転移高校生は転生魔王の甥っ子だった件   作:Many56

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どうも、前回やった質問の返信が全くなくて少しショックしてます……
(´・ω・`)<ショボン
答えは後書きの方にあります。
さて、アニメでヴァルザード役が井口裕香さんでしたが、私的にはちょっと意外でした。
ガルパンの冷泉麻子役やとあるシリーズのインディックス役のイメージが強かったので。
あとレインが喋らなかったんですよね……
ワルプルギス開催まで持ち越しでしょうか。
最近東方ダンマクカグラというゲームが配信されて、今ハマっているんですが、転スラではシズさん役の花守さんが演じてるフランちゃんがマジでカワイイです。
因みにアイコンは花守さんの事務所の先輩が演じているアリスになっています。
前書き長くてスイマセン。
それでは第18話開幕です‼︎



第4章 Tempest VS Empire of East
第18話 開戦


 

 

 

開戦に向けての会議から1ヶ月が経過した。

今日も今日とて管制室内にて帝国の動向を監視中である。

管制室には常に数名のスタッフが張り付いていて、24時間態勢の3交代制ですシフトを組んでいた。

さて、20日ほどで開戦すると言ったな? あれは嘘だ。←やりたかっただけ

嘘というか、予想外だった。

帝国軍はあえて速度を遅らせることで、自分達の威容を見せつけるように進軍している。

戦車など見たことない者達からすれば、その威容は凶悪な魔獣のように思えるだろう。

事実、森に住んでいるAランク以下の魔獣達だって、帝国軍を恐れて侵攻ルートから退避していた。

また、戦車部隊の侵攻が遅いのには、もう1つ理由がある。

それは、現在首都目掛けて侵攻中の歩兵部隊に足並みを合わせ、歩兵部隊が集結するまでこちら側の目を引きつけるためだ。

こっちは全力で隠密行動に徹している。

しかし、初動を『神之瞳(アルゴス)』で把握しているし森に入ってからはモスとソウエイの分身体が常にマークしている。

また、俺の作った警戒システムでも帝国軍の動きは把握している。

という訳で、帝国軍の隠密行動は徒労に終わっている。

さて、帝国軍の現在地は既に魔国連邦(テンペスト)領内だ。

西側諸国評議会(カウンシル・オブ・ウェスト)の定めた国際法では、他国への無断での立ち入りは勿論完全にアウトの案件だ。

というか、そんな法律が無くとも統治国側の許可無く他国の軍隊が軍事行動を起こしていたらどの国も黙っちゃいない。

何されても文句は言えないのだ。

こちらから奇襲を仕掛ける案もあったが、叔父さんの方針上それはナシ。

1度は交渉に臨むとの事だ。

 

「甘すぎるとも思いますが、こちら側の準備も整ってません。どの道、会戦して決着をつける以上、コソコソする必要もないでしょう」

 

ベニマルも余裕な態度で了承している。

という訳で、こちらも着々と準備を進めていたのだ。

 

そして、そんな日々が終わりを告げる。

帝国軍が進軍を止めて、布陣を開始したのだ。

さて、今一度おさらいしておこう。

 

「やはり、こっちが本隊で間違いなさそうだな」

 

叔父さんが指し示している森の中の歩兵部隊の総数はおよそ70万。

これは、侵攻中の敵軍総兵力のおよそ7割だ。

 

「そうですね。戦車部隊は囮であると同時に、ドワーフ王国を抑え込むのが目的なのでしょう」

 

俺もベニマルの意見に同意する。

 

魔国連邦(テンペスト)を攻めている隙に、ドワーフ軍に背後へ回られて挟み撃ちを受けないようにするため、ですね」

 

「これだけの大軍勢を用意しているというのに、随分と慎重な事だな」

 

「当然ですよ、叔父さん。何せ帝国はドワーフ王国と俺達、魔国連邦(テンペスト)を同時に相手しようとしているんですよ? 勝てるとは踏んでも、真正面からのガチ当たりでは勝機は薄いと判断しますよ」

 

まあ、策を張り巡らせたところで情報収集力のレベルが違うし、原初の悪魔や迷宮十傑といった魔王級の隠し戦力があるから結局意味ないんだけどね。

 

「まあ、そうした相手側の思惑の全てが俺達には筒抜けなんですがね。それにしても、情報を制すると、これほど優位に立てるとは思ってませんでしたよ」

 

ベニマルが苦笑しながら言った。

 

「クフフフフ、流石はリムル様です。全てはその手の平の上という事ですね!」

 

すかさず合いの手を入れるディアブロ。

相変わらず面倒くさい奴だ。

蒼き鋼の○ルペジオに登場する、あの面倒くさがりな“霧の艦隊”東洋方面第一巡航艦隊旗艦じゃなくてもコイツを相手にしてたら『面倒くさい』が口癖になりそうである。

 

「敵の歩兵共ですが、少々脅威度を甘く見ておりました。全員がそれなりに腕が立つようで、脱落者も無く首都リムルから30kmほど離れた地点に集合しております。そこに陣を張り、指揮所を設置していますね」

 

ソウエイが注意を促すように説明している。

叔父さんの『神之瞳(アルゴス)』や俺の警戒システムだけでは得られない情報をしっかりと補完している。

 

「ここまで接近されたら、俺達が反応しないのはかえって不自然かな?」

 

ふと思い出したように叔父さんが言った。

だが、それについては問題ないだろう。

 

「いや、そうでもないでしょう。奴らは自分達が優秀であると自認している上に、隠密行動を取っているつもりでしょう。我々を甘く見て、降伏勧告後に直ぐ動けるよう準備しているはずです」

 

「クフフフフ、私もベニマル殿の意見に賛成です。それに付け加えるならば、この30kmというのは絶妙な距離なのです。魔法による監視も、距離が離れれば精度も落ちますし、軍団魔法(レギオンマジック)による妨害によって、あの一帯は完全に無害。そう演出出来ていると思い込んでいるはずです。滑稽ではありますが、それがあの者達の限界でしょう」

 

叔父さんの心配に対して、ベニマルとディアブロが返す。

第二次世界大戦時に日本で開発された二二号電探の最大有効範囲も大型戦艦相手で約35kmだったし、それを考えれば魔法妨害込みでの30kmという距離は絶妙なのは間違いない。

 

「それでソウエイ、敵兵の強さはどれほどなんだ?」

 

叔父さんがソウエイに聞いた。

確かにそれは重要である。

戦力を見誤ったらヤバいからな。

 

「平均的な評価で、Bランク相当ですね。上位者ともなればAランクオーバーですし、下位者でもC+ランク以上はあります。西側諸国の騎士団と比べても、非常に優秀であると言えそうです」

 

「臨時徴兵された雑兵は皆無で、全て職業軍人で構成されているって事だな?」

 

「その通りだ、ベニマル。練度の高さ、武器や防具の質、そして戦術。どれを取っても、西側諸国の騎士団を上回っている。お前の『黒炎獄(ヘルフレア)』でも、奴らの魔法防御を貫くのは困難だろう」

 

それはまあ何と厄介な。

ベニマルの『黒炎獄(ヘルフレア)』はえげつない破壊力を持つ広範囲焼却攻撃だ。

その威力たるや、Aランク以下の魔物なら細胞1つ残らず一瞬で消し炭になるほどで、特A級(カラミティ)の魔物である暴風大妖渦(カリュブディス)でさえ一撃で屠る程だ。

それを防ぐとはかなりヤバい。

ソウエイ曰く、敵の軍勢には常に防御用の軍団魔法(レギオンマジック)が発動されているそうだ。その練度の高さはかなりのもので、小隊規模の総合力ではAランクに相当するとの事だ。

連携の取れた部隊は厄介な事この上ない。

ただ単に個々の力を足し合わせるのではなく、掛け合わせる事だって普通にある。

実際、パーティの連携によって強力な魔物が倒された例は山ほどあるし、某生徒が先生を暗殺する教室を描いた漫画の終盤でも27人の生徒達が遥かに格上の軍人相手に一撃離脱戦法と完璧な連携で勝利を収めている。

20名でAランク相当ならば、単純計算で3万5000名ものAランクを相手取らねばならない事になる。

正直言って、かなり……いや、ドチャクソヤバい。

だがしかし、これはまともに戦った場合だ。

 

「まあ、迷宮があるから大丈夫だろ」

 

「クフフフフ。迷宮内にて敵を分散させれば、敵が実力を出し切る前に撃破するのも容易いでしょう。全てはリムル様の想定通り、という訳ですね」

 

いやはや全くもってその通りだ。

迷宮内ならば、結構簡単に敵戦力を分散させ、こちらは戦力を集中させる事が出来る。

また、味方が倒されたとしてもあっさり復活させられる。

敵からしてみれば悪夢そのものだろう。

 

「本当、ラミリスがいてくれて助かったな」

 

「そうですね。町への被害も防げますし、戦況を有利に運ぶ事も容易い。軍の司令官としては、これ以上に頼もしい存在はありませんよ。敵だったらと考えたら、ゾッとします」

 

「そうだな。それはそうと、ゴブタ達の方の状況はどうかな?」

 

ドワーフ王国近隣を映し出してあるモニターに目を移すと、そこには戦車部隊が映し出されていた。

2000台の戦車達は、綺麗に整列している。

これだけの数となると、やはり圧巻である。

こちらの部隊も、ドワルゴンの中央都市セントラルの入り口から約30kmの地点に布陣している。

そして、戦車の主砲は全てその入り口へと向けられている。

 

「まさかとは思うが、あそこから入り口まで弾が届いたりしないよな?」

 

ポツリとそんな事を呟く叔父さん。

 

「一応、届かせようと思えば可能だと思いますよ。第二次世界大戦時に開発された九八式65口径10cm高角砲(長10センチ高角砲)でさえ最大射程19.5kmでした。また、海上自衛隊の最新鋭護衛艦に搭載されているMk.45 62口径5インチ砲の最大射程が37kmですので」

 

「おいちょっと待て。それってかなりヤバくないか?」

 

「最後まで話を聞いて下さいよ。あくまでこれらは全て()()()であり戦車砲ではありません。そして、この最大射程も()()()()()()()()()()()()距離ではないので、問題ありません。有効射程は良くて3〜4kmくらいじゃないですか?」

 

実際、艦載砲は基本的に曲射する事を想定して作られているので、仰角はしっかり取られ、射程も長い。

一方の戦車砲はほぼ真っ直ぐ狙う事を想定しているので、仰角はそこまで高くなく、射程も砲身の長さに対しては短い。

実際、俺の製作した戦車の主砲の有効射程も最大で4kmくらいだ。

 

「なら問題無いか」

 

俺の説明を聞いた叔父さんは落ち着いた。

入り口を入って直ぐにある広場には、ゴブタやガビル達が待機している。

それぞれの軍団を率いて避難民の護衛任務に当たり、宿場町の住民達の避難も完了していた。

現在は予定通り、ドワーフ王国への援軍として合流していた。

 

「ドワーフ王国にて両軍団長は受け入れられています。あくまで共闘関係という事なので、指揮権までは奪われていません。ドワーフ王国軍との連携について不安はありますが、我々テンペスト軍が攻めて、ドワーフ王国軍は守りに徹するという役割分担を行えば、まあ大丈夫でしょう」

 

ベニマルがそう説明してくれた。

 

「そうだな。念のために、ガゼルともう一度話し合っておこうか」

 

「そうですね。帝国が陣を張り出した今、開戦までの残り時間も少ない。こちらもそろそろ出陣する頃合いですし、最終確認のためにもガゼル王と連絡を取りましょう」

 

叔父さんの言葉にベニマルが了承した。

そこで叔父さんは新開発した連絡器に手を伸ばした。

これはベスターさんが開発した魔力念話機器の事で、パソコンのような形状をしている。

音声だけでなく、映像をも伝達できる優れものだ。

そして、その場でガゼル王と叔父さんの最後の確認が行われる。

武装国家ドワルゴンはジュラ・テンペスト連邦国の同盟国として参戦する事。ドワルゴンは守勢に回り、テンペストが攻撃を担当する事。

それと、戦車についてもある程度説明した。

特に主砲火力が脅威であり、何重にも防御を固めるべきであると説明してある。

その上、あの図体のデカさにも関わらず馬の全力疾走より少し遅いレベルで速い。

というか、魔法のあるこっちの世界ならば馬より速くなるだろう。

また、生半可な物理攻撃や魔法攻撃も通用しないだろう。

大雑把ではあるが、こんな感じに説明した。

 

『ふむ、誰しも考える事は同じであったか。新たな時代に対応すべく、我々も“魔装兵”の開発に取り組んでいたからな』

 

戦車の話を聞いたガゼル王は、そう頷いた。

そして、こう聞いてきた。

 

『それで、勝てるのか?』

 

『勝てる勝てないなんて話じゃない。何が何でも勝つ! それだけだ』

 

ガゼル王の質問に対し、叔父さんはそう決意を固めた表情で返した。

 

『フハハハハハッ! 頼もしい奴だ。それでは、武運を祈る!』

 

『ああ、任せとけ!』

 

そして、そのやり取りを最後に通信が切られた。

さて、舞台は整った。

あとは戦いの火蓋を切るだけだ。

そのために、叔父さんはドワーフ王国に派遣した幹部達に『思念伝達』を繋げた。

 

 

 

 

 

 

ドワルゴン正面入り口前

 

情報武官として出向いたテスタロッサは、2人の軍団長と話をしていた。

その内の1人であるゴブタのお馬鹿っぷりに半ば呆れていた。

そんな時、彼女にリムルの『思念伝達』が届く。

 

『テスタロッサ、今話しても大丈夫か?』

 

『これはリムル様、何も問題ございませんわ。それで、どのような御用で?』

 

テスタロッサはリムルの『思念伝達』を受け取ると、すぐさまそこに跪いた。

周囲にいた者達も、テスタロッサがリムルの『思念伝達』を受け取った事を悟り、テスタロッサと同じように跪く。

 

『少し待ってろ、ゴブタとガビルにも繋ぐ』

 

リムルはすぐに2人とも『思念伝達』を繋げた。

 

『さて、ガゼル王との最後の打ち合わせが終わった。帝国に対する先陣は我々テンペスト軍が担う事になったんだが、その前に帝国と交渉しなければならない』

 

そして、リムルはガゼル王との取り決めを説明していき、テスタロッサは口を挟まず全てを聞き終えた。

 

『なるほど、承知致しましたわ。それでリムル様、その交渉にわたくしが出向けば良いのですね?』

 

『その通りだ。お前にはここでも外交武官として、俺の全権代理としての権限を与えておく。いつでも俺に相談   『思念伝達』を繋げる事を許可するし、軍団長に比肩する立場も適応させるから、ゴブタやガビル達と一緒に協力して上手くやって欲しい』

 

『御心のままに』

 

今回は監察官として派遣されているテスタロッサだが、『西方配備軍』という西側諸国にて様々な支援を行っている部隊の軍団長でもある。

立場的にゴブタやガビルと同列であり、外交武官でもあるため帝国に対する使者としてこれ以上の人物はいないだろう。

 

『うむ。それで、帝国への使者として出向くのには危険が伴うが、大丈夫だよな?』

 

『何も問題ございませんわ。わたくしが帝国の身の程知らず共に、リムル様の御威光を教授してご覧に入れましょう』

 

冷たい笑みを浮かべ、テスタロッサは頷いた。

その反応に、リムルは少し慄いた。

 

『そ、そうだな。出来れば戦争回避が1番望ましいんだが、それは叶わないだろう。ならば後は   

 

『帝国軍を敵と見做し、殲滅すればよろしいのですね』

 

『お、おう。まあ、そうなんだが……』

 

『お任せ下さいませ。リムル様の慈悲である最後通告を無視するような愚か者共を1人残らず、ことごとくを滅してやりますわ』

 

テスタロッサは()る気満々であり、その残虐性を隠そうともしていない。

これにはリムルやガビルもドン引きであった。

 

(このような恐ろしい女子は吾輩ちょっとご遠慮したいものであるぞ)

 

特にガビルはそのように感じていた。

しかし、約1名何とも思わない(バカ)がいた。

ゴブタである。

 

『リムル様、大丈夫っすよ。テスタロッサさんは初めての戦場に張り切って、威勢のいい事を言っちゃってるだけっす。自分がちゃんと付き添ってサポートするっすから、大船に乗った気でいて欲しいっす!』

 

ゴブタは、空気を読まずにリムルに宣言した。

あまりの馬鹿発言にリムルも驚く。

 

『え、は、お前が⁉︎』

 

『勿論っすよ。自分も軍団長として責任ある立場になったっすからね。か弱い女性を守るのも、自分の役目っすよ!』

 

そう言ってゴブタは胸を張った。

 

(少なくとも変身前のお前よりかは遥かに強いだろうし、万が一の際にはお前らを守るために派遣したんだが……)

 

リムルはゴブタの馬鹿な発言に少し心配になった。

そして、テスタロッサも苦笑いしていた。

 

(この子……目も当てられないくらいのバカだけど、嫌いじゃないわ)

 

テスタロッサとしても、これほど自分の事を勘違いされるというのは初めてであった。

それ故に彼女も呆れ果てる他なかった。

自身の残忍さを隠そうともしていないのに、ゴブタはそれに全く気づかない。

その図太さは認めてもいいと思えてきたのである。

 

『わ、分かった。それじゃあランガも派遣するから、お前とランガでテスタロッサの護衛をしてくれ。帝国がこちらの要望に応じたらそれで良し。応じない場合にはそのまま開戦となるから、絶対に死ぬんじゃないぞ!』

 

『任せて欲しいっす。自分、逃げるのは得意っすからね!』

 

『そうか、それじゃあ任せた!』

 

リムルはそう告げて『思念伝達』を終了した。

 

誰もが静まり、その様子を見守る。

 

「よし、ようやく出番っすね! さっさと片付けてして、出陣するっすよ‼︎」

 

「「「うぉおおおおお!!!!!」」」

 

ゴブタの号令がその場に轟き、第1軍団もそれに応える。

そして、魔物の軍勢が一気に動き出した。

 

 

 

 

 

 

「うーん……」

 

「どうしたんです、叔父さん?」

 

「いや、こっちが慌てて対応しているようにって伝えようかなと思ったんだけど……」

 

「相手を油断させるためにですか? 必要ないでしょ。そんな中途半端な事するくらいなら最初っから奇襲かけた方がいいですって」

 

「そうだよな。わざわざそんな事する必要無いよな」

 

「そうそう。魔王なんですから、堂々とやりましょう」

 

それにしても、こういう時の原初達は頼もしいね。

 

「しかし、ゴブタも成長したもんだな。やっぱり責任ある立場になったおかげからかな」

 

「まあ、真面目ではなかったですよね」

 

叔父さんと一緒にバカやっている印象が強い。

1年前の開国祭での武闘大会ではあんなバカやってたゴブタが、今では軍団長である。

だが、不安要素もある、

 

「まあ、変わらないところは相変わらずですが……。それでヤバい事になったらって思うと」

 

おバカなのは相変わらずなのでその内地雷をぽんぽん踏み抜くだろうから、ちょっとそこら辺が怖い。

 

「別にいいだろ。痛い目みた方が分かるって。それに、その方が面白そうだしな」

 

「それはまあ、確かに」

 

「ランガ、いるか?」

 

「ここに!」

 

叔父さんの言葉に反応して、影から飛び出てくるランガ。

尻尾をフリフリさせている。

これを見ると、狼じゃなくてデカい犬に見えてくるんだよなあ。

 

「ランガ、お前はゴブタについてなんかあったら守ってやってくれ」

 

それを聞いた瞬間、ランガの尻尾がピタリと止まる。

 

「……承知しました、主よ。それで、いつ向かえば……?」

 

それは正に、飼い主から離れるのを嫌がるペットの子犬さながらである。

 

「今すぐお願い」

 

「それでは、出発します……」

 

しょぼ〜んとした様子で去ろうとするランガ。

 

「頼むぞ、ランガ。ゴブタも頼もしくなってきてはいるが、やっぱりお前がいてくれた方が安心なんだ」

 

その言葉を聞いた途端やる気に満ちた返事が返ってきた。

 

「お任せ下さい、我が主!」

 

そして、颯爽と転移していった。

うん。やっぱ犬だわ、アイツ。

渋谷駅前のハチ公に負けず劣らずの忠犬だわ。

 

「さて、帝国との交渉は間違いなく決裂するだろう。その場で宣戦布告して即開戦となる。問題は布陣についてだ」

 

叔父さんの本音としては回避したいのだろうが、ここまで進軍しといて何もせずに帰るなどありえないだろう。

 

「テスタロッサの交渉で開戦と決まり次第、首都は直ちに迷宮内へと隔離させます」

 

「ああ、そうだ。そろそろラミリスを呼んでおこうか」

 

「ええ。ここまで来たら開戦間近ですし、退屈はしないでしょう」

 

「それで、ゴブタ達の方は?」

 

「普通に考えれば、戦力比が大きすぎます。しかし、敵は大きな鉄の塊、戦車を1体の魔物として考える事もできます。それならば、こっちが有利ですね。それに付随する補給部隊など数の内にも入りません」

 

自信に満ち溢れた態度でベニマルは言った。

一応、補給部隊も自衛ができる程度には実力はあるだろうし多少は警戒すべきなんじゃないかと思うが、ベニマルの言葉にはどこか説得力があった。

 

「ただし、部隊を大きく展開させすぎると、戦車の主砲の餌食でしょう。リムル様とアユム様の知識から推定威力を算出しましたが、緑色軍団(グリーンナンバーズ)では耐えられません。なので、最初は狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)とアユム様の戦車隊のみで相対させ、相手の実力を伺います」

 

「たったそれだけの戦力で挑ませるのか?」

 

「そうですね。最初は様子見ですから。敵方の戦車の性能が予想通りならば、全軍突入させても勝てるでしょう。想定を上回るようであれば、作戦の見直しが必要となります。ですが、どちらにしても戦ってみなければ分かりません。その場合、犠牲者が増えるのは面白くありませんから」

 

「兵法第十三計『打草驚蛇』、戦地や敵の状況がよく分からない場合には偵察を出して反応を探る事。どの道、敵戦車の性能を探らないといけないんですって」

 

「そうか、そうだな。最悪の場合、ゴブタ達はどうなる?」

 

「各自の判断で『影移動』で逃亡するように言い含めてあります。それに、アユム様の戦車も盾として使えますしね」

 

俺が一度に運用できる数は20両が限界である。

流石にその程度の数で1万2000もの軍勢である緑色軍団(グリーンナンバーズ)の盾として使うには少なすぎる。

だが、100騎程度の狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)ならこのくらいの数でも十分盾として活躍できるだろう。

そういう意味でも、緑色軍団(グリーンナンバーズ)を動かすべきではないのだ。

さて、ベニマルの作戦計画はこんな感じだ。

戦いが始まると同時に、狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)と戦車隊が一斉に突撃する。高速機動を生かして不規則な動きで戦車砲の照準を合わせる隙を与えない。

最悪、戦車を盾として活躍する。

これで直撃を喰らう事はない。

少数精鋭だからこそ、どんな事態にも対応が可能という事なのだ。

上手くハマれば、一撃離脱で敵を撹乱できるはずだ。

しかし、戦場では不測の事態だって起きうる。

敵が無茶な行動を取ったり、まぐれで命中する事だってあるだろう。

それに、直撃しなければ大丈夫とか言ってるけど、敵の攻撃の威力によっては爆風や砲弾の破片でダメージを受ける。

というか、向こうの戦車の設計思想を予想すると、直撃でなくても十分ダメージを受けうるのだ。

だからこそ、いざという際には逃げるべきなのだ。

 

「でもまあ、逃げるのは最後の手段ですよ。リムル様の威光に泥を塗るような真似は、俺が許しません」

 

「まあ、その辺にこだわるのはほどほどにな。そもそも叔父さんに威厳とか威光とかないし、『三十六計逃げるに如かず』って言うし」

 

「ええ、分かっています。ですが、威厳と威光は  

 

「無いでしょう、叔父さん?」

 

「無いな。仲間が傷つくくらいなら、そんなもん捨てた方がマシって考えてる」

 

俺の質問に即答する叔父さん。

やはりこの人に威厳だの威光だのは似合わん。

 

「………」

 

俺と叔父さんの会話にベニマルが呆れ顔になった。

 

「という訳で、無茶はさせるなよ」

 

「最悪、その無茶は俺の戦車が引き受けるから」

 

「……はあ。でも、勝つためには全力を尽くすのが礼儀である以上、多少の無茶は必要ですから」

 

諦めたようにベニマルはそう言った。

 

 

 

 

 

 

テスタロッサはランガの背に揺られて、敵の戦車部隊のいる方へと向かっていた。

整った顔立ちに、美しい白髪が風になびかれている。

ゴブタは思わず見惚れそうになるが、自分は交渉に向かう同胞の護衛であるという事を意識がある以上、考えないようにしている。

そして、目の前には巨大な鉄の塊   戦車が街道上で綺麗に整列している。

そして、戦車の砲口は真っ直ぐこちらに向いていた。

 

(うわ、おっかないっすね)

 

それがゴブタの率直な感想であった。

映像で見るよりも威圧感を感じた。

だが、自身が敬愛する主であり悪友でもあるリムルのため、その気持ちを押し殺す。

そして、その部隊の目の前、およそ10メートルのところでランガは止まった。

そこまで来て、テスタロッサはランガの背から優雅に音もなく飛び降りた。

そして、目の前にいる司令官らしき精悍な男と話し始める。

先に話しかけたのは、敵の司令官の方だ。

 

「貴様は魔王リムルからの使いかな? 思っていたよりも素早い接触だ。魔王の配下達は優秀なのだな」

 

そう聞いてくる敵の司令官に対し、テスタロッサは嫣然とした笑みを返し、話し始めた。

 

「お初にお目にかかります、皆様。わたくしの“名”はテスタロッサ。このジュラの大森林の支配者であらせられる偉大なる魔王、リムル=テンペスト様の腹心で御座いますわ。」

 

「私はガスター中将、この魔導戦車師団の師団長よ。それで、どのような用件なのかね?」

 

「この度、ここに出向きましたの用件は   

 

そこまで告げたところで、テスタロッサの笑みはさらに深まった。

側から見れば、それは邪悪と称するに相応しい笑みだ。

だが、テスタロッサにとっては恍惚の笑みである。

リムルの命によって、その愚物の軍勢を無に帰させる事を思い浮かべると笑みを浮かべずにはいられないのだ。

 

「『このまま立ち去るなら見逃そう。だが、それ以上この地を侵すようであれば、容赦しない』という我が主君のお言葉を伝えるためで御座います」

 

真紅の瞳を輝かせながら、テスタロッサは目の前にいる愚物達に対して宣告した。

目の前にいる司令官は、驚き大きく目を見開いている。

だが、テスタロッサはそんな事を気にはしない。

すぐに次の行動へと移った。

軽く手を振り、戦車の目の前に炎の壁を立ち上がらせた。

そして、一瞬でそれを消す。

地面には溶解し焼けた砂石がガラス状となり、一条の直線を描き出していた。

 

「もうお分かりでしょう? その線を越えると、あなた方の命は消え失せます。覚悟の無き方は立ち入りませぬようご忠告致します。それではご機嫌よう」

 

優雅に一礼し、テスタロッサはそう告げた。

そして、そのまま踵を返し、ランガの方に戻っていった。

それが交渉終了の合図である。

ランガもそれが当然とばかりの表情を浮かべ、尻尾を振っている。

そして、その態度に帝国軍戦車部隊の司令官であるガスターは激昂する。

すぐさま自身のユニークスキル『演奏者(カナデルモノ)』で、部下達に命令を密やかに下す。

 

『狙撃兵、あの生意気な女の頭を撃ち抜いてやれ。その後、反転して前列となった20両の戦車で、砲撃を開始するのだ。森の中に潜む魔物共に、我らが帝国の威を見せつけてやるのだ‼︎』

 

その命令に最初に反応したのは指揮車両専属の狙撃兵だ。

素早くテスタロッサに狙撃銃の銃口を向け、狙いを定める。

そして、テスタロッサが最前列の戦車とランガの中間地点に来た頃、無音の弾丸が狙撃兵の持つ長距離用魔銃(スペルガン)から放たれる。

弾丸に込められた魔法は元素魔法『火炎大魔球(ファイアボール)』だ。

弾丸が貫通し、体内で魔法が発動すればどうなるかなど、考えるまでもないだろう。

対象は内部から焼き尽くされ、爆発炎上する。

どんなに魔法への耐性が高い魔物であっても、体内は無防備である。

マッハ3以上の弾速を出す凶弾から逃れる術などなく、テスタロッサは死ぬとガスターは信じて疑わなかった。

しかし、テスタロッサにとってはそれを防ぐなど児戯にも等しかった。

弾丸が境界線上を通過したのをテスタロッサは確認した。

嬉しさで思わず笑みを浮かべながら振り向き、その繊細な人差し指で弾丸を受け止めた。

そして軽くつまみ取り、捨てる。

 

「ウフフ、それが答えですのね。いいわあ。とても良い返事でしたわよ。それでは、正々堂々と戦いましょうね」

 

邪悪な笑みを浮かべながら言い残し、テスタロッサはランガの背に戻る。

そして、何事も無かったかのようにその場から立ち去って行った。

 

「ガスター中将、い、如何致しましょう?」

 

副官が聞いてくる。

 

「狼狽えるでないわ! あのような幻術に惑わされるでない! 我らは栄光ある帝国軍。皇帝陛下に勝利を捧げるのだ。予定通り、砲撃を開始する!」

 

「ハハッ!」

 

ガスターの大音声に応え、展開していた戦車部隊が一斉に行動を開始する。

あっさりと警告は無視され、戦車部隊は前進し、テスタロッサの引いた境界線(デッドライン)は躊躇なく踏み越えられたのだった。

 

 

 




前回の質問の答えは蒼き鋼のアルペジオに登場するメンタルモデル達です。
学術者(マナブモノ)』は驚異的な演算能力から、『製作者(ツクリダスモノ)』はナノマテリアルの制御能力から来ています。
やっぱり難しすぎたかな?
難易度がいい具合になるようヒントはばら撒いたつもりだったんですが……
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