転移高校生は転生魔王の甥っ子だった件   作:Many56

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唐突なのですが、読者の方々に質問があります。
アユム君の能力にはモデルがあります。
多分気づかない人がほとんどだと思いますが。
ヒントはあるSF作品で、前書き後書きのパートでネタを使った事もあります
分かったらメッセージ機能でメッセージをお願いします。(感想稼ぎの防止と答えが他者にバレるのを防ぐためにも、感想蘭への返信は行わないで下さい)
正解したところで何かある訳でもありませんが、答えてくれたら嬉しいです。モチベ維持に繋がります。
正解は次回のエピソードの中に入れる予定です。
さて、アニメ転スラですが、ヤムザとミッドレイとヘルメスが登場しましたね。
まあ、ミッドレイとヘルメスは日記で先行登場してましたが。
次回はやっと白氷宮の面子が登場ですね。
ヴァルザード姉さんやメイド2人は誰が演じるのでしょうね?


第17話 戦争準備(後編)

 

 

 

叔父さんの言葉で、会議が開始された。

モニターには、現在の帝国軍の動向が映し出されている。

その中でも、特に目立つ兵器が2種類あった。

まず一つ目。

土煙と轟音を立てながら走行するデカい鉄の塊。

戦車である。

 

「まさか、戦車があるとはな……」

 

叔父さんがそう呟く。

やはり俺の想像通りだったようだ。

ガドラさん曰く、帝国では“異世界人”の知識   科学技術による近代兵器の開発が推し進められていた。

ガソリンなどの代わりに魔素を利用した内燃機関を搭載し、大気を循環させてエネルギーを得るシステムらしい。

汎用性も高く、単純なカタログスペックならば現代の最新鋭戦車も軽く凌いでいるとの事だ。

しかも、エネルギーを消耗するが、軽く地面から浮き上がる事もできるらしい。

そしてそんなヤバいやつがおよそ2000台ある。

俺や叔父さんの記憶から、戦車というものを全員に共有する。

 

「なるほど。俺達なら問題になりませんが、下っ端の兵達では厳しそうですね」

 

というのはベニマルの言葉だ。

確かに、下っ端兵では相手にならないな。

 

「アユムに感謝だな。お前のおかげでアレ相手でも問題なく対応できる」

 

「だから言ったでしょ?」

 

俺は叔父さんにそう返した。

やはり作っておいて良かった。

数は100倍もあるけどね……。

まあ、そこはあの手この手を駆使してカバーするとしましょうか。

2つ目は、空飛ぶ船   飛空船だ。

こいつも中々ぶっ飛んでいる。

最高速は音速を超えており、魔法増強砲という兵器が搭載されている。これは、10人の魔法使いが魔力を流し込み、大魔法を操るというものだ。

これを5門搭載している他、副兵装として多数の機関銃が配備されている。

そして輸送能力もかなり高い。

戦闘も行える輸送機と言ったイメージだ。

アレがあれば、輸送が格段に楽になるし兵站の問題も簡単に片付く。

というか、この世界には領空や制空権という概念が無いので、対空兵器が無いし、対空警戒もされてないので北の海の上空を通ってイングラシア王国あたりでも攻めに来れるだろう。

案の定、北の海を目指している飛空船が200隻ほど確認できた。

それにしても油断していた。

制空権はこちらが一方的に確保できると楽観視していたのだ。

テンペスト軍の第3軍団はガビル率いる航空部隊が空を制圧し、一方的に攻撃ができると思っていたのだが、それは間違いだったと思い知らされた。

だが、それは俺がいなければの話である。

既にトマホークやハープーン、スタンダードなどの各種ミサイルも製作済みだ。

充分対処できるだろう。

だがしかし、圧巻の戦力だ。

初めて目の当たりする者達は、唖然とした表情でモニターを眺めている。

 

「帝国軍の総数だが、推定で100万! まあ、見ての通りだ。帝国側の戦力や兵器群に驚いたと思うが、俺達が優位なのは変わらない。だから、安心してくれ」

 

そりゃそうだ。

こちら側は帝国軍の大まかな戦力を既に丸裸している上に、侵攻ルートもバレバレなのだ。

一方、帝国軍はこちら側の戦力の完全把握はできていないだろうし、気付かれてないから奇襲できるだろうとさえ考えているだろう。

敵を掌の上で転がすというのはこれほど気持ちいいとは思わなかった。

 

「ガドラからの情報だと、帝国軍には三大軍団が存在する。その内の一つ、機甲軍団に中に、この映像の戦車部隊がある。『魔導戦車師団』の通称で呼ばれていて、敵の主力部隊と考えて間違いない」

 

そこから、叔父さんは戦車部隊の内情を説明していく。

ガドラさんは作戦会議にもしっかりと参加し、その内容も全て教えてくれたらしい。

ガドラさんの逃亡は向こうも把握しているだろうから、作戦変更されているかもしれないが、大筋での変更はないだろう。

また、ユウキがクーデターを企んでいるらしく、他の軍団長をかき回すためにも、ガドラは死んだから警戒の必要は無いと主張するはずだ。

そしてガドラさん曰く、機甲軍団の軍団長であるカリギュリオ大将という人物が、叔父さんのエサに食い付いたんだと。

地下迷宮(ダンジョン)には多くの宝があると思い込んで抜け駆けしようと企んでいるようだ。

ならば、余計に作戦の変更されない確率は上がる。

思い込みで行動するのは危険だが、カリギュリオの差配を見れば敵の行動目的も推測できるだろうというものだった。

そして叔父さんの説明が終わった辺りで、ゴブタからの質問だ。

 

「あのう、宿場町に待機させている自分の軍団っすけど、あの戦車ってやつの部隊と戦う事になるんすか?」

 

宿場町というのは、テンペストからドワルゴンに向かう街道と、シス湖に流れるアメルド大河の重なる地点にある、大きな町だ。

現在、そこには第1軍団が待機しており、いつでも動けるように準備している。

また、そこに住んでいる住民達は魔導列車で首都リムルまで避難中である。

 

「何を聞いているんだ、当たり前だろう? お前の率いる第1軍団で、この戦車部隊を潰す事になるんだぞ」

 

「き、聞いて無いっすよ……」

 

ショックでフラフラになりながら、ゴブタは呟いた。

 

「もしかして、自分達が宿場町を死守しなければならないんすか?」

 

ゴブタがもう可哀想な顔をしている。

今にも死にそうな雰囲気だ。

 

「んな訳ねーだろ⁉︎ 聞いた限りの戦車の性能じゃあ、第1軍団でもやりようによっては勝てるが、どれだけ被害が出るか想像がつかん。そもそも、攻めるより守る方が難しいし、実戦経験の少ない緑色軍団(グリーンナンバーズ)ではほとんど戦車の的にしかならないから、死守は作戦に無い」

 

ゴブタを安心させるために、叔父さんがそう話した。

ゴブタのサポートであるハクロウさんは、ウンウンと頷きながら聞いていた。

最初から考えは分かっていたようだ。

 

「それじゃあ、どうするんすか?」

 

「それを考えるのが軍団長の役割なんだが、最初からは無理だよな。ベニマル、説明よろしく」

 

叔父さんの言葉をベニマルが引き継いだ。

 

「宿場町は重要拠点ではあるが、失ったところで困りはしない。壊されたなら、再建すればいい。奪われたなら、奪い返せばいい。問題となるのは、住民に被害が出る事だ。しかし、これについてはリムル様が予め対策済みだ。あそこの住民には、首都への避難命令を発布させている」

 

「あ、そういえば人は少なかったっすね」

 

「そういう事だ。お前の任務は、残った住民も安全に避難させる事だ。そして、それが終わったらここに向かえ」

 

そう言ってベニマルが指し示したのはテーブルの上に広げられた大きな地図のとある地点だ。

武装国家ドワルゴンの中央都市セントラルだ。

 

「へ?」

 

「この映像を見てみろ。帝国軍は部隊を分けて、いくつかのルートで侵攻中するつもりらしい。既にジュラの大森林内に突入した部隊もあるが、戦車部隊に大きな動きは無い。侵攻ルートを見るに、カナート大山脈の麓に沿って移動するつもりなのが明白だ。戦車はデカい図体を持っている。密集した樹木の場所を通ると、部隊の進軍に何かと不便だからだろうな。その結果、木々の密度が少ないこのルートという訳だろう」

 

「な、なるほどっす……」

 

「お前、本当に分かっているのか? まあいい。お前の目的はドワーフ王国の防衛だ」

 

そう言いながら、ベニマルはゴブタを模したコマをドワーフ王国の前に置く。そして、次に取り出したドワーフ軍を表すコマをゴブタのコマと並べて置いた。

 

「ドワーフ軍との共闘だ」

 

「おお‼︎」

 

ゴブタもようやく理解して、興奮している様子だ。

ガドラさんの情報では、帝国はドワーフ王国を狙っている。

既に叔父さんはその事を伝達しており、ドワーフ王国側も援軍に向かうと約束してくれたそうだ。

 

「帝国軍の狙いは、目立つ場所を通る事で、そこから攻めますよと俺たちに知らせるためだ。これだけ派手に動けば、誰でも気付くからな」

 

「えっと、確か示威行為って言うヤツっすね」

 

ゴブタのくせに難しい言葉を知っている。

どうやら、彼なりに勉強はしているようだ。

 

「その通り。このルートは、ドワルゴンとテンペストの境界線上に当たる。両国は必ず気付く。そして、ここはその出方を伺うのに最適な地点だ。下手にチョッカイを掛けようものなら即開戦だろう。もっとも、こちらからの手出しは厳禁だから、まずは警告から入る。ここまではいいな?」

 

「はいっす!」

 

「俺達から手出ししなければ、帝国軍はアメルド大河を越えて、ドワーフ王国の正面入り口を俯瞰する場所に出るだろう。その場所は樹木の無い平野部が広がっているから、軍を展開するには最適だ」

 

「なるほど……」

 

「ここまでされると、ガゼル王も黙っていられないだろう。向かい合う形で軍を展開させて、相手との交渉に入る訳だ。それは俺達も同様で、帝国は我らテンペストとドワルゴンを敵に回すことになる」

 

ベニマルはそう言いつつ、地図上のコマを動かしていく。

視覚的にも分かりやすい。

 

「ガドラ殿の説明だと、帝国はドワーフ王国軍とテンペスト軍な挟撃を恐れていたとの事だが、この地点を抑えられた以上それは成立しない。相手が待ち構えているところへの奇襲は、戦術的に意味を持たない。だから、最初から迎え撃つんだ。そして、正面から叩く!」

 

「おおっ‼︎」

 

ゴブタから感心した声が出る。

他の皆も声には出してはいないが、かなり興奮している。

 

「アユムも極秘に戦車の開発を進めていてくれた。数は少ないが、それをゴブタ達のサポートに回そう」

 

「え、そうなんすか⁉︎」

 

俺の新兵器開発は結構知られていない。

実際、敵に戦車などがなければこちらも運用する予定は無かったからだ。

話を聞いていた皆も驚いている。

 

「ああ。俺の遠隔操作だから、使えるのは20両が限界なんだけどな。だが、性能はこちらの方が上だ。数の差が大きいものの、性能差と第1軍団の戦力を考えれば充分対抗できる」

 

特に、防御装甲が段違いになっているはずだ。

帝国の戦車もかなりの防御性能を誇るが、弓矢や投石、通常の魔法程度の対策しか講じられていないと思われる。

しかし、こっちの戦車の正面装甲は核撃魔法『熱収束砲(ニュークリアカノン)』を食らってもびくともしないし、側面も超高等爆炎術式に耐えられるだけの防御性能を持っている。帝国軍の戦車でこちらの戦車を撃破するには、装甲の薄い背面や天板を狙う必要があるだろう。

また、最高速は同等だが、加速と減速は優っているだろう。

その上、俺が元いた世界の最新鋭戦車が搭載しているような滑腔砲や砲安定装置、射撃統制装置も導入している。

単純な性能面では確実に優っているはずだ。

 

「まさかそんな物が用意されているとは。こいつは頼もしいっすよ!」

 

「ゴブア!」

 

「ハッ!」

 

ベニマルに呼ばれたゴブアが跪く。

 

「お前には、アユム様の護衛をしてもらう」

 

「承知しました」

 

「おいちょっと待て、ベニマル。護衛なんか要らないって」

 

「そういう訳にもいきませんよ。そもそも、アユム様ご自身が戦場に出向かれる事自体、許容し難いのですから」

 

それもそうだよね。

勝つためには戦車の戦力は欲しいが、機密情報だったために運用できる人員が俺しかいない。

だから俺が戦場に出向く必要がある訳だが、正直俺に戦わせたくないというのは普通か。

何が何でも護衛つけられるだろうから、ここは諦めよう。

 

「分かったよ」

 

「ご理解頂きありがとうございます」

 

ベニマルはそう言うと、ガビルに視線を向けた。

 

「第3軍団長ガビル!」

 

「ハッ!」

 

「お前の役目は避難する住民達を警護する事だ。上空から遅れている者や遭難しそうな者がいないかを監視し、適切なサポートをしてくれ」

 

「承知ですぞ!」

 

「そして避難誘導が完了し次第、第1軍団の応援に向かえ。上手くいけば、帝国軍の到着する前に合流できるだろう」

 

「吾輩の第3軍団はテンペスト一の機動力を誇ります。間に合わせて見せましょう!」

 

ベニマルの言葉に対し、ガビルが自信満々に答える。

しかし、現実的に見て少々厳しいと思われる。

住民達の避難の際には列車をフル稼働させる予定ではあるが、それでも数万人もの人数を移動させるには時間がかかる。

それに対して、帝国軍は軍団魔法(レギオンマジック)の効果を含めて考えると、1日に80kmは進むとの事。

現在、帝国軍は国境線付近に留まっているが、そこから開戦予定地までは1500km程だ。20日もかからずに、帝国軍は開戦予定地に到達できる。

何故これ程の行軍速度が出せるかと言うと、兵士の1人1人に改造手術というのが施されているからだ。1週間は飲まず食わずで活動可能らしい。

また、戦車が補給無しで走行可能な速度がおよそ10km/hらしい。

魔素を取り込むのは夜間でも可能なので、戦車のエネルギー補給に合わせて休息を取るだろう。

 

   という事だから、こちらの想定以上の速度で帝国軍が到着する可能性がある。各々油断しないように!」

 

そして一拍置いて、ベニマルは次の説明に入る。

 

「さて、ここで帝国軍の主力が展開する訳だが、これはゴブタの言う通り示威行為。即ち、陽動だ。本命の部隊は、ここを直接狙って動いている!」

 

そう言いながら、ベニマルは新たな帝国軍のコマを取り出し、ジュラの大森林上にバラバラに置いていく。

戦車部隊を主力に見せて、本隊は別に配置する。

森の中に拡散している上、隠密行動を取っているので通常では見つけるのは至難だ。しかし、『神之瞳(アルゴス)』で敵の初動を確認し、森の中に入る前からソウエイやモスなどの諜報部隊がマークしているので、動きは完全に丸見えだ。

なんなら、分散している今の内に各個撃破するという策も取れる。

だが、人的損害を0にするには迷宮に誘うのが確実だし、後続の本隊がやってきたり、こちらの策がバレて一気に合流され、時間稼ぎされてる内に包囲されても厄介だ。

 

「万が一、こちらの想定を上回る事態が発生したとしても、この地の守りにはゲルドがいる。ゲルド、お前は早急に各地から配下を呼び戻しておいてくれ」

 

「既に『思念伝達』で通達済みだ。間もなく、全員が俺の下に集結する」

 

「よし。こちらの本命部隊は隠れ潜むように行動を続けるだろう。残念な事に、リムル様の編み出した物理監視魔法『神之瞳(アルゴス)』では、森の中の様子までは分からない。そこで、ソウエイの出番だ」

 

その言葉にソウエイが頷き立ち上がった。

 

「森の中では木々が深々と生い茂っているため、上空からの監視は難しい。配下を潜ませるにも、範囲が広大すぎる上に発見される危険性がある。そこで、モスの力を頼る。モスは極小サイズの『分身体』を大量に放ち、情報収集ができる。『分身体』に戦闘面では期待出来んが、やられたところで問題はない。また、アユム様の開発した小型ステルス警戒装置も大森林の各地にばら撒いたので、『神之瞳(アルゴス)』の弱点を充分にカバーできる」

 

ソウエイが言った通り、『神之瞳(アルゴス)』の弱点を補うために、小型の警戒装置を大量に生産したのだ。

小型でステルス性が高く、人の存在に反応してこちらに警告してくれる素晴らしいシステムだ。

 

「これらの情報によると、小隊規模に分かれた帝国軍がこの町を目指して進軍中である事が分かっている。それ故に、個別に潰すのも我々の意のままだ」

 

ソウエイがうすら笑みを浮かべている。

中々怖い顔だ。

本当に味方で良かった。

ベニマルの作戦は、あえてある程度纏まるまで待つとの事だ。

 

「帝国軍の狙いが地下迷宮(ダンジョン)ならば、誘い込んだ上で始末する。地上に残った部隊があれば、ゲルドの第2軍団と俺の第4軍団でこれを撃破する。以上だ!」

 

「「「おう‼︎」」」

 

ベニマルの言葉に全員が頷いた。

 

「よーっし! アユム様の戦車にガビルさん達が来てくれるなら安心ってものっす! これで勝利はオイラ達の物っすね‼︎」

 

「そう言ってくれると嬉しいものである。必ずや帝国軍を蹴散らして見せましょうぞ!」

 

「出番が無いのではと心配したが、流石は総大将ベニマル殿。本国の守りという、最大の栄誉を残しておいてくれるとはな。我らの力、存分に振るわせてもらうとしよう」

 

各軍団長がベニマルの檄にそれぞれ応える。

文官の皆も興奮しながら意見交換をしている。

悲壮感の欠片もなく、悪魔3人娘達も楽しそうに会話している。

そんな中、1人不安そうな顔をしている人物がいる。

リムル(叔父さん)だ。

それを察したベニマルが叔父さんに言った。

 

「ご安心下さい、リムル様。俺達は負ける心配などしてはいません。ですが、それは負けると思っていないからではなく、全力を尽くして戦うためにです。勝てるだけの理由があり、華々しい戦場がある。これで負けたのであれば、自分達が無能だったのだと、弱肉強食の掟に従うまでです」

 

爽やかな笑顔でそう言った。

他の皆も同じ考えのようだ。

 

「そうか、分かった。テスタロッサ、ウルティマ、カレラ!」

 

「「「ハッ‼︎」」」

 

叔父さんに名前を呼ばれた3名が立ち上がった。

 

「お前達は各軍団長に付き従って、その行動をサポートしろ!」

 

「承知致しました、リムル様。評議会の方については、既にシエンに任せております。この戦争が終結するまではわたくしも戦いに参加させて頂きますわ」

 

「やっとボクの出番だね。任せて下さい、リムル様!」

 

「ふふふ。我が君、期待してくれ。私の力、存分に発揮しようじゃないか!」

 

三者三様に答える。

彼女達も活躍の場を与えられて嬉しそうだ。

それに叔父さんは頷き、3人をそれぞれ紹介する。

ゴブタにはテスタロッサが、ガビルにはウルティマが、ゲルドにはカレラがそれぞれついた。

 

「大丈夫っすかね? こんな戦った事も無いような女性には第1軍団は務まらないっすよ?」

 

ゴブタが怖い事を言う。

流石は考え無しに地雷を踏み抜く天才である。

 

「あら、頼もしいですわね」

 

テスタロッサの目を直視できない。

顔は笑っているけど、その目は……いや、これ以上はよそう。

はてさて、ゴブタが彼女の正体を知ったらどうなる事やら。

一方、ゴブタ以上に調子に乗りやすいガビルは意外にも礼儀正しく接している。

 

「我輩には至らぬ点が多い故、宜しく頼むのである」

 

ウルティマに頭を下げてそう言った。

ディアブロや他の魔王の方々曰く、悪魔の中でも一番残忍な性格をしているのがウルティマらしい。暴走しやすい面ではカレラだが、一番恐ろしいのはウルティマなのだと。

叔父さんの命令に従いつつも、抜け目を探して報復しそうなんだよね。

なので、ガビルの行動は正解だった。

 

「ボクの方こそ宜しくね!」

 

ウルティマは可愛らしく返した。

最近のガビルは、調子に乗らないように戒めている。

それが功を奏したな。

ゲルドの方は、何の問題もなくカレラと打ち解けている。

どちらも武人気質なので、それが上手く噛み合ったようだ。

さて、悪魔3人娘の正体を知っている者は少ない。

叔父さんが緘口令を敷いたし、3人にも自重するように申し付けているしね。

でも今回の戦争で、話す必要が出てくるだろう。

だってコイツら何かやりそうだもん。

戦いにおいて、この3人ならば何があっても問題ない。

だが、それが逆に問題になりそうなんだよな。

まあ、配置しなかったが故に犠牲が出るよりかはマシである。

 

「さて、これで会議は終了だが、他に何かある者はいるか?」

 

叔父さんの言葉に対し、勢いよく挙手する者が1人。

マサユキである。

 

「あの、ちょっといいですか?」

 

「何かな、マサユキ君?」

 

「ええとですね、僕が軍団長なのかってのは置いておいて、僕に預けられた軍団   義勇兵団の出番っていうか役割というか、その辺りの説明が何も無かったんですが……」

 

ああ、そこか。

そういえば言って無いなこのオッサン。

 

「悪いな、いきなり大役を押し付けちゃって」

 

「え、いや……」

 

「だが、町の住民の心を落ち着かせるには、俺よりマサユキの方が向いてるんだよ」

 

叔父さんは、マサユキに説明した。

まだちょっと分かっていなさそうだ。

 

「魔物達は、士気が高いし治安を乱したりしないだろうけど、移住してきた者達は違うからね。戦争となると、不安になる者も多いと思う。そういった者達の心の拠り所になって欲しいって事さ」

 

俺はマサユキに耳打ちした。

 

「ああ。それなら、僕の力も役に立ちそうだね」

 

俺の説明で納得してくれたようだ。

 

「ワッハッハ、ご謙遜を! マサユキ様は“勇者”の立場でいらっしゃれる。一国に与するのを望んではおられぬ事は、このミョルマイル以下、誰もが理解しておりますとも! しかし、ここは力無き民達のため、是非ともそのお力をお貸し下さい!」

 

ミョルマイルさんがキラキラした目でマサユキを見ながら、そんな事を言い出した。

未だに、マサユキの実力を勘違いしたままだ。

そういえば、ヒナタさんもマサユキの事を勘違いしている節があるみたいだしね。

やっぱり『英雄覇道(エラバレシモノ)』の影響って凄いね。

実質的に、究極能力(アルティメットスキル)じみてるもんね。

マサユキ、恐るべし。

 

「あはは……そうですね」

 

嫌そうなのを必死に堪えながら答えるマサユキ。

もうウンザリという心情がありありと見て取れる。

哀れにも思うが、俺だってサポートするので頑張って欲しいな。

 

「では、僕の預かっている義勇兵団で、治安維持に努めます」

 

「ああ、頼む。知っていると思うが、ラミリスの力のおかげで町への被害は最小限で済む。戦争が始まったら、地上の都市部も迷宮に隔離される手筈なんだよ」

 

これについては、幹部や関係各所に通達済み。

取り締まったりとかはしていないから、避難訓練の際に逃げ遅れた者達から噂話が流れているだろう。

そうやって、少しでも不安解消に繋げようという思惑もあった。

 

「まあね! アタシの力も凄いけど、それは師匠のおかげってワケなのよさ!」

 

「うむ。我の強大すぎる魔素(エネルギー)をラミリスに貸し与える事で、この大技を成し得ているのだ。言ってみれば、友情の勝利というヤツだ」

 

「2人ともありがとう。本当に助かってるよ」

 

叔父さんは2人に礼を言った。

だが、そんな事しようもんなら。

 

「え、そう? まあね、まあね、当然なのよさ! もっと褒めてくれてもいいんだよ!」

 

「クァーッハッハッハ! そうだぞ。もっと我らを褒め称えるが良かろう」

 

やはりすぐ調子に乗る。

 

「ハイハイ、アリガトウゴザイマス」

 

叔父さんもウンザリというのがありありと伝わってくる。

まあ助かっているのは本当だけどさ、調子に乗られても困るよね。

迷宮内に隔離すると言っても、外の空間と大して変わらない。

空だって見えるし、何が起きたか気付かない住民もいるくらいだ。

帝国軍の脅威に晒されることがないのは本当にありがたい限りである。

 

「しかしリムルよ、心するのだぞ?」

 

「ん?」

 

「万が一、いや、億が一の場合だけどね、師匠が倒されて100階層が突破されたら、その時は一気に町が迷宮の外に放り出されちゃうのよさ。無理してる反動ってやつなのよ」

 

「なるほど、そういう心配もあるのか。だが、それはヴェルドラが倒されたらだろう? そんな状況に陥ったら、町がどうとか言ってる場合じゃないだろうな」

 

「まあ、我が負けるなどあり得ぬがな」

 

「だよね! 迷宮十傑もいるし、その辺りの心配はいらないと思うワケ!」

 

「まあ、万が一の時にはマサユキもいるしね」

 

「ファッ⁉︎ ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 治安維持だけならともかく、そんな状況で僕に何が出来るって言うんですか‼︎」

 

「ちょっと叔父さん、冗談が過ぎるでしょ⁉︎」

 

マサユキに軍の指揮なんて無理ゲーである。

俺だって意見出すのが限界であり、指揮なんて出来ないだろうからね。

他の皆もさもありなんと頷いている。

あのミョルマイルさんも、それはそうだろうという感じだ。

 

「安心しろって、マサユキ。お前が軍団の指揮を取れるなんて思っていないさ。今ヒナタと相談しているとこなんだが、聖騎士団(クルセイダーズ)から補佐官を派遣してもらうよう頼んでいる。多分了承されるから、君の副官になってもらう予定だ。アユムもそこそこ軍事に精通しているし、大丈夫だよ」

 

「それなら安心できますね」

 

「それにだ! 子供達も護衛に……じゃなくて守ってやれよ!」

 

おい!

急に何吹っかけてんだよ。

 

「も、勿論ですよ」

 

マサユキは叔父さんの言葉に脂汗を流している。

マサユキも子供達の実力を知っている。

ようは、マサユキは守られる側なのだ。

安心しろ、まとめて俺が守るから。

それに、最悪の場合は俺より強いクロエがいるから問題無い。

 

これで会議は終了である。

万全の態勢を取ってはいるが、何が起こるか最後まで分からない。

何より不安なのが、叔父さんの死だ。

クロエの記憶の中   かつて存在した未来で、叔父さんは死んでいる。

帝国には、叔父さんを殺せるほどの強者が存在する。

それは紛れもない事実だ。

だからこそ、覚悟を決める。

何がなんでも、この人を守り抜くのだ。

俺のために、この国のために。

俺は決意を改めて、最後の準備を始めた。

 

さて、その後の住民説得は簡単に上手くいった。

流石はマサユキだ。

住民の間では、『魔王リムルを勇者マサユキが説き伏せて、町を守るように確約させた』という感じの話になっている。

 

「流石は勇者様だ!」

「頼もしい限りよな!」

 

という冒険者や移民達からの賛辞を、マサユキは一身に受けて複雑な心境のようだ。

2人きりの時の愚痴が、さらに勢いを増している。

そして、そんな表情さえも評価の原因になっている。

 

「勇者様な憂いの表情も萌えますね」

「あれだけの譲歩を魔王から引き出せたというのに、まだマサユキ様は満足されておらぬな」

「ああ、奥ゆかしい人よ」

「この町は勇者様が守って下さっている! ついでに魔王リムルだっているんだし、帝国軍が来ようと怖くねーぜ!」

「おう、全て任せていれば安心だ!」

 

そんな感じで解釈されてる。

閃光のパーティメンバーもそんな感じなので、さらにマサユキの心労がさらに重なる。

マサユキの苦悩に気付いているのは俺くらいなのだ。

 

そして平和な日々は終わりを告げ、戦争が始まろうとしていた。

 

 

 




最近投稿ペースが落ちてるのがネック。
しかも、以前投稿していた作品のリメイクが全然進まない……
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