俺、実は彼女がいるんだ………   作:生焼け肉

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妹(涼風)と……

 

 

涼風side

 

 

お姉様がお母様に連れられてから、私と八幡さんの2人で町を散策に出ています。最後まで駄々を捏ねていた姉ですが、流石にお母様が睨みを利かせると、途端に大人しくなったのは少しだけ笑っちゃいました。八幡さんも口元を緩めていましたので、面白かったのでしょう。

 

ですが今、私は少しだけ緊張しています。八幡さんとは短くない付き合いとはいえ、こうして2人でお話やお出掛けをする事は今までに指で数えるくらいしか無かったからです。いつもは姉と過ごす事が多いので、今だけは八幡さんを独占………っ!べ、別に私はお姉様から八幡さんを奪い取りたい訳ではありませんからね!?兄のような、お兄様のような方と過ごしてみたいからです!八幡さんはその理想形のような方なので、少しだけと思ったのです!決して他意はありません!

 

 

八幡「なんか、変に緊張するな。」

 

涼風「え?」

 

八幡「いやな、顔が似ているとはいえ、目の前に居るのは涼風だからな。普段俺達はこうやって会話する事って殆ど無いだろ?だから少しな。」

 

涼風「私もそうです。八幡さんとお出掛けしてみたいというのは嘘ではありませんでしたが、そこにはいつもお姉様が居たので。2人きりという機会はありませんでしたので。」

 

八幡「そうだな………まっ、折角なんだ。姉の柊の前では話せないような話でもしてくれて構わないしよ、気楽に歩きながらでも楽しもうぜ。」

 

涼風「は、はい!」

 

 

やはり兄が居る、っという感覚はこんな感じなのでしょうか?無意識の内に安心させてくれるというか、大らかというか………よく分かりませんが。

 

 

ーーースイーツ店ーーー

 

 

涼風「それで、八幡さん………その、いいでしょうか?質問をさせて頂いても?」

 

八幡「あぁ、いいぞ。っていうか、俺にそんな畏まった口調でなくてもいいんだぞ?柊やおじさんおばさんと同じようにしてくれればいい。」

 

涼風「そ、そうですか?じゃ、じゃあ次からはそのように………えっと、姉と付き合い始めてもう2年程経ちますけど、姉の様子はどうですか?」

 

八幡「そうだな、普段は変わりない様子だ。だが俺は柊の学校面を知らないから、そこだな……少し俺が問題視してるのは。」

 

涼風「……と言いますと?」

 

八幡「柊が過剰にやり過ぎてないかって事だ。中学の時もそうだが、柊は俺を除いた他人に全く興味がない。それこそ幽霊扱いする程にな。お前もその辺りの事情は知ってるよな?中学も学年も同じだったから、あまり掘り返したくは無い事だろうが。」

 

涼風「……はい。」

 

八幡「その連鎖で高校でもクラスメイトの奴等を無視したりとかしてないかが心配だな。その事は今の俺にはどうしようもない事だからな。何とかできるとすれば涼風くらいになっちまう。」

 

 

そうですよね………八幡さんは総武高校で私達は誠教学園、学び舎が違うのでおいそれと学校には近づけませんから。

 

 

八幡「涼風から見て柊の様子はどうだ?」

 

涼風「私の目には中学3年生になる前の姉の姿、本来の姿のように見えます。なのであまり心配はないとは思いますけど……少し心配ではあります。またあんな事が起きてしまったらって考えると………」

 

八幡「そうだな……あの頃の学校は酷かったもんだ。出来れば2度とあって欲しくないな。」

 

 

やはり八幡さんでも中学3年生の頃は良い思い出が無いようです。無理もありません、私達の世代であの中学校に居た生徒はその1年間分の思い出は皆無に等しいでしょうから。

 

 

涼風「そうですね、私も同じ気持ちです。」

 

八幡「……そういえば柊に絡んでる男子とかは居ないのか?柊もそうだが、涼風も同じ美形だから話しかけられたりはするだろ?」

 

 

び、美形!?私が!?は、八幡さんは一体何を言って……お姉様は兎も角、私なんて………///

 

 

涼風「わ、私は兎も角としてお姉様は男子からも女子からも話しかけられる事は多いです。クラス、というよりも学年からの人気が高いです。」

 

八幡「私は兎も角って……俺がそこら辺の男子生徒だったら、間違いなく声掛けてると思うけどな。」

 

涼風「わ、私はお姉様と違って活発ではありませんし、どちらかといえば地味な方なので………」

 

八幡「おいおい、言い方が少しだけマイナスだぞ?お前は地味なんかじゃない、お淑やかなんだよ。姉の柊が【明朗快活】なら妹の涼風は【雲心月性】って所だろう。」

 

涼風「私には勿体無い四字熟語だと思いますが……確かに私は有名人になりたいとも、お金が大量に欲しいとも考えた事はありませんが、私だってそれなりに欲はありますよ?」

 

八幡「けど柊程では無いだろ?柊のように駄々捏ねてまで欲しがったりはしないだろ?」

 

涼風「っ!ふふふっ、確かにそうですね。」

 

 

確かに私は姉のように何かをしてまで物を欲しがった事はありませんでしたね。ふふふっ、お姉様は子供の頃に何度かそういう事がありましたので。八幡さんは言葉で人を例えるのがとても上手です。

 

 

涼風「じゃあ八幡さんは【温厚篤実】ですね。真面目で優しいですし、とても穏やかな方ですから。」

 

八幡「つい最近、その穏やかな奴は怒ったけどな。それについては?」

 

涼風「言葉というのは便利です。【龍の逆鱗に触れる】。例え優しい方でも、嫌な事をされれば怒ります。八幡さんの場合はそうでしょう?」

 

八幡「……涼風、絶対口喧嘩とか強いだろ?」

 

 

はい、姉に負けた事は今までで数えるくらいしかありませんから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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