俺、実は彼女がいるんだ………   作:生焼け肉

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白い猪の正体

 

 

八幡side

 

 

迎えの車が来て、俺は熱い歓迎を受けた後に車に乗って屋敷へと戻っている。けど、本当に不思議な事だらけな登山だった。特にあの白い猪だ、あの猪って一体何なんだ?あの伊吹山に住んでるとか?けどその住んでるだけの猪が人間の言葉を理解出来たり、襲わずに物を上げたり案内したりなんて出来るわけがない。

 

こりゃおじさん達にも相談か?した方がいいよな、だって俺には分からない事だらけだし。おじさん達の方が詳しいだろう。

 

 

「若様、何やらお考え事をなされているようですが、何がございましたか?」

 

八幡「え?あぁ………えっと、伊吹山の登山ってキツい方なのかなって。」

 

「思っていた登山と違いましたか?」

 

八幡「はい。もうちょっと苦労するのかなって思ってたので。(途中から猪に案内してもらったとは言わないでおこう。)山登りって体力使うって聞きますし。」

 

「そうですね……伊吹山は登山許可が降りている山に比べると、そこまで高い山地ではありませんからね。最も高い日本高山の富士山と比べても半分以下の高さしかありませんから。」

 

八幡「そうなんですか………」

 

 

けどあの道、正規ルートではないよな。だって洞窟からスタートする登山なんてあるのか?

 

 

八幡「あの、ちょっとした疑問なんですけど、洞窟からスタートする登山ってあるんですか?」

 

「私は聞いた事がありませんね……登山と聞くならば、普通は作られた道を山道に沿って行くものでは?」

 

 

まぁ、普通はそうだよな……普通は。

 

 

八幡「そうですよね。」

 

 

ーーー別荘ーーー

 

 

八幡「帰って来れたか。」

 

「登山からの無事帰宅、おめでとうございます。旦那様方は既にお帰りになって中でお待ちです。」

 

八幡「分かりました。」

 

 

すぐに行ってやらないとな、きっとお姫様が待ち焦がれてるだろうし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「只今戻りました。」

 

柊「あっ、八幡君っ!!!」ダキッ!!

 

涼風「八幡さんっ!!」ダキッ!!

 

八幡「おぉ……ただいま。」

 

 

いきなり腕に抱き着いてくるなよ……気持ちは分かるけども、これじゃ落ち着けないって。

 

 

御影「無事に帰って来れたみたいで良かったよ。遭難しませんようにって心の中で願っていた甲斐があったよ。」

 

紫苑「そうね、無事に帰って来てくれて本当に良かったわ。」

 

八幡「どうも。」

 

御影「それでどうだった?頂上からの景色は?」

 

八幡「確かに凄かったんですけど、その事で少しだけおじさん達に聞きたい事があるんです。」

 

紫苑「あら、何かしら?」

 

八幡「伊吹山に白い猪が居るって知ってます?」

 

柊「白い猪?なぁにそれ?」

 

八幡「いや、ちょっとな………」

 

御影「うぅ〜ん……聞いた事ないなぁ。それに白い猪でしょ?野生でいるとは思えないけどね〜……」

 

紫苑「私も聞いた事がないわね………宮間、貴方はどうかしら?」

 

宮間「さぁ、私にも分かりかねます。」

 

 

結局全員知らないか………けどあの猪がただの猪には到底思えない。

 

 

涼風「ですが、どうしてそのような事を?」

 

八幡「あぁ、登山してる内に不思議な事が連発で起きてな。それが起こったのが山に入って大仏が祀られてる洞窟があって握り飯と酒を備えたんだよ。登山を再開しようとしたら、洞窟出た所に白い猪が居たんだよ。大きさは大体俺より低いくらいだった。」

 

柊「それってすっごく大きいじゃん!!大丈夫だったの!?」

 

八幡「あぁ、俺は何もされてない。むしろその猪には登山の案内をしてもらったくらいだ。」

 

 

それからも俺は登山で起こった不思議な出来事を皆に説明した。だがやはり微妙な反応ばかり返ってくる。まぁ当然だな、信じろっていうのが可笑しい。

 

 

「若様、それはもしや伊吹山の神の化身、伊吹大明神ではないでしょうか?」

 

八幡「伊吹……大明神?」

 

「はい。かの伊吹山にはこのような逸話があります。伊吹山の神を倒そうとする男がいました。その男は腕に自信があるのか、『素手で倒してやる。』と豪語し自らの得物を置いて行きました。山に登って暫くすると、目の前に白い猪が立ちはだかったようです。男はその白い猪の事を『この山神の家来だな、帰りに相手をしてやる。』と言い捨て、白い猪を威嚇したのです。すると突然空から氷雨、つまりは雹が降り始めて男の行く手を阻みました。白い猪の正体は山の神の家来ではなく山の神そのものであり、その怒りを買ってしまったのです。雹に打たれ体力を大きく奪われた男は何とか麓まで下山して湧き水に足をつけて、体力を回復させたのだそうです。その湧き水こそが、現在の伊吹山の霊水で有名になっているというわけです。これが伊吹山の神の逸話でございます。」

 

 

………マジ?じゃあ俺が会ったあの猪って、伊吹山の神様?

 

 

「因みに言いますと、伊吹大明神に喧嘩を売った男の名前ですが、かの有名な皇族のヤマトタケルでもあります。」

 

 

うっそヤマトタケル!!?超有名人じゃん!!

 

 

御影「そんな逸話があったんだね………けどそれじゃあ八幡君は伊吹山の神様に会ってしまったって事になるよね?」

 

「はい、そうなってしまいますね。」

 

 

いやいや軽い、そうなってしまったで済まされるような内容じゃないですって。神様だよ?ご先祖様の次は神様だよ?一気にグレードアップし過ぎでしょ!

 

 

紫苑「八幡君、貴方霊感強いのね?」

 

 

いいえ、強くないです。ただの一般ピーポーです。

 

 




あの白い猪………神様でした。

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