ATLUS版マギアレコードRTA 難易度MANIACS ペルソナ使いルート 全コミュMAXチャート   作:めめん

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 2021年最初の投稿なので初投稿です。





Part4 An Encounter

 「死ななきゃ安い」を地で行くRTA、はーじまーるよー。

 

 

 

 え~……その……

 前回は突然落ちてきたあちしに「あち死」されて終わった――と、思ったのですが、乃彩ちゃんイゴってませんでした!

 まさかのリアル『食いしばり』発動でギリギリHP残ってましたよ! やったぜ!

 

 というわけで、実は気絶しただけだった乃彩ちゃんが目を覚ますところからスタートです!

 イクゾー!

 デッデッデデデデ!(カーン)

 

 クォクォア……どこかの家の中のようですね。誰のお宅でしょうか?

 

「あっ! 起きたー!」

「はあぁ~……よかった~……

 最初あやめがいきなり“人殺しちゃった”なんて言ってきた時はどうしようかと……」

 

 目を覚ますと同時に目の前にあちしこと『三栗 あやめ』と『遊佐(ゆさ) 葉月(はづき)』が現れました。

 

 ――ん? 葉月? なんで葉月までいるんでしょう?

 あやめが呼び出したのかな?

 それとも、この家は今走におけるアザレア組のお宅だったりとか……?

 

 え~……今回も一応軽くご説明いたします。

 あやめと葉月の2人は原作メインストーリー前の時系列にあたるアザレアイベントことイベント『そしてアザレアの花咲く』のシナリオにおいてメインキャラクターとなる3人の魔法少女のうちの2人です。

 この2人と最後の1人『静海(しずみ) このは』の3人を合わせてプレイヤーやファンからは『アザレア組』と呼ばれるチームを組んでおります。

 まぁ、厳密には「チーム」というより「家族」なんですが、そのあたりの詳細や葉月たちの魔法少女としての能力に関してはアザレアイベントが始まった時か必要になった時に改めてご説明します。

 

「失礼しま――あっ!?

 き、切江さん、お体のほうは大丈夫でございますか!?」

 

 アルェー?

 なんか月夜ちゃんまでいるんですけど? どういうこっちゃ?

 ぶっちゃけ原作における繋がりはまったくない組み合わせなんですが?

 

 

 ――なるほど。

 3人から軽く話を聞いたところによると、乃彩ちゃんがあやめに「逆あち死(未遂)」された後、あやめが近くにいた葉月を呼んで魔法で乃彩ちゃんに治療を施し、その直後に月夜ちゃんが神社を訪れて葉月たちと出会ったために今に至ると。

 そんでもって、現在乃彩ちゃんたちがいるのは神社の近くにある明槻家――つまり月夜ちゃんの実家だそうです。

 

 ……うん。なんだこの展開?

 月夜ちゃんがキュゥべえと出会って契約することはおろか、月咲ちゃんの存在を知るよりも前に魔法少女と関わりを持ってしまったんですが?

 いや、葉月もあやめも魔法少女や魔法の存在は隠しているので、乃彩ちゃんも月夜ちゃんも魔法少女のことは一切知りませんけど……

 

 ――待て。これ下手したら後々とんでもないガバを呼び込むフラグにならないか?

 最悪アザレア組がマギウスの翼に参加しちゃったり、洗脳されて無理矢理黒羽根にされてしまう可能性もあり得なくはないぞ?

 

 ……やべえ。

 そうなると、これ以上乃彩ちゃんがここにいる――月夜ちゃんと葉月たちを関わらせるのは危険だ。

 難易度「MANIACS」で走っている以上、些細なきっかけでチャートどころかRTA自体が崩壊することだけは避けなければ……!

 おう月夜ちゃん、起きて早々悪いが、乃彩ちゃんはこれで失礼するゾー?

 

「ええっ!? だ、大丈夫なのでございますか!?

 もう少し休んでいかれたほうが……!」

「う、うん! そうだよ!

 怪我こそしていなかったとはいえ……!」

 

 平気へーき!

 ステータス画面見たけど、HPは最大値まで回復しているし、なんのバッドステータスも付いてないから問題ないぜ!(メメタァ!)

 

 ……というか葉月、早くも月夜ちゃんに馴染んでないかい?

 そのコミュ力の高さはアザレアイベント始まってからは本当にありがたいけど、今はガバを呼び込む厄介なスキルにしか感じられないんだよなぁ……

 

 それに、あまりここに長居していると余計なイベントまで起きてしまいそうだしね。

 主にババアとかBBAとか婆とか……

 

 

 というわけで、お邪魔しましたー!

 月夜ちゃん明日また学校でな!

 

 

 

 ――さて、外はすっかり夕方から夜になっております。

 急いで水名区の駅に向かい、電車で新西区まで帰りましょう。

 一応神社に行く前に連絡はしておいたとはいえ、あまり帰りが遅過ぎたらやちよさんに心配されてしまいます。

 ただでさえメルが魔女化した直後で参っちゃっている状態ですからね。あまり精神的な負担をかけさせたくはありません。

 

 ちなみに葉月とあやめも乃彩ちゃんと同行して駅に向かっております。

 乃彩ちゃんが明槻家をそそくさと後にした以上、あそこに2人が留まる理由は特にないですからね。

 表向きかつ半分は乃彩ちゃんの体を心配して、そして本心と残り半分は乃彩ちゃんが魔女や使い魔に襲われないかを心配しての行動です。いや~、2人とも優しいなぁ。

 ――なお、駅までの道中で本当に魔女や使い魔が現れた場合、走者は2人を見捨てて逃げる気満々の模様(人間の屑)。

 いちいち戦闘終わるまで待っていたらタイムロスになっちゃうからね。仕方ないね。

 

 

「――えっ?

 それじゃあ乃彩さんも最近神浜に来たばっかりなんですか?」

 

 現在は葉月とお互いの簡単な身の上話をしながら歩いている最中です。

 さすがに『つつじの家』のことやこのはのことを聞きだすことなどはできませんが、今のうちにアザレア組に関する情報を手に入れられるだけ手に入れておきましょう。

 こうしておけばそう遠くないうちに発生するであろうアザレアイベントにおいて攻略の時間を大幅に短縮できる可能性がありますので。

 情報は力。はっきりわかんだね。

 ――しかし、こうして乃彩ちゃんと並んで歩いていると葉月の背の高さを改めて実感するわ。女子中学生で身長175cmとか普通に成人男性並みやろ……

 

 閑話休題。

 葉月との会話に戻りましょう。

 

 おう。乃彩ちゃんは最近どころか昨日神浜に引っ越してきたばかりやぞ。今日でクソレズシティ生活2日目や!

 ついでに言っておくとノン気だかんな!

 

「昨日!? 2日目!?

 あ、あの……引っ越してきて早々に暗くなるまで家に帰らないって、ご家族の方に心配されませんか……?

 連絡くらいはしたほうがいいんじゃ……」

 

 HAHAHA! 心配ご無用! 下宿先で事実上の一人暮らしDA☆ZE!

 一応そこの家主にも事前に連絡済みさ!

 

 ――と、そんな感じの返答をしようとしたところで、なんか選択肢が出てきましたね。

 

 

 1:問題ない

 2:そっちこそ家族に心配されない?

 3:家族はみんな死んでる

 

 

 ファッ!?

 

 3番ッ! ちょっと待って3番ッ!

 どういうことだクォレハ!? 乃彩ちゃんただの1人暮らしじゃなかったの!?

 あれか!? これまで多くの先駆者兄貴たちを苦しめてきたマギレコRTA名物の『主人公の経歴ガバ』のフラグか!?

 乃彩ちゃんにもそれが襲いかかるの!?

 

 ああ畜生ッ!

 2番を選択すれば絶対にこのはのことを聞きだせると思うけど、3番を選ばなかったら後々とんでもないガバが発生する臭いがプンプンするわ!

 ここは3番を選択するしかねえ!

 難易度「MANIACS」における経歴ガバとか放っておいたらとんでもない爆弾になる予感しかしねえもん!

 

 

「えっ……?」

 

 さすがの葉月やその隣で話を聞いていたあやめも驚いていますね。

 わかるよ。俺もすっげえ驚いているもん。

 

 ……ふむふむ。

 乃彩ちゃんは物覚えのある頃から父親がおらず、母親は10年以上前に事故でお亡くなりになっているそうです。

 その後、母方の祖母に育てられたけど、その人もついに亡くなって身寄りがなくなってしまった。

 みかづき荘に引っ越したのは母や祖母が神浜出身で、かつ祖母がやちよさんのおばあちゃんややちよさんと面識がありそれなりに親しい関係だったことが理由。

 現在はそんな母と祖母の遺産を少しずつ食いつぶしつつ生きている――と……

 

 乃彩ちゃん、なんか経歴が結構重かったゾ……(白目)

 

 しかし乃彩ちゃんのおばあちゃん、いったいどんな人だったんでしょうね?

 やちよさんややちよさんのおばあちゃんと面識があるってことは、生前はそれなりに神浜にも足を運んでいたってことでしょうし……

 個人的には詳細一切不明の父親も気にはなりますが――こちらは回収されずに以降は完全にスルーされそうではありますね。

 さすがに「実は父親は閣下でした!」なんていうまさかのデビルチルドレンルート突入とかになったりはない――よな?(一抹の不安)

 あのルート突入しちゃうとラストはホシガミやジャシンのみならず、まど神やデビほむまで出てくる文字どおりのボスラッシュになるから難易度的にもタイム的にもキツイのよね……

 頼むから父親の設定回収されることがあっても閣下がパパではありませんように……!

 

 ――おっ?

 葉月とあやめが自分たちの経歴もちょっとだけ話してくれました。

 乃彩ちゃんが身寄りがないことを知って親近感を抱いたのかもしれません。

 ちょっとだけこのはのことも話してくれましたね。さすがに名前までは教えてくれませんでしたが。

 

 そっかー。お姉ちゃん的立場の子と3人で施設を出て一緒に暮らし始めたんだー。そっちも大変そうだねー。

 あっ、そうだ(唐突)。せっかくだから連絡先交換しないかい?

 お互い今後またなにかあったら相談なり助け合えるかもしれないし~……

 

 OK?

 やったぜ。

 

 もしよかったら今度お姉ちゃんのことも紹介してな~。

 まあ、今のこのはは自分と葉月たち以外の存在には壁作っているから仲良くなるのは無理だろうけど……

 

 いやぁ、こんな早々にアザレア組と関りが持てるとは、まさに禍を転じてなんとやらですね。

 うまくいけばこのはのみならず、アザレアイベント中に彼女たちを通じてフェリシアやかこ、さらには組長ことななかと関りが持てるかもしれません。

 純粋にストーリーを攻略していくのみならず、コミュをこなしていくためにも交友関係を広げていくことは重要ですからね。

 

 

 その後、無事に水名区の駅に到着して葉月とあやめとはここでお別れとなりました。

 じゃあな! 更紗帆奈って奴に気をつけろよ! アザレアイベントで狙われるのはこのはだから2人に今言っても意味ないけどな!

 

 

 

 はい。電車に乗って新西区の新西中央駅に到着です。

 ここまで来ればもうみかづき荘まではそう遠くないので、今日も魔女や使い魔に襲われるようなことはなく1日を終えられそうですね。

 

 

 

 

 

 ――って、なんでまだ真夜中じゃないのに駅の構内がこんなに真っ暗で人っ子1人いないんですかね?

 

 おまけに改札口を出る前に目立つようにセーブポイントがあるんですが……

 

 

 

 

 

 …………

 

 ……

 

 あっ……(察し)

 

 うん。これぜってー固定エンカウントだわ。

 改札口出た瞬間、使い魔か魔女が出てくるやつだわ。

 メガテンのお約束だわ。

 

 状況的にすでにイベントは発生していると思われるので、もう一度電車に乗って回避もといエンカウントする前から逃げるという手段は使えないでしょうし……これは進む以外選択肢はないですよねえ……

 それにこれRTAだからね、このまま考えている時間的余裕はないからしょうがないね(諦め)。

 というわけで、セーブして早速改札を出ます。

 オラオラこいよオラァ!(半ばヤケクソ)

 

 

『やあ、切江乃彩。待っていたよ』

 

 

 ファッ!?

 魔女や使い魔ではなく、出てきたのはキュゥべえ!?

 待て! なんでお前がここで現れる!? 敵どこよ敵は!?

 いや、こいつも十分人間からすれば敵なんですが……

 

 

『一応“はじめまして”と言っておくべきなのかな?

 こうして君と面と向かって話し合うのは初めてなわけだし……』

 

『ボクの名前はキュゥべえ!

 切江乃彩、ボクと契約して魔法少女になってほしいんだ!』

 

 

 やだよ(即答)。

 これ魔法少女化禁止縛りなんで悪いけど諦めてください。他の走者を当たってくれ。

 

 

『契約しないと君の身が危ないよ?』

 

 

 白い奴をスルーして駅を出ようとしたところ、そんな言葉を背後から投げかけられたうえにいきなり奇妙な場所にワープしました。

 あ……魔女の結界だわここ。

 

 Fuck!

 キュゥべえ、お前結界があるとわかったうえで待ち構えてやがったな!

 ホンマ悪質営業マンやなお前!

 

『乃彩、願い事を決めるんだ!』

 

 うるせえ! ねえよそんなもん!

 レギュレーションでお前との契約は禁止にしてるって言ってるダルォォォォ!?

 それとも「お前を消す方法」とでも願ってほしいんか!?

 

 

 白い奴は無視してとにかくダッシュで移動します。

 ボーっとしていたら使い魔や魔女が出てきて間違いなく即ヌッコロされますからね。

 ペルソナを覚醒させていない今の乃彩ちゃんは雑魚・オブ・雑魚なんてレベルではありません。それ以下です。

 魔女の攻撃なんて一発でもモロに受けたら即イゴります。なんの力もない一般人なんてモブ同然だからね。仕方ないね。

 一応、ペルソナ未覚醒だったり、魔法少女ではない人間キャラは破魔属性が無効なのですが、そんなもの宝の持ち腐れです。

 

 ちなみにこのゲーム、難易度が「HARD」以上だと魔女の結界は自動生成ダンジョンと化し、内部の構造が完全ランダムとなります。

 そのため、とにかく逃げたい場合は魔女や使い魔とのエンカウントを避けながら自力で出口を見つけるしかありません。

 マギレコなのに気分はメタルギアです。ダンボール箱が欲しくなるな……

 

 現状ですが、結界内に魔女はおろか使い魔の姿もまったく見当たりません。

 まあ、難易度「MANIACS」とはいえ固定エンカウントで事実上イベント戦闘ですから、最初はこんなもんでしょう。

 もちろん、最後までなにが起きるかわからない以上油断はできませんが。

 

 ――って、言っているそばから魔女がPOPしたーーっ!

 

 せめて最初の相手は使い魔程度にしてくれませんかねえ!?

 

 と、とりあえず、目の前に現れた魔女の姿を確認しましょう。

 相手によっては逃げられる場合もありますので……

 

 

 

 

 

 Shin

 

 

 

 

 

 ハハッ。ワロス。

 

 ――って、笑い事じゃねええええええええっ!

 

 アイエエエエ! 子守りの魔女!? 『子守りの魔女』ナンデ!?

 こいつ確か原作だとメインストーリー第7章で登場する魔女だろ!? なんでいきなりこいつが出てくるんだよ!?

 というか、結界内の道中に使い魔が出てこなかったのもそういうことか!

 こいつの使い魔は常に魔女に引っ付いて行動しているからな!

 難易度「MANIACS」とはいえプレイヤーを確実に殺しにきすぎだろ、いい加減にしろ!

 これもしかして負けイベント!? 負けイベントなのか!?

 

 

 

 なんか何度もイゴりそうな予感がするので今回はここまでです。

 ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

『は、葉月ーーッ! どうしよう!

 あちし、人を殺しちゃった!』

 

 ――正直、念話であやめのそんな悲鳴を聞いた時は、一瞬だけど思考が完全に停止しちゃったね。

 本当になにがあったのって感じだった。

 その後、「木から足を滑らせて落ちた先にいた人を押し潰してしまった」と聞いた時は、あたしもさすがに焦ったけど……

 

 大急ぎであやめの魔力を辿り小さな神社へたどり着くと、そこには目に涙を浮かべるあやめと彼女に抱きかかえられている水名女学園の制服を着た女の子がいた。

 女の子は背の高さからして、たぶん歳はあたしと同じくらいだと思う。

 ――あたしは同年代の子よりも身長が頭一つ分くらい高いが。

 

「は、葉月~……

 生きてる……この人まだ生きてるよぉ~……」

「うん。そうみたいだね。

 それじゃあ、ここから先はあたしに任せて」

 

 あやめを落ち着かせつつ女の子の身をその場に横たえさせると、あたしは早速自らの固有魔法である『身体スキャン』を使ってその子の体の状態を調べてみることにした。

 

 ――女の子に外傷はなく、気を失っているだけのように見える。あやめが魔法で軽く応急処置的な治療を施したのかもしれない。

 しかし、体の内側――骨や内臓などに何らかのダメージが残っている可能性はあるため、頭の先から足の先まで、体の隅々までスキャニングを行っていく。

 さすがにあたしの家族が原因で見知らぬ人がその体に障害を負ったなんて、想像しだけでも嫌な話だもの。

 

 

 ――幸い女の子は体の内側にもなんの傷も負っていなかった。本当にただ気を失っていただけらしい。

 あやめの応急処置が上手くいったのか、当たりどころが悪くなかったのか、この子がもとから丈夫だったのかはわからないけれど、とにかく幸いだ。

 

 

(……あれ?)

 

 

 ――だけど、最後にもう一度その子の体を軽くスキャニングした時、あたしは彼女の胸元からほんの一瞬だけ“奇妙なもの”を感じた。

 その違和感が生じたのは本当に一瞬だけだったため、それがなんであるのかははっきりとしなかったけれど、どこかそれは魔女退治中、魔女をスキャニングした際に抱く“嫌な感じ”に似ていたような気がした。

 

 ……いや、まさかね。

 さすがにそれはただの気のせいだろう。

 この子はどこからどう見ても人間だし、そもそも人間の姿で外を出歩く魔女なんて聞いたことがない。

 

 

「――えっ!?

 き、切江さん……!?」

「ん……?」

 

 

 ふいに背後から声がしたため振り返ってみると、そこには長い髪をポニーテールにした水名女学園の制服姿の女の子が立っていた。

 その様子とたった今彼女が口にした言葉から、あたしたちの前で横たえている子の知り合いとみて間違いなさそうだ。

 

「あなた、この子の知り合い?」

「あ……はい……」

 

 

 ポニーテールの子――明槻月夜さんから話を聞いてみたところ、横たえた子は切江乃彩さんといって彼女のクラスメイトらしい。

 ――ついでに言うと、2人とも高校生であたしたちよりも年上だった。現在は1年生とのことなので、このはと同い年ということになる。

 月夜さんは時々この時間帯になると、この神社にプライベートで篠笛を吹きに訪れるのだそうだ。

 一方、どうして乃彩さんがここにいるのかはわからないとのことだった。

 

 あたしもあやめを交えて、乃彩さんになにが起きたのかを月夜さんに軽く説明する。

 もちろん、魔法や魔法少女のこと、さらには魔女や使い魔のことは伏せてだ。

 ――月夜さんも乃彩さんもキュゥべえと契約した証である指輪もといソウルジェムを身に着けていなかったので、魔法少女ではないと判断した。

 

「木から落ちた三栗さんの下敷きに……!?

 あ、あの……それは本当に大丈夫なんでございますか!?」

 

 ……ただ、乃彩さんが気を失っている理由を知って当然の反応をした月夜さんに、魔法抜きで乃彩さんの体がまったく問題ないことを説明するのは少し強引だったかも。

 

 

 

 その後、月夜さんの勧めで彼女の家に乃彩さんを運び込むことになり、月夜さんと月夜さんのお母さんの手を借りて無事に乃彩さんを明槻家の一室まで運ぶことができた。

 一緒に住んでいるおばあさんが水名の風習にどっぷり浸かった厳格な人らしく、見つかったら大変だなどと言いながらも見ず知らずのあたしたちまで家の中に上がらせてくれた月夜さんたちには正直頭が下がる思いだったね。

 ――いや、実際にその時下げたよ、頭?

 

 

 その後、しばらくして乃彩さんは無事に目を覚ましたのだけれど、それからの彼女の行動は正直あたしたちの予想の斜め上をいっていた。

 だってさ、目を覚まして少しだけ周囲を軽く見回して現在の状況を確認したと思ったら、いきなり「帰らなきゃ」と呟いてそのまま何も言わずに家を出ようとするんだよ?

 なんでそうなる、と思わずツッコまずにはいられないでしょ?

 慌てて止めようとしていた月夜さんに対して「大丈夫」と言っていたけど、本当に大丈夫なの体のほうは!?

 

 ――で、結局月夜さんの制止の声に耳を傾けることもなく乃彩さんは飛び出すようにそそくさと明槻家を後にして帰路についてしまった。

 外はすっかり日が沈みかけ、魔女や使い魔の活動が本格化する夜になろうとしていたこともあり、彼女のことが少しばかり心配だったあたしとあやめは駅まで同行することを提案し了承された。即答で。

 

 ――まだ出会って少ししか時間は経っていないけど、なんとなくあたしは乃彩さんという人がわかってきた気がした。

 この人は――言い方は悪いことは承知の上で言うが――まるで機械のような人だ。

 見た目に反して人間らしさがないというか……一度自分でそうと決めたら、それを実行することを最優先にして他に目を向けようとする気がまったく感じられない。

 先に述べた提案の時もあたしたちのほうには目もくれなかったし……

 

 現に、こうして駅に向かって歩きながら、とりあえずなにか話そうと思って他愛のない話を続けているけれど、やはり乃彩さんがあたしたちのほうに目を向けることはなかった。

 ちなみに今は、あたしたちが最近神浜市に引っ越してきたばかり――厳密には戻ってきたばかりなんだけど――という話をして、そこから乃彩さんもこちらに引っ越してきたばかりだということを知ったところだ。

 

「――えっ?

 それじゃあ乃彩さんも最近神浜に来たばっかりなんですか?」

「うん。実を言うと、昨日引っ越してきたばかり。

 今日で2日目」

「昨日!? 2日目!?」

「うえぇ~!?

 それじゃあ、この辺りに来るのは初めてだったんじゃないの!?」

 

 ――だけど、さすがに神浜市に来てまだ2日目だったなんて想像できないって。

 というか、それならなんであんな神社にいたんだろう?

 

「あ、あの……引っ越してきて早々に暗くなるまで家に帰らないって、ご家族の方に心配されませんか……?

 連絡くらいはしたほうがいいんじゃ……」

「――――」

「あれ? 乃彩さん?」

「ん? どしたの?」

 

 突然今まで隣を黙々と歩き続けていた乃彩さんがピタリと足を止めた。

 思わずあたしとあやめが振り返ると、先ほどまでとは違い――本当によく見ないと表情の変化がわからなかったが――少しだけ困ったような表情を浮かべた乃彩さんの顔がそこにはあった。

 

 乃彩さんは数秒ほど何も言わずその場に静止していたが、やがてあたしたちのほうに目を向けると――ここにきてようやく目を合わせてくれたが今は置いておく――ゆっくりと口を開いてこう言った。

 

 

「家族はみんな死んでる」

 

 

 あ……

 

 ……

 

 どうやらあたしは知らぬ間に彼女にとっての最大級の地雷を踏み抜いてしまったらしい。

 これは完全にあたしの落ち度だ。

 

「ご、ごめんなさい……!

 悪気があって聞いたわけじゃないんだ……!」

「大丈夫。慣れてるから。気にしなくていい」

「そ、そう言われても……」

「せっかくだから――聞いて」

 

 そう言うと、乃彩さんはこちらが返答する間も与えず、淡々とこれまでの自らの経緯(いきさつ)を話し始めた。

 

 ――乃彩さんには物覚えがある頃から父親と呼べる存在がおらず、お母さんは今から10年ほど前に事故で亡くなったのだという。

 その後はおばあちゃんと2人で暮らしていたそうだけど、そのおばあちゃんもついに先月亡くなってしまった。

 残された親族はお互いのことなどまったく知らない遠縁の人たちばかりだったため、おばあちゃんと生前縁があった人の伝手でこの神浜に引っ越してきて下宿生活を始めたのだそうだ。

 

 そして、乃彩さん自身もお母さんが亡くなった事故が原因で10年前より昔の記憶をまったくと言っていいほど覚えていないとも――

 

「あの……どうしてそんなことをあたしたちに話したんですか?」

 

 ――正直、反応に困る。

 同情すればいいのか、それとも哀れめばいいのか――

 あたしたちも「家族」と呼べる存在がもう自分たちしか残されていないため、乃彩さんの気持ちもわからなくはないのだけれど……

 

「そっか~……乃彩もあちしたちとおんなじだったんだな~……」

「え……?」

「あ、あやめ?」

 

 ――しかし、あたしと違ってあやめのほうは純粋に、そしてまっすぐ乃彩さんの話を受け止めていたようだ。

 

「あちしや葉月もお父さんやお母さんいないから」

「――――」

 

 乃彩さんの目がほんの一瞬だけだが見開かれる。

 こちらはよく見ていなくてもはっきりとわかった。

 

「うん……実はそうなんだ……」

 

 ――気がつけば、あたしは知らぬ間に口を開いて語り始めていた。

 

 あたしは幼い頃に家族との旅行中に事故に遭い、自分だけが生き残ったこと――

 あやめは捨て子で実の両親が誰で、どんな人だったのかも知らないこと――

 そして、同じ施設に引き取られてそこで同じような境遇の子たちと一緒に生活していたが、今は訳あってその施設を出てあたしとあやめとこのはの3人で暮らしていること――

 

 とにかく、あたしたちのこれまでのことを大雑把ではあるが、一通り乃彩さんに話した。

 さすがに『つつじの家』やこのはの名前こそ出さなかったけれど。

 

「――どうしてそれをわざわざ私に?」

 

 あたしたちが話し終えた後に乃彩さんが返してきた言葉がそれだった。

 ――いや、それさっきあたしも乃彩さんに対して同じようなこと言っていたよね?

 

 でも、本当にどうしてあたしたちも自分たちの経緯(いきさつ)を乃彩さんに話そうと思ったんだろう?

 

「ん~……わかんない!

 でも、乃彩の話を聞いていたらはなんか他人のような気がしなかったから、たぶんそれが理由じゃないかな?」

 

 あたしの代わりにあやめが乃彩さんにそう答えた。

 こういう時あまり物事を考えないあやめの性格はプラスに働くな、などと思ってしまった自分が少し情けなくなる。

 

「そう……」

 

 乃彩さんは納得したのか軽く頷くと、手にしていた学生鞄の中から“なにか”を取り出した。

 それはケータイ――スマートフォンだった。

 

「それじゃあ、よかったらお互いの連絡先交換しない?」

「えっ?」

「ふぇっ?」

 

 ――あまりの突然の提案に、思わず口から変な声が漏れてしまった。

 

「え、え~っと……どうして?」

「他人のような気がしないんでしょ?」

 

 多少困惑気味なあやめに対して、乃彩さんが軽く微笑みながらそのように問い返す。

 

『は、葉月、どうしよう……?』

 

 念話を飛ばしながら、あやめがあたしのほうに目を向けて選択を委ねてきた。

 ――おそらく、このはからの言いつけを理由に、これにOKしていいのかわからないといったところだろう。

 

 あたしたちの保護者的存在にして姉的存在であるこのはは、これまでの――『つつじの家』での一件から他人に対して「心を開く」とか「心を許す」ということを捨て去ってしまった。

 この世界で本当に信頼できる存在はあたしたち3人だけ――それ以外の者たちとは決して関わるな、というのがこのはの弁だ。

 ――実際にそう言ったわけではないのだが、意味を要約するとそういうことである。

 

 乃彩さんからの提案は、このこのはからの言いつけを破ることになる――

 だからあやめは本来の彼女の性格なら二つ返事で承諾することにも躊躇いが生じてしまっている。

 「家族」であるこのはのことは大切だけど、目の前にいる乃彩さんを傷つけたくもない――そんなジレンマが今あやめの中で生まれているのだ。

 

 だからあたしは――

 

「――いいんじゃないかな?」

 

 あやめの背中を押すことを選択した。

 ――確かに、このはが嫌な顔したりショックを受ける姿はあたしも見たくはないけれど、同時にあやめが苦しむ姿も見たくはないからだ。

 

「い、いいの……?」

『うん。このはには――まぁ、黙っておけばバレないでしょ』

 

 あたしは苦笑い気味にあやめに対して微笑みながら頷いた。

 

 

 

 ――結局、あの後あたしも乃彩さんとお互いの連絡先を交換して再び駅に向かって歩き始めた。

 そして何事もなく駅に到着し、そこで乃彩さんとはお別れとなってあたしたちはそれぞれの帰路につくこととなった。

 

「――ねえ、葉月」

「ん?」

 

 その道中、隣を歩いていたあやめが不意に話しかけてきた。

 

「乃彩はさ……もしかして、居場所がほしいのかな?」

「はい?」

 

 あやめが口にした言葉の意味があたしには一瞬理解できなかった。

 

「乃彩はお母さんが死んじゃってからずっとおばあちゃんと一緒に暮らしていたんでしょ?

 それってさ、あちしたちとは違って“()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”ってことじゃない?」

「あ――」

 

 その言葉にあたしは納得した。

 

 乃彩さんがこれまで歩んできた人生は、あたしたちと似ているけれど厳密には違う――

 あの人には「家族」はいたけれど、自らの「孤独」という苦しみを共有できる人が――心を許せる人が今まで誰1人としていなかった。

 逆に、あたしたちは『つつじの家』の子たちと互いが互いに無意識にその苦しみを理解して分かち合うことができたし、なおかつ「家族」がいた。

 

 ――乃彩さんが家族の話になるまであたしたちに目もくれなかったのは、直感的にあたしたちがそんな「自分とは似て非なる存在」であることを悟っていたからなのだろうか?

 だとすれば、あの時そそくさと月夜さんの家を後にしたのも、急いで家に帰ろうとしたのもどこか納得がいく。

 

 もしかしたら、あやめに「自分たちと同じだ」と言われた時、あの人は内心すごく嬉しかったのかもしれない――

 

 

「――乃彩があの神社にいたのも、もしかしたら探していたのかもね」

 

 

 あちしたちにとっての『つつじの家』に当たる居場所を――

 

 

 あやめのその呟きは、すでに日が沈んで星々が輝いている空に吸い込まれるように消えていった。

 

 




 乃彩ちゃんのキャラクターデザインをを描いていただけたので失踪します。



■TIPS

●切江 乃彩
 この後イゴる(確定事項)。
 現実とATLUSゲーの高難易度は非情である。


●明槻 月夜
 転校生が転校初日の放課後に自宅近所の神社で気絶していたとか、ミステリー以外の何物でもない。
 今後も走者によって引き起こされる乃彩ちゃんの謎ムーブに色々と振り回されることになるのは確定的に明らか。
 ちなみに、まだ月咲とは出会っていない。


●三栗 あやめ
 物事を深く考えない――というより考えるのが苦手なおかげか、早くも乃彩ちゃんに親近感を抱きつつある。
 同時に、かこちゃんと出会う前に乃彩ちゃんと出会ってしまったがために、アザレアイベントの内容が原作とは違ったものになる可能性が濃厚と早くもガバの気配。
 なお走者はそのことに気づいていない模様。気づけ。


遊佐(ゆさ) 葉月(はづき)
 たびたびプレイヤー間で「アザレア組」の真のリーダー説が流れる中学生(身長175cm)。
 いきなり一糸まとわぬ姿での胸元ドアップから始まる原作の変身シーンや、その体形はとにかくエロいの一言。
 しかし、それ以上に声がエロい。
 マギレコRTA界隈では組長と並んで「この子と仲良くしておけば序盤のシナリオ攻略はとりあえずなんとかなる」的な扱いをされている印象。


●キュゥべえ
 お馴染み白いあいつ。マスコットという名の外道。
 しかし、なんだかんだ言って契約対象の願いは()()()()()()叶えてくれるため、原作ではまどかやイザボーやおガキ様らに裏をかかれて自滅同然な目に遭っている。
 実際「お前を消す方法」的な願いで契約されたらどうなってしまうのか非常に気になる。


●子守りの魔女
 その性質は困窮。
 原作では登場時に赤ん坊の声のような音を発するというその外見以上に不気味な演出で知られる。
 また、設定とデザインの元ネタを知るとその不気味さが跳ね上がるというオマケ付き。
 意外にも使い魔である手下とは壊滅的に仲が悪い。


●イゴる
 『P3』と『P4』におけるゲームオーバーおよびその演出の通称。動詞。名詞として用いる場合は単に「イゴ」と表記される。
 主人公が死亡する(戦闘不能になる)と画面がベルベットルームに移り、意味深なメッセージが流れてタイトル画面に戻される。
 メインの制作スタッフが共通している『真III』のゲームオーバーの通称「パトる」にちなむが、ベルベットルームの主であるイゴールにもちなんでいるダブルミーニング。
 なお『P5』のゲームオーバーも基本的に同様の演出だが、諸々の理由から「イゴる」と呼ぶプレイヤーは少ない。


●パトる
 『真・女神転生III』のゲームオーバーおよびその演出の通称。動詞。名詞として用いる場合の表記は「パト」。
 アニメ『フランダースの犬』のラストにおけるネロとパトラッシュの昇天シーンを彷彿させることからそう呼ばれるようになった。
 「ネロる」と呼ばれないのは、たぶん語呂が悪いから。
 パーティーの全滅ではなく、主人公である人修羅が死亡した(戦闘不能になった)時点でゲームオーバーとなる仕様や、プレスターンバトルシステムによる些細なミスからでも即死に繋がる戦闘、ATLUSゲー特有の難易度の高さなどの理由からクリアするまでにプレイヤーがこれを拝む機会は非常に多い。
 特にノクマニ以降の難易度「HARD」だとチュートリアルにあたる最初のウィルオウィスプやガキとの戦いでいきなりパトることも珍しくない。いや、むしろそれが普通かもしれない。
 今日における「メガテンおよび派生作品のゲームオーバー」というと真っ先に挙がるのがこれであるため、今では『真III』以外のナンバリングタイトルや派生作品のゲームオーバーですらプレイヤーから「パトる」と呼ばれることも。
 似たようなものとして、同じくATLUSのRPG『世界樹の迷宮シリーズ』のゲームオーバーの通称「植林」または「hageる」がある。



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