俺、実は彼女がいるんだ………   作:生焼け肉

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推測と警戒

 

涼風side

 

 

御影「泰納グループ?うん、知ってるよ。3年前から経営の上手く行ってないグループだね。その前までは良かったんだけどね……今は見る影もないって感じだよ。」

 

柊「どんな会社だったの?」

 

御影「精密機械を専門としてたんだけど、そういうのはとてもコストが掛かるんだ。きっとこの周辺で請け負ってくれる大企業や小中会社が居なくなってしまったんだろうね。そのグループ独自のやり方があったみたいだけど、この近代化した時代には合わないみたいだしね。パネル操作や簡略化が当たり前になってる世の中に対して、説明書を見ながらの作業は何とも効率が悪いからね。」

 

八幡「そうなんですね。」

 

御影「1度僕もあの会社のを1つだけ発注してみたんだけど、どうにもやり辛いんだよね。丁寧じゃないというか、親切じゃないというか、あれじゃ買い手も居なくなるわけだよ。」

 

 

どうやらお父様のお話によると、その会社は前までは評判だったらしいのですが、今は見る影もない様子ですね。3年前までは大きな企業として立っていたようですが、今は経営不信ですからね。

 

 

紫苑「で、帰る時にその家の宰安って子がちょっかいをかけて来たと………どうしてかしらね?」

 

柊「分からない。帰ろうとしたら急に話しかけてきてさ、長い時間引き止められたから迷惑だった。」

 

八幡「ホントうるさかったよな、アイツ。」

 

柊「うん、もう2度と現れないでほしい。」

 

御影「けど確かに急だね……いや、そうでもないのかもしれないね。今までの君達の被害を考えると。どれもこれもいきなり来たものだしね。」

 

八幡「俺はいいですけど、2人に何かあってからでは遅過ぎますから。なのでおじさん、また2人の車登校と下校をお願いしてもいいですか?2人には了承取ってるので。」

 

紫苑「それって八幡君も込みで、でしょう?」

 

八幡「………2人が、特に柊が一緒に帰るって聞かなかったもので。」

 

柊「そんなの当たり前じゃん!大切な私達の時間を減らすだなんて、八幡君は何を考えてるのさっ!!それもこんな大変な時にだよ!?」

 

涼風「その通りです!こういう時だからこそ一緒に帰るべきなのです!」

 

八幡「という事です。何で2人がこう言う反応になっているのかと言うと、数日前に学校で2人が金持ちだってことがバレてまして………それ以来やたらと絡んでくる奴が多いんですよね。」

 

御影「バレたってどうしてだい?」

 

柊「手口は分からないけど、私達がお父さんの会社の娘でお金持ちだっていうのが、全クラスの黒板にデカデカと書かれていたの。最初は気にしなかったけど、他のクラスの男子達からの猛アプローチが鬱陶しくて……本当に嫌になるよ。」

 

涼風「クラスでは八幡さんのおかげでどうにかなったのですが、他クラスの人となると、迂闊に手を出せませんので。ましてや3年生の先輩もいますので。中々声を出す事も出来ず。」

 

 

ですが本当にどのようにして情報がバレたのでしょう?私達が他の家よりも裕福なのを知っているのは、八幡さんを除けば新堂先輩くらいです。

 

 

紫苑「………ちょっと待ってね。八幡君、柊、涼風、その黒板に書いた人、その泰納グループの子って事は無いかしら?」

 

八幡「………どういう事ですか?」

 

紫苑「ほら、この前八幡君がやったように朝早い時間から黒板に書いておくとか。」

 

八幡「そんなの無理ですよ。タダでさえ人の出入りもあるのに加えて全クラス分ですよ?絶対にいつかはバレますよ。俺がやった時は掲示物だったから目立たずに済みましたが、黒板だったら生徒が来る前に教師が来るかもしれないんですから。しかもアイツ、ウチの生徒でも無いし。」

 

紫苑「そうね、八幡君の言う通りだわ。でも、総武高校の生徒で協力者が居たら?」

 

涼風「お母様は総武高校に協力者が居ると踏んでいるのですか!?」

 

紫苑「仮説だけどね。だってタイミングが良過ぎるもの。貴方達の事が周囲にバレた事もそうだけど、数日置いてからターゲットに接触を図るやり方なんて、何処にでもあるような推理小説のやり方みたいだもの。それに向こうも一応は一般の家庭ではないから、私たちの事を知っていても不思議ではないもの。」

 

八幡「………確かにそれならあり得るかもしれない。そしてその協力者が複数人いたらもっと可能性が高い。1度に全クラス同時になら時間は短縮されるだろうから。」

 

柊「じゃあ、もしかしたら………」

 

御影「………八幡君、2人も周りの環境に気をつけるように。特に影からコソコソ見るような人にはもっと気をつけた方がいいかもね。探しにくいとは思うけど、探して捕まえろなんて無理は言わないよ。ただ気を付けるだけで良い、いいね?」

 

八幡「分かりました。」

 

涼風「はい、お父様。」

 

柊「うん、分かった。」

 

 

私達の通っている学校にあの方の協力者が………考えるだけでも嫌な気持ちになります。しかし、それが一体誰なのか、単独なのか複数なのか、色々考えさせられます………はぁ、違う意味でも学校に行くのが嫌になりそうです。

 

 


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