俺、実は彼女がいるんだ………   作:生焼け肉

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知らなかった想い

 

御影side

 

 

平穏な日だね〜……比企谷さん達のお買い物も決まったし、後は家具の注文だね。今頃八幡君と柊はデート中かぁ〜……青いねぇ〜青春だねぇ〜甘酸っぱいねぇ〜!

 

 

紫苑「……御影、貴方なんて顔してるのよ。」

 

御影「え?そんなに酷かった?」

 

紫苑「酷くはなかったけど、ニヤけてたわよ?みっともないわよ?比企谷さんも居るのに。」

 

尚人「いえ、私達の事は気にせずに。」

 

凛「えぇ、ホントに。」

 

御影「あはは、これはお恥ずかしい……少しだけ八幡君と柊の事を考えてましてね、今頃どんな仲睦まじいデートをしているのかと思っていた所です。いやぁ〜青春ですね〜。」

 

凛「あの、夜十神さん?お聞きしたい事があるのですが、良いですか?」

 

御影「何でしょう?」

 

凛「夜十神さんは……いえ、夜十神さん達は何故、八幡にそこまで味方をしてくれるのですか?私達が言っても説得力に欠けると思いますが、娘の恋人にしては過剰過ぎると思いまして………」

 

 

……成る程、やはり疑問に思ったか。

 

 

御影「そうですね……お2人は柊と八幡君が知り合って付き合う経緯はご存知で?」

 

凛「はい、八幡から聞きました。」

 

尚人「私も妻から。」

 

御影「………【幽霊ごっこ】、その時私は娘に何が起きているのか把握していませんでした。何かあったのだというのは分かっていましたが、深入りし過ぎて娘を傷つけてはならないと思いソッとしておく事にしました。しかしそれが返って柊を追い詰めていたのでしょうね。日に日に心を閉ざすようになってしまったんです。」

 

凛/尚人「………」

 

御影「今思うと自分はあの時、娘に何もしてあげられなかった………しようともしなかったとも捉えられます。苦しんでいる中、それを知っておきながら手を出しませんでした。父親失格ですよ、私は。」

 

紫苑「御影………」

 

尚人「そんな事は………」

 

御影「ありがとうございます。それである日の学校から帰って来た柊はとても嬉しそうに、楽しそうに学校での事を話していたのです。お宅の息子さん、八幡君との事を含めて。」

 

凛「八幡が……」

 

御影「あの日程、娘の顔が輝いていた日はありません。その日は私も紫苑も珍しく晩酌をしながら泣き明けたものです。そして柊が元に戻ってから数ヶ月してから、八幡君との交際を聞きました。私はすぐに家に呼んで欲しいと娘に頼みました。こう見えても私は人を見る目がある方だと自負しています。八幡君を見て思った事は、優しい、でした。」

 

凛/尚人「優しい?」

 

御影「見た目では写らない、とても優しい雰囲気を持っていました。そして八幡君を見ている内に、彼は打算で動いていない、自分に正直のままの状態で柊と接しているのだと気づきました。それで彼と打ち解けてきた時にそれとなく質問したんです、『柊とお金、どっちが好き?』って。まぁ普通の人なら恋人を選ぶでしょう。当然八幡君もそっちを選びました。理由を聞くと『お金なんて働いてれば手に入りますけど、柊はお金では買えません。それに俺は金持ちがどうとかじゃなくて、そのままの柊を好きになったんです。だから幾らお金を積まれようと、俺から柊と別れるつもりはありません。』って言ってくれたんです。」

 

尚人「八幡がそんな事を………」

 

御影「その瞬間、私は即座に決めました。この子は絶対に柊と離してはならないって。話がかなり脱線してしまいましたが、私達……柊を除く私と紫苑、涼風は八幡君に返し切れない程の恩を感じているんです。私達家族を再び1つにしてくれた事、柊に笑顔を取り戻してくれた事、心を解き放ってくれた事、私にとってそれはお金よりも大きな価値のある物なのです。それを私達の為に取り戻してくれた八幡君に少しずつではありますが、返している最中なのです。今回の家の再建の事もそうです、比企谷さん方はご気分を悪くするかもしれませんが、これも八幡君の為に行った事です。」

 

凛/尚人「………」

 

御影「私に出来る事なら何でもする、私はそのつもりです。それで少しでも八幡君への恩返しになるのなら………八幡君にもかなり真剣な感じでこう言ってますけど、いつもそれ以上の事を言われてしまうんですよ、ははは。きっと僕の事も薄々気が付いていると思います、こんな事考えてるって。けど別にそれでも良いんです。僕なりの恩返しなので。」

 

凛「……それ程の想いがあるのですね。」

 

御影「えぇ、なので一言では語れないのですよ。」

 

 

何度も思っている事だけど、それ程八幡君には恩を感じている。しつこいかもしれないけど、僕にだって意地があるからね。

 

 

凛「夜十神さんが八幡を気にかける理由がよく分かった気がします。八幡が柊さんを救った事は知っていましたが、夜十神さんがそこまで強い想いをお持ちだとは知りませんでした。」

 

御影「八幡君には何度感謝したか分かりません。いつの間にか真剣に感謝してる時が多々ありますから。感情の制御というのは難しいものです。」

 

 

ホント、八幡君を前にして感謝の言葉を送ると、感情が昂るよ。自分でも困る程にね。

 

 

 


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