俺、実は彼女がいるんだ………   作:生焼け肉

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星の答え

 

涼風side

 

 

はふぅ〜とても美味でした………どの料理も素晴らしい味でした♪特に新鮮なお刺身と山の幸で採れた天ぷらです!堪らずお代わりをしてしまいました……仕方のない事です、美味しかったのですから!

 

 

御影「いやぁ〜堪能したよ、和食料理は口にする機会は偶にあるけど、その中でも1番の料理だったよ。腕はまだまだ衰えていないようだね。」

 

「恐縮です。」

 

紫苑「けれどいいの?貴方元々は料理人希望だったのでしょ?」

 

「そうでしたね。ですが旦那様と奥様の別邸での料理人として雇われた時、現在本邸での料理長から手解きを受けました。自分は学んできた技術には自信がありました、しかしそれは簡単に跳ね除けられました。その時私は思いました、料理を作るのに必ずしも料亭で働かなくてはならないという決まりはないのだと。本邸の料理長はあれだけの技術があるのに、料理人の道を行かなかった。そして私もいつしか思うようになっていたのです、旦那様や奥様の舌を唸らせる事ができる程の料理を作りたいと。まだまだ道半ばといった所ですが。」

 

御影「いいや、君の料理は見事なものだったよ。その証拠に僕達は満足している。八幡君なんて一言も喋らずに食していたからね。彼の場合、話しながらというよりも顔に出やすいからすぐに分かるんだ。」

 

柊「そうだよね〜八幡君の顔、『うわ何だこれっ!?メッチャ美味い!!』って顔してた!」

 

涼風「ふふふ、そうですね。八幡さんはとても分かりやすいです。私達のお弁当を食べてる時も頬が緩んでますから。」

 

「……左様ですか、少し安心しました。」

 

御影「あれ、そういえば八幡君は?」

 

柊「夜風に当たるって。八幡君にとっては初めての場所だからね〜、少しでも慣れておきたいんじゃないかな?」

 

涼風「八幡さんがそのような事をするようには思えませんが………」

 

 

夜風に………お庭でしょうか?

 

 

涼風sideout

 

八幡side

 

 

八幡「山奥だとこんなに星が見えるんだな……千葉村や京都ではこんなに星は見えなかったが、こんなに違うものなんだな。」

 

 

山奥だからか?いや、そうだとしたら千葉村だって山の中だ。違う理由があるんだろう。今日は見えやすい日なんだろうな。

 

 

八幡「こうやって空を見る事なんて滅多に無いしな、少しでも堪能しておくに越した事はない。」

 

「ご一緒しても?」

 

八幡「あぁ、はい大丈夫ですよ………え?」

 

 

俺は後ろを振り向くと、そこには銀に近い白髪の初老そうなお婆さんが居た。

 

 

「では失礼いたしますね。今宵は星が綺麗ですね。より一層輝いています。」

 

八幡「そ、そうですね。千葉ではこんなの滅多に見られませんから気になりまして………」

 

「ふふふっ、そうですか。知っていますか?星の光というのは月の光によって見え隠れするものなのですよ。まるで月が星を引き立てているかのように感じます。そうは思いませんか?」

 

八幡「えっと………そう、ですね。けどそれだと月があると星が消えてしまうって事になりますね。何か月だけ仲間外れにされているようにも感じちゃいますけど。」

 

「……面白い考え方をするのですね。私の父にとても似ています。あの方もかなり捻くれた思考の持ち主でしたので。」

 

 

どんな父親だったんだ、このお婆さんの父親。しかも遠回りに俺の事捻くれてるって言いやがった。いや、自覚あるからいいけどよ。

 

 

「質問をしても?」

 

八幡「はい、どうぞ。」

 

「あのオリオン座は見えますね?左上に見える赤い星がα(アルファ)星ベテルギウス、右下にある青い星がβ(ベータ)星リゲルという名があります。貴方は中央の星のε(イプシロン)星アルニラムだとしましょう。貴方ならベテルギウスとリゲルのどちらの星を輝かせますか?」

 

 

え、哲学?いや分かんな!あの赤いのと青いのだろ?ええぇ………もう思った事言おう!

 

 

八幡「両方、ですかね。」

 

「ほう、両方、ですか?」

 

八幡「だってあの星はあれで1つの形になってるんですから、どれか1つでも違うものになったら別物になってしまいます。だから俺は、そうなって欲しくないから両方輝かせる為に頑張りますよ。」

 

「………」

 

八幡「それに、俺が頑張れば他の星だって負けないくらい輝くでしょう?俺が頑張れば周りがそれに呼応してくれる。そしてそれ以上の事をしてくれる、後は俺がそれについていけばいいだけですよ。」

 

「っ!………ふふふっ、成る程そうですか。」

 

八幡「あの、どうでしょうかね?」

 

「貴方は私の父親によく似ています。考え方からそれに至る道筋まで。」

 

八幡「は、はぁ………」

 

「私はこれで失礼いたしますね。」

 

 

………結局あのお婆さん誰だったんだ?いきなり現れたが、この別荘の侍女さん?

 

流石に冷えるし、俺もそろそろ戻るか。

 

 

八幡sideout

 

ーーーーーー

 

 

「比企谷八幡さん………ふふふ、これもまた神様の悪戯でしょうか、ね?」

 

「っ!!こちらにおいででしたか!!探しましたよ!!何方へ?」

 

「懐かしい気配を感じましたので中庭に行っていました。今日はとても気分が良いです。」

 

「はぁ……お忍びで来ているのですから目立った行動はしないでくださいね?」

 

「そこは心配いりません。」

 

「いつもそう言うんですから………では、参りましょうか、大奥様。」

 

 

(本当に父にそっくり。大胆さは無いものの、穏やかで優しそうな雰囲気や人とは違う感性を持っている所なんて………ふふふっ、長生きはしてみるものですね。柊、良い相手を見つけましたね。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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