柊side
八幡「おじさん、こっち終わりました。」
御影「え、本当に?確認させて……………本当だ!全部入ってる!いやぁ〜助かるよ八幡君。」
八幡「いえ、ただ待ってるのも暇なので。」
御影「柊と涼風もゴメンね、書類整理なんて任せちゃって。いつもは妻にやらせちゃってるから。」
柊「別にこのくらい何でもないよ。でも流石お母さん、几帳面な性格してるからどこに何があるのかすぐに分かるもん。」
涼風「そうですね。お母様の整理整頓はとても分かりやすいですから。」
紫苑「あら、ありがとう。けど貴女達も負けてないわよ、流石は私の娘ね。将来は八幡君の良い秘書と懐刀になるんじゃないかしら?」
柊「当然っ!」エッヘン!
涼風「が、頑張ります!」グッ!
♪〜♪〜
八幡「?何だこの音楽?」
御影「あぁ、この音楽は午前の業務終了の合図だよ。だから皆はこの時間に昼食を食べる事になってるんだ。当然僕達もこの時間はペンや紙なんて一切持たないから。」
紫苑「じゃあ、行きましょう。」
柊「え、行くって何処に?」
御影/紫苑「食堂。」
ーーー食堂ーーー
八幡「………マジ?」
柊「予想はしてたけど………」
涼風「広い………ですね。」
目の前に広がっていたのは、この会社の食堂の風景なのだが、俺達の予想していた食堂の広さの想像以上だった。丸々1階分を食堂スペースに使ってるのかよ………おじさんもとんでもない事をするな。
御影「日毎にメニューが変わっていてね。今日は日本料理のひつまぶし、中華料理の特製盛り合わせ(メニューは麻婆豆腐、酢豚、野菜中心回鍋肉だよ。)、トルコ料理のケバブサンド、スペイン料理のパエリアって所だね。」
八幡「その中から選ぶって事ですか?」
紫苑「そうよ。皆好きなの選んでいいわよ。」
八幡「けど、俺達お金無いですけど………」
御影「あぁ、無料だから大丈夫。」
え?
柊「無料?タダって事!?」
御影「そっ♪この食堂で使われている食材は仕入れたのはいいけど、結局売れなかったり残ってしまった物が殆どなんだ。だからそれを有効活用してるって事だよ。本来ならお金を取るんだろうけど、自分達で買ったのにまたお金を払わなくちゃいけないなんて、変な話でしょ?」
いや、それ会社のお金ですよね?お昼代で払う為の個人のお金なら使っても良いのでは?
「今日も美味いなぁ……このパエリアがやっぱ1番だわ!」
「それを言うならこのひつまぶしだって負けてねぇぞ?見ろよ、鰻をこんなに使ってるんだぜ?贅沢過ぎるって。普段だったら絶対無理だってこんな食事。此処だからだよなぁ………」
「しかもこれを無料で食べられるんだもんね!社長が手に入れて販売した上で売れ残ったのは仕方ないけど、私達が食べる事によって無駄にならずに済むって考え方も凄いよね〜!」
「全くだな、だってあれ見ろよ!社長がその時に言った言葉をそのまま誰かが印刷して張り出したらしいぜ。度胸あるけど、良い言葉だよな〜。」
……アレだよな?
『食材を無駄にする事なかれ!食材は調理する事によって料理へと変わり、我々の血となり肉となる!この世の全ての食材と調理して下さっている方々に最大の敬意と感謝を込めながら食すようにっ!』
八幡「………おじさん、ああいう事言ったんですね。メッチャカッコ良いと思いますよ。」
御影「や、やめてよ八幡君///僕もあれは少しだけ恥ずかしいんだ!本音とはいえ、あの言葉をあんなに大きく、しかも皆が見えるような位置に張り出すとは思わなかったんだから!」
涼風「取り外さなかったのですか?」
紫苑「考えたのだけど、当時……と言うよりも今もだけど、アレはあのまま張り出しておくべきだって皆言うのよね。だから手出し出来ないってわけ。」
八幡「成る程………」
紫苑「因みに私も取り外すのは反対。だって良い言葉じゃない、逆に外す理由が知りたいわ。恥ずかしい以外で。」
おばさん、それ逃げ場ないです。
御影「まぁ僕ももう諦めてるから良いけど、何回もあの会話を聞くと、少しこの食堂から逃げ出したくなるんだよね〜羞恥心で。」
涼風「どうしてですか?とてもご立派なお言葉だと思いますが………」
御影「だって本人がいる前でもその話をするんだよ?気付いているのかいないのかは分からないけど、ちょっとは周りを見てって思っちゃうよ……」
八幡「まぁ、その内なくなりますって。多分。」
そんな雑談をしながらも、俺達は食べるメニューを決めて注文をした。そしたらすぐに出てくるから、食事においても気が利いているのがよく分かる。少ししかない食事時間も休憩時間を有意義に使ってもらいたいっていう考えなのかもしれない。
紫苑「なんというか、予想通りの注文ね。」
御影「だね。涼風はきっとひつまぶしを頼むと思っていたよ。そして柊は中華かトルコを選ぶと思ってた。これも的中だね。そして八幡君はパエリア、いやぁ〜娘達は当然だけど、僕達も八幡君の事を分かってきたみたいだね〜。」
涼風「和食は日本人の魂ですから。」
柊「他の国の料理の勉強もしないとだから!」
八幡「まぁ、美味そうだったので。」