八幡side
平穏な生活。俺は今その生活を肌で感じているところだ。ここ1ヶ月、ずっと面倒事の連続だった………修学旅行前には姉妹誘拐してそのまま強姦しようとする奴がいたり、依頼を受けたはいいものの、その内容を拡大解釈したアホが居たり、修学旅行から2週間くらいずっと俺と柊と涼風に付き纏って、周りにも迷惑を掛けるだけ掛けまくった挙句にムショ行きになった自分至上主義な奴がいたりと、かなり嫌な1ヶ月を過ごした。
だが、今日からは普通の学校生活を送ろうと思っている。面倒事はもうゴメンだ。なるべく奉仕部の依頼も受けないようにしようと思ってる。俺は今部員っていう立場ではなく、ピンチヒッターの立場だからな。仮に俺が居る場で依頼が来たとしても、無理に依頼に介入しなくてもいいだろう。
柊「八幡君、どうしたの?考え事?」
八幡「ん?いや、別に……ただ漸く普通に暮らせるって思ってただけだ。」
柊「そうだね♪ホント普通って良いね〜。普通じゃない過ごし方を2〜3週間続けてたからね〜。」
涼風「事情があるとはいえ、少し狭い思いをしたのは事実ですしね。特に八幡さんとお姉様は大変な目に遭いましたから無理もありません。」
八幡「それよりもさ、少し気になる事があるんだが、聞いてもいいか?」
柊/涼風「何?(何でしょう?)」
八幡「何かさ、クラスの雰囲気ちょっとだけ険悪じゃね?俺の居ない1週間に何かあったの?」
な〜んか変なんだよ、いつもクラス内でお祭り騒ぎみたいにお喋りしているのに、今日はそれがやけに静かだ。何だこれ?
柊「私も分かんない。というよりもこの学校の事で興味持てるのなんて八幡君に関する事だけだし。」
八幡「まぁ柊の答えは大体想像通りだが、涼風は何か知らないか?」
涼風「私にも分かりません………それにあったとしても、きっと私はどうでもいいと切り捨てていたと思います。」
八幡「お前にしては言い切ったな、その心は?」
涼風「八幡さんが入院しているのに、そんな些細な事を気にしてなんていられません。私にとっては八幡さんの方が余程大事です。」
良い子だ、この子は本当に良い子だ………どうしてこんなにも良い子に育ってくれたんだ?後で頭撫でてあげるよ。
八幡「それはどうもありがとう。後で頭を撫でてあげます。それに嫉妬している柊にもプレゼントしてやるから、そんなリスみたいに頬を膨らますな。」
柊「私だって八幡君の方が大事だもん!」
分かってる、分かってるから。
柊「はい、お弁当〜♪」
八幡「出た、お決まりの重箱弁当。量もさる事ながらその質もまた最高の弁当箱。」
柊「ヤダなぁ〜八幡君ってば、八幡君に愛情たっぷりのお弁当を食べてもらいたいんだから当たり前じゃん♪不味いお弁当なんて作る訳ないじゃん!」
涼風「私達が八幡さんに失敗作を食べさせるわけがないではありませんか!八幡さんにはいつでも美味しい状態で食べさせたいのですから!」
八幡「力と説得力のある返しをありがとう。」
柊「じゃあ八幡君、1週間ぶりのあ〜ん♡」
八幡「あむっ………うん、今日も美味い。」
柊「やった♪」グッ!
涼風「わ、私のもどうぞ………///」
八幡「あむっ………うん、これも美味い。」
涼風「嬉しいです…///」カオカクシ
恥ずかしいのならやらなければいいのに………柊を見てやりたくなったのかな?そしてやってみたら想像以上に恥ずかしかったと。
柊「けどやっぱり八幡君って、ご飯食べてる時って美味しそうに食べるよね。私その時の八幡君の顔好きなんだよね〜。」
八幡「……俺、そんな顔してるのか?」
柊「表情にはあまり出てないよ?けど雰囲気っていうのかな?雰囲気がね『んんぅ〜美味い!』みたいな感じなんだよね〜♪」
涼風「よく分かります!家で食事をしている時もそうですし。お父様とお母様の前では少し隠れてはいますが、私達にはお見通しです!」
そうだったのか………俺、顔に出やすいとは言われた事あるが、そういうのもあったのか。
柊「あっ!でもだからって変に顔に出したり、隠したりしなくても良いからね!私達はその顔の、普段通りの八幡君が好きなんだもん♪」
八幡「そ、そうか………」
改めて言われると、照れ臭い………
柊「あっ、次を食べさせないとね!」
八幡「え?いや、自分で食え「八幡さんはまだ左腕を上手く使えません。なので私達が食べさせます。」いや、右手普通に使え「はい、八幡君、あ〜ん♡」ちょっと?わざとか?わざと聞かないようにしてるのか?」
柊「今日の学校も終わりぃ〜♪八幡君帰ろ……あっ、今日月曜日だった。」
八幡「いや、平塚先生から怪我が完治してからで良いって言われてるから、今週と来週の部活は休む予定だ。何かあったらアイツ等の方から俺に言ってくんだろ。」
柊「やったぁ〜♪八幡君と帰れる〜♪右手も〜らいっ!えへへ〜♪」ギュ~!
涼風「では左手を………///」キュッ
柊「じゃあ家に向かってしゅっぱ〜つ♪」
あぁ、これだ………これが何もない、ただの平穏な、俺の求めていた生活だ。漸く戻ってきたんだな……おかえり、俺の平穏。