俺、実は彼女がいるんだ………   作:生焼け肉

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交渉

 

八幡side

 

 

prrr…prrr…っ!

 

 

陽乃『もしも〜し、どうしたの比企谷君?まさかとは思うけど、また何かのお裾分け?』

 

八幡「どうもこんばんは、雪ノ下さん。今回はそういうのじゃなくて、貴女のお母さんにお話があって電話しました。流石に会社の電話番号じゃ直接繋がらないと思ったので、電話させてもらいました。」

 

陽乃『お母さんに?なんかあったの?』

 

八幡「えぇ、まぁ……詳しい事は社長本人にお話したいので代わる事って出来ます?それとも今別の所ですか?」

 

陽乃『家に居るけどさ、それって私が聞いても大丈夫かな?』

 

八幡「……別に良いですけど、人に言わない事が条件です。まぁ、既に耳にしている事だとは思いますが。」

 

陽乃『?まぁいいや、お母さんに代わるね。』

 

 

さて、ここからだ。俺の家族だけじゃ家を建てるにしても金が足らなさ過ぎる。そこで駆け引きだ。もし向こうが【Nigh-Ten・Group】の名前を出してそれを交渉材料にするようであればこの件は無し。出して来なければおじさん達と引き合わせる。そういう事だ。向こうにも言ってあるからな、流石にここで欲張るような事はしないと思うが、どうする?

 

 

秋乃『お電話変わりました、比企谷さん。ご無沙汰しております。』

 

八幡「ご無沙汰してます。早速なんですが、本題に入ってもいいですか?」

 

秋乃『えぇ、どうぞ。』

 

八幡「いきなりの質問なんですが、今日の千葉に関するニュースは見ましたか?」

 

秋乃『えぇ、拝見しました。1軒の家が全焼という内容でしたね。』

 

八幡「はい。本当の事を言いますと、あの家は俺の住んでいる家です。」

 

秋乃『っ!………本当なのですか?』

 

八幡「はい。この目で燃える所も崩れる所も確認済みですしね。まぁ、既に犯人は逮捕して、関係者も全てお縄についてますけど。」

 

秋乃『そうですか……とても気休めにはなりませんが、誠に残念としかいえません。』

 

八幡「はい。そこで雪ノ下さんに、いえ、雪ノ下建設さんに我が家の再建を依頼したいんです。全て元通りの形に。」

 

 

さて、これにどう出る?

 

 

秋乃『再建、ですか……比企谷さん、とても申し上げにくいのですが、そんなに甘い事ではありませんよ?再建と言っても、ただ建てるだけではありません。その場に残っている家の解体に撤去もあります。それに最低でも費用は2500万円も掛かるのです。比企谷さんの親御さんがどのようなお仕事に携わっているかは存じませんが、未だ学生の子を持っている状態では、再建は難しいと思われます。』

 

八幡「やっぱり相当な金額なんですね……」

 

秋乃『はい。私としても娘達がお世話になっているので、お力にはなって差し上げたいのですが、一部の顧客のみに贔屓するわけにもいきませんから。』

 

 

……よし、もう良いだろう。この人は大丈夫そうだ。おじさんと話をしてもらおう。

 

 

八幡「……分かりました。少し待ってもらっても良いですか?」

 

秋乃『えぇ、構いませんよ。』

 

八幡「ありがとうございます、それじゃ少しだけ………オネガイシマス。」

 

御影「ハァーイ……もしもし、お電話変わりました。私、【Nigh-Ten・Group】取締役社長をしております、夜十神御影と申します。お電話での対面という事で名刺をお渡しできませんが、ご了承下さい。」

 

秋乃『【Nigh-Ten・Group】………初めまして、私は雪ノ下建設社長をしております、雪ノ下秋乃と申します。【Nigh-Ten・Group】さんのお噂はかねがね聞いております。』

 

御影「お恥ずかしい……それで、先程八幡君からもお話がありましたが、比企谷家の再建の費用を全額、私が支払いましょう。それで再建は可能でしょうか?」

 

秋乃『っ!?それは御社の資金から割くという事でしょうか?それでしたらお受け出来かねますが?』

 

御影「いえいえ、私のプライベートマネーからですよ。こう見えても私財には余裕がありますので。それで如何でしょう?」

 

秋乃『………分かりました。では後日、改めてお話を伺いたい所ですが、ご都合のよろしい日程はありますか?』

 

御影「私の方はいつでも。比企谷さんのご両親もご一緒に行かれる予定でいます。会社にも事情を説明して落ち着くまではお休みをもらっているとの事なので。それに、早く元の家で暮らせた方が安心でしょうから早い段階で済ませた方が良いでしょう。」

 

秋乃『分かりました。では………明後日の11時に我が家はどうでしょう?その日は学校もお休みですし、比企谷さんも同席された方が宜しいと思われますので。』

 

御影「分かりました。では明後日の11時にお伺いします。よろしくお願いします。」

 

 

どうやら無事に交渉は済んだようだ。まぁ向こう側からすれば、断るなんて真似はしないだろう。

 

 

秋乃『よろしくお願いします、最後に比企谷さんに代わって頂いてもよろしいですか?』

 

御影「はい、わかりました……はい、八幡君、社長さんから。」

 

八幡「……もしもし?」

 

秋乃『最初から試されていたのですか?』

 

八幡「まさか。偶々ですよ。」

 

秋乃『ふふふふっ……ウチに欲しい人材だわ。』

 

八幡「せっかくの話ですが、【Nigh-Ten・Group】に就職するってもう決めてますので。」

 

秋乃『そうですか、残念ですね……ですが、気が変わりましたらいつでもお待ちしてますよ。また明後日にお会いしましょう。』

 

八幡「はい、失礼します。」

 

 

そして電話は切れて、緊張が解けた。

 

 

御影「良かったね〜八幡君!」

 

八幡「えぇ、何とかなりましたね。後は明後日ですね。はぁ〜………」

 

 

今日は気を張り詰めてばかりだな。疲れた………

 

 

 

 

 

 

 


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