八幡side
柊達がお金持ちのお嬢様だという事がバレて数日後、周りの連中からのアタックは止まらなかった。クラスの連中からは無くなったが、それ以外のクラスや2年以外からも押し寄せて来ている。登校の時や学校に着いてからHRが始まるまでの時間、昼休み、下校等で俺達に休まる時間がなかった。だが風当たりが1番強いのは俺と涼風だった。
理由は俺が柊と付き合っているのが不釣り合いだからという何とも下らない理由だ。お前等が柊の何を知ってるってんだよ………見た目だけでしか選ばないクズ野郎共なんかに柊は渡さねぇよ。
そして涼風は俺と柊が付き合っているから、事実上のフリーだというのが知られているからだ。なので下駄箱や机の中とかにも手紙が入っていたりするし、告白なんかも珍しくない。2人は日に日に嫌そうな顔をしていることが増えていった。俺も何度かフォローをしているのだが、最近では昼休みの時間も潰れているからフォローの時間すらあまり取れないのだ。
唯一の救いは授業終わりの中休みだけだった。この時間だけは誰も来ないで済むから1番リラックス出来るのだが、1日の学校時間を統合したとしても40分しか無いのだ。これでは気は休まらない。
柊「はぁ………」
涼風「………」
八幡「大丈夫……じゃないよな。悪いな、大してフォローも入れられなくて。」
柊「ううん、八幡君は良くやってくれてるよ。流石にこれだけ続くと、ね………」
涼風「流石に私も嫌です………」
八幡「だよなぁ……涼風は基本人見知りだから、知らない奴相手は辛いよな。」
柊「ましてやいきなり馴れ馴れしくだから余計にだよ。いつになったら静かになるんだろう……」
2人の精神も少しずつではあるが擦り減ってる。学校を休むってのも1つの手だが、復学した時の反動がヤバいだろうな。正直オススメは出来ない。良い案が何も思い浮かばない………
ーーー昼休みーーー
いつもなら楽しそうに重箱を開けるお楽しみの昼休みなのだが………
柊「はぁ………」
涼風「八幡さん!お弁当です。」
明らかに元気が無くなってる。ここ最近俺以外の連中も混ざっての食事だからな。しかも他クラス多学年と来たもんだから落ち着かない上に、どうでもいい話を振られたりするのだ。2人の事を全く考えていない、自分の事しか考えていない、典型的な自己主張パターンだ。
ガラガラッ
「あっ、居た居た!ねぇ2人共、今日も一緒に食べようよ!!ついでにお話してさっ!」
「お前抜け駆けすんなよな!俺も混ざる〜♪」
「おいおい、そんながっつくなって!2人は逃げないんだからさっ!」
ほら見ろ、3年の空気の読めない脳内お花畑の先輩達が今日も懲りずにやって来た。
柊「あの、この前から言ってますけど、私は妹と八幡君の3人で食べたいんです。なので勝手に割り込んでくるの止めてください!」
「けどさ〜、いつも同じメンバーで食べるのもつまんないとは思わないの?」
柊「思いません。別に他の人と食べようなんて思いませんので。」
「涼風ちゃんはどうなの?偶には他の人と食べたいって思ってたりするよね?」
涼風「いえ、私は好きでお姉様と八幡さんの3人でお食事をしています。私は今の環境に不満はありません。」
「………でも偶には違う人と「私は今が良いのです。他の誰かと食べたいと、思った事も思う事もありません。」………」
ガラガラッ
新堂「……やっぱり居た。」
八幡「っ!新堂先輩。」
新堂「君達、また懲りずに2人にアタックしているみたいだね。迷惑だとは思わないのかい?」
「な、なんだよ新堂!俺達のやってる事が迷惑だって言いたいのかよ!?」
新堂「少なくとも、彼女達の顔を見ればそれは分かると思うよ?君達が来てから彼女たちの顔に笑顔になったかい?笑顔を向けられたかい?」
「っ……んだよ、有名大学の一橋大学に受かったからって調子に乗りやがって!」
新堂「今はそんな事関係ないよ。それより、彼女達が困っている事に気が付かないのかい?」
「……チッ、あ〜ぁ!どっかの誰かさんのせいで萎えたわ。俺別の場所で食うわ。」
「俺も。涼風ちゃん、また今度ね!」
「また来るからね〜!」
そう言って先輩3人は教室から出て行った。
八幡「ありがとうございます、新堂先輩。」
新堂「気にしないで。僕も放っておけなかったから。ここ数日彼等が君達の教室に向かっている所を見てはいたからね。流石に困っていると思って来てみたんだ。そしたら正解だったよ。」
涼風「ありがとうございます、新堂先輩……久しぶりに昼食を楽しめます。」
新堂「それは何よりだよ。じゃあ僕も行くよ、あとは3人で仲良くね。」
新堂先輩、本当に良い人だ………
柊「さっ、久しぶりに楽しくお昼ご飯を食べられるよ!なんかテンション上がってきちゃった!それに、八幡君にも食べさせてあげられるし、食べさせてもらえるし♪」
八幡「久し振りだしな、それくらいはしてやる。」
涼風「で、では私にもお願いします!」
余程溜め込んでいたのだろう、爆発したみたいに生気が溢れ出している。新堂先輩には本当に感謝だな。
柊「はい、八幡君♪」
涼風「八幡さん♪」
柊/涼風「あ〜ん♪」
久々に学校で見たな、この笑顔。