つよしは、お調子者な以前に、真面目な高校生だ。
一人二役をこなす為の道具や、とある子に渡すためのお菓子やらお弁当やら、水分補給用のドリンクやら、とにかく色々と持ってきすぎるため、荷物は物凄く重い。
それにも関わらず、つよしは毎朝、誰よりも早く教室に来ては、扉の鍵を開けている。
今朝の挨拶を考えながら軽く掃除をしてから、いそいそと窓を開けて朝の爽やかな風を教室に取り入れるのが日課だ。
毎朝1番に来るから、担任の先生の覚えも良いし、朝から元気よく挨拶をしているから、鍵を管理している事務室のおじさんにも好かれている。
とにかく、金髪の王子様みたいな格好をしていたり、緑髪のDJみたいな格好をしておどけているにしては、とても心象が良いのだ。
さて、今朝のつよしはとっても気分が良かった。
朝食のフレンチトーストが上手くできて、気になっている子への挨拶もいいものが考えついたからだ。
いつものように事務室に向かうと、何と、既に誰かが鍵を持っていったという。
「いつものようにつよしくんかと思ったら、黒い髪が綺麗な、白い肌の女の子が来たんだ。知り合いかな。……おや、服に埃が付いてるよ、取ってあげよう。」
事務員のおじさんが言ったその特徴が、つよしの気になっている、好きな子の特徴と一致していたため、ドキッとしながらも、事務員さんとの世間話を少し楽しんだあと埃を取ってもらって、足早に、教室に向かった。
緑色の葉っぱが落ち始めたこの頃、廊下の窓から見える楓の木には、少しづつ赤い葉がつきはじめていた。
鍵の空いた教室の扉を開けたつよしの顔は、紅葉よりも紅く、純粋さに染まっていた。
昨日、学校の屋上で見た星空、綺麗な空気の中、キラキラと輝いていた。
そんな星々に、つよしはうたの髪を重ねていた。
つよしが気になっている子、うたの黒髪はそれほどまでに綺麗だ。
ボサボサで手入れもされていないし、纏め方も適当だ。
それでも、星を映したかのような黒髪は、うたの陶磁器のように白い肌に良く映える。
窓の外でひらひらと落ちる緑の葉っぱは銀河、うたは星空。
しっかりと朝日が出ているにも関わらず、その美しい横顔は、夜空を連想させた。
扉の開く音でつよしに気がついたのか、うたは扉の方を振り返り、少し微笑みながらこう言う。
「……おはよう、つよしくん。今日はあたしの方が早かったみたいだね。」
何気なく、あどけない、悪戯っぽくもあるその微笑みと、少し冷えた空気によく通る、美しい声。
つよしは朝の挨拶も忘れて、真っ赤な顔のまま、その場で俯いた。
顔を上げては、俯き、顔を上げては俯いて。
とうとう退屈になったうたは、朝の眠気に誘われて、ぐっすり眠ってしまった。
「えっと、おはよう、でございます……」