冬の寒さも和らぎ、温かくさわやかな風が吹き始めた四月の初め。
ここ中山田高校、二年A組教室では放課後、三人の男達が椅子や机にもたれかかり、だらだらと時を過ごしていた。
「はぁ~あ・・・」
そう言ってため息をつくコイツの名は大西。
俺たち三人の中では一番背が高く、ガタイのいい坊主頭のキモオタだ。
彼は退屈を持て余しているようで先ほどからため息を繰り返していた。
「暇だなぁ~」
「・・・」
「・・・」
そう言ってもう一度ため息をつき、自分は退屈です 遊んでくださいアピールを続けてた大西だったが、俺ともう一人は我関せずといった感じでそれぞれがスマホをつついたり、本を読んだりしている。
そんな俺たちのシカトに耐えられなくなったのか、大西は本を読んでいる俺の方に声をかけた。
「なぁ、おい山下」
「・・・何だ暇人?」
俺はジトッとした、面倒くさいと書いてあるような顔で大西を見た。
俺が反応を返したことで大西はニヤーっと擬音が付きそうなほど嬉しそうな顔をする。
死ぬほど不愉快な表情で思わず殴りたくなってしまう。
「何か面白いことやって?」
大西の雑過ぎるフリに俺は青筋を立てながら言い返す。
「クソうぜぇフリだな。はらわた引きずり出されてぇのか?」
「当たり強くない?」
知るか。
勢いだけで詰まらねえウェーイ系が言いそうな頭空っぽの言葉発しやがって。
「山下君怖いから岩倉ちゃん、遊んでくれ」
俺の雰囲気に恐れをなした大西は俺から距離を取り、スマホをいじっていたガリメガネの岩倉に話しかけた。
岩倉は大西のことをちらりと見るとまた視線をスマホに戻した。
「悪いな、あいにく今忙しくて手が離せない」
そう言って岩倉は再びスマホをつつき始める。
先ほどから一心不乱に操作しているが一体何をしているのだろうか?
「忙しいって何してんの?」
大西も気になったようで岩倉のスマホの画面をのぞき込もうとする。
俺もそれに倣い、岩倉のスマホを見た。
「ようつべ見てる」
「暇じゃねえか」
思わず突っ込んでしまった。
しかもよく見ると、岩倉は動画の高評価ボタンと低評価ボタンを左右連打したり、コメント欄にファンコメとアンチコメと発狂コメを書き連ねていた。
どう考えても暇人のそれである。
「違う。暇だから見てるんじゃない。これは社会勉強のために見てるんだ」
「何の動画見てるの?」
大西が岩倉に聞いた。
「ケツにブレ〇ケア入れて新世界を幕開ける動画」
「何が学べるんだよ」
「発想の転換と表現の自由かな」
俺のツッコミに心にも無い事をペラペラと言い返す岩倉。
嘘つけお前。お前も大西と一緒で暇を持て余してた口だろうが。
そうじゃなかったら誰がそんな汚ねえ動画見るかよ。
「という理由で俺は忙しい。他を当たれ」
理由になってねえぞコラ。
「えー?与太話しようぜー?」
大西はそっけない岩倉にすり寄り話を続けようとするが、岩倉は大西を可哀そうなものを見る目で言った。
「そんなにお喋りしたかったら電柱にでも話しかけてきたらどうだ。聞き上手だぞ?」
「嫌だ!俺はお友達とお話ししたいんだ!」
「お前に友達なんていたの?」
「何言ってんだ?俺たちマブダチだろ岩倉?」
「俺は山下のことは友達と思っても、お前のことは友達なんて思ったことないけどな」
そう言って俺の方を見てにっこりと笑う岩倉。
その温かい視線に俺は思わず鼻下をこする。
へっ、照れるじゃねえか・・・。
「大丈夫だ、お前が俺のこと友達と思ってなくても俺の中ではお前ら二人は心の友グループに入れてあるから」
うわキッモ。
「ログアウトしま~す」
「逃がさんぞ?」
俺が逃げようとすると大西に肩を捕まれた。
無駄に力つええなコイツ。
「手、離せよ。穢れるだろ?」
「絶対逃がさないから・・・グフ、ウフフフフ♡」
「マジキメェなお前」
「クレイジーサイコホモってやつだな」
あまりの嫌悪感に鳥肌が止まらねえわ。
「キモ過ぎるからどっか行ってくんない?ていうか消えてくんない?消滅してくんない?木っ端微塵になってくんない?」
「またまたダーリンたら照れちゃって~、お、ちゃ、め、さ、ん♪」
そんなことをぬかしながら指を振り、左右の目で交互にウインクし、鼻先を指でつっついてきた大西に俺は思わず手が出た。
腰を落とし、拳を立て、そこから一気に跳ね上がるようなアッパーを鳩尾に叩き込んだ。
殺意?もちろんマシマシである。
「フンッ!!」
「お“ぉぉぉぉぉん!?」
「おお、ソーラープレキサスブロー」
さすが岩倉、知っていたかこの技を。
「おら、愛しの旦那様のスキンシップだぜ?泣いて喜べよハニー」
「やっぱアチシ・・・こいつ愛せない」
涙を流しながら腹を抑えて沈み込む大西を見て留飲を下げていると、岩倉が顎をさすり、フムと一言呟きながら考え事をしているのが目についた。
ん?どうしたんだ?
「どうした岩倉?考え事か?」
「ああ・・・実際ヤンデレってどうなんだろうなって思ってな」
「というと?」
「そこの気持ち悪いマッチョは置いといて、山下、もしこの先お前が女と付き合ったとして、その女がヤンデレだったら関係続けられると思う?」
どうやら岩倉の考え事というのはヤンデレについての事だったらしい。
ヤンデレかぁ・・・まあ俺には無理だな。荷が重すぎる。
「無理だな。ちょっとの刺激だけで爆発するニトログリセリンみてぇな女の相手なんかできるかっつうの」
「そうか?俺はいけるけどな」
「復活早えな」
「鍛えてるからな」
何時の間にか復活を果たし、何事もなかったかのように会話に参加してきた大西。
体頑丈過ぎない?
本気で殴ったのに。
「いけるっていうけどお前、相手はいつ爆発するかもわからねぇ危険物だぞ?本当にそんな奴と付き合えんのか?」
「安心しろ。爆弾処理なら慣れてるから」
「どうやって慣れたんだよそんなもん」
ドヤ顔で言い切りやがって。自衛隊か何かかコイツ?
「そんなもの決まってるぜ。みんな大好きボンバー〇ンだ!」
「素人じゃねえか」
違った。ただのアホだった。
「中学の頃は火達磨の大西と呼ばれてたぜ」
「自滅しとるやんけ」
「燃え上れ!二人の愛の炎!」
「一人で勝手に燃え尽きてろ」
アホなことを言い倒している大西に俺は呆れかえる。
コイツの言うことはまともに聞いちゃいけねえな。
「山下はナシで大西はアリかぁ」
そう言ってうんうんとうなずく岩倉。
まあ当然だが、ひとりひとり一つの物事に対する意見ってのは異なるもんだな。
ところで質問者の岩倉はどうなんだろうか?
聞いてみよう。
「お前はどうよ岩倉?」
「俺か?俺はナシだ」
「え~?いいじゃんヤンデレ。全力で愛されてる感じがするじゃん。何でダメなのよ?」
ヤンデレ肯定派の大西はブーブーと文句を言うが岩倉はそんな大西に優しく微笑みかけながら言った。
「簡単だよ。俺の場合、殺られる前に殺っちまうからな」
「光の無い目で言わないでくれる?」
岩倉の発言に血の気が引いた。
コイツはたまにこういうとこが見え隠れする。
サイコパスかよ。
「まったく、お前らは。女性の愛情を受け止める甲斐性もないのか?だからお前らは童貞なんだよ」
ヤンデレ否定派の俺たちを鼻で笑いながら馬鹿にしてくる大西。
だが所詮はIQ3の煽り。
反論が余裕過ぎる。
「ブーメラン刺さってるぞCボーイ」
「自分を客観視できないってのは悲しいな・・・」
岩倉と一緒にハイ論破。
や~い雑魚乙~w。
「何とでも言え。俺には将来必ず結ばれる運命の人がいるはずなんだよ。きっと、多分、絶対。だからお前らとは違うんだ」
「現実逃避ここに極まれりだな」
「大西・・・2次元と3次元は違うんだぞ?」
「うるせえ!股座幼稚園児共が!早く黄色帽子ぬいでこいや!」
俺たち二人に押され、ギャアギャアとわめきたてる大西。
見苦しいなぁ・・・。
仕方ねえ。
止めさすか。
「大西君、君の知らなかった新事実お教えしよう」
「あん?新事実?」
「実は・・・岩倉君は卒業済みです」
「HAHAHA、またまた御冗談を」
「岩倉君」
「あいよ」
岩倉はスマホを操作し、写真アプリをタップすると一枚の画像を取り出し、大西に見せる。
それは______女の子と二人でベットインしてる岩倉の写真だった。
「()」
・
・・
・・・
「死ぃぃぃぃねぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
写真を見て一瞬固まったかと思えば、猛烈な勢いで岩倉に右ストレートをかます大西。
だったが
「シッ!」
「おぼふううううう!」
「フッ、ザッコw」
逆にカウンターを取られ、顔面を打ち抜かれる。
あまりにも惨めな姿に思わず、嘲笑と侮蔑をしてしまった。
かwわwいwそwうwに。
「う・・・う・・・あんまりだ。こんなズルムケブドウ野郎と同じ空気を吸って同じ時間を共有してたなんて。屈辱だ・・・人生最大の汚点だ」
「そこまで言うか」
「こうなったら今すぐにでもそこにいるメガネをこの世から抹殺して「大西」」
童貞の暗黒面に落ちてしまいそうになっていた大西に岩倉は声をかける。
それを大西は親の仇でも見るような目で睨みつけた。
「少し聞いてくれ」
「何だ・・・示談交渉なら受け付けんぞ」
唸り声をあげながら敵意をむき出しにする大西。
もはや話し合いの意味すらなさそうな雰囲気だが・・・そんなことはお構いなしに岩倉は語り掛ける。
「確かに友であるお前に断りもなく一足先に漢になってしまった事。本当に済まないと思っている」
「・・・」
「だからそのせめてもの償いに受け取ってほしいものがあるんだ」
そう言って岩倉は大西の前に手を差し出した。
「女子の連絡さ「うん!いいよ!許す!」」
「チョロ過ぎだろお前」
一瞬でその手を握り返し満面の笑みを浮かべる大西。
コイツはホントに・・・
「人間やっぱ許すってのが肝要だと思うんだよね!」
「性欲に釣られただけじゃねえか」
「いやー!やっぱ友達って最高やな!」
「なんて都合のいい野郎なんだぁ・・・」
そんな大西の掌ドリルっぷりを見ていると・・・
\キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン 下校の時刻になりました・・・ まだ学校に残っている生徒は・・・/
下校のチャイムが鳴った。
あらら、もうそんな時間か。
帰る準備しねえとな。
「おい山下、何ぼっとしてる。早く帰るぞ」
「そうだぞ。早くしろ」
「お前ら、いつの間に・・・」
二人は今の一瞬で帰り支度を整えたのか。すでにバックを背負ってドアのところまで移動していた。
俺は慌てて二人を追いかける。
\ガラガラ・・・ピシャン/
帰りにラーメン食って帰らね?・・・
昨日食ったじゃねえか・・・
ラーメンは毎日食っても飽きないな・・・
体に悪過ぎだろ・・・
俺んちでボンバー〇ンやるのが先だろ・・・
いや、ラーメンだ・・・
いや、ボンバー〇ンだ・・・
ラーメン・・・
ボン〇ーマン!!・・・
ケンカすんなよお前ら・・・
その後、俺たちはボン〇ーマンをやることになって大西の家にいった。結果は大西のぼろ負けだった。
あれほどの負けっぷりには早々出会えないだろうと思うような見事な負けっぷりだった。
大西の家から外に出るとすっかり日は暮れていてに、空に真ん丸い月が浮かんでいた。
「(明日も晴れるといいな・・・。)」
そう思いながら俺は足元の石を蹴飛ばした。
最近になってbiim兄貴の動画見始めました。
クッソ面白くて動画見るたび(目から)男汁出してます。