\ガラガラ~/
「失礼します」
「失礼しま~す」
「ようやく来たか。遅いぞお前ら」
ある日の放課後、俺と岩倉は先生から呼び出しを受け、職員室までやってきていた。
だが少し準備に手間取ってしまい、遅れてしまった。
そのせいで先生がこちらを攻めるような目線で見ている。
美人のそういう目はつらいです。
「ホームルームが終わったらすぐ来るように言っておいたはずだが?」
「いや、違うんですよ先生。俺はすぐに行く準備整えていこうとしたんですけどこのパンパ〇ス野郎がもたついたせいで・・・」
「誰が紙おむつだボケナス。」
突然煽ってきたメガネにツッコミを入れる。
確かに準備にもたついたのは俺だけどそこまで言う必要はないよな?おい?
「汚い言葉遣いだなあ。下の口だけじゃなくて上の口にもオムツつけたほうがいいんじゃないの?」
「岩倉君?キレそうだからお前ちょっと黙ってくれる?」
「切れそうって何が?トイレットペーパー?」
「ハッハ~、よ~しよしわかった。表出ろてめえ・・・!」
「・・・コントしてないで早くそこに座れお前ら」
「はい先生」
「チィ・・!」
先生に注意され、不承不承ながら拳を引っ込め、先生の前に用意された椅子に座る。
仕方ねえ。
岩倉は後でギタギタにしてやる。
※
「さて、お前ら何で職員室に呼ばれたか・・・理由はわかるな?」
先生は足と腕を組み、俺たちを真っすぐ見つめながらそんなことを聞いてきた。
理由?はて?
「いえ、全然」
「皆目見当がつきません」
俺と岩倉は顔を見合わせた後、そう答えた。
まじめにいきてるからしょくいんしつによばれるようなおぼえはありませんよ?
「~~~~ッ・・・・・・よ~し、なら見当つかせてやる。これを見ろ」
そんな俺たちの様子に先生は眉間を押さえ、引き出しから二つの紙を差し出した。
「お前ら・・・これは何だ?」
んん?これは・・・
「・・・進路希望調査ですね」
「先生そんなこともわからないんですか?」
「知っとるわそれくらい」
岩倉の煽りも華麗に躱す先生。
お見事ですハイ。
「私が聞いているのはここに書いてあるお前たちの進路希望についてだ・・・まずは岩倉」
「はい」
先生はそう言って岩倉の前に調査票を出し、希望先の欄を指さして問いかける。
「このマトリョーシカって何だ?」
「ロシアの民芸品です」
「意味を聞いてるんじゃないぞ?」
え?違うの?
「なぜマトリョーシカって書いたかという理由を聞いてるんだ」
ああそういうことか。
納得したわ。
先生の質問に岩倉も納得がいったようでなるほどと頷いている。
「それには深いわけがあるんです先生」
「ほう?言ってみろ」
そう言うと岩倉は居住まいを正して話し始めた。
※
「僕が中学の時の話です」
「当時の僕は昼飯に毎回あんパンを食べていました」
「マイブームってやつですね」
「そして食べる際に必ず一緒に飲むと決めていた飲み物がありました」
「それは牛乳です」
「あんパンと牛乳、このコンビを僕は学校がある日は欠かさず食べていました」
「ある日、僕はいつものように昼飯を買うためにコンビニに立ち寄りました」
「あんパンを手に取り、さあ牛乳を買おうと飲み物コーナーに視線を向けたその時、信じられない光景が飛び込んできました」
「牛乳がなかったんです」
「定員さんに確認を取りましたが在庫も切れていて、店の中には一つも残っていないと言われました」
「すぐほかの店に行こうと考えましたが、時間も差し迫っていてそんな余裕もありませんでした」
「僕は苦渋の決断でお茶を購入しました」
「その後、学校へ行き・・・朝礼・・・授業を終え、昼休みに」
「ついに牛乳以外の組み合わせであんパンを食べる時が来てしまったんです」
「僕は憂鬱な気持ちであんパンをかじり、そこにお茶を流し込みました」
「その時、気づいたんです」
「牛乳が至高ならばお茶は究極であると」
「瞬く間に僕はあんパンとお茶を平らげ、満足げに息を吐きました」
「それからです」
「僕はあんパンを一個から二個に、飲み物を牛乳だけでなくお茶も一緒に買うように心がけるようになったのは・・・」
※
「今も感謝しています」
「あんパンには牛乳こそ絶対と思っていた、そんな狭い視野しかもっていなかった僕を変えてくれたあの出来事に」
「僕は今日もあの日の感動を胸に生きています・・・これからも忘れることはないでしょう」
「僕は今・・・最高に幸せです」
「・・・そうか、幸せか」
「はいとっても・・・」
「うん・・・それは良かった・・・けどな岩倉?」
「何でしょう?」
「その話と進路希望と何の関わりがあるんだ?」
「まったく関係ないっすね」
「時間返せ」
「すぐ書き直せ、再提出だ」
「はいは~い」
「はいは一回」
「ヘイ姉御!」
「輩か」
「さて次は山下」
「Zzz・・・」
「寝るな馬鹿」
岩倉の感動話を聞いて心地いい眠りについていた俺の頭に衝撃が走る。
その衝撃に俺は飛び起き、周りを見渡す。
「ハッ!敵襲か!」
「ただのチョップだ。何と戦ってるんだお前は」
「大西ぃ・・・敵は取ってやるからなぁ!」
「元気に登校してただろうが」
先生は溜息をつきながら岩倉の調査書を置くと、次に俺の調査書を手に取る。
「はぁ・・・それで山下、お前だが」
「ウィッス」
どっからでもかかってきてください。
「このヒモボクサーってなんだ?」
「それは「いや、やっぱ話さなくていい」何でですか?」
「どうせあれだろう?これって蛍光灯のヒモを使ってシャドーボクシングする奴の事だろうこれって?私が聞きたいの意味じゃなくて理由だってさっき岩倉にも言ったよな?」
まくしたてるように言う先生。
たが残念ながらお門違いだ。
「違いますよ先生、そうじゃないです」
「?何が違うって?」
正解はこうです。
「ここに書いてるヒモボクサーっていうのは先生の言ってる蛍光灯の事じゃなくて女性から金を貢がせてボクシングする奴のことです」
「屑じゃん」
合理的と言ってください。
「そんな進路、許可するわけないだろ。何で書いたんだよ?」
そう言って先生は聞いてくるが俺は首をかしげる。
「さあ?」
「さあって、それを知ってるのがお前のはずだろ?」
「それが何でこんなふざけた進路書いたのか全く覚えてないんすよね~」
「ふざけてるって自覚はあるんだな・・・」
「先生、何で書いたのか教えてくれません?」
「知るか」
つめたいなぁ・・・。
「お前も再提出だ。岩倉も、二人合わせて明日までに持って来い。いいな?」
先生は俺たちに新しい進路希望調査書を渡してきた。
俺たちはそれを受け取り、返事をする。
「善処します」
「努力します」
「絶対持ってくると言え馬鹿共」
そう言って眉間にシワを寄せる先生。
大丈夫ですって安心してくださいよ~。
「それじゃあ先生、失礼します」
「失礼しま~す」
\ガラガラ・・・ピシャン/
「はぁ~・・・まったく」
~次の日~
「あいつらぁ・・・」
『岩倉 進路希望 ダークマター』
『山下 進路希望 暁の4戦士』