雫side
ーーー生徒指導室ーーー
畑山「皆さん、入って下さい。」
4人「失礼します。」
生徒指導室……初めて来たわね。通りがかった事は何回かあるけど、入った事は1度も無いわ。
畑山「校長先生、教頭先生、昨日総武高校に行った4人を連れて来ました。」
教頭「ご苦労様です、畑山先生。さっ、皆さんもそのソファに座りなさい。」
私達は教頭先生に言われた通り、目の前にあるソファに座った。けど、やっぱりこの件で呼ばれるとは思っていた。私は朝学校に来たのと同時に職員室に行って、畑山先生に昨日の事を言ったから。
教頭「先ずは君達を此処に呼んだ理由ですが、もうお分かりだと思います。昨日の総武高校についての事です。お気付きの方も居ると思いますが、昨日その総武高校の先生から報告がありました。我が校の生徒が被害を受けたと。当然、しっかりとした説明を受けて。そして今朝方も同じく報告がありました。そうですね、八重樫さん。」
雫「はい。」
教頭「結構。その上でお聞きしたい事は1つあります。天之川君、何故畑山先生の言われた事を無視して総武高校に行ったのですか?」
え?どういう事?言われた事?無視?
天之川「それは畑山先生が利用されていると思って、その黒幕にやめるようにしてもらう為にです。」
教頭「ほう、小学生の頃一緒にいた子を助ける為ではなく先生の為に、ですか?」
天之川「っ!?い、いえ!確かに今、教頭先生が言ったのが最大の理由ですが、俺は利用するのをやめさせる事も視野に入れてました。」
教頭「成る程………しかしね天之川君、それはあまりにも荒唐無稽だ。総武高校からの報告ではそんな事は一言も聞いていなかった。相手側の被害者である比企谷君からもそのように聞いている。」
天之川「そ、それは比企谷が「教頭先生、次に行きましょう。これでは話が進みません。」っ!」
教頭「分かりました。では次に移ります。比企谷君からも説明は受けていると思いますが、夜十神さんでの中学時代の件についてです。説明は省きますが、比企谷君の説明を受けてそれを理解して納得している方は手を挙げてください。」
この質問に私を含む龍太郎、香織の3人はすぐに手を挙げた。それはその通りよ、あの説明を受けて比企谷君が悪いなんて言えないわ。むしろ夜十神さんを助ける為に最善の事をした凄い人だと思っている。
でも貴方は違うのね、光輝。
教頭「君は納得していないのだね?」
天之川「はい。比企谷は問題を先延ばしにしているだけです。ひい……夜十神さんはもっと努力するべきだったんです。そうすれば今のような事にはならなかったと思っています。」
教頭「………天之川君、此処に居る教師は先方から細かい説明を受けています。なので何があったのかはある程度理解しているつもりです。それでも尚、彼女の努力が足りなかったと言いますか?」
天之川「はい、言えます。」
光輝………
校長「………本当は出すつもりなんてなかった。だがこうなっては致し方あるまい。君達に1つの書類を見せよう。これは総武高校から頂いた物だ。」
校長先生は封筒の中から1枚の紙を出して机に置いた。それは病院でよく使われるカルテだった。そのカルテを見た私達は驚きを隠せなかった。
雫「人が、見えなくなる……病気?」
校長「そう……夜十神さんは中学生の時に起きた事により、特定の人物の顔や輪郭が見えず、声すらも聞こえていない状態だ。こうやって聞くだけでも重症なのが分かりますが、大事なのはそこではない。この部分だ。」
対象となった人物となった人物に対して、嫌悪、憎悪のような悪影響を及ぼすような感情が生まれた場合、この障害が発生する。
坂上「つまり………嫌いになったらその人が見えなくなるって事ですか?」
校長「その通り。こんな書状まで送ってくれた。読み通すだけでもこっちのとある生徒がどんだけバカやらかしたっていうのがよく分かる。」
校長先生……挨拶とかでも思ってたけど、やっぱり口が少し悪いのね。でも校長が読み上げた内容はこの症例と合致していた。
校長「そして本番はこっからだ。修学旅行2日目の夜、竹林にて天之川がこちらに接触。天之川は比企谷を突き飛ばし、夜十神を守る行動を取る。だが夜十神は比企谷の方へと向かい安否の確認。天之川が離れるように言うものの、聞く様子はなく、比企谷と少しだけ口論に。そして次だ、次の事に耳の穴を開けてよく聞いておくように。」
光輝、アンタ一体何をしたのよ………
校長「比企谷達がその場から立ち去ろうとするが天之川がそれを妨害、比企谷も行動に移すがそれでも妨害。夜十神も混ざって口論になるが、天之川がこっちに来るように手を伸ばすと夜十神からは激しい拒否。そして彼女が言っていた言葉はこうだ。
『私の前から凄く嫌な空気を感じる。』
だそうだ。それからは天之川が比企谷から近付くなと言われてその場を去った………っていうとこだ。もう理解してるよな、天之川?」
天之川「っ………」
校長「彼女の目はもう君を捉えてはいない。しかもこれまでで1番最悪のケースときたもんだ。嫌悪感を抱く奴は初めてだったんだと。」
雫「光輝、アンタ………」
天之川「ち、違うんだ雫。これには「何も違わねぇよ、俺はこういう性格だからまどろっこしいのは嫌いだ。ハッキリ言うが、お前のやった、あるいは今やってる行為ってのは明らかな迷惑行為でしかねぇ。しかも修学旅行では明らかな暴行もしてるんだぞ?お前さん、これにどう落とし前をつけるんだ?」っ………」
校長先生………容赦ないわよね。全校集会とかでも思っていたけれど。言葉のナイフどころか、これじゃあノコギリよね。
校長先生、何でこんなに怖くしちゃったんだろう?