転移高校生は転生魔王の甥っ子だった件   作:Many56

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Happy Birthday 俺!
という訳で今日は僕の誕生日です。
これから先も頑張っていきますのでよろしくお願いします!


第15話 スパイさんいらっしゃ〜い!

 

 

 

数日後

魔国連邦(テンペスト)執務館

 

ガドラと名乗る人物がやってきた。

派手ではないものの、高級そうな魔法服に身を包み、老人とは思えない鋭い眼光を持っている。

そして、その後ろには見覚えのある3人の男が並んでいる。

この前、迷宮で暴れ倒していた異世界人3人組だ。

この3人は、どうもこのガドラという大魔導士の弟子であり部下なのだと。元々はゲス野郎   もとい、ユウキの下で働いていたそうだが、今回のガドラ老師による魔国連邦(テンペスト)調査の助っ人として、ガドラが預かる事になったそうだ。

そして、その話をガドラが語り終えるなり平伏したのだ。

そして、後ろの3人組もそれに倣って平伏する。

 

「面を上げなさい」

 

何故かシオンが偉そうに告げる。

やれやれ、謁見形式って色々とややこしいみたいだな。

 

「ははぁ‼︎」

 

ガドラさんも大袈裟に返事をする。

これからの話し合いも面倒な事になりそうだな。

 

場所は安い方の応接間だ。

部屋の中の装飾品は割と安い物で、その代わりかなり頑丈に設計されている。

高い方にしようともなったらしいのだが、どうやら異世界人3人組が緊張していたようだし、叔父さんも高い方はあまり使いたがらないのでコッチになった。

因みに俺は、隣の部屋で聞き耳を立てている。

万が一、叔父さんが襲われても直ぐに守れるようにするため   というのは建前で、実際はどんな話が聞けるのか気になったからだ。

そもそも、叔父さんの強さならば護衛なんて必要ないしね。

 

「飲み物、コーヒーと紅茶があるんだけど、どっちがいい?」

 

軽い感じに質問する叔父さん。

いくら何でも軽すぎだと思うが、まあこの人に威厳を持った態度とか無理だもんね。

元々はただのサラリーマンで、そこから3年ぽっちしか経っていないもんね。

 

「じゃ、じゃあコーヒーで」

 

同じようなノリでシンジさんから言葉が返ってきた。

 

「おい、シンジィ⁉︎」

 

それを聞いたガドラさんが血相を変えて叫ぶ。

そりゃまあ、そうだよね。

魔王に気安く接するなんて、普通は自殺行為だもんね。

それを叔父さんが宥める。

 

「まあまあ。それで、ガドラさんは?」

 

「ワ、ワシですか? それじゃあ、その、シンジと同じ物でお願いします」

 

そして、残り2人も脂汗を垂らしながら無言でコクコクと頷いている。

同じ物で良いらしい。

 

「シュナ、アメリカンを4つ!」

 

「はい」

 

シュナさんは返事をすると、コーヒーの準備を始めた。

3人組がそれに過剰に反応している。

そんなに驚く事か?

 

「え? あ、アメリカン⁉︎」

 

「もしかして、薄くない方が良かった? じゃあ、ブレンド? それとも、我が国自慢の“テンペスト”にする?」

 

“テンペスト”か。

アレ美味いんだよね。

だから、個人的には“テンペスト”を推すね。

だが、3人はそういう問題じゃあないと言った様子だ。

 

「いやいや、そういう意味ではないんです。あの、ですね……」

 

「うん?」

 

「その、リムル陛下ってもしかして“異世界人”だったりします?」

 

「そうだけど? ていうか、今更だな。西側諸国じゃもう有名な話なのに、知らなかったのか?」

 

どうやら叔父さんが“異世界人”なのではという疑問を持ったようだな。

しかし、本当に今更だな。叔父さんも言った通り西側諸国じゃあ、もう有名な話なのに。

そういや、ギィさんも知らなかったね。

思いの外、知れ渡ってないのかな?

だが、ガドラさんが「しまった、伝えるの忘れておった!」という表情を浮かべている。

なるほど、知ってはいたんだろうけど3人には伝えていなかったという事なのだろう。

その後、シュナさんの淹れたコーヒーが全員へと行き渡る。

そして、それを見てシンジさん達が感動の表情を浮かべているのが分かる。

もしかして、帝国にはコーヒーは無いのだろうか?

シンジなんか、一口飲んで「これ美味しいですね」と明るい表情を浮かべているし。

まあ、それをガドラさんに睨まれてしまっているけど。

それを宥めた後、叔父さんは表情を変えた。

 

「さて、それでは詳しい話を聞かせて貰おうか」

 

その言葉で、一瞬ピリリとした空気が走った。

 

「実はワシ、転生者なのですじゃ」

 

でしょうね。

どうやら3人は初耳だったようで目を丸くしていたが、アダルマンの言葉から察するに転生したのであろうと考えるのが自然だった。

ただし、叔父さんのように異世界から転生したものではなく、魔法を使用してこちら側の世界の中で転生を繰り返しているといった感じだ。

ガドラ老師は、大昔から魔導を極めようと欲しており、何度も転生を『輪廻転生(リインカーネーション)』にて繰り返し行っていたそうだ。

そして、生まれ変わっては各王宮にて秘蔵されている魔導書を読み漁って、膨大な知識を蓄えたんだと。

そんな中、隠れて魔法研究を行っていた時に知り合ったのがアダルマンで、あっという間に意気投合して親友になったそうだ。

 

「先程も申しましたが、ワシは西方聖教会に恨みがありました。我が友であるアダルマンを殺された恨みが。そこで、何百年と計画を練り、東の帝国を扇動して西側に攻め込ませる事にしたのです」

 

うん、なるほど。

つまりはこの爺さんが原因であると。

まあ、それは後で問い詰めるとして、ガドラ老師は自分の身の上話を始めた。

ガドラ老師は、アダルマンが七曜の老師の罠に嵌められたのを知り復讐を誓った。

そのまま単身で帝国へと向かい、そのまま信用を積み重ねたのだそう。

300年前にはヴェルドラさんとの戦いも経験していたらしく、中々にぶっ飛んだ経歴を持っていた。

 

「いやはや、事前に転生の儀式を済ませておいて正解でしたわい。この目で、自然に生み出された“魔”の力の極限というのを見ておきたかったのです」

 

ガドラは実際に戦った経験から、帝国軍がヴェルドラさんに勝てるとは思えないとの事だ。

因みに、ヴェルドラさんは俺の隣に座っているのだが、その事を言われてかなり嬉しそうだ。

まあ確かに、この人の強さは凄いもんね。

直ぐに調子に乗りやすいなど性格面が残念だけど……。

そういえば、ガビルも直ぐに調子に乗る事が多いし、ミリムさんもちょっと煽てると直ぐ鼻高状態になるし。

あれか? ドラゴン系種族は調子に乗りやすい奴が多いのか?

おっと、話が脱線した。

俺がそんな事を考えている間にも、ガドラ老師の話は続いた。

 

「戦術的には勝てるやも知れませぬが、あのバカ共はヴェルドラ様を支配しようと考えておるようでしたな。ハッキリ言ってワシ、そんな事は無駄だし、何より不可能なのだから諦めろと何度も何度も忠告したのですじゃ。第一、ワシの目的はルミナス教に対する復讐ですので、ヴェルドラ様と戦って無駄に戦力を割くような事はしたくなかったのですじゃ」

 

一応、その辺の見る目は持ち合わせていたみたい。

それで必死に現実を説き伏せようとしたそうだが、自分達を過大評価している軍団長を始めとする帝国軍将校は聞く耳を持たなかったらしい。

でもまあ、そうなる原因作ったバカは誰でしょう?

そう、ガドラ老師です!

 

「つまり、帝国が戦争を始めようとしているのは、主に貴方のせいであるという事ですかね?」

 

叔父さんがその事について冷めた表情をしてガドラ老師を問い詰めている。

 

「ま、まあ、それもある、と言いますか……」

 

言葉を濁しているが、逃げ場なんてないと思うよ。

無駄な言い訳しない方が自分のためじゃない?

叔父さんも、ガドラ老師をジト目で見つめている。

そりゃそうだよね。

この人がいなければ、戦争なんてせずに済んだのであろうから。

 

「違うのですじゃ! 帝国は元々覇権主義でしてな、方向性を定めてやらねば、各地に戦火が飛び火するのです。そこでワシは、西方へと目を向けさせただけでして。まあ、ワシの目的ともがっちりしましたし、都合がいいかな……なんて」

 

いや、良くねーよ!

こちとら完全にとばっちりなんだよ‼︎

それにしても、この人こんなにヤンチャで軽い人だとは思わなかったな。

もっと厳格な人物だと思っていたのだが、人は見た目で判断してはいけないというのは本当にその通りだな。

 

「ワシとしても、ジュラの大森林への侵攻は反対だったのですじゃ。この森には“暴風竜”ヴェルドラ様がおりますし、今となっては新参とはいえ油断ならない魔王リムル陛下が治めております。前回のような失敗をしないためにも、ドワーフ王国の調略に力を入れるよう進言しておったのですが、なにぶん頭の固い者が多くてですな、武力で全てを解決しようとしておりまして……」

 

あれ、今ヤバい事言わなかったか?

 

「おい、ちょっと待て! 帝国ってやっぱりらドワーフ王国にも手を出すつもりなのか?」

 

叔父さんが急に質問した。

今のはやはり空耳じゃなかった。

 

「お気づきでしたか。手を出すという程の具体的なものではないのですじゃ。ワシの案としては、ガゼル王に同盟の申し入れを行い、軍事行動を見逃してもらうというものでした。ワシの恨みは西方聖教会にのみ向けたものでしたので」

 

アダルマンが無事なのは、既にガドラ老師も知っている。叔父さんはこの面会が終わったら会わせる約束をしたとのこと。

だからこそ、ガドラ老師は自分の計画の空回りっぷりを自覚しており、今となっては反戦派の立場に転向しているという訳だ。

向こうの皇帝とも懇意にしているそうだが、侵攻計画撤回を奏上できる程の立場にはいないらしい。

そこで、帝国の御前会議では反戦を主張してくれる事になった。

あまりに都合が良すぎる態度だが、叔父さんとしては戦争回避が最優先である以上、その辺の文句は控えていた。

それに、この際とばかりに叔父さんは聞き出せるだけ情報を聞いている。

俺のいる別室には、俺の他にもベニマルや紅炎衆(クレナイ)はじめとしたテンペスト軍の幹部達が待機して、聞き耳を立てながら作戦会議中である。

 

「でもさ、同盟の申し入れをガゼル王は了承しなかっただろう」

 

「当然ですな。そこで、暗殺するという手段も検討されておりましたが、それにはワシは反対だったのです。どうせやるなら、正面から打ち破れ、とね!」

 

それが難しいから暗殺とか考えるんじゃないの?

そして、その事を誇らしそうに話すんじゃない!

ていうか正面から打ち破ろうとしたら余計に戦力割かないといけなくなるんじゃない?

まあ、して欲しくないけど。

うーむ……イメージ像とどんどんかけ離れていく。

もうさ、呆れを超えて逆に感心するわ。

叔父さんも呆れつつではあるが、しっかり情報を引き出していく。

帝国軍の内訳や、上層部の考え方。中には、ユウキのクーデター計画など驚きの情報も含まれていた。

そして最後に、軽い感じで本音を語った。

 

「ワシ、これといって帝国に義理や忠誠心など無いのですよ。ワシが手塩にかけて育て上げた魔法軍団も解体され、部下まで取り上げられてしまいましたのです。シンジ達はワシの弟子だったので、借り受けておるのです。アダルマンが無事……とは言い難いですが、元気にしてあるのであれば、向こうに未練はありませんな」

 

根っからの自己中心主義者(ナルシシスト)じゃねーか!

自分から忠誠心など無いと言い切るとはもう衝撃だよね。

 

「そんな訳ですので、これからはリムル陛下の配下の末席にでも加えて頂けましたら、粉骨砕身働く所存です!」

 

どの口が言う!

さっき忠誠心など無いって言い切ってたよね?

それを聞いて、俺の同じ部屋にいるベニマルに至っては今にもブチ切れそうである。

こりゃ早く鎮火しないとヤバそう……。

 

「お、おーい、ベニマル。落ち着けって……」

 

「これが落ち着いていられますか……!」

 

「な、なんなら利用するだけ利用して、最後にポイ捨てするという手段もあるし、多少はね……」

 

「なるほど、それは名案ですね」

 

俺の言葉に冷徹な笑みを浮かべるベニマル。

半分冗談のつもりで言ったのだが、コイツは本気でやりそうだ。

本当にやらかさないように気を付けないと。

 

そして後日、ガドラさんは客分扱いとして仮雇用する事になった。

まあ、自分で配下になりたいと言ったんだから、存分に働いてもらわないとね。忠誠心無いとか言ってたけど。

ちなみに、あの3人組はこのまま魔国連邦(テンペスト)に移住する事になった。

少しゆっくりした上で、今後の身の振り方を考えるそうだ。

まあ、裏切ってくれたら真っ先に追放だけどね。でもまあ、それは多分しないだろうね。

追放されるのは絶対に嫌だったそうで、3人組は誓約までしてくれた。

ただし、ユウキの事を尊敬しているらしく、ユウキへの敵対行動はしたくないとの事だ。

だけど大した問題ではないね。

 

「そもそも、俺達とユウキ一派はややこしいんだよ。今は休戦中というか、そんな感じ。腹の立つ事も多いし、仕返ししたいのもあるんだけど、何となくアイツの事は憎めなくてね」

 

叔父さんが3人組に対してそう話していた。

これには俺も思うところがある。

実際、数少ない同郷者で助けてもらった恩もある。

俺としても完全にはユウキは憎め切れないのだ。

だからこそ、裏切られたショックもデカかったのだけど。

 

「でもさ、お前達もアイツの事は信用しすぎるなよ」

 

最後に叔父さんは3人組に向けてこう言った。

そりゃそうだな。

あんなゲス野郎を信用してたら命がいくつあっても足りない。

そして、何故かガドラさんがその言葉に頷いていた。

ガドラさんも、ユウキと何かあったんだろうね。

その後、叔父さんは約束通りアダルマンとガドラさんを引き合わせた。

かなり嬉しそうに互いを懐かしんでいたね。

そして、ガドラさんは当分の間はアダルマンが預かる事になった。

だが、それは帝国での仕事を終えてもらってからだ。

まずは反戦活動をしてもらう。

だがまあ、これはガドラさんの話から失敗する公算が高い。

未来でも戦争になった訳だし。

そこで、二の策として敵を迷宮に誘い込んでくれるようにしてもらった。

あそこなら聖人級や仙人級がまとまってやって来ない限り、打ち崩す事はできやしない。

それに、迷宮内であれば仲間を復活させることができる。

なので、叔父さんはガドラさんに“復活の腕輪”や魔国連邦(テンペスト)で新開発した穴空き武器を始めとした迷宮で獲得できる装備品をいくつか渡した。

これを餌に誘い込んでもらう。

戦略的に考えてこの町や迷宮を素通りするなど考えにくいが、更に富が手に入るとなると間違いなく食いつくだろう。

そしてそれを利用すれば、敵に同情するレベルで圧勝できるはずだ。

そして、それをガドラさんは快く了承してくれた。

強欲な指揮官にも心当たりがあるらしく、かなり自信満々だ。

こうして、亡命してきた4人仲間を新たに加え、帝国戦に備えることとなった。

 

 

 




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