俺、実は彼女がいるんだ………   作:生焼け肉

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謝罪と【模範】の意味

 

 

八幡side

 

 

入院生活4日目。今日は朝から俺の通ってる高校の校長と天之川の通ってる高校の校長と担任がやってくる日だ。その前に俺はナイフが刺さった左腕の様子を診てもらう事になっている。担当医は何故か神田さんになっている。院長直々っていいのかコレ?

 

 

神田「………んっ、着実に塞がってはきてるな。よし、このままの調子なら次の土曜に退院出来るだろう。それと金曜には抜糸するって頭の片隅にでも入れておけ。俺も予定に入れておくからよ。」

 

八幡「分かりました。」

 

神田「あぁそれと、お前の病室に校長2人と天之川の担任が来るんだってな?さっき受付嬢から聞いた。俺もその場に立ち会う事にしたからよろしくな。」

 

八幡「耳が早いんですね。」

 

神田「これでも俺は院長だぜ?見た目はヤクザでも中身は善良な医者なんだからな?お前の今の容態と天之川の現状も教えてやんないといけないんだ、立ち会うのは当然だろ?」

 

 

最もだな。確かにアイツの状態を教えられるのなら、今の場面程ちょうど良い機会は無いだろう。

 

 

八幡「まぁ、分かりました。」

 

神田「んじゃそういう事だ、また後でな。」

 

八幡「はい、ありがとうございました。」

 

 

………また1人になってしまった。激しい運動を制限されているだけで普通に歩けるからいいとしても、やはり暇になる。涼風が用意してくれた小説も読んだ、さすがと言うべきか、俺の好みを1冊で当ててくる辺りはお見事と言いたくなった。来たら撫でてやろう。そしてそれに嫉妬する柊にも。

 

 

先生達が来るのって、確か10時だったよな?それまでは病院の中でも散策するか。外寒いから行きたくないし。けど見る所なんて別に無いんだよな、病院に来る機会なんてそうそう無いってだけだから。

 

 

八幡「誰か知り合いが居るってわけでもないから、話し相手も居ないしな。」

 

 

何も考えずに行動するのも良いかもな。最近は天之川のせいであれこれ考えてばかりだったしな。とは言っても何する?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

っと、思いながら行動してたわけだが、時間が経過して10時になった。俺は病室に戻って側には神田さんも居る。手に持ってるカルテを真剣な表情で見ていて、医者なんだなっと改めて認識した。全くそうには見えないが。

 

 

コンコンコンッ

 

 

神田「どうぞ。」

 

茅ヶ崎「失礼します。こちらが比企谷君の入院している部屋だと聞いたのですが……」

 

神田「えぇ、こちらになります。ぼう……比企谷君ならこちらに居ます。」

 

校長「失礼します。」

 

畑山「し、失礼します………」

 

 

次々と大人が入ってくるから俺も少しだけ背筋が伸びる。

 

 

茅ヶ崎「比企谷君、容態の方は如何ですか?」

 

八幡「大丈夫です。怪我もそんなに酷くなかったので。土曜には退院出来ます。」

 

茅ヶ崎「そうですか、それは何よりです……それから、今日はこの場を設けさせてもらい、感謝します。ご紹介しましょう、こちらに居るのは千葉市立京葉高等学校の校長先生と天之川君の担任の畑山先生です。」

 

校長「比企谷君、今回は当校の生徒が大変申し訳ない事をした、申し訳ない。」

 

畑山「ごめんなさい!」

 

八幡「まぁ、俺は刺されただけなんで別に……こんな身体に出来た傷よりも、心の傷の方が深いんで、俺よりもソイツに謝ってやってください。」

 

畑山「はい、分かりました。では後日そうさせて頂きますね!」

 

神田「んんっ、では自己紹介も謝罪も終わったところで、今回の事件の内容を比企谷君からお聞きになってください。因みに俺が此処に居るのは比企谷君の容態を診る事と、天之川君の現状をご報告する為です。なので、話し終えたら教えて下さい。俺はそれまで待機していますので。」

 

茅ヶ崎「分かりました。では比企谷君、改めて当時の状況の説明をお願いします。」

 

 

校長先生のこの言葉によって、俺はその日あった出来事を出来るだけ細かく説明した。京葉の校長先生は怒ったような顔をしており、担任の畑山先生はショックを受けたような、悲しさも混ぜた表情を見せていた。

 

 

八幡「これがその日にあった内容です。」

 

神田「自分も比企谷君の説明に嘘偽りが無い事を証言します。私も当時の事を聞いていましたので、彼の言葉には間違いありません。」

 

校長「そうですか………しかし、あの天之川がこんな行動に出るとは思わなかった。」

 

畑山「はい、彼は模範的な生徒だったのに………」

 

神田「ふむ……畑山先生、でしたかな?」

 

畑山「は、はい?」

 

神田「医者の立場から申し上げますので、あまり説得力はありません。ですが敢えて言わせて頂きます。自分からしてみれば、模範的な人程信用ならない人は居ませんよ。」

 

畑山「え……それはどういう?」

 

神田「確かに彼は模範的な生徒だったかもしれません。しかし貴方はそれだけしか知らない。こう言ってしまうと他の生徒にも同じ事を言ってしまいますが、内面を見ていないのと同義です。模範というのは見習うべきものを表す言葉です、彼の事を知っているのであれば、その言葉は出てくるものではないと思われますよ。」

 

 

神田さん、その言葉はとてもよく分かります。

 

 

畑山「そ、それはつまり、何かあったと?」

 

神田「………これは私が独自に調べた事です。信憑性が無いから信じないも良し、聞く価値があるから耳を傾けるのも良しです。皆さんにお任せします。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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