秋乃side
比企谷さん並びに夜十神さんからの依頼を受けてから数週間が経ち、漸く全焼した家宅の撤去が終わりました。次は組み立ての作業に入る予定です。私の会社で預かる優秀な方達が居ますので大丈夫だと思いますが、進捗を聞いておいた方がよろしいでしょうね。
陽乃「お母さん、おじ様から連絡来たよ。隼人の事でって。」
秋乃「そうですか、それで?」
陽乃「今はいつも通りの日々を送ってるって。現場に向かって作業をしては帰って来てご飯を食べたら勉強してるって。けど前に比べたら部屋に篭る時間が増えてるって。」
秋乃「引き篭もり、では無いのですね?」
陽乃「それは無いみたい。おば様も話す時は顔を合わせてるし、部屋からも出てくるからって。」
秋乃「そうですか………」
陽乃「これは私の予想だけどさ、隼人は罰の事納得してないんじゃない?口ではああ言って納得してるように見えたけどさ、心の中までそうとは限らないでしょ?腹に一物抱えてるんじゃない?」
秋乃「………」
陽乃「まぁ、あくまでも予想だけどさ。」
………陽乃の言う事も一理ありますね。もしかしたら隼人君は………
秋乃「陽乃、近い内に隼人君の様子を見て来てはくれませんか?貴女の言う事、少し気がかりに感じました……もしかしたら杞憂かもしれませんが、貴女の言う通りかもしれません。」
陽乃「それって隼人が何かするかもって事?」
秋乃「そこまで考えたくはありませんが、貴女のそれが正しければ、そのような事が起きても不思議ではありません。」
陽乃「……いいよ、分かった。じゃあ近い内に行ってみるね。」
秋乃「頼みましたよ。それとこれは出来ればで構いません。少し揺さぶりをかけてください。貴女ならそれで多少の事は分かるでしょう?」
陽乃「簡単に言うよね〜……まぁいいけど。」
本当に考えたくはありませんが、もし陽乃の言った事が的中すれば、被害は私達だけでなく、比企谷さんにも及びます。それだけは何としても避けなくてはなりません。
陽乃「お母さん、根詰めるのも良いけど、少しは休んでよ?身体に毒だよ?」
秋乃「ちゃんと休息は取っています。」
陽乃「それって普通の社会人のどの程度?お母さんが休まないと、下の人って休めないんだからね?偶には息抜きしたら?」
秋乃「息抜きと言われましても、何をしていいのかもよく分かりませんからね。」
陽乃「仕事がパートナーとか言うのやめてよ?まぁお母さんに言うのもアレだけどさ、私だったら旅行とか行ってるよ?街歩きとかしてみたら?」
秋乃「街歩き、ですか………そうですね、偶には自分の足で街を眺めるのも良いかもしれませんね。」
陽乃「そうしなよ、次の休みの日にでも行ってきたら?誰も何も言いやしないって。」
告げ口をするような社員が居るとは思えませんが、まぁいいでしょう……それにしても、街歩きですか。最近はあまり行っていませんでしたね。
秋乃sideout
陽乃side
陽乃「そういう訳だから次の日曜日、お母さん出かけるから家においでよ雪乃ちゃん。」
雪乃『何がそういう訳なのか理解できないわ。』
陽乃「だって雪乃ちゃんお母さんの事苦手でしょう?だからそれを考慮してあげてるんじゃな〜い!どう?優しいお姉ちゃんでしょ〜?」
雪乃『今の私にそんな暇は「テスト勉強だなんて言わないでよね〜?偶には息抜きだって必要でしょ〜?」……嫌になるくらいお見通しなのね?』
陽乃「伊達に17年も雪乃ちゃんのお姉ちゃんしてないからね。別にイジメるわけじゃないんだよ?」
雪乃『それを最初に切り出す辺り、とても怪しいのだけれど………』
もう、雪乃ちゃんったら本当に堅物なんだから……こうなったら奥の手!
陽乃「そんなにお姉ちゃんを疑わないのっ!家にはパンさんだって待ってるんだから。今週がラストチャンスなのよ?」
雪乃『……どういう事かしら?』
陽乃「この前【Nigh-Ten・Group】で買ったパンさんの人形があるの。雪乃ちゃんの誕生日1月3日でしょ?あげようって思ってたんだけど中々会えなかったから渡す機会がなかったの。だからさ〜お姉ちゃんとパンさんからのお願いっ!一緒に誕生日会しようよ〜♪」
雪乃『………分かった、行くわ。次の日曜日でいいのよね?』
陽乃「そうそう♪待ってるからね〜!」
雪乃『えぇ、それじゃあ。』
陽乃「うん、お休み〜。」
………ぃよしっ!誘い出し成功っ!偶にはお姉ちゃんしてあげないとねっ!雪乃ちゃんだって寂しいだろうし、抱き締めてあげようかなぁ?
それに………
陽乃「パンさんが居るっていうのは本当の事だしね。そうだよね、パンさん♪」
パンさん人形「………」
陽乃「ホントはお母さんにも会ってもらいたいけど、雪乃ちゃんがあんなじゃあまだ会わせられないしね。もう少し成長してくれたらなぁ………比企谷君が居たら1発で効き目出るのに、残念。」
まぁしょうがないかぁ………比企谷君には大事な大事なお姫様とその妹が居るもんね。手を出したら何されるか分からないし、遠くで見てるのが1番だもんね。
陽乃「ホント、いつの間にか恐ろしい牙と爪を持った猛獣になっちゃったよね、比企谷君は。」