八幡side
とある日の休日、俺は久しぶりに1人で外出をしている。6000万円騒動の件だが、結局あの茶器と原石達はおじさん達の家で預かる事になった。やっぱ俺の家じゃあ安全面に欠けるしな、色々な意味で。だからショーケースを買ってその中に敷物を敷いてからその上に置く予定だ。配置については俺がする事になっている。別にお任せでも良かったんだが、おじさんが『所有者に全権があるからね、僕達が勝手に弄る訳にはいかないよ。』との事だった。
まぁケースについても俺の気に入った物を注文して、届いたらまた連絡が来る事になっている。そしてさっきも言ったが、今日は俺1人で街に出歩いてる。休日に1人で街に出歩く機会なんてここ数年間で1回も無かった気がするから新鮮だ。特に何か目的があるわけではないが、久しぶりに楽しむか。
ーーーららぽーと内・雑貨屋ーーー
八幡「こうして1人で来ると、いかに柊達と一緒に行動してたかってのがよく分かる。元気な声がないだけでも少しだけ寂しいもんだな。中学2年までこれが当たり前だったってのによ………」
店員「お客様、何かお探しですか?」
八幡「え、あぁいや、適当に見てただけです。」
店員「そうですか。何かありましたら遠慮なくお声がけ下さいね?」
八幡「は、はぁ……」
まさか声を掛けられるとは思ってなかったな……やっぱ雑貨じゃないな。本屋にでも行くか?いや、どうせなら楽しみは最後まで取っておきたい。どっか俺でも楽しめそうな所………
ーーーららぽーと内・ゲーセンーーー
ピロピロピロピロピロピロ………ボトッ
八幡「あぁ〜……やっぱこの機種はムズイな。だがこの中にあるマッ缶クッションはマッ缶好きとしては取らないわけにはいかない!」
俺が今プレイして切るのは、UFOキャッチャーの中でも確率機と呼ばれているゲームで遊んでいる。中に入っているのは縦60cmで横30cmの特大サイズのマッ缶クッションだ。こんな物が置かれてたら取らないわけにはいかないのが、マッ缶好きというものだ。しかしながら中々手強く、簡単には取らせてもらえない。一時的にアームの力が最大になる魔法でもかけてくれませんかね?
八幡「けどまだ400円だ。流石に2000円を超えたら考えるが、まだまだ元は取れる金額だ。」
俺は再び100円を入れて機械の操作に移る。人によって分かれるみたいだが、100円を入れて地道にやってくか、500円入れて6回で確実に取るか、の2つのパターンがあるらしい。俺は100円派(派閥あるのか?)だが、他の連中はどうなんだろうか………別にどうでもいいけど。おっ、良い感じ。
ーーーららぽーと内・喫茶店ーーー
八幡「ふぅ……なんか柄にもなくやり切った感が出てしまってる。けど取れたし良いよな別に。しかし、久々にゲーセンなんて入ったな………他にも色んなのあったが、あんまやる気は起きなかったな。この後は本屋に行って新刊がないかどうか見てだな。」
スマホを確認しながら注文したのを待っていると、柊からメールが来ていた。内容をざっくり言うと、一緒に行きたかった、だな。けど今日くらいは1人の時間も満喫させてくれ。また今度一緒に行けば良いだろ?
何で柊が知ってるのかって言うと、俺がさっき取った特大マッ缶クッションの写真を送ったからだ。それを見た反応がコレだ。柊、気持ちは分からんでもないが、個人の時間もしっかり取った方がいいぞ?
陽乃「新年、明けましておめでとう比企谷君。君とこんな所で会うなんてね〜。」
葉山「比企谷………」
………神様、俺に金運と豪運をくれてもこういうときの運の悪さはどうにもならないんでしょうか?
八幡「………明けましておめでとうございます。」
陽乃「夜十神ちゃん達は?今日は居ないの?」
八幡「今日は俺1人です。」
陽乃「ふぅ〜ん……じゃあご一緒するね♪」
八幡「他を当たってください。」
陽乃「けど断るね。それに君の口からも聞きたいしね、冬休みに入る前の学校について。」
八幡「………雪ノ下や葉山から聞いてるんじゃないんですか?」
陽乃「私がそれだけで納得すると思う?そもそも雪乃ちゃんは別クラスで殆ど関わり無いし、隼人の説明だって聞いたけど、なぁんか要領得ないんだよね〜。隠し事でもしてるのかな?」
葉山「………」
陽乃「まぁそんなの別に良いけどね。比企谷君から聞けば良い話だし。」
八幡「俺、言うなんて言いました?」
陽乃「そこはさ、ほら♪私達の仲じゃん?」
俺とこの人にそんな関係性があっただろうか?
八幡「……なら雪ノ下さんが聞いた内容を教えて下さいよ。もし間違ってたら俺が正しいの教えますから。わざわざ知ってる内容を1から10まで言うのなんてアホらしいですし。」
陽乃「ふぅん、比企谷君もやるねぇ〜お姉さんを使うなんてね〜。」
八幡「俺は別に言おうが言うまいがどうでも良いんで。俺にとってはもう過去の事ですから。それに、関係のない事に一々めくじら立てても仕方ないと思いません?」
これで引いてくれればなぁ………
陽乃「しょうがないなぁ、君の口車に乗ってあげる。じゃあ私が聞いた事を話すね。間違ってたら言って。」
八幡「了解です。」