八幡side
ついに当日となったバレンタイン。あの日から帰る毎にチョコの甘い香りが家中を包み込んでいた。だがそれも今日で終わりだ……とは言い切れない。2人がどんな手段で俺にチョコを渡すのかにもよる。渡すタイミングなんていつでもあるようなものだしな。
八幡「まぁ、このタイミングでだけは無いだろうけどな。2人共寝てるし。」
柊「すぅ……すぅ……」
涼風「すぅ……すぅ……」
さて、何時になったら起きるのかね?俺は偶々早く起きたから外はまだ真っ暗だ。2人の事だから弁当を作る時間も必要だろうし、もう少ししたら起きるだろうけど。
ーーー10分後ーーー
柊「んん〜………ふわぁ〜んんぅ………」
おっ、まずはお姫様がお目覚めのようで。
柊「んん〜八幡君補充〜。」ギュー!
いや、まだ8割くらい寝てるわコレ。ていうか起きる前にこんな事してるのか?
涼風「………おはようございます。」
柊「涼風おはよぉ〜……早く補充補充〜。」ギュー!
涼風「はい……」ギュー!
お前もか………ていうか柊、お前も何勧めてんだよ。寝ぼけてるからか?そうなのか?
ーーー10分後ーーー
柊「100%充電完了〜♪涼風は?」
涼風「もう少しです、後5%くらいです。」
5%って分かるのか?
涼風「………フル充電完了です。」
柊「うん。じゃあお弁当作りに行こっか♪」
涼風「はい、お姉様。」
ガチャッ…バタン
八幡「………涼風、前々から思ってた事だが、段々と柊に毒されてるよな。真面目なお前が抱き着きながら補充とか充電とか言うとは思わなかった。」
………もう少しだけ寝よ。
ーーー2時間後ーーー
八幡「おはようございます。」
御影「あぁ、おはよう八幡君。」
紫苑「おはよう。」
八幡「今日は朝からチョコの香りがしますね。」
紫苑「そうね。」
御影「何処かの誰かさん達が張り切っているみたいだね。今はそっとしておこうか。」
八幡「ははは……ですね。」
小町「おはようございます、皆さん〜。」
紫苑「小町ちゃんおはよう。」
御影「何だか朝から少しだけ疲れた表情をしているみたいだけど?」
小町「あぁはい……ちょっとこの匂いに胸焼けしていまして。チョコが嫌いって訳ではないですけど。連日この匂いを嗅いでいるとちょっと………」
八幡「作ってる本人達が1番分かってる筈だが、ゾーンに入ってるんだろう。匂いすらも気にならないくらい集中してんじゃない。」
御影「まぁ実際、毎年こんな感じだったからね。今年は特別だけど、去年、一昨年は1週間くらいこの状態が続いてたから、八幡君と小町ちゃんは数日で済んでるからまだ良い方だと思うよ。」
1週間って………凄いな。確かにまだ良い方だな。にしても1週間も厨房を占拠してるのか、夕食とか作る時、大変だろうなぁ〜シェフの皆さん。
その後は大変おいしい朝食を頂いてから、学校へと登校した。まぁ朝食の料理に少しばかり甘い香りが漂っていたのは気のせいという事にしておこう、うん。知らない方が良い事だってあるからな。
ーーー学校・廊下ーーー
八幡「それで2人はチョコ作りの方は上手くいったのか?」
柊「うん、自分の中では過去最高の逸品になったよ!八幡君に食べて貰うのが楽しみっ♪」
涼風「私もあの出来なら、八幡さんにお見せしても大丈夫だと自負しております。」
八幡「そうか。因みに学校に持ってきたのか?」
柊「私は持って来たよ。涼風は?」
涼風「私は家に置いてあります。その方がゆっくり食べられると思いましたので。」
八幡「お前等、戦略立ててきてんのな。去年は作った物は違えど一緒に渡してきたのに。」
涼風「今回は勝負ですから。お姉様には負けられないのです。」
柊「私も負けないもん!」
おぉ……バチバチとやり合ってますね。それよりも柊はスフレだったな。一体どんな感じになってるのか楽しみだな………早く昼休みになってもらいたいもんだ。
っと、もう教室か……にしても2人に向けての期待の視線ったらねぇな。どんなに期待しても貰える可能性なんて0なのによ。教室入った瞬間、男子達の目の色とかすぐに変わるんだろうな。
ガラガラ
男子「………」ジッ
予想通りかよ………
柊「……ねぇ八幡君、男子達ってどうして視線を隠そうとしないんだろうね?バレバレだよ?」
八幡「そのくらいチョコが欲しいんだろうよ。俺には分からないけどな。」
柊「けど八幡君だってそういう時期はあったんじゃないの?チョコ欲しいなぁ〜って。」
八幡「ねぇよ。それに家族以外の異性から貰ったのだってお前達からのが初めてだし。今更他の異性から貰っても、ありがたいとしか思わねぇよ。」
涼風「しかし凄い視線です………」
八幡「チ○ルチョコ3つとか、麦チョコ3粒とか、ベビーチョコ3個あげれば満足するんじゃね?」
柊「大きさが段々小さくなってるよ?」
八幡「強請る奴にはそのくらいの大きさで充分だって。板チョコなんてあげたくないだろ?あげてもブラックだって。」
涼風「嫌がらせにしか思えませんね、それは。」
八幡「男ならそれでも満足するって。」