ミナト、大丈夫ですか!?』

「うん。このとおり、なんともないよ」

 

 

 ミイナに尋ねられ、ミナトは少し自慢げに胸を張る。

 やっぱりね、というようなため息が背後で吐かれるのが聞こえた。さすがと言うべきか、シキは自分がデコイミラーとゼロ℃ボディを併用することを予期していたらしい。実際便利だし。

 シキのように正々堂々と敵をねじ伏せるような破壊力はない。けれどこれは、自分を幾度も救った必勝法のようなものだ。今後も助けられるだろうなと胸をなでおろす。

 

 

「……っと、まだ終わってなかった」

 

 

 地面を揺らす衝撃と波が起きる貯水池を見渡し、白銀水と呼ばれる薬を飲む。ワジのファクトリーに入荷した、新製品だ。マナ水よりも効率よくマナを補充できるので戦闘時は助かるが、味のほうは推して知るべし。

 

 ともあれ、今のカウンターで確かなダメージを入れられた。帝竜の胴からは血が流れ、貯水池の水を赤く汚している。

 痛みに耐えかねたのか、胴はさらに激しく暴れ出した。

 

 

『動きが活発になっています。ランプで制限されているから大丈夫だとは思いますが、このままだと地盤が危険な状態になります』

「よし、一気に攻めて動けないようにしちゃおう」

 

 

 シキにはミロクがついているが、体の状態がわかっても治療はできない。最善はこのまま自分の手で胴を沈黙させ、早急に彼女の治療に移ること。

 不可能じゃない。やれる。やるったらやる。パートナーを見習って少しだけ前のめりになる。

 

 そっと目を閉じる。腹の中でマナが湧き、蛇が鎌首をもたげるように奮起した。

 バチン、と耳もとで紫電が爆ぜる。

 狙うのは、再び上陸しようと動きだす帝竜の胴の……手前。

 

 

「暴れちゃダメだよ!」

 

 

 ありったけの電撃を水に送り込む。

 眩しい貯水池にさらに光が迸り、帝竜の胴ごと水面が爆発した。

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

「おうおう、派手にやる」

 

 

 目の前で絶叫する帝竜にも動じず、ワジはランプを押さえてどっしりとその場に構えていた。

 

 貯水池の右側、胴に続く穴から光が流れ込んできたと思えば、帝竜が感電して悶え始める。まさかランプを水中に落としたんじゃあるまいなと疑ったが、すぐに違うと思い直した。作戦の要である機材をおじゃんにするほど開発班も13班も馬鹿じゃない。

 貯水池の隣のエリアから不可思議な音が連続して響いてくる。おそらく、属性を操るというサイキックの攻撃だろう。

 

 数秒後、帝竜を襲っていた電撃の勢いが鳴りを潜め、代わりにレイミの情けない声が聞こえてきた。

 

 

『うう~死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ……! ……あれれっ!? ウッソ、もう終わったの?? や~ん、13班様すごいです~! 一瞬でやっつけちゃうなんて、最高です~! グレネリンコたんの活躍をお見せできなかったのは残念ですけど、これはまた別の機会に☆ ささ、次どうぞ! この殻、あとで剥いでもらっていいですか? きっと、キュンキュンする装備ができると思うんですよ~。なーんて言ってたら、頭を倒してないからまた動き出したりしてー……』

 

『にぎゃーーーーーーーっ!! 次こそ死にますぅぅぅ!』

 

「何をしとるんだ、あいつは……」

 

 

 ころころと表情を変えて騒ぐレイミの姿が容易く想像できてしまう。

 やれやれと頭を振って数分後、待ちわびた二人組が駆け込んできた。

 

 

「ワジ! 生きてるわよね!」

「殺すんじゃない。おまえのほうが今にも死にそうじゃないか」

「見かけだけよ。何ともなかったわ」

 

 

 毎度のことだが体を張る立ち位置だけあって少女はぼろぼろだ。スカートの重厚だったプリーツは無残に破れ、セーラーは自分で裂いたのかすそが破り捨てられて細いウエストが見えている。

 見ていて不安だからとパートナーのサイキックが差し出す上着をおまえが軽装になってどうすると突っぱね、シキはスカートにこびりついた帝竜の体液をこれでもかと絞っていた。

 通常、ムラクモの戦闘員・作業員に支給される服は、機動性と体の保護を優先したつなぎだ。ガトウやナガレも着用していた優れものである。

 シキも幼い頃は同じものに身を包んでいたが、成長してからはお気に召さなくなったらしい。中高一貫校に進学したとき、彼女はおろしたてのセーラーを開発班に突き出して「作業着もこれにして」とリクエストしてきたのである。言われるがまま防護服の素材で、オリジナルと並べても見分けがつかないようセーラーを作って以来、彼女はそれをずっと愛用している。

 無機質さすら感じさせる少女が唯一見せる年相応なこだわり。帰ったらまた新しいものを作らなければと苦笑し、ワジは帝竜を見上げた。

 

 最初は尾。次に胴。巨大な体を三つのエリアで区切って戦うのは体力的にキツかっただろう。

 しかし今、そのほとんどが機能不全。さっきのミナトの電撃がかなり効いたようで、帝竜の呼吸はすでに弱々しい。

 

 

「いけ、13班! このデカミミズも、これで仕舞いだ!」

 

 

 ワジの声に応えるように二人が身構える。

 

 地球がフロワロに覆われてから数ヶ月。これで六体目。

 長い間東京の地中を支配していた帝竜、ザ・スカヴァーは、天に届かんばかりに長大な頭を立ち上げて吠えた。

 

 

「見てのとおり、こいつは弱ってる。あと少しだ!」

 

 

 背後からの激励に一層気が引き締まる。

 たかが一体、されど一体。この帝竜を倒せば、人類滅亡の壁を越える高さに大きく近付く!

 

 

「シキちゃん、スタミナ大丈夫?」

「誰に向かって訊いてんのよ。大丈夫も何もやるしかないでしょうが!」

 

 

 帝竜討伐を目前にして火の点いたシキが勢いよく飛び出した。

 ザ・スカヴァーのフォルムは逆サ都庁で戦ったドラゴハンマードに似ていた。巨大で鉄槌のような頭部には尾の先と同じ黄と紫の触覚が生えている。

 そこにまずは一発、挨拶代わりにストレートがお見舞いされた。車数台を丸飲みできそうな頭が一撃をくらって仰け反る。

 ザ・スカヴァーは弱々しくうなり、頭を貯水池の壁に連続して叩きつける。時間差で落石が始まった。

 

 

「ああもう、邪魔!」

「うわ、水がはねて……気を付けて、まだ電気が通ってるかもしれない!」

 

 

 大小様々な岩石が降り注ぎ、着水した物は大きな水しぶきをあげる。

 極力触れないように後退するが、これでは接近できない。

 

 

「ミナト、まだ!?」

「待って、もうちょっと!」

 

 

 数分前の胴の部分との戦闘で、かなり大技を連発した。

 マナは白銀水で充分に補充したが、体には疲労が溜まっている。エネルギーを練って外に放出する作業は最初のようにスムーズにはいかない。

 

 

「でえりゃあっ!!」

 

 

 シキが拳を突き出す。かなりの力を込めた一撃だが、ザ・スカヴァーの頭部は傷付くことなく後退するだけで終わった。

 

 

「こいつかったい!」

『D深度もなかなかつかないな……このまま攻めても決定打にならない、下がってちゃんと力を溜めてから叩かないと』

「それはわかって、る!」

 

 

 もう1発拳打を食らわせて牽制する。しかしザ・スカヴァーはものともせずに突進してきた。丸飲みにするつもりか、巨大な顎が開かれる。

 このまま避ければ後ろにいるミナトとワジが巻き込まれてしまう。受け止めるしかない。

 

 

「くそ……、ぐ!」

 

 

 衝撃を殺しきれずに頭ががくんと揺れる。頬の内側を噛んでなんとか意識が飛ぶのを堪えた。

 自分をくわえたまま帝竜の頭が高く持ち上がり、耳もとで風が唸る。

 

 

(重──!)

 

 

 帝竜の中でも最重量であろう顎が噛み砕こうと圧を加えてくる。

 上下から迫る牙をつかんでなんとか大口をこじ開ける。ぎしり、と背骨が軋んで汗が流れた。

 

 

「っ……、!?」

 

 

 体が揺れる。帝竜が頭を横に振り始めたのだ。

 すぐ横に壁が迫る。だが踏ん張っている今の状態じゃ避けられない。

 

 

「しま、」

 

 

 ザ・スカヴァーが自身の頭を叩きつける。

 貯水池全体が揺れ、高い位置で飛び散った粉塵と瓦礫を突き破ってシキが宙に投げ出された。

 

 

「シキちゃん!!」

 

 

 スカヴァーが再び口を開けて牙を見せる。今度こそシキを咀嚼するつもりらしい。

 同時に、限界まで溜めていたマナが霜になって指先から溢れ出た。間髪入れず走り出し、躊躇なく水面の上に身を踊らせる。

 間に合えと手を振り下ろす。

 迸る冷気が水に触れた瞬間、すべてが凍りついた。水の中にあった帝竜の体も氷漬けになって動きが止まる。その隙にスパイクの刃を氷に立てて突っ走り、地表とシキの間に体を滑り込ませた。

 

 

「シキちゃぅぐえ!」

 

 

 キャッチするだけならできると思っていたが、高所から落ちてきた体からの衝撃は受けとめきれなかった。腹を圧迫されたうえに後頭部を打ち付ける。

 伸びる自分の上でシキが起きあがり、うめきながら頭を振った。

 

 

「っつう……助かった。ついでに治癒かけてくれるとありがたいんだけど」

「どぅ、どういたしまして……あい……」

 

 

 指先を向けてマナを放つ。

 破れたセーラー服の下の傷が塞がっていくのを確認し、シキは水面から底まで完全に凍った足場をコツコツと叩いた。

 

 

「なるほど、だからスパイクね」

「これなら帝竜の動きも封じられて、私たちは足場ができて、一石二鳥でしょ?」

「そうね。見たところ、」

 

 

 シキがずれていた籠手を装備しなおして頭上を見上げる。

 頭部のすぐ下、人間でいうと首だろうか。そこまで氷に覆われたザ・スカヴァーは明らかに動きが鈍っていた。

 元々感電していた上にほぼ全身を氷漬けにされたのだ。もう虫の息だろう。

 

 

「こいつも相当こたえてるし、このまま倒す」

「了解!」

 

 

 薬を一気飲みして瓶を投げ捨てる。

 シキが飛び出し、スカヴァーの背中から頭へ駆け上がった。

 たしかにこいつの甲殻は硬すぎるが、無敵の防御というわけではない。

 無駄に同じ箇所を殴り続けていたわけじゃない。少し危なかったが、体も十分に温まった。

 

 

「どつくわよ!」

 

 

 誰が考えたか、スピネイジブロウと命名されていた技を放つ。

 渾身の裏拳を叩き込んだ直後、硬い物が砕ける音を確かに聞いた。潜水艦のようなスカヴァーの頭が下を向く。

 触角をつかんで頭の上から下へ回り、思い切り蹴り上げて上顎を開かせた。

 

 

「ミナト!」

「うん!」

 

 

 さすがに、体の「内側」には盾になる物はない。スカヴァーの開いた口めがけて、ミナトは火力全開で炎を送り込む。

 帝竜が瞠目しすぐに火を吐き出そうとしたがそうはさせない。今度は下顎を蹴り上げて口を閉じ、ミナトが間髪入れずに頭を丸ごと分厚い氷で包む。

 逃げ場をなくした炎に体内を焼かれ、ザ・スカヴァーのくぐもった悲鳴が空気をびりびりと震わせた。帝竜は苦しみ悶え、その巨体をねじって仰向けに転がる。

 

 

「ん!」

 

 

 シキがこっちを向いて手のひらを出した。「寄越せ」の合図だ。伝わったけどさと苦笑しながら冷気を集める。

 頭に浮かべるのは、都庁を出発する前に開発班のファクトリーで見た刀剣。そのイメージを固体化していく。なるべく丁寧にやったつもりだが、完成した氷の大剣はかなり無骨だった。

 

 

「これでいい!?」

「上等!」

 

 

 それだけ言い、柄の部分をつかんでシキは走り出す。

 高く跳躍するために足場を用意するのもいつものことだ。氷の階段を作り上げれば、少女は踏み砕く勢いで駆け上がっていく。

 最後の一段を踏み切り、シキは氷剣を大上段に持ち上げた。

 

 

「とどめぇっ!!!」

 

 

 仰向けにのけぞっていた帝竜にギロチンが振り下ろされる。

 喉を裂き、肉を貫いて骨と衝突。割れた大剣は榴弾のように体の中で飛散する。

 帝竜ザ・スカヴァーは顎を覆っていた氷を砕いて絶叫し、そのまま動かなくなった。

 

 

『……帝竜ザ・スカヴァーの生命反応、消失! 討伐完了だ!』

「よし」

「やった……!」

 

 

 ふーーーっ、と深く息を吐いて座り込む。

 

 

「やったー!!」

 

 

 いつものようにフロワロと光が散る中、壁の向こうからレイミとケイマの声が響いてくる。先に届いたそれを追うように二人が歓喜の叫びを上げてこっちのエリアに突撃してきた。ミナトの氷でコーティングされた足場に驚きながらも、ワジを追い越してツルツル滑りながら駆け寄ってくる。

 

 

「きゃーーん☆ 13班様ってば、さすがです~♪」

「開発班の職人魂、帝竜にも通じたみたいだな」

「おまえたちも、ジジイも……マジ……すげえよ……ううっ……」

 

「苦戦しちゃったね。勝ててよかったー……」

「ケイマ、あんたいつまで泣いてんのよ」

 

 

 ゴホン、と全員の通信機にミロクの咳払いが届いた。

 

 

『……討伐完了だな。盛り上がってるとこ悪いけど、帝竜の生体サンプル採取を忘れるなよ。キリノがお待ちかねだぞ』

「そうだ、殻のほうも忘れないでくださいね!」

「え、ほんとに回収するんですか!?」

「勘弁してよ、もう疲れた……」

 

 

 ザ・スカヴァーの殻をはがすのは戦うよりも重労働だったかもしれない。ただでさえデカい資料もあるうえ、希少な質の帝竜の素材、引きはがそうとすれば表皮に傷が付かないようていねいにと注意され、火で炙って解体しやすくしようとしたら体組織は壊さないでと言われ、シキがやってられるかと解体用ナイフをぶん投げてお開きになった。

 今回は検体と殻を二、三枚ほど採取し、巨大な帝竜の死骸は貯水池に浮かせたまま、今後時間をかけて隅々まで解体することになった。

 詳しい材質が不明なため下手に砕いて分割もできず、形そのままの殻一枚を自衛隊の大型車両一台になんとか乗せるという流れで作られた車列。灰色に荒れた都内ではよく目立つようで、寄ってくるマモノを片付けるのが大変だった。

 運搬作業も落ち着き都庁も近付いてきたところで、自分たちを乗せる車の後部座席から外を見る。縦一列になって運ばれる帝竜の甲殻は陽光を反射して硬質なきらめきで周りの空気を染めていた。

 

 

「ねえシキちゃん、見てみなよ。地下ではそんな余裕なかったけど、帝竜の甲殻ってけっこうきれいだよ。白いところが真珠みたい」

 

 

 返事どころか気配もない。

 あれ、と思って横を向くのと同時に、体に綺麗な黒髪が寄りかかってきた。

 規則正しい呼吸がくりかえされる。ゆっくり静かに座り直して顔を覗くと、三日月型にカーブした睫毛がぴったり重ねられていた。

 

 

「ああ……あんなおっきな奴に三連戦、ずっと殴りっぱなしだったもんね」

 

 

 自分もいつも以上に高火力の魔法を連発した。マナも体力と同じで消費すれば疲れるから、もうへとへとだ。けれど自分は後衛だから、敵と距離をとって援護に回るだけ。一番疲れるのは肉体を酷使する前衛だろう。

 日々アップデートされている防護性能を誇るセーラー服はほとんどぼろぼろ、普段隠れている箇所の肌が露出していて目に毒だし、ブランケットを広げてシキの体を慎重に包む。その間も彼女は寝言も寝相もなく、どっぷりと睡眠に浸っていた。

 思えば、シキはちゃんと休息をとれているのだろうか。大怪我も数日でほとんど治るから医務室からはすぐに抜け出すし、生まれた自由時間は全て訓練に使う。人類が滅びるかどうかの瀬戸際だからのんびり過ごす余裕はないが、それを除いてもストイックだ。

 不安を抱き、弱音を吐く時間があれば前進するために使う。それが何より彼女の強いところ。自分も散々引っ張ってもらった。自分ももっと頼ってもらえるようになりたいと思う。

 

 

「着きましたよ、降りましょう」

「あ、はーい」

 

 

 都庁前広場に降りて運転手に頭を下げる。続いてトラックが入ってくる音が響くが、シキは起きる気配がない。

 四ツ谷から帰るときに気絶した自分を運んでくれたことを思い出し、ならお返しにと少女の体を抱えて車を降りた。

 別のトラックから降りてきた開発班の三人が、しげしげとシキの寝顔を見てめずらしいと呟く。

 

 

「何、シキ寝てんのか?」

「お疲れなんでしょうね。13班様は今日も大活躍でしたから♪」

「貴重な素材の採取、よくやってくれた。ここからは開発班の仕事だ、私たちはここで失礼しよう。今日はいい仕事を見せてもらった。こちらも負けてられないな……ケイマ! レイミ!」

「任せとけって! ジジイ、腰抜かすなよ!」

「今日は貴重なインスピレーションがわきました! 闇に走る孤独なヒーロー・ムラクモ……その手に光るのは……」

 

 

 レイミがミトンをはめた手を丸め、シュッシュとシャドウボクシングを始める。もしかしてシキの真似だろうか。

 

 

「光るのは……あああああああっ……もうちょっとでネタが──あれ?」

「なんだレイミ、ぽかんとしてさ」

「あそこ……あんな小さな子、都庁にいましたっけ? 親御さんもいなさそうですし」

 

 

 レイミのミトンをかぶせた手が都庁前広場入り口に向く。

 幼い子供が都庁で遊んでいることはあるが、屋外はまだ完全に危険が去ったとは言えない。自衛隊の見回り範囲になっているし、保護者の同伴もなしに都庁前広場に出てくる子どもはほとんどいないはずだが。

 好奇心を持つ子が抜け出してきたのかなと振り向くと、広場前の階段で風に揺れる金髪が目に入った。

 なんだか、遠目に見ても様子がおかしい。泥だらけの体に擦り切れた衣服。じりじりとこちらへ進んでくる体は瞬きをするたびに傷が増えていって、満身創痍だと気付いたときには駆け出していた。

 

 

「君、大丈夫!?」

 

 

 シキを抱えたまま、いち早く駆けつけた自衛隊員に続いて子どもの傍にしゃがむ。すだれのように垂れた金の髪から赤い目が透けて見えた。

 ゆっくり上げられた顔が表情を作る前に子どもの体が傾ぐ。小さな体は素早く自衛隊員の腕に抱えられて地面との衝突を免れた。あなた達も負傷しているのだからと促されてそろって石のもとへ直行する。子どもが最優先ということであの金髪の子は部屋の奥へ運ばれ、自分たちが自分たちで治療と精密検査を受けることになった。

 にわかにさわがしくなる医務室で目を覚ましたシキといっしょにナースたちから小言をもらい、解放されてからは報告のため会議室に向かう。扉を開いてキリノ名前を呼ぶと、大量の資料の陰にいた彼がおかえりと顔を出した。

 

 

「ナビからの通信、大体聞いてたよ。ちょっと見ないうちに、すっかり自分たちでやれるようになっちゃって……正直、びっくりしたよ」

「今回は開発班のサポートがあったしね」

「秘密兵器すごかったです! 前にあの帝竜に潰されそうになったのが嘘みたいでした」

「そうか、うまくいったみたいでよかった。さてと……それじゃ早速、サンプルをもらおうか」

 

 

 巨体のどこから採取すればいいのかと悩んで集めた検体を渡す。戦闘の振り返りも兼ね、身振り手振りでザ・スカヴァーの詳細を話すと、キリノは想像するように目線を上にずらして大変だったんだねと苦笑いした。

 

 

「ありがとう、すぐに解析を始めるよ。僕たちには時間がない……けど、それは休むな、ということじゃない。しっかり休息をとって、傷も体力も回復したら次の作戦に向かってくれ」

「次ってことは……」

「いよいよね」

「ああ。最後の帝竜は台場にいる。東京湾の一角をまるまる凍り付けにしたヤツがね」

 

 

 通常の帝竜は巣であるダンジョンからは出てこないため当分都庁は安全だろう。が、今は人竜ミヅチがいる。のんべんだらりとはしていられないのは事実だから、いつにもまして療養に専念しなければ。

 焦って倒れては本末転倒だから準備は怠らないようにとキリノから念を押される。

 

 

「ああそうだ、マサキが『スキル開発最終段階ダ! 協力しないと後悔するヨ!』とか言ってたからそっちにも行かないと」

「けっこういろんなスキル覚えてきたけど、まだあるなんて奥深いよね。今度はどんな技だろう?」

「13班ならもう何でもできる気がするなぁ。是非その調子で前に進んでくれ、僕たちも協力する。……君たちを信頼しているよ」

 

 

 にっこりと穏やかに微笑むキリノは以前のそそっかしい彼とは違う。落ち着いたどころか父性すら漂う、子どもを守る大人の笑みだ。

 あんなに萎れていたのに、ときにはノリのいいツッコミを披露していたのに、こういう一面を見るのはなんだか新鮮だ。同じく目を丸くした相方と二人で目を合わせて、不意に湧いてきた悪戯心ににやりと笑い、わざとらしく背筋を伸ばして声を張ってみる。

 

 

「ハッ! 了解であります、キリノ司令官殿!」

「ちょ、何を言うんだいきなり……! からかってるのかい?」

「上司には礼儀正しくしなきゃいけないと思いまして!」

「僕と君たちの間じゃないか、そういうのはやめてくれよ……!」

「キリノ司令官殿、帝竜討伐の賞与として褒美がほしいんだけど。具体的に言うなら豪華な食料」

「却下します」

「ケチね!」

「……なんてね、ぷはは。今は甘いコーヒーくらいしかないなあ……今度、みんなで検討しておくよ。ふぅ……なんだか気が楽になった」

 

 

 キリノは隈ができた目もとをこする。いつにもまして、研究員は不眠不休で今までのデータと向かい合っているようだ。休めと言ってもたぶん彼らは手を止めない。ミヅチが登場してからというもの、彼らはドラゴン関係での他国の時事をどこからか掘り出してきたり、ドラゴンの生態について熱い議論を交わしたりと周りとは反比例して活発化しているのである。

 

 

『おい……仕方ないから調べてきたら、おもしろい話が出てきたぞ……。ヨーロッパにあったという、秘密のドラゴン研究所……そこを仕切ってた女が……アメリカで、突然地位を上げたっていう謎の科学者とそっくりだそうだ……』

 

『各地の帝竜が、ミヅチの呼び声に応えた……。……ってことはやっぱり、彼らは何らかの指示系統を持ってるんだ! しかもそれは、帝竜よりも上位の存在から発されるはず……! これは、ひょっとしてひょっとするかもよ? 最後まで気が抜けないなぁ!』

 

 

 地下道に向かう前に研究室に顔を出したら、全員が研究だヒャッハーとハイになっていた。キリノがザ・スカヴァー検体を持ち込めばさらにヒートアップするはずだ。

 そのうちドラゴンの検体の歓迎会を開きそうな勢いすら見られるが、空気を読めとツッコむのはやめておく。あれでもドラゴン戦線の攻略の大きな支えになってくれているので。ただ一般市民の目に触れないように隔離しておいたほうがいい、というのはムラクモ内で意見が一致した。

 

 

「タイミング見てエナジードリンクから手を離して休みなさいよ。過労死されたら困るんだから」

「うん、ありがとう、君たちには本当に感謝してるよ。最後の帝竜……ドラゴンクロニクル……お互い任務を頑張ろう!」

「もちろん」

「絶対、倒します!」

 

 

 残る帝竜はあと一体。

 もういつ何が起こるかわからない、瞬きの次に地球が真っ二つになったっておかしくない状況だ。この数秒後にでも人竜ミヅチが動き出すかもしれない。

 怯えて震える余裕もない。だからこそ全身全霊で突っ走る。

 

 自然と手が持ち上がる。握り拳を軽くぶつけあい、おーっと天井に突き上げた。

 

 





26話での前書きと同じく、エメルはミヅチとの接触はしていない解釈です。
アメリカ脱出、日本に渡ることにエネルギーを使い切る→都庁にドンピシャでテレポートはできず、子どもになってしまった自分の足で移動開始→道中マモノやドラゴンたちに襲われ命からがらたどり着く。

こんな感じ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。