ATLUS版マギアレコードRTA 難易度MANIACS ペルソナ使いルート 全コミュMAXチャート 作:めめん
Q:RTAパートは?
A:(今回は乃彩ちゃん視点の小説パートなので)ないです。
What choices have I?
I can't let this end, live a different life.
◆
『近く、貴方は何らか“契約”を果たされ、再びこちらへおいでになることでしょう』
――あの奇妙な夢を見た時からこうなることは決まっていたのかもしれない。
『やあ、切江乃彩。待っていたよ』
『ボクの名前はキュゥべえ!』
やけに静まり返っていた駅で突然私の前に現れた、『キュゥべえ』と名乗る謎の存在。
――最初はなにかの生き物かと思ったが、ゆらゆらと揺れている尻尾に対してその顔には一切の変化がなかったため、おそらく違うと判断した。
『切江乃彩、ボクと契約して魔法少女になってほしいんだ!』
そして、そんなキュゥべえからいきなり持ち掛けられた「契約」――
『ボクは君たちの願いごとをなんでもひとつ叶えてあげる。
なんだって構わない。どんな奇跡も起こしてあげられるよ』
曰く、「こちらの願いをひとつ叶える代わりに“魔法少女”なる存在となって“魔女”と呼ばれる厄災と戦ってほしい」とのこと。
私にはそれだけの素質と資格があるのだという。
これが昨日見た夢の中で奇怪な老人から言われた「契約」なのだろうか――?
『マズい! 魔女の結界だ!
どうやら魔女に見つかってしまったらしい……!』
そんなことを考えていたら、いつの間にか私たちは駅の中ではなく珍妙でありながら気味が悪く、ユーモラスだが不気味な場所にいた。
キュゥべえが言うには魔女という存在の住処である結界の中に私たちは引きずり込まれてしまったのだそうだ。
一瞬、またおかしな夢でも見てしまっているのかと思ったが、なぜかこの時はすぐに「違う」と断言できた。
昨日、老人と青い部屋の夢や、狐面で素顔を隠した少女と無数の鏡の夢を立て続けに見たせいかもしれない。
「キミ! 危ないからここはアタシに任せてさがってて!
説明は後でしてあげるから……!」
魔女の手下だという使い魔から逃れるように結界の中を走り回っているうちに、気がつけばその最奥地に巡りついていた。
――道中、使い魔に対してキュゥべえを思わず投げつけてしまったが、なぜか罪悪感などはなかった。
そこで私は「魔女」、そして「魔法少女」という存在を初めて目撃することになった。
――そして今に至る。
「――よし。いくよ!」
私と同年代と思わしき大きな剣を手にした女の子――魔法少女が魔女に向かってまっすぐ駆け出す。
剣は自身の身長と同じくらいの大きさがあるというのに、その子はまったく問題なさそうにそれを軽々と持ち上げており、走り方にも剣の重さを感じさせるような様子は見られない。
その見た目に反して剣がこちらの想像以上に軽いものなのか――
それとも、彼女が「魔法少女」なる存在だからなのか――
『まさかももこが来てくれるとはね……
乃彩、いい機会だ。ここで実際に見ておくといい。魔法少女の戦いがどういうものかをね』
足下にいたキュゥべえがその赤い瞳を私に向けながらそう語りかけてくる。
その顔は先ほどまでと同様、一切の変化はなかった。
――戦いはキュゥべえが「ももこ」と呼んでいた魔法少女有利に進んだ。
魔女が繰り出した巨大なハサミによる攻撃も、襲いかかる使い魔たちも難なく対処し、彼女は当初20~30メートルくらいは余裕で離れていた距離をあっさりと詰めて魔女のすぐそばにまで近づく。
魔法少女や魔女なるもののことはまったくわからない私でも、「あ。決まったな」と思ってしまうほどの優勢っぷりだ。
だが、魔女も黙ってやられるわけにはいかないとばかりに、ももこが渾身の一撃を放とうと飛び上がったところで動いた。
それまではその場から動こうともしなかった魔女が、突然自らもその場から跳ねるように飛び上がる。
「しまっ――!」
相手の攻撃の隙を突くかのように放たれた体当たり――
ももこにとってそれは想定外だったのか、彼女は自動車にはねられた人のごとく弾き飛ばされる。
そして、そのまま結界の壁に叩きつけられて落ちるように床に転がった。
「あ……」
その様子を見ていた私の口から思わず声が漏れる。
あれほどまで激しく叩きつけられたら間違いなく無事では済まない。
もしかしたら、死――
『大丈夫。魔法少女はそんなにヤワじゃないよ』
再び足下からキュゥべえの声。
彼――で、いいのかはわからないけれど、自分のことを「ボク」と言っていたから以降もそう呼ぶ――の言うとおり、ももこは激しく息をしながらゆっくりとその身を起き上がらせた。
見たところ、本当に大丈夫そうである。
「なっ……!?
いつの間に――!?」
――しかし、そんな彼女に追い打ちとばかりに黒い蔦が複数本巻き付いたのを目にした瞬間、そうも思っていられなくなった。
『マズい!』
キュゥべえもこれまでとは違ってどこか慌てている様子の声を発する。
それもそのはずだ。蔦はももこの両手と両足、そして首に巻き付いたのだ。
いくら魔法少女という存在であってもあれでは身動きがとれなくなるだろうし、なにより――
「ぐあっ……!」
あのように首を絞められる。
あれは本当にマズい――!
「ぐうぅ……!」
蔦は少しずつももこを締め上げる力を強めているようで、少し離れた場所にいる私たちにもギシギシという音が確かに聞こえてくる。
さらに目線を変えると、魔女が再び巨大なハサミを取り出して彼女のほうへとゆっくりと近づいていく姿が目に入った。
『乃彩! 願いをボクに言ってくれ!
魔法少女となって魔女と戦うんだ!』
同時に、足下からキュゥべえのそのような叫び声が聞こえてきたため目をそちらに向ける。
――声は明らかに慌てている様子なのにその顔はやはりこれまでと変わらず無表情で、丸いふたつの赤い瞳が私の姿をはっきりとその内に映し出していた。
「契約……」
『そうだよ乃彩!
今すぐボクと契約を!』
「…………」
『本来ならば、ここは“契約”を果たされた客人のみをお招きする部屋。
しかし、貴方は夢のさなかとはいえご自身でこちらに辿り着かれた――
フフ……実に興味深い……』
『恐らくは現実の貴方がこれから向かわれる場所――
そこにこちらへいらした“訳”が隠されているのやもしれません』
…………
……
昨日見た夢の中で老人が口にしていた言葉が蘇ってくる。
思えばあの時、彼は私が向かう地――神浜市でなんらかの出来事が起きることを示唆していた。
昨日は所詮は夢の話だと気にしていなかったが、今の状況から考えるとあれは本当に夢だったのかとすら思えてくる。
もし、あの言葉が今の状況を意味するものであったとするならば――
「――私に叶えたい願いなんて、ない」
はっきりと口にする。
そうだ。私には叶えたい願いなんてものはない。
将来の夢もなければ、望んでいる生き方すら存在しない。
正直に言ってしまうが、私は死んでいるのと大して変わらない存在だ。
ただこの世界に生まれて生きている――存在しているだけ。
そして、どうして今もこの世界に存在し続けているのかすら自分でもわからない。
生きている意味が、理由がはっきりとせず、かつそんなことを一切考えていないし、興味もない。
――だってそうだろう?
『切江乃彩』という人間は10年前の“あの日”に死んでしまったのだから。
親も、それまでの記憶も、環境も、なにもかもあの日、あの場所で事故と炎によって全て消えた。消えてしまった。
『切江乃彩』は偶然、ただ形だけを維持したままそこに――この世界に残された。
中身は一切合切失われたのに、人間として存在していたからその後も人間として――『切江乃彩』として生きることを強いられた。
人に、環境に、世界に――
だから唯一の肉親だという祖母に対しても、家族だとか近親者だとかそういう感情を最後まで抱くことができなかった。
私自身が自分を『切江乃彩』だとはっきりと認識していなかった――確信できなかったのだから、それも仕方のないことだと思う。
彼女が亡くなった時も、その後の葬儀の時も、結局私は涙を流すことも、彼女に対する何らかの情が湧くこともなく、抱いたのはただ「ああ、ばあちゃん死んだんだな」といった程度の感想だった。
もしも誰かにそんな私を「薄情だ」と非難しても、私は「そうね」と即答で肯定するしかできないだろう。本当にそれ以外なにも浮かばなかったのだから――
『――なんだって?
乃彩、このままだとももこは魔女に殺されてしまう!
君は彼女を見殺しにするというのかい!?
いや、ももこだけじゃない、彼女がやられたら君だって殺されてしまうんだよ!?』
私の言葉に驚いた――ただし、やはりその表情は変わらない――のか、キュゥべえがさらに私に問いかけてくる。
しかし、本当に私には願いがないのだから、そう言われても他に答えようがない。というか困る。
――それに、考え方によってはここで殺されてしまったほうがいいんじゃないか?
どうせこのまま生きていてもただ時間だけが流れていき、私はそれに沿って生きていくだけだろう。
そんなつまらないことを無駄に過ごしていくくらいならば、いっそここで終わらせてしまったほうがいいに決まっている。
現にあれから10年間、なにも変わることなく生きてきたんだ。今さら「これから」に期待したところで――未来に希望を抱いたところでなんになる?
『――本当にそう思っていますか?』
――!?
頭の中に突然、聞き覚えのない――いや、
これは幻聴……?
――いいや違う。間違いなく今のは「声」だった。
そう――「声」が聞こえた。
はっきりと確信をもって言える。
確かに今、
『本当に“自らは希望を抱いていない”と――
あなたは思っているのですか?』
――再び声がした。
やはり私の頭の中に“誰か”が語りかけてきている。
『希望を抱いていないのならば、あなたはこのような場所にはいないはず――
思い出しなさい。“あの時”のことを』
――“あの時”?
『そう。あなたはあの時、自らの意思で選んだはずです。
“生かされる道”ではなく、“生きる道”を。
その選択を、あなたはあの時彼女に確かに告げた――』
「あ……」
――そうだ。思い出した。
確かに私は“あの時”――
『――今、なんて言ったの?』
『……“引っ越す”って言った。
知ってると思うけど、ばあちゃんもう長くないから……死んだら別の街に引っ越す。
ばあちゃんの昔からの知り合いに下宿屋を営んでいる人がいるらしくて……』
『だからその下宿屋のある街に引っ越すっていうのぉ?』
『うん……今住んでいるアパートよりも家賃安いらしいし……』
『…………』
数秒ほどの沈黙。
その後、先に口を開いたのは彼女だった。
『学校は――?
これまでどおりここに通うのかしらぁ?』
『いや……その……
転校することになる……』
『――!』
転校――私がその言葉を口にした瞬間、彼女の両目がかっと見開かれた。
そして、それと同時に彼女の顔に浮かんだのは明らかに「驚愕」という表情だった。
――こう言ってはなんだが、私は彼女がこんな顔をするのを始めてみた。
『なぜ……?
なぜもっと早く言ってくれなかったのぉ……?』
彼女の両手が力強くはないが、しかしはっきりと私の左右の肩をそれぞれ掴んだ。
――その手は震えていた。
『少しでも相談してくれれば……
ある程度の無茶もすることになったでしょうけど、あなた1人が住む場所くらい用意することは……』
『…………』
『なんとか言いなさいよぉ!?
なんで相談するなりしてくれなかったのぉ!?』
目の前でそう叫ぶ彼女の顔に次に浮かんだ表情は「怒り」。
しかし、「驚愕」の表情もいまだに浮かべ続けているため、妙に中途半端でおかしな顔になっている。
――思っていることを口にしようとしたところで躊躇いが生じる。
本当に言ってしまっていいのか?
おそらくこれを口にしてしまえば、目の前にいる彼女とはもうこれまでの関係ではいられなくなる。それは間違いない。
世間一般的にいうところの「幼馴染」という関係で、もう10年近くの付き合いがある彼女に一方的に絶縁を突きつけることになるのだから。
――だけど、それでも言わなければならない。
そうしなければ、おそらく私は今後も一生このままであろうから――
「……このままじゃ、いけないと思った」
「!?」
「このままあなたに引っ張られ続けて……ただあなたの言うとおりに生きていくだけじゃいけないと思った。
自分で考えて……自分でどう生きていくか選んでいかないとダメだって……気づいたの……」
「バカなこと言わないでちょうだい!
あなたにそんなことできないってことぐらい、自分が一番わかっているでしょう!?
考え直しなさい、乃彩!」
私の肩を掴んでいる彼女の両手に少しずつ力がこもっていく。
これは私のことを本当に思ってくれているからか、それとも――
「それでも……それでも私はあなたから離れないといけない……」
「なぜ!?」
「…………」
――再びほんの一瞬だけ言葉を口にするのを躊躇する。
そして――
覚悟を決めて私は再び口を開き、彼女にはっきりと告げた。
「私はあなたの“犬”じゃないから」
――その言葉を私が口にしたのとほぼ同時に、彼女の顔がまるで「この世の終わり」のような表情に変わる。
やがて、全身から力が抜けたかのようにずるずるとその場に崩れ落ちて尻もちをついた。
「犬……」
私のほうに目を向けながらも、その瞳に私の姿を映すことなく彼女の口からそのような言葉がぽつりと漏れる。
そんな彼女の姿を見た私はなぜか急に息苦しさのようなものを感じ、右手で胸元をぐしゃりと握った。
「違う……違うのよぉ……
そんなつもりで……私は……ただ……」
…………
……
まさか彼女がこのような姿を私に見せることになるとは思わなかった。
おそらく誰にもここまで弱々しさを感じる姿を曝したことはなかっただろう。
それでも、私は彼女に言わなければならなかった。
私が「私」となるためには、彼女のそばから離れなければいけないから――
――だが、彼女にこのような言葉を投げつけてしまった自分が少しばかり嫌になる。
10年近くも世話になっていた相手にいきなりなんて酷いことを言うんだ、と自分自身に対してしっ責する声が聞こえた気がした。
だから私は目線を彼女に合わせると続けざまにこう言った。
「だけど、私がこうしてこの世界に在り続けられたのはあなたがいたから。
あの時からあなたが私を繋ぎ止めてくれていたから……私は今もこうして生きてこれた――
そのことには本当に感謝してる……」
「ありがとう……
こうして私は、「生かされる」のではなく「生きる」ことを選んだ。
『切江乃彩』が再びこの世界に産声を上げるためのきっかけを作り出した。
――そして同時に、私は自らに「仮面」をまとわせた。
彼女を――結菜を傷つけてしまったという罪悪感から逃れたいがために、“あの時”以前の「私」という仮面を被り、“あの時”の記憶を自ずと心の奥底に封印した。
忘れようとしたのだ。
それだけ結菜の存在が今の『切江乃彩』にとって大きかったということでもあるのだが、我ながら本当に酷い人間だ。
自らが犯した「罪」から逃れたいがあまりに生み出した、それまでの自分を再現した人格――
それが私の――『切江乃彩』の偽りの仮面。
しかし、罪の意識が自分でも気づかないくらい強すぎたのか、生きる道を選んでおきながら同時に生きることを諦めていたというのは、我ながら滑稽な話だ。
――はっと我に返ったかのように、視界が再び目の前の現実に引き戻される。
先ほどと変わらず、ももこという魔法少女が床に大の字に磔にされた状態で手足や首を蔦に締め付けられており、魔女がそんな彼女にじりじりと近づいていく姿が目に映った。
『今、お主がいる地では幾万もの人々から内なる可能性が失われ、
偽りの仮面を打ち破り、己が内なる可能性を目覚めさせる者が現れぬ限り――』
またしても夢の中で聞いた言葉が脳裏に響く。
『――そして、お主の中でまさに今、目覚めようとしておる』
『偽りの仮面によって封じられた、お主自身――』
…………
……ふと足下に目を向ける。
そこには相変わらずその赤い瞳を私に向けているキュゥべえと、“あるもの”の姿があった。
――ももこが先ほどまで手にしていた大きな剣。
それが私の足下の近くに転がっていた。
「……偽りの仮面を打ち破る」
無意識にそのような声が漏れる。
自分が今やるべきことはなにか――考えるまでもなかった。
――転がっていた剣に近づき、両手でしっかりと柄の部分を握って持ち上げる。
やはりその大きさから非常に重かった。
『乃彩、さすがに無茶だよ!
魔法少女でもない子が魔法少女の武器を扱おうなんて!』
そして、それを引きずりながら私はゆっくりとももこのほうへと歩いていく。
キュゥべえの声が頭の中に響いてくるが、関係はない。
「だ、駄目だ……! こっちに来ちゃ……!」
私に気がついたももこが静止を促してきたが、見過ごせるわけがないので当然拒否する。
彼女の首に巻き付いていた蔦のそばまで近づいたところで、剣を力の限りに持ち上げて振り下ろした。
ぶつりと糸が切れたかのような感触がほんの一瞬剣を通して両手に伝わる。
ももこの首を締め上げていた蔦は、剣によって容易く断ち切られた。
「よし。次は手を……」
『乃彩! いくらなんでも無謀すぎる!
魔女と戦おうというのならボクと契約を――!』
――この状況でもまだキュゥべえは私に「契約」を要求してきた。
しつこいにもほどがある。
私は言ったはずだ。「願いなんてない」と。
――気がついたら、私は足下にいたキュゥべえの頭を鷲掴みにして持ち上げていた。
「言ったはず……“私に叶えたい願いなんてない”って……
この胸に抱いているのは“願い”じゃない――」
キュゥべえを掴んでいた手を放す。
重力に従ってその体がゆっくりと落ちていく。
「“希望”だけよ!」
そしてバットのように剣を思いっきり横に振り、野球のノックよろしくキュゥべえを魔女に向かって打ち込んだ。
――正直、自分でも信じられないような行動をしている。
明らかに動物虐待だ。
しかし、どういうわけか私には
――思いたくなかったともいうが。
「があッ……!」
そんなことを考えていたからか、気づいた時には私の首や体にも蔦が巻き付いてきた。
一瞬で全身を締め上げられた痛みと苦しみが襲いかかってくる。
特に首を絞められたことで息ができないのが本当に苦しい――
「やめろ!」
背後からももこのそのような声が聞こえてきたが、彼女は今も両手と両足に蔦が巻き付いているはずなので、助けてもらえる可能性は低いだろう。
――少しずつ視界がぼやけていき、意識が
見ると、魔女が巨大なハサミを掲げて、もうすぐそこまで迫ってきていた。
(ああ、さすがにダメかな……?)
命の危機に瀕しているというのに、私の頭の中は妙に冷静だった。
そう思うと同時に全身からふっと力が抜け、視界と意識が暗転する。
これが……「死ぬ」ってこと……?
――ああ、嫌だな。
――暗く、深く、何も聞こえない闇の中に私はゆっくりと沈んでいく。
なにかをすることもなく、ただそれに身を任せ、「自分」という存在が消えていく時をただ待ち続ける。
このまま何も考えず――眠るように全てを放棄していけば、いずれそれは訪れるだろう。
――いや、「沈んでいく」という表現は間違っているかもしれない。
実際に私は沈んでいるのか、逆にこの闇の中を浮かんでいるだけなのかわからないからだ。
そもそも――ここは本当に闇の中なのだろうか?
ただ視界が真っ暗で黒一色だから私がそう思っているだけで、本当は違う色をしているのかもしれない。
…………
……
何も考えるなと思っておきながら、いきなり私は何を考えているのだろう。
……余計なことを考えてしまったせいか、気になって目を開けたくなってきた。
――目?
そうだ。
考えてみたら、私は今目を開けているのか?
視界が黒一色に染まっているのは、単に私が目を閉じているだけなのではないか?
――そう思った瞬間、私の視界から闇はあっさりと消え去った。
代わり広がった色は青。
私は青い海の中を、沈んでいるわけでも浮かんでいるわけでもなく、クラゲのように漂っていた。
ふと見上げてみると、月明かりに照らされているのか海面がきらきらと光り輝き、穏やかに揺れている。
「あ……」
無意識に口が開き、そんな声が漏れる。
――海の中にいるはずなのに、声が出ると言うのは不思議だが、なぜかそのことは気にならなかった。
人だ。
海面の上から人が――誰かが私のことを見下ろしている。
その姿はゆらゆらと揺れる海面のせいかはっきりとはわからないが、人であることは間違いない。
「死ぬ?」
――その人は私に対していきなりそんなことを聞いてきた。
その言葉は確認?
それとも――
「手を――」
私が問いかけようとする前に、その人は再び私に声をかけてくる。
「手を――取って。
そして認めて。私を――」
そう言いながら、その人は海面越しに私に向かってゆっくりと手を伸ばしてきた。
――その人の金色の瞳が、揺れている海面越しでも私の目とはっきりと合う。
そして、私は気づいた。
ああ、そうか……
ここはすべての始まりであり、終わりなんだ。
そして、海面の上から私に対して手を伸ばしているのは――
「あなたは……」
私は海面に向かってゆっくりと手を伸ばした。
やがて、海面越しに相手の手と指先同士が接触する。
視界がガラスか鏡のようにひび割れて、そして音をたてて砕け散った。
――気がつくと、私は海の上に立っていた。
いつの間に海中から浮上したのかわからない。
周囲を見渡してみると、夜空――いや、宇宙が一面に広がっていた。
――似ている。
昨日夢で見た場所と。
「――いや、あれは夢じゃなかったんだ」
『そう』
ふいに足下から声がした。
視線を下に向けると、海面に映る私の姿だけがそこにある。
幻聴だろうか?
――いや、確かにいるじゃないか。
足下に広がる海の中に、“もう1人の私”が。
『ここはすべての始まり。そして終わりでもある。
あなたもすでに気づいていると思うけど――』
「うん」
『あなたは選ばないといけない。
このまま終わるか、それとも終わらない――いいえ、ここから始めるか』
「私は……まだ終わりたくない。まだ死にたくはない。
だって、私は――“切江乃彩”はまだ世界に生まれてすらいないんだから……」
私のその言葉に、海面に映っている“もう1人の私”は再びその瞳を金色に輝かせながら穏やかに微笑んだ。
『それなら……認めてくれる? 私のことを?
これは“契約”――私のことを認めてくれたら、私はあなたに力を貸してあげる。
あなたがこれから先自分自身と、そして世界と向き合っていくために必要な力を――』
「――認める、認めない以前に、答えは初めから決まってる。
あなただってわかっているでしょ?」
――あなたは私なんだから。
私がそう言うと同時に、視界が再びガラスか鏡のようにひび割れ、音をたてて砕け散る。
そして、砕け散ったその向こう側からまばゆい光が一気に差し込んできて、すべてを白一色に染め上げた。
――また「声」が聞こえる。
『そう。我は汝、汝は我――
我は汝の心の海より出でし者――』
『灯火を守護することが我が使命――』
『我が
偽りの仮面を打ち破り、その胸に“希望”という灯火を宿した今こそ、我が力をあなたにお貸ししましょう』
「ペ――」
――自然とその名前が、一文字ずつはっきりと脳裏に浮かび、口から紡がれていく。
「ル――」
――全身に徐々に力と感覚が戻ってくることがはっきりとわかる。
いつの間にか両手はしっかりと握りしめられていた。
「ソ――」
――全身、特に首がまた苦しくなってきた。
どうやらまだ蔦に締め上げているらしい。
いや、あれからまだ時間は数秒も経過していなかったのだろう。
「ナ――!」
――三度目を開き、意識が完全に現実へと戻る。
そして、それは『切江乃彩』がこの世界に二度目の産声を上げた瞬間でもあった。
――魔女や使い魔と自分たちの距離を軽く確認すると、私はチラリと後ろに目を向ける。
そこには私の数倍はあるだろう大きさの人型の存在が浮かんでいた。
魔女や使い魔とはまた違う異形――しかし、わかる。
空洞になっている胴体の中で赤い炎を燃え滾らせているこれは、“もう1人の私”だ。
その顔はフルフェイスの仮面に覆われていて表情は見えないが、間違いなくこいつも今私のことを見つめている。
「…………」
私は何も言わず頷くと、再び魔女と使い魔のほうに視線を戻す。
そして、右手を前に掲げて“もう1人の私”に命じた。
「こいつらを倒せ!」
私のその言葉と同時に、“もう1人の私”が勢いよく魔女たちに向かって突っ込んでいく。
その様子を見た魔女と使い魔は、慌てて迎え撃とうと身構えた。
――でも、遅いな。
手始めに一番手前にいた1体の使い魔に対して、“もう1人の私”がその手から炎を放った。
一瞬のうちに使い魔はその炎に呑み込まれ、チリも灰のひとかけらも残さずに消滅する。
さらに追い打ちをかけるかのように“もう1人の私”は別の使い魔にも炎を放ち、これもまた焼き尽くした。
――すごい!
それを見た私の中で高揚感が沸き上がる。
あたりまえだろう。私の力が――いや、「私自身」が、先ほどまでは手も足も出なかったであろうバケモノを易々と蹴散らしているのだから。
――また1体、使い魔が炎で焼かれて消え失せる。
よし。このまま一気に――!
「危ない!」
「――ッ!?」
背後からももこの叫び声が聞こえたのと同時に、死角から1体の使い魔が私の視界の中に飛び込んできた。
その手には小さいながらも鋭利なハサミが握られている。
とっさに後ろに飛び退けようとするよりも早く、私と使い魔の間に“もう1人の私”が滑り込む。
そして、“もう1人の私”のその細い体にハサミの刃の先端がブスリと音をたてて深々と突き刺さった。
「う、ぐぅっ……!?」
それと同時に、私の脇腹から激痛がほとばしる。
思わずそこを手で押さえながらその場でうずくまってしまった。
「えっ……?
ちょ、ちょっと、大丈夫!?」
そんな私の姿を見たももこが私のそばに駆け寄ってくる。
私は手で軽く「大丈夫」と答えつつ、視線を“もう1人の私”のほうに向ける。
“もう1人の私”は、片手で己の体に刃を突き立てた使い魔を軽く払い除けつつ、もう片方の手でハサミを引き抜いていた。
――同時に、私の脇腹にまた痛みが奔る。
「そう……
あなたが受けた痛みは私にも伝わるってこと……」
すぐさま理解する。
なるほど、確かに“もう1人の私”だ。
姿形はぜんぜん違うし、私自身はここにいるとしても、あれも紛れもなく私――『切江乃彩』の一部であり、そのものでもある。
ゆえに、痛みを共有したってなにもおかしくはない。
――しかし、そうなるとこのまま戦い続けるのはマズい。
数は明らかにあちらのほうが勝っている。いちいち敵を1体1体倒していくほどの余裕はさすがにない。
「戦いは数」なんて言葉があるように、そのような戦い方をしていたらこちらが先に音を上げるのは明らかだ。
――それなら、親玉を最優先で倒す。
私はいまだ目の前でその巨体をたたずませている魔女を睨む。
彼我との間隔は直線距離では走れば数秒で到達できるほどだが、そこにはまだ多くの使い魔たちがいる。
明らかに主である魔女を守ろうという陣取りだ。
「厄介……」
ついポロリとつぶやくように愚痴を吐いてしまう。
どうすれば最短最速で魔女のもとにたどり着けるだろうか――?
私の頭の中でそのような疑問が浮上する。
「ももこ!」
――と同時に、背後からすでに聞き慣れつつある声。
そして、それとほぼ同じタイミングで頭上から大量の槍が雨のように降り注いできた。
槍は次々と目の前にいる使い魔たちを貫き、やがてそれらは私たちと魔女を隔てる柵か壁のように床に突き刺さる。
――さり気なく、“もう1人の私”のほうにも何本か槍が降ってきたが、これはなんとか回避させた。
「ももこ、大丈夫!?」
「やちよさん!」
隣にいたももこがどこか嬉しそうな声を上げたので、つられて私もそちらに目を向けてみる。
「えっ……!?
き、切江さん……?」
そこには、昨日や朝に見た姿とは明らかに雰囲気が違う、一見するとコスプレかと思ってしまう――というか思ってしまった――装いをした七海さんの姿があった。
彼女の手には、ちょうど今大量に振ってきたものと同じ槍が1本握られている。
「切江さん?
――って、ああっ!?
よ、よく見たら、確かにこの間の写真の……!」
「ももこ、今はそれどころじゃないでしょ!? 状況は!?
というか……どうして魔女が2体もいるのよ!?」
そう叫びながら七海さんは険しい表情を浮かべながら魔女と“もう1人の私”を見比べるかのように交互に見やる。
――あ。
これ間違いなく勘違いされている。
さっき降り注いできた槍が七海さんの手によるものだとすると、さっき“もう1人の私”のほうにも槍が降ってきたのはそういうことか。
まぁ、外見的にも状況的にもそう考えられても仕方ないけど……
だけど、今のももことの会話やその姿から確信した。
七海さんも魔法少女だったのだ。
「七海さん、あれは魔女じゃないです」
「魔女じゃない……?
それじゃあ、いったいあれはなんだっていうの?」
「――見てもらえばわかります」
説明している余裕なんてない。
だから実際に見てもらったほうが速いとばかりに、口を動かすよりも先に足が動いた。
「すいません。使い魔はお願いします」
背後から聞こえてくる七海さんの制止を促す声に淡々と答えつつ、私は大量の槍で作られた即席の柵や壁をくぐり抜けると魔女に向かって駆け出した。
もちろん、そのそばに“もう1人の私”を連れて。
そんな私を前にした魔女は、獲物が自ら飛び込んできたことを喜んでいるのか、それとも脅威が目の前に迫ってきていることに恐怖しているのかはわからないが、全身を激しく、そして派手に震わせる。
そして、体中からいくつもの長く伸びた茨と巨大なハサミを取り出すと、それをこちらに向かって今まさに振り下ろさんと身構えた。
――でも、遅い。
すでにこちらは攻撃の射程に入った。
私がそう思うと同時に、“もう1人の私”から再び炎が放たれる。
炎は魔女の体のド真ん中に吸い込まれると、直後にボンという音とともに爆ぜ、一瞬で魔女の体のいたるところを炎上させた。
突然自らの身に起きた惨状に魔女は慌ててこちらに対する攻撃を止め、急いで火を消さんとその場でどったんばったんと暴れ、もがき始める。
周囲にいた使い魔たちも主のその様子に混乱しているのか、その周りをぐるぐると不揃いな速度で駆けまわっている。
――そんな姿に心の中で少しばかり申し訳なさも感じたが、こちらは命がけだし敵である以上情けはかけられない。
私は再度攻撃の意思を抱くと、それに合わせて“もう1人の私”が再び魔女に対して炎を放つ。
魔女の体中に灯っていた火がさらに激しさを増し、その姿を不気味なデザインのロウソクから轟々と燃え上がるキャンプファイヤーへと変貌させた。
――しかし、まだ足りない。
確実にこれを倒すにはもう一撃は必要だ。
なぜそう思ったのかは自分でもわからないが、そんなことを頭の中に浮かべつつ私は昼休みに大量に購入していた『カフェシャキーンZ』なるエナジードリンク――これを大量購入した理由もやはりわからない。しかし、買わなければならない気がした――を1本取り出してそれを一気にあおる。
口、喉、そして胃を通して体中に力がみなぎってくる――ような気がした。
飲み終えた缶から口を放すと同時に、私は“もう1人の私”に最後の一撃を魔女に放つ意思を伝えると同時に叫ぶ。
私に目覚めた「力」――
この胸にようやく宿った「希望」という灯火を守護する者――
“もう1人の私”――
その名前を。
「ヘスティア!」
“もう1人の私”――ヘスティアから三度放たれた炎が魔女を、そしてその周囲にいた使い魔たちを呑み込み、やがてそれらをまとめて焼き尽くして消滅させた。
――終わった。
そんな言葉が頭の中で浮かぶのと同時に、全身から安心感と疲労感がまとめてどっと湧き上がってきた。
それとともに視界がゆっくりと暗転していき、また体が前へと傾いていくのを感じる。
「あ……まず――」
まずい。
そう言い終わるよりも先に、私の意識は再び闇の中へと沈んでいった。
――だけど、今度は「嫌だな」という思いは抱くことはなかった。
なぜなら、意識が途切れる直前、私の名前を叫ぶ七海さんたちの声がかすかに――いや、しっかりと聞こえたからだ。
すべてを等しく、終わりへと運んでいく。
限りある未来の輝きを守らんとする者よ。
汝に与えられたその幾ばくかの時を往くがいい。
己が心の信ずるまま、
緩やかなる日々にも、揺るぎなく進むのだ――
――わずかに聞こえてくるガタンガタンという音と、ほんの少しばかり上下に体が揺さぶられる感覚にゆっくりと目を開いた。
そこは少しレトロな雰囲気の内装をした特急列車の車内だった。
そして、そんな車両のほぼ真ん中のあたりに不自然にぽんと置かれていた椅子の上に私は腰かけていた。
「ここって……」
軽く車両内を見回してみる。
――照明こそいたるところに灯されてこそいるが、車内はやや薄暗い。
私から見て左右両方の壁にはそれほど大きくはないが窓も存在している――が、そこからはなにも見えず、その先はただ真っ暗な闇だけが広がっていた。
そして、床も壁も天井も――車両のほぼすべてが青かった。
青くないのは照明のほかに車内に設置されている座席やテーブル、それと何に使うのかわからない数枚の大きな姿見くらいだ。
…………
……
知っている。
この場所は以前――いや、つい昨日訪れたことがある。
夢の中で、だが。
そう。確かここは――
「再び、お目にかかりましたな」
「あ……」
気がつくと、目の前に私と向かい合うような形で1人の老人がテーブルを挟んで椅子に座っていた。
大きく見開かれ血走っている目、見るだけでわかるとんでもない猫背、戦端が細く尖った耳、そして明らかに人間離れしている長い長い鼻――
この老人のことも知っている。
というより、この人も昨日見た夢の中でこの場所にいた。
名前は――『イゴール』だったっけ?
そして、この場所は『ベルベットルーム』。
――どうやら私は、昨日に続いてまた奇妙な夢の世界へと誘われてしまったようだ。
マギレコのコミカライズ版最新刊の発売が近いので失踪します。
■TIPS
●切江 乃彩
二木市虎屋町出身。転校前に通っていた学校は虎屋町学園。
10年前に発生した事故が原因で、なにもない空っぽで無気力な人間になっていた。
そんな彼女を見かねて手を差し伸べた――というか、鎖で繋いで無理矢理引っ張り出したのが紅晴結菜。
その後は彼女に引っ張られ――もとい言われるがままに生きてきたが、歳月を重ねていくうちに自我が芽生え、自分を縛りつける結菜を無意識に「ウザい」と思うようになった。
結果、祖母の余命発覚が引き金となり2人の主従とも「飼い主と犬」ともいえる関係は完全に崩壊。
しかし、幼馴染との関係を自ら断ち切り、かつ結菜の精神を深く傷つけてしまった罪悪感から「忘却」と「逃避」の偽りの仮面をまとうようになり、かつての無気力な自分に戻ってしまった。
そんな自分の「罪」を思い出し、そして自覚した時、彼女は偽りの仮面を打ち破り、真の己を目覚めさせる。
余談だが、当時の結菜とは某鉄血1期第1話時点での団長とミカのような関係だった。
つまり、乃彩が結菜と決別する道を選ばずにそのままの人生を歩んでいたら、原作メインストーリー第2部にて神浜の魔法少女を容赦なく
●
原作のメインストーリー第2部の主要登場人物。
ストーリーが進むたびに「お前の組織、ガバガバじゃねえかよ!」とツッコまずにはいられない魔法少女グループの長女――になる予定の人。
この時点ではまだ魔法少女でもなく、ただの1人の女子高生。
(何らかの打算もあってのことだが)10年ほど前に「人の形をした空虚ななにか」と化していた乃彩を無理矢理人の世界に引きずり出して繋ぎ止めた。
要は今の乃彩があるのはこの人のおかげ。さすがっす結菜さん!
だが、無意識に「乃彩は自分がいなければなにもできない」と思い込んでいた――悪く言えば見下していた――ため、その乃彩から決別を宣告されたのは非常にショックだった。
同時に自分の「歪み」にもすぐに気づけたようだが……
なお、乃彩との上記の一件がきっかけで「犬」という言葉が半ばトラウマになった模様。ひかるが「犬」じゃなくて「馬」なのもたぶんそのせい。
蛇足だが、結菜がこのまま原作と同じ道を歩んだ場合、第2部で神浜市にカチコミをかけるとほぼ100%ヨシツネをはじめとした公式チートペルソナを多く引っさげた乃彩と相まみえることになり、心身ともにフルボッコされることになる。
「引っ越し先が神浜だったなんて聞いてないわよぉ!」
「いや、だって結菜引っ越し先聞いてこなかったじゃん……」
●ヘスティア
乃彩の初期ペルソナ。アルカナは愚者。
属性相性は火炎吸収、水撃弱点。
特性は、火炎属性スキルの消費HP・SPが半分になる『聖火の炉』。
ギリシャ神話における炉や
炉は古代ギリシャにおいて家屋の中心に設けられていたことから家庭や日常を守護する女神ともされ、原典ではこれといったエピソードがなく非常に目立たない神でありながらも非常に多くの人々から信仰された。
意外なことだが、2021年現在メガテンにおいては――ペルソナシリーズをはじめとした派生作品も含んで――いまだに一度も登場していない。
一応、ヘスティアと同一視されているローマ神話の女神ウェスタが、英語読みの「ヴェスタ」名義で『if...』と『偽典・女神転生』に地母神カテゴリーの悪魔として、『女神異聞録』と『罪罰』で黛ゆきののペルソナとして登場してはいる。
●イゴール
ペルソナシリーズに登場する奇怪な外見をした老人。鼻。
ベルベットルームの主。シリーズでは派生タイトルを除くと皆勤賞。
実は人間ではなく何者かによって作り出された人格を有する人形であり、ゲーム中彼が常に椅子に座っているのは「自分は何者なのか?」という自問自答を延々と続けているため。
普遍的無意識(集合的無意識)の正の側面「ポジティヴマインド」の化身フィレモンの従者であるが、フィレモンが登場しない『P3』以降のシリーズではそのことについてゲームや設定中では言及されていない。
名前の由来は映画『Son of Frankenstein』(邦題『フランケンシュタインの復活』)に登場する同名の老人。
ちなみに、ペルソナシリーズのベルベットルームの住人をはじめ、メガテン派生作品において悪魔の合体に携わる者は、ほぼ全員がフランケンシュタインの映画の登場人物に由来する名前だったりする。
――というか、デビルサマナーシリーズではフランケンシュタイン博士本人、デビチルではフランケンシュタインの怪物自身が悪魔合体を行う。
●ベルベットルーム
ペルソナシリーズに登場する青い部屋。
夢と現実、精神と物質の狭間にある場所。要するに世界の外側。
この部屋の住人や客人となった者は、現実世界に存在する青い扉から自由に出入りすることができる。
客人となる条件は、現実世界で何らかの契約を結び、ペルソナ能力に目覚めること。
基本的にこの条件を満たした者は、部屋の主であるイゴールによって「夢」という形で招かれ、客人の証である『契約者の鍵』を与えられる。
そのため、条件さえ満たせば誰でも客人になれるというわけではない。
ただし、『P4』やアニメ『トリニティ・ソウル』の主人公のように契約を結ぶ前やペルソナが覚醒する前に偶然部屋に入ってしまう――夢という個人の無意識の領域が偶然部屋と一時的に繋がってしまう――者も少なからずいる。
部屋の存在、出入り口である扉は住人と客人にしか認知することができない。
時間とも切り離されているようで、客人が扉からこの部屋に入っている間の様子は、現実の者たちからは「客人がその場で一瞬から数秒ほどぼーっと突っ立っている」ように見えるらしい。
部屋に訪れる者の精神の在り方によって形や内装はその都度変わり、『女神異聞録』と『罪罰』ではジャズバー、『P3』ではエレベーター、『P4』ではリムジン、『P5』では監獄となっている。
乃彩の場合は特急列車。「定められた運命を往くことも良しするが、それをどこまで続けるか、どれほどの速さで進むかは自分が決める」という彼女のそれまでの10年間の生涯の表れである。
●心の海
一般的には「普遍的無意識」または「集合的無意識」と呼ばれる領域。
この宇宙に存在するすべての生命の精神が繋がっている場所。
ペルソナシリーズにおいては、派生タイトルも含むほぼ全ての作品の世界観とストーリーにおいて重要な役割を果たす概念。
ぶっちゃけると、某型月作品における「根源の渦」のようなもの。
マギカシリーズでいえば「円環の理」も間違いなくこの一部。
●十咎 ももこ
今回はこれといって活躍の機会がなかった。
しょーがねーだろ、ソウルジェム真っ黒なんだから。
●七海 やちよ
ヘスティアを魔女と勘違いしてAnthony君もろとも串刺しにしかける。
危ないですよ、やっちゃん!