八幡side
事件から数日、俺は怪我の具合も少し良くなったので登校する事にした。顔にはガーゼや絆創膏、身体には包帯やらがまだ巻かれている状態だが、激しく動かさなければ何ともないから大丈夫だ。
葉山の事だが、事件のあった次の日に公表されたようだった。流石に問題にならないわけもなく、取材陣やらが押し寄せてきてたらしい。誰がやったのかは公表していない為、葉山さんの所は無事らしい。だがこれも時間の問題だろう。
そして生徒の間でも持ちきりだったらしい。柊と涼風から聞いた話では驚愕していた人が殆どだったらしいが、納得した人も僅かながらいたらしい。多分その人は元2-F組の生徒だろう。三浦とか戸部とかの元葉山グループなら予想できてそうだしな。
まぁそんなわけで俺は今し方、教室に着いたわけなんだが………
「比企谷君大丈夫?先生から聞いたよ?リンチにあったって!」
「葉山の奴、まさかこんな事するなんて思わなかった!マジ最低な野郎だ!」
「手伝える事があったら言ってね!」
「夜十神さん達も何かあったら、遠慮なく言って!協力するから!」
クラスメイトがこんな風に迎えてくれた………柊も涼風もこんな風にされた事がなかったからか、少し驚いた表情をしている。まぁでも、いつもは3人で事足りてるから問題はないと思うが、困った時にでも頼らせてもらおう。
八幡「まぁ早々に困る事があるとは思えないけどな。まっ、その時は頼らせてもらうか。」
柊「そうだね。八幡君は体育の授業、見学?」
八幡「そうだな。歩く程度なら問題ないが、運動となるとまた別になる。身体の怪我が完治したってわけじゃないしな。まぁ見た目で分かると思うが。」
涼風「ですが、前に比べて大分良くはなりました。これも看病の効果ですね、お姉様!」
柊「うん!真心と愛情を込めた看病が抜群だったんだよ♪」
八幡「うん。まぁそれは分かるんだけどさ、もう少しだけあの過保護な看病って何とかならないのか?アレじゃあ俺、束縛されてるも同然なんだけど?」
柊「だ、だって八幡君に痛い思いさせたくないし、安静にしてなくちゃって………」
涼風「それにあの時は私達がなんとかしなければと思っていたもので………」
………うん、謝ろう。
八幡「そ、そうか……ありがとな、俺の為に。」
柊「ううん、八幡君元気なら良いの♪」
涼風「八幡さんのお元気な姿を見られるだけで、私は嬉しいのです!」
現金な姉妹だって思っちまうが、この前あんな事が起きたばかりだから無理もないよな………
八幡sideout
御影side
御影「………」
紫苑「………」
尚人「………」
凛「………」
秋乃「………」
葉山父「………」
宮間「………」
都築「………」
………さて、取り敢えず向こうがどう考えているのかを聞こうか。
紫苑「御影、落ち着きなさい。此処には葉山隼人君は居ないのよ、そんなオーラ出すものじゃないわ。今日は話し合いで来たのよ?」
御影「理屈では分かってるんだけどね、どうにも収まってくれなくてね………無意識なんだ、申し訳ないけど我慢してくれるとありがたいよ。」
紫苑「……すみません、主人のコレはどうもコントロールできないみたいなので。」
葉山父「いえ、夜十神さんのお怒りは尤もです。それだけの事を私の息子はしてしまったのですから。私は気にしません。」
秋乃「私も葉山さんと同じです。それよりも夜十神さんと比企谷さんは今後の我々の行動をお聞きになりたいと思っていると思いますので、そこからお話ししたいと思っております。」
ふむ……話が早くて助かるね。
葉山父「先ずは我が愚息の件ですが、愚息については一切の弁護や擁護は致しません。私達葉山家は愚息と絶縁をする事に致しました。そして今回、ご迷惑をお掛けした夜十神さんと比企谷さんに賠償金をお支払いする予定です。金額につきましては今後のお話で決めて頂ければ結構です。」
尚人「それは我々で決めろと?」
葉山父「私に決定権はないと判断しました。そちらの納得のいく金額で構いません。」
御影「………」
秋乃「我々雪ノ下家も少なからず責任ある立場にあります。なので我々も賠償金をお支払いする算段でいます。」
凛「私達はそれでも構いませんが、夜十神さん達はどう思っていますか?」
御影「………」
紫苑「……私はそれでも構いません。きっとこれは主人も考えている事だと思います。なので代弁して申し上げます。今回の件、お2人に何かをしてもらおうとは思っていません。私達としては、友好な関係を育んでいきたいと考えています。」
………なぁんだ、やっぱり紫苑には全部お見通しかぁ〜。流石だよ、本当に。
葉山父「そ、それは一体どういう………」
秋乃「はい、理由をお聞かせ下さい。」
紫苑「………御影。」
御影「……分かりました、簡単に説明しましょう。理由は簡単です。私は貴方達から謝られる理由がないからです。この事件の原因は葉山さんの息子さんです、私は彼からの謝罪が欲しいわけではありませんが、八幡君や娘達をあんな目に遭わせた彼がどうしても許せないのですよ………親の葉山さんでも雪ノ下さんでもなく、彼がです。なので私は貴方達をどうこうしようとは考えておりません。なので賠償金については我々は不要です。それに、雪ノ下建設さんとは八幡君が紹介してくれたおかげで巡り合った縁なのです、それを険悪のまま終わりにしたくないというだけです。」
八幡君のした事を無駄にしたくないしね!ここで縁を切っちゃったら、八幡君のした事を無駄にしちゃうもん!それは僕の本意でもないしね。
御影「では、気を楽にしながら話し合いを進めていきましょうか。」
紫苑「御影、貴方が場の空気を乱しておきながらそんな事言わないでくれる?」
御影「雰囲気作りって大事だと思わない?」
紫苑「程々にしなさい、いいわね?」
御影「………はい。」
都築「とても苦労なされているのですね。」
宮間「普段はとてもユーモアな方なのですが………」
都築「アレで、ですか?」
宮間「奥様やお嬢様方には勝てないようなので。」
都築「………」