秋乃side
秋乃「すると、お2人でも気に入った物があれば自身のお金でご購入していると?」
御影「えぇ。無論、私達の立場なら会社のお金を使う事だって可能ですが、それでは下の者達や世の倫理に反します。それに私達もこの会社だけでなく、他の会社の方達と同様で働いてお金を得ている身です。そんな事は致しませんよ。そんな事をしたら、私の祖先に顔向け出来ませんからね。」
紫苑「手に入れる事は簡単でしょうけど、それに味を占めてしまえばまともな思考は出来なくなります。会社は会社、私達は私達で使っています。まぁ当然の事ですけどね。」
秋乃「それではさぞかし誘惑が多い事でしょう。」
御影「えぇ、本当に。娘達にも何か欲しい物は無いのかと偶に聞くのですが、物欲があまり無いのか無いらしくて………八幡君だって枕が欲しいって言ってくれたっきり何も無いですし………はぁ………」
秋乃「は、はぁ………」
紫苑「気にしないでください、夫のいつもの愚痴です。」
………以前お会いした時から薄々感じてはいましたが、この夜十神さん達と比企谷さんはとても親しい仲なのですね。娘さんとお付き合いしているだけの間柄では無さそうです。
御影「今は比企谷さん達が家に住んでいるので仕方ないとはいえ、娘達の私に対する扱いが段々と雑になっているような感じもしなくもないような感じでして。色々と考えさせられますね……距離感とかパーソナルスペースとか。」
秋乃「社長さんは色々お考えになられているようで………しかし、私からしてみれば羨ましい悩みとも言えますわね。」
紫苑「おや、それはどうしてです?」
秋乃「私の方では小さい時から厳しく教育をして参りました。それも将来になって困らないようにする為にと、娘達を思っての事でした。しかしそれが原因で次女は現在別居中で、長女は普段の顔を見せずに行動するようになってしまいまして………お2人は1度、陽乃とお会いしたと聞いているので既に分かっていらっしゃると思いますが。」
御影「そうですね……あの歳でよく自分を誤魔化していると思いましたよ。余程、これまでの環境下で大人と近い場所に居たのでしょうね。」
紫苑「そうですね、そうでなければあのような顔は出来ません。」
秋乃「……なので私も表面上は上手くしようとはしているのですが、中々上手くいかないもので。」
御影「………いっその事全てを言ってみては如何です?もしかしたら気付いているかもしれませんが、わだかまりは解いておいても損はないと思われますよ?遅くなればきっと向こうから切り出してくるでしょうし。」
秋乃「その通りなのですが、中々家族で集まれる機会というのが無くて………」
紫苑「ふむ……でしたら今日はチャンスかもしれませんね。」
御影/秋乃「チャンス?」
紫苑「私の見立てでは、長女のお子さんは陽気でイタズラ好き、という感じでした。なら今頃、何かしているのではないでしょうか?次女を家に呼んで久々に遊んでいるとか。」
陽乃が?性格上は考えられなくもありませんが、雪乃をそう簡単に家に呼べるとは思えませんが………
秋乃「しかしそうであったとしても、切り出し方が………私はこの性格ですので。」
御影「うぅ〜ん………っ!紫苑、ちょっと。」
紫苑「?………分かったわ。」
秋乃「?あの、何を?」
紫苑「………実はね、私がこれまでしてきたのは貴女達の事を思ってしてきた事なのよ。」
御影「……今更そんな事言われても。」
紫苑「貴女達は子供の頃から可愛かったから、大人になってもきっと綺麗になるって確信していたのよ?だから変な男に捕まらないようにって。」
御影「見ての通りだから大丈夫だよ。お母さんの心配してる事は何1つ起きてないから。」
紫苑「そうね、その通りね。けれど陽乃はお見合いを断り続けてるし、変な男に捕まるどころか逆に本性出したら男すら捕まえられないようになってしまってるし、雪乃は性格も相まって寄せ付けないという悲惨な結果になってしまっているから………」
御影「余計なお世話だよ!」
………
秋乃「今のをしてみろと?」
紫苑「いえ、そうは言いませんよ。ただこんな風に少しふざけた事を言ってみても良いのでは?という事です。堅苦しいままではお話にならない時だってありますからね。家族間でくらい、少しは肩の荷を下ろしても文句は言いませんよ。」
御影「紫苑の言う通りです。僕なんて一家の中では1番弱い立場にあるんですから。大黒柱なのに口は1番弱いんです。」
紫苑「貴方がいつもツッコミ所満載なボケをするからでしょう?」
御影「あの、ボケてるわけじゃないんだけど?」
紫苑「得意な筈のビリヤードで八幡君に負け越していた時の貴方は見るに耐えなかったわ。」
御影「うぐぅ!?」
紫苑「ならもっと威厳を見せなさい。500万円の本マグロを買った時の八幡君に叱られてた時の姿なんて、ある意味滑稽だったわよ?」
御影「うぐぅ!?」
紫苑「まぁ家だから別に構わないけど。」
御影「あの、紫苑?今の言葉、すっごく切れ味の良いナイフと化してなかった?心に響いたよ?」
紫苑「そう?私的にはバターナイフのつもりなんだけど、もっと鋭くした方が良いかしら?」
御影「今のでバターナイフ!?これ以上になると僕からすれば名刀レベルの切れ味なんだけど!?」
紫苑「鈍よりマシでしょう?」
御影「これに関しては刃物じゃない物のでお願いしたいよ………」
………こんな風に会話をするのは私には無理ですね。ですが、少しは考えておきましょう。