転移高校生は転生魔王の甥っ子だった件   作:Many56

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お気に入り登録300人と総合評価400ptありがとうございます!
最初はせいぜい150人で、200人も行かないだろうなと思っていたのですが、あれよあれよという内に想定をはるかに超える方々に評価して頂きました。
今後も読んで頂けると幸いです!
さて、アニメ転スラでレインが喋りましたね!
転スラで特に好きなキャラの1人なので嬉しかったです。
声優は幸村恵里さんという方ですね。
恐らく知らない方がほとんどでしょうが、僕はナインヘッド役の鈴代紗弓さんと合わせて一瞬「コトブキかよっ!」って思いました。
知らない方は『荒野のコトブキ飛行隊』で調べてみてください。ようつべとニコニコに第一話が無料公開されてます。
因みにこちらでも幸村さんの演じるキャラは青がパーソナルカラーです。
そういえばリムル役の岡咲美保さんも出演されてますね。
(というか改めて調べてみると結構声優が共通してる。何故?)


第20話 イセカイ&パンツァー(後編)

 

 

 

帝国軍魔導戦車師団師団長のガスター中将は驚いていた。

それもそのはずである。

鉄壁の防御力を持つ戦車の装甲がいとも容易く撃ち抜かれ、撃破されたのだ。

いくら装甲の薄い天板に直撃したとしても、飛空竜(ワイバーン)の火球程度では撃破は不可能なのにだ。

だが、直ぐに理由は判明した。

飛空竜(ワイバーン)に乗っている蜥蜴人族(リザードマン)達が使用している兵器が理由だった。

それによって、部隊には動揺が走る。

さらに追い討ちをかけるように、新たな敵部隊が現れた。

 

「あ、あれは!」

 

「戦車じゃないか! どうして敵軍に戦車があるんだ!」

 

森の中からは、敵部隊が戦車と共に現れたのだ。

帝国の物とは形状は異なり、枝葉が大量に付いていたが、それは間違いなく戦車であった。

更なる衝撃によって部隊は混乱し始めたが、ガスターはこれを一喝した。

 

「狼狽えるでないわ! 敵の戦車はたかだか20両、それ以上あるならもっと来ているはず。敵の数少ない切り札の1つであろうよ!」

 

それに副官が同調する。

 

「なるほど、言われてみればその通りですな」

 

「砲塔を旋回し、あの戦車隊を狙え。たった20両ごとき蹴散らしてくれる!」

 

そして、ガスターの号令でテンペスト軍の戦車に向けておよそ50両が発砲した。

ほぼ全てが直撃した。

しかし、テンペスト軍の戦車は動きを止めない。

まるで効いていなかったのだ。

そして、お返しとばかりに敵軍の戦車が砲撃した。

その一斉射撃で味方戦車の20両に直撃し、それらからは火の手が上がり動きを止めた。

 

「なんだと⁉︎」

 

これにはガスターも驚きを隠せなかった。

帝国軍の戦車砲の砲弾は、刻印魔法によって超高等爆炎術式にも匹敵する破壊力を誇る。

にも関わらず、敵の戦車はそれに耐えたのだ。

どんな防御も嘲笑うかのように破壊する帝国軍魔導戦車の戦車砲が効かなかった。

その上、敵の戦車はこちらの戦車の装甲を容易く撃ち抜く性能を持っていた。

それだけでなく、行進間射撃にも関わらず的確に命中させられるだけの射撃精度をも誇っていた。

ガスターが驚いていた間にも敵戦車が第2射を放った。

それによって、さらに20両が鉄のガラクタと化す。

因みに、テンペスト軍の戦車の第1射から第2射までのこの間、約6秒である。

この“射撃の早さ”にもガスターは驚かされた。

因みに、帝国軍の魔導戦車の射撃レートは分間5発   つまり、弾薬の再装填に12秒かかる。

つまり、帝国軍の戦車が1発撃つ間にテンペスト軍の戦車は2発撃つ計算となる訳だ。

さらに不味い事に、狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)には懐に入り込まれたのだ。

これによって友軍誤射の可能性が遥かに高まり、迂闊に発砲が出来なくなったのだ。

その上、狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)の使用した爆弾によって新たに戦車が破壊される。

この僅かな間に、既に50両近くの戦車が撃破されている。

このままでは、テンペスト軍の連携によって帝国軍魔導戦車師団は壊滅的な被害を受けるだろう。

そう考えたガスターに焦りが募る。

 

(まさか、ここまで手こずる事になるとはな。だが、勝利するのは俺達だ!)

 

そう心を決め、焦りを押し殺す。

そして、瞬時に思考を行う。

 

(要警戒なのは、上空のトカゲ共の兵器、敵の戦車、ゴブリン共の爆弾だろう。だが、トカゲ共の兵器では、装甲を貫通したとしてもそれで撃破に至る訳ではない。敵の戦車とて、いくら堅牢な装甲を持っていようと後背面や天板などの装甲の薄い部分があるはずだ。それにゴブリン共の爆弾も、後続の者達が使わないのを見るに数は少ないはずだ)

 

警戒すべきは新兵器のみであり、それもそれぞれ欠点がある事を考える。

ガスターの読みはほぼほぼ当たっていたが、1つ重大な間違いをしていた。

それは炎爆玉(フレアボム)の総数で、実際には3000発を超える。

狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)飛竜衆(ヒリュウ)には各々に10発ずつ渡されていた。

また、飛空竜部隊(ワイバーンライダー)にも各々に数発渡されていた。

ガビル達が炎爆玉(フレアボム)を使用しないのは、ベニマルが戦車の撃破を優先しているからだ。

火薬は密閉空間内では実質的な威力が倍増するが、それは炎爆玉(フレアボム)とて同じである。

そして、そうしなければ炎爆玉(フレアボム)による戦車の撃破は困難である。

一応周囲の歩兵ならば炎爆玉(フレアボム)でも倒す事は出来るが、戦車の撃破を優先する以上、歩兵相手に炎爆玉(フレアボム)を使用する訳にはいかないのだ。

そうとは知らずに、ガスターは命令を下す。

 

「密集型対空戦陣形を取れ!」

 

その命令に、副官が意を唱える。

 

「中将、それは危険です! 敵戦力と混戦状態の者もいる中では同士討ちになる恐れが‼︎」

 

「そんな事は分かっておる。このまま被害が拡大するくらいなら、多少の同士討ちを覚悟してでも敵の撃破を優先すべきだ。そもそも、味方の足を引っ張るような無能など、栄光ある我ら帝国軍には不要であろう!」

 

「!」

 

ガスターの言葉に、副官は言葉を失った。

 

「法規的な問題でもあるのかね?」

 

「いえ、閣下。何も問題ございません」

 

参謀も、ガスターの判断に同意した。

そして、ガスターは『演奏者(カナデルモノ)』によって全隊に命令を飛ばす。

 

『左翼大隊、密集型対空戦陣形を取れ!』

 

それを聞いた左翼大隊は今まで以上の早さで急速に陣形を整えていく。

狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)に追い抜かれた者達を無視し、残る戦車で道を塞いでいく。

そして、砲塔を旋回させて、前後の車両が連結されていった。

 

「うおっ、マジっすか! そんな無茶な動きをするなんて!」

 

ゴブタが驚くのも当然である。

帝国軍の戦車はその巨大な車体を利用して、隙間を潰していくように密集していく。

そんな無茶な真似をしたら、自分達も身動きが取れなくなるのだから。

だが、高速で肉薄し近接戦を仕掛ける戦法を得意とする狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)には有効であった。

これによって、狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)は隙間を駆け抜けて中央本隊への襲撃が困難になったのだから。

ゴブタ達が驚いている間にも、帝国軍は次の一手を加える。

左翼大隊が輪を広げていき、狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)を取り囲むように戦車のバリケードを築いていく。

それに加えて、中央本隊の内の半数も動き出す。

中央本隊の戦車は空中へと浮遊し、前列の戦車の後ろに降り立つ。

そして、狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)の行手を遮る巨大な壁が完成した。

帝国軍魔導戦車師団の内の約半数の戦車が連結し、巨大な要塞を生み出したのだ。

 

「そういう動きが出来るとは聞いていやしたが、こんな手に出るとは……!」

 

副官のゴブチも、目の前の光景に唖然となる。

 

『機銃掃射! 弾幕を張り、敵の動きを封じるのだ!』

 

立体的な弾幕を展開された事により、狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)の得意とする高速機動が封じられる。

狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)の周囲には、味方であるはずの戦車や付随する歩兵部隊がいたのだが、一切お構いなしに攻撃された。

 

「ちょ、これは不味いっす。これはもう作戦どうこうの話じゃないっすよ⁉︎」

 

ベニマルの作戦の綻びが、ゴブタを動揺させる。

帝国兵が味方に撃たれているのを見て、危険を感じ取った。

 

「ぐぬぬぬ……! ゴブタよ、すまぬ。助けに向かいたいが、こちらも手一杯なのだ」

 

ガビル達はガビル達で、機関銃による対空砲火にさらされていた。

砲撃は当たらないものの戦車に搭載されている機関銃の弾幕は馬鹿にできず、それによって牽制されていたのだ。

指揮官のガスターがすぐに冷静さを取り戻したことによって、数の差が優劣を決めていた。

その上、更に悪い事は重なる。

ガスターに特殊回線による通信が繋がった。

 

『お待たせしました、ガスター殿!』

 

声の主は、帝国軍空戦飛行兵団を率いるファラガ少将だ。

飛空船100隻が現れた事によって、ガビル達はそちら側の対応を行わねばならなくなり、狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)はますます窮地に立たされる事となる。

 

『遅いではないか、ファラガよ。だが、これで魔物どもは詰みだな。極秘兵器である魔素撹乱放射(マジックキャンセラー)の試運転には持ってこいの舞台であろう?』

 

『ハハハ。敵いませんなあ、ガスター殿には。それでは早速、我々も参加させてもらうとしましょう』

 

『手柄を分けてやるのだ。ぬかるなよ?』

 

『承知しておりますとも。それでは、ご武運を!』

 

そして、通信は切られた。

ガスターとしては作戦をより盤石なものにするために。

ファラガは決戦前のシミュレーションと同時に、実戦で役立てるという事をアピールするためである。

こうして、ファラガ率いる空戦飛行兵団が参戦し、より一層テンペスト軍には不利な状況に陥った。

 

 

 

 

 

 

「嘘だろ……」

 

思わず俺はそう呟いた。

敵が味方の損害を度外視した戦法に切り替えたのだ。

友軍誤射(フレンドリーファイア)お構いなしかよ……!

まあ、今回の場合はそれが正解なんだろうけどさ、一切の躊躇なく実行に移せるとは驚かされた。

しかもこのタイミングで敵の航空部隊が到着してしまった。

このままでは狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)は壊滅する。

 

『ベニマル、このままでは狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)が壊滅する。一旦引かせた方がいい』

 

『分かっています。ゴブタも同じ判断をしているでしょう。直ぐに撤退命令を出します。アユム様は、ゴブタ達が後退するのを援護して頂けませんか?』

 

『分かった。任せろ!』

 

俺の戦車隊は一気に敵に肉薄しつつ、狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)の逃げ道を作るように敵を撃破していく。

だが、これは地味に危険だ。

まず、接近することで回り込まれやすくなる。

いくら俺が製作した戦車でも、後背からあれだけの威力を誇る戦車砲をブチ込まれたら、まず間違いなく装甲が抜かれる。

そして、爆発四散するのがオチだ。

まあ、密集型の楔形陣形(パンツァーカイル)を取っているから、多少それは難しくなっているが。

というか、それ以上に恐ろしいのは足回りをやられる事だ。

履帯を切られるだけで、戦車は移動できなくなるという弱点がある。

まあ、戦場でもすぐに修理できるような作りになっているのだが。

しかし、今は俺と護衛のゴブアくらいしかいない。

人員があまりに少ないから、履帯が切られると修理するのに時間がかかり、あっという間に蜂の巣である。

一応多少の攻撃に耐えられるだけの強度は確保してあるが、それでも戦車砲の直撃を受ければ間違いなくアウトだし、至近弾でさえ履帯が切られる危険性がある。

そう言う点で余り敵に近づきたくはないが、今回は致し方無い。

狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)に犠牲者が出るくらいなら、戦車がスクラップになった方がマシである。

狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)もこちら側に合流できるよう上手く動いている。

そして、俺達は合流を果たす。

 

「ひぃー、メチャクチャおっかない手を使ってきましたね」

 

「愚痴る暇があるなら撤退に集中しろ」

 

ゴブタが愚痴ったのを突っ込んだが、正直俺も同じ感想である。

それに加えて、敵の界面結界のせいで『影移動』が封じられたのが痛い。

敵ながら天晴れだ。素直に敵の司令官が有能である事を認めよう。

しかも、この間に1両履帯が切られて動けなくなってしまった。

まあ、撤退して距離が離れたら『物質変換』で爆弾にして、大量に敵戦力を削ぐつもりだけど。

10トン爆弾(グランドスラム)×4発分の破壊力を食らったら、付近にいる敵戦車はほぼお陀仏だろう。

さて、合流した訳だし、さっさと下がらねばならない。

信地旋回で一気に反転し、そのまま全速力で撤退する。

森までの距離はそう長くない。

狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)ならばすぐである。

が、後ろから狙い撃ちされる状況となるのが芳しくない。

それに、接近できたのはガビル率いる第3軍団があってこそ。

その援護が無い今、この長さでさえ途方もない距離に感じてしまう。

そして、敵戦車による砲撃の雨が降り注ぐ。

一体何両の戦車がこちらに攻撃を仕掛けているのだろうか。

数えたくもない。

この大量放火を受けた結果、最初は20両いた戦車があっという間に半分の10両になってしまった。

それによって狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)のカバーが出来なくなり、狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)にも大量放火が向いている。

それに巻き込まれて吹き飛ばされてしまっている。

上空の戦況も厳しい様子だ。

どうも、敵の飛空船には魔素の流れを乱す装置が搭載されているらしく、ガビル達が思うように飛べていない。

特に実戦経験の乏しい飛空竜部隊(ワイバーンライダー)には致命的であった。

そして、そんなガビル達に対して、魔法増強砲によって強化された数々の魔法が撃ち込まれている。

逆に、飛竜衆(ヒリュウ)のブレス攻撃や飛空竜(ワイバーン)の火球による攻撃は、敵の対魔法結界に阻まれて意味を為していない。

こちらは、敵の攻撃はなんとか回避しているものの、まだ序の口といった感じがする。

そして、俺の直感は的中した。

飛空船から放たれる魔法が、一気に熾烈なものとなったのだ。

それこそ、超高等爆炎術式に匹敵するようなヤバいものが雨あられと撃ち込まれている。

そして、それに晒されてガビルの部下達が撃墜され始める。

戦況は悪化するばかりであった。

 

 

 


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