俺、実は彼女がいるんだ………   作:生焼け肉

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いざ、滋賀へ!

 

 

八幡side

 

 

12月30日の大体朝、俺は今車に揺られてます。金持ちらしく黒塗りされた高級車に乗っていて、両隣にはいつも通り柊と涼風という大輪の花がくっついている。そしてその正面にはおじさんとおばさんが乗っていて、運転は宮間さんがしている。そう、今俺達は関西の滋賀県にある霊峰、伊吹山に向かって車を走らせている。おじさん達は一昨日が会社の年内最後の仕事だったらしく、昨日は今日の準備を家族総出でしていたとか。

 

そして俺はそんな事をしているとも知らずにこの日が来るまでのんびりしていた………何か言ってくれれば俺も手伝ったのに。

 

 

そうそう、あの3人の処遇が決まった。裁判にはならなかったものの、弁護士を同席した上で説明会を行って話し合った結果、慰謝料を支払うという形で収まった。金額は1人につき15万円と比較的安い金額で収まったみたいだ。親御さん皆が腹の中で本当に納得しているのかは知らんが、この程度で収まってあの3人もその家族も幸せ者だろう。特にあの3人は。もっとかかっててもおかしくないと思っておいた方がいいというのは、親から教わるだろう。

 

 

柊「ふんふふ〜ん♪あぁ〜楽しみだなぁ〜八幡君との旅行、北海道ぶりだもんね〜!」

 

八幡「そうだな。けど、準備くらいなら俺も手伝いましたよ?どうして呼んでくれなかったんです?」

 

紫苑「私達は貴方をお誘いした側なのよ?お客さんにお仕事させるわけにはいかないじゃない。」

 

柊「そうだよ!八幡君はお客さん!」

 

八幡「俺を家族だと言っていたのは誰だ?それにだ、もし俺を誘ってたらデート出来てたかもしれないんだぞ?そこの所どう思いますか?」

 

柊「………何で八幡君を誘わなかったの?」

 

御影「え、今度僕!?」

 

涼風「まぁまぁお姉様、お買い物の時には『八幡君と一緒に楽しむんだ〜♪』と言いながら張り切っていたではありませんか。八幡さんが居たら、用意できた物も出来なかったかもしれないのですし。」

 

紫苑「そういう事よ。」

 

柊「……なんか誤魔化されている気がするけど、敢えてそれに乗ってあげる。誤魔化されてあげる。けど後で理由を聞かせてねお父さん?」

 

御影「何で僕だけなの?お母さんと涼風には聞かないのかい?」

 

柊「だって勝てる気がしないんだもん。」

 

御影「僕には勝てるって自信があるって事!?それはそれで傷付くよ!?」

 

 

何ともまぁ和気藹々とした会話が続いている。柊の奴、幾ら口で涼風とおばさんに敵わないからっておじさんに当たるなよ………

 

 

ーーー数十分後ーーー

 

 

柊「すぅ……すぅ……」

 

涼風「すぅ……すぅ……」

 

 

朝早くから楽しむ気満々だったのか、2人は寝てしまった。柊は俺の膝を、涼風は俺の肩を枕にして、正しい呼吸を取りながら眠っている。それでも俺の手を握って離さないけど。

 

 

御影「ははは、こうして見ると八幡君が彼氏ではなく兄のように見えてくるね。ブラコンの妹を寝かしつける優しいお兄さんに見えるよ。」

 

八幡「それ、柊が聞いたらなんて言うでしょうね?それにいつだったかそういう話になりましたけど、俺が兄だったら誰とも結婚せずに俺と一緒に居るとか言い出してましたよこの2人。俺がこの家に生まれてたら、きっと結婚すらもままならないでしょうね。家に女性すら呼べませんよ。」

 

紫苑「あり得るわね……だって八幡君が他の女の子と一緒にいる所を見ただけで2人の目から光が消えそうだもの。その代わりに持った刃物に光が宿りそうだわ。」

 

八幡「やめて下さいよ、俺は死にたくありません。それに他の女なんて興味もありませんし。」

 

御影「ははは、柊が惚れるわけだね。けど八幡君、君には1度も聞いた事なかったけど、どうして柊とお付き合いする事にしたんだい?君がどんな風に思って柊と付き合おうと思ったのか聞いた事がなかったからね。この際、聞いてもいいかな?」

 

 

柊と付き合う理由、か………簡単だ。

 

 

八幡「柊の俺に向ける表情や仕草、行動に嘘がなかったからです。」

 

紫苑「それはどういう事?」

 

八幡「人間誰しも嘘をつく時は何処かにそれが表れます。本当の事を話す時はありませんが。柊の場合、嘘をつく時とか興味の無い事には目を向けません。必ず目を逸らします。けど俺が柊と関わるようになってからは柊にはそれがたったの1度たりともなかった。悪ふざけの時にはやりますけど、好意を示す時にそんな行動は一切取ってません。俺もあの時までは1人で過ごしてきましたから、人を観るのは趣味みたいなもんですので。俺には嘘偽りなく話す柊に段々と惚れていった、そして中学の時に告白されて付き合う事になった。こんな所です。」

 

御影/紫苑「………」

 

八幡「柊や涼風、おじさん達は俺の事恩人だって言ってくれますけど、俺にとっても柊は恩人のような人です。俺に偽りのない好意を向けてくれる。事情がどうであれ、俺はそれを一直線に向けてくれる柊に惚れました。」

 

御影「………そうなんだね。君からは初めて聞いたけど、そう思っていたんだね。聞けて良かったよ、何度思ったか分からないけど君が柊と出会ってくれて良かったって思うよ。」

 

紫苑「えぇ、本当に。柊のこんな顔が見られるんだものね。」スリスリ

 

柊「……んふふぅ♪」

 

 

おじさんとおばさんは満足そうにそう言うと、それ以降は何も聞いて来なかった。だが見ていて分かった、自分で言うと少し恥ずかしいが、『八幡君で良かった。』と思っているように見えた。

 

 

 

 

 

 


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