俺、実は彼女がいるんだ………   作:生焼け肉

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父の本心

 

 

八幡side

 

 

ふあぁ〜………さっぱりした〜。やっぱあの風呂は格別だ。この家に来た時の楽しみだ。この屋敷の風呂はデカいだけでなく、ちゃんと清掃も行き届いているから使う側である俺もかなり快適だ。さらに普通の湯だけでなく、ジャグジーやサウナもあったりするから温泉並に楽しむ事ができる。俺はおじさんと入る事が多い。あの人が誘ってくるという理由もあるが、1番はおじさんと会話してても暇にならないし、ペース配分も上手いからだ。話術が高い人ってすげぇのな。

 

 

御影「はい八幡君、コーヒー牛乳。」

 

八幡「どうも……やっぱりコレなんですね、この前泊まりに来た時もコレでしたけど。」

 

御影「やっぱりお風呂上がりの一杯は瓶のコーヒー牛乳に限るよ。そう思わないかい?」

 

八幡「日本人なら分からなくもないですけど、俺はいつも思います。自販機で売ってるような100円単位のコーヒー牛乳で充分だと。」

 

 

そう、おじさんが渡してきたのはコーヒー牛乳でも、1本500mlで2,500円以上するロックメイのコーヒー牛乳だ。確かに1本飲むなら充分な量だとは思うけど、1本2,500円の飲み物渡すって普通じゃないですよ?改めて思うけど、この家マジでスゲェ………

 

 

御影「いやぁ〜八幡君にはこの程度の事では返し切れないくらいの事をしてもらったからね。安いものさ、瓶1本のコーヒー牛乳くらい。」

 

八幡「………因みに聞きますけど、コレ後幾つあるんですか?」

 

御影「うぅ〜ん………」

 

八幡「あっ、もういいです。大体察しました。」

 

 

だって考えるって事はそれだけ量があるって事でしょ?一体何本貯め置きあるの?

 

 

ーーー居間ーーー

 

 

御影「お風呂頂いたよ〜女性陣の皆さん、先に頂いちゃってごめんね、お次どうぞ。」

 

柊「は〜い、ありがとうお父さん。じゃあ早速行こっ涼風、お母さん!」

 

紫苑「はいはい、分かったわ。」

 

涼風「では、私達も行ってきます。」

 

柊「あっ、八幡君。覗きはダメだからね?」

 

八幡「しないから行ってこい。」

 

柊「ふふふっ、ほんの冗談♪じゃあね!」

 

 

ったく、冗談じゃなかったら今頃………いや、今なってる可能性もあるな。おばさんからの扱き。

 

 

御影「あんな姿の柊を見られるのも、君のおかげなんだ。君はしつこいって思ってるかもしれないけど、僕や妻、涼風、この屋敷にいる人達全員からしてみれば、君は大恩人なんだ。だから僕が君にできる事は何だってしてあげるさ。さっきの枕の件だってそうさ。」

 

八幡「いや、まぁ……あれは「分かってたよ、君があの時咄嗟に思いついた事だって。」………え。」

 

御影「でも嘘ではなかった、違うかい?」

 

八幡「………そうです。」

 

御影「僕はね、咄嗟の思いつきであったとしても、君がああやって初めて僕を頼ってくれた事がとても嬉しいんだ。ようやく君に何かをしてあげられるってね。」

 

八幡「買い被り過ぎですよ、おじさん。俺はおじさんにいつも何かを貰ってばかりですから。」

 

御影「そうかもしれない。けどそれは僕が君にあげているだけであって、君が望んでいる物ではないからね。それはどんな高級品であっても、心を込めていなければ意味は無いさ。あっ、僕はちゃんと心を込めてるからね!」

 

 

いや、そこは疑ってないです………

 

 

御影「まぁ要するにだけど、僕に出来るのは本当にこのくらいしかないんだよ。出来る事ならもっと君の為になる事をしてあげたい、けどそれで君自身の人生の妨げになったら元も子もないからね、だから八幡君には申し訳ないけど、物で感謝を与えるしかないと思ってこうしているんだ。」

 

八幡「………おじさん、確かに俺はおじさんから数え切れないくらい色々と食べさせて貰ったり、物を貰ったり、連れて行ったりしてもらいました。でも俺はそれに対して不満なんて持った事はありませんよ。寧ろおじさんの言う心をたくさん貰ってます。だってそうでしょう?おじさんだけでなく、おばさんや柊、涼風や宮間さん達が俺の事を家族だって言ってくれてるんですから。そんな人達からそう言われて誰が申し訳ないって思うんです?俺の方こそありがとうですよ、こんな奴を家族だって思ってくれてるんですから。」

 

御影「………」

 

 

おじさんは優しげに笑みを浮かべると、その場で顔を俯けて右手の親指と人差し指で両目の内眼角辺りを押さえた。

 

 

御影「………そうだった、君はそういう優しい子だったね。ふふふっ、ホント柊は良い子を、本当に良い子を選んだんだって改めて感じたよ………僕の心中を知って尚、そんな事が言えるんだ、君はとても優しい子だよ。」

 

八幡「やめて下さいよ、俺が優しいだなんて………優しかったらもっと人気者ですよ。」

 

御影「そうかもしれないね。でも僕は今程、君が柊と涼風と知り合って、僕達と関わりを持ってくれた事を嬉しく思った日は無いよ。前から知ってはいたけど、君は柊と涼風を大切にしてくれているし、裏切るような人でもない。本当に君という人と出会えて嬉しいよ。これからも、君とは仲良くしていきたいよ。」

 

八幡「………はい、おじさん。」

 

 

おじさんのこの時の言葉に嘘や偽り、冗談なんて混じってない事は俺でなくとも分かるだろう。だからそれだけに俺はこの人達との関係は断ち切らないようにすると、心の中で強く決心をした。

 

 

 


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