八幡side
「それでは若様、お気をつけて行ってらっしゃいませ。お帰りになられる際は我々をお呼びください。いつでも馳せ参じましょう。」
八幡「ありがとうございます。」
「では。」
………さて、此処が伊吹山登山用のスタート口か。最初の道は普通に道路なんだな。調べたら、2合や3合には休憩出来る施設があるらしいが、そこから上にはそういうスポットはないらしい。それに今は冬だ、ペース配分も考えないと、すぐに体力切れで遭難しちまう可能性だってある。一定のペースを刻みながら登っていこう。
八幡「よし、じゃあ行きますか。」
けど、冬だからか知らんが、誰1人として登山客が居ないんだな………誰か1人くらいはいてもおかしくはないと思ったんだが。正月だしな、皆家に居るんだろう。登山しようと山に来てんのは俺くらいか。
ーーー伊吹山・森林ーーー
八幡「急に山道になるのかよ……にしても、コレって光苔か?コイツのおかげで迷わずに済む。」
何故かは知らんが、この苔のおかげで道が分かる。この苔の道をそのまま進んで行けば、いずれかは2合地点に着くんだよな。よし、このまま進むか。
八幡「けど、そんなに上に来てもいないのに霧が出てきたな。此処の時点で気温差が出てるって事か?でもまだ歩いて10分そこらなのに、こんなにも低い場所で霧って出るものなのか?」
まぁいい、この苔を進めば間違い無いだろう。
ーーー伊吹山・森林内奥地ーーー
八幡「………え、洞窟?何で?しかも手前には何故か
………何もない。なんか家紋のような模様をした色違いのお椀が5つ並べてあるだけで、後は何もなかった。だがどうしてだろう、この社は最近作られたのだろうか?かなり立派に見える。苔も生えてないし、何なら綺麗な状態だ。
八幡「けどこの中進むのか?洞窟の中って基本不気味要素しか詰まってなくね?本当に入っても大丈夫なのか?でも他に道なんて知らねぇし、行くしかないか。」
俺は意を決して洞窟の中へと足を進めた。意外にも中は歩きやすい道となっていて、苔もあったから道はそれなりに見えた。だが参ったのは行き止まりもある事だった、来た道を戻るのは何とも複雑な気分だ。そして不思議なのは梯子があった事だ。しかも縄梯子や鉄梯子ではなく、木材と縄で作られた昔風の梯子だった。上に引き上げられていたから登る事は出来なかったが、こんなのあるんだな。
八幡「うわ、何だ此処………すげぇ。」
目の前には洞窟……いや山中だとは思えない光景が広がっていた。本当に此処は山の中なのかと。奥の方にはちゃんと出口もあった。だが複雑な道が多くあったので、迂闊には進めなかった。それに違う心配もある。
八幡「動物とか居ないのか、此処?不安になってくる………呻き声とか唸り声とかは聞こえないが、住んでそうな場所だよな。しかも此処にはあの苔生えてないから道が分からん。この場合は用心して進むしかないよな。」
それに湧き水の場所すらねぇじゃん。ここ本当に合ってるのか?なんか既に道間違えてる気がしなくもないが、進むしかないよな。頼むから何も出てくんなよ、本当に。
その後は意外にも、何の動物も出てこなかった。時間は掛かったが、漸く出口の所まで辿り着いた。そのまま前の道へと進んだのだが、外へと出ると目の前に広がっている光景は壮大なものだった。まだ半分が山だったが、それでもかなりの景色になっている。
しかし出口から出てのその先の道は崖だった。しかも舗装とか何もされてないから、踏み外したら一貫の終わりだ。下なんて見えない………岩しか見えないぞこれ、凄過ぎる。
八幡「俺、登山してるのにこんな崖っぷちを登る事になるとは思わなかった………登山ってこういう道も通るのな。」
いや、けどこんな道通るか?安全そうな道じゃない場所をこれから歩くわけだが、これもう完全に別ルートだよな。だってこんな道あるわけねぇし。まぁでも、進むしかねぇよな………戻ったとしてもどっから行けばいいのかさっぱりだしよ。
八幡「うわぁ……これ落ちたら終わりだよな、コレ。しっかしこの道って何なんだ?絶対に昨日調べたサイトではこんな場所無かった。かといって伊吹山ではない場所を登ってるなんて思いたくもねぇし………ん?アレって山小屋か?」
俺が見つけたのは正規ルート?から少し外れて下の道へと進んだ先にある小さな小屋だった。見た目からしてかなり古い。だが此処まで休みなしだったから、休憩するにはもってこいだ。
八幡「よし、あそこで休憩だな。この先どこで休憩できるか分からない。出来る所で休憩を取った方が身体も休まるし、メンタルも不安定にならずに済むしな。あの小屋を目指そう。」
ーーー小屋ーーー
見た目は本当に昔の家って感じだ。俺が今泊まってる別荘よりも昔の建物って感じだ。木で出来た扉を横に引いて中に入ってみると、囲炉裏があって畳もある。今の時代では使われないタイプのキッチンもある。マジで昔の家だな、けどこんな所に住むなよ。よく住もうと思ったな、此処に住んでた人は。