八幡side
あれからまた数ヶ月が経ち、季節は夏となって8月を迎えている。夏休みに突入して今はその中間くらいだ。課題も既に終えていた俺は柊とデートをする、というのもあったのだが、おじさんに頼み込んで会社で働かせてもらっている。勿論コネなんて使わずにちゃんとした理由を言ってだ。おじさんを含めた役員達との面接も行った上での採用だ。
なので俺はバイトという形で働かせてもらっているわけだが、何故かおじさんの元で働く形になってしまっている。普通は色々な人達に教わりながら仕事をしていくのだと思っていたのだが、おじさん曰く『君はいずれこの会社を背負っていく存在だから、僕の側で教えていこうと思ってるんだ。』というわけだ。
なので一応は納得したが、おじさんの作業スピードはとんでもないぐらい早く、最初の3日なんてついて行けもしなかった。漸くついて行けるようになったのは5日目くらいで、それでもかなりやっとの思いだった。そしてこれはおばさんが言ってた事なんだが『御影のスピードについて行けるだけ凄い事よ。普通の人ならこのスピードは絶対無理なんだから。』という事らしい。
御影「いやぁ〜八幡君も大分作業が速くなってきたよね。関心関心♪」
八幡「よく言いますよ、最初からハイスピードで教えてたくせに。まぁそのおかげでスピードがついたのは事実ですけど。」
御影「八幡君なら出来るって分かってたしね。けどたったの5日間で僕について来るとは思わなかったよ。八幡君も中々凄いよ。」
紫苑「貴方は加減を知らないのよ………まぁ、八幡君にはその必要も無かったみたいだけど。普通の子なら絶対に音を上げてるわよ?」
おばさん、俺が普通じゃないみたいな言い方やめてくれませんかね?普通の人間ですからね?
御影「あぁそうそう、八幡君。この食事が終わって僕の部屋で仕事をする前に話があるんだ。大事な話だから時間を空けておいてくれるかい?」
八幡「他に予定はないので大丈夫です。」
御影「うん、ありがとう。一応紫苑も同席するからそのつもりでね。」
なんの話だ?
御影「うん、今日の献立も美味しいね♪」
八幡「はい。」
ーーー社長室ーーー
八幡「………それで、大事な話っていうのはなんですか?」
御影「うん、単刀直入に言うよ。八幡君、君は8日の誕生日で18歳になるでしょ?だからその日に柊と婚約を交わして欲しいんだ。」
八幡「………え?」
御影「君が驚くのも無理はない、急な話だからね。けどこれは僕達も真剣でね、他に悪い虫がつかないように考えると、これが1番だと思ってね。」
八幡「えっと、あの………」
紫苑「勿論本当の結婚はまだしないわ、ただの婚約よ。2人が良いってなった時に結婚してもらって構わないから、今は形だけでもいいからお願い出来ないかしら?」
八幡「あぁ〜なんていうか………俺、そのつもりだったんですけど………」
御影/紫苑「え?」
八幡「いや、この前泊まりに来た時に………」
ーーー回想(夜十神邸・八幡の部屋)ーーー
柊「んふふ〜♪」
八幡「何度も思うけどよ、飽きないのか?」
柊「全っ然♪八幡君と一緒に居るのは私の幸せでもあるんだよ〜♪」
八幡「そうか、なら良い。」
柊「………ねぇ八幡君。」
八幡「うん?どうした?」
柊「えっとさ、八幡君は8月の8日の日が誕生日でしょ?もし八幡君さえ良かったら、私と婚約だけでもしてくれないかな?その方が私も嬉しいし、お父さん達も「いいぞ。」安心して……いいの?」
八幡「あぁ、お前がそうしたいのならな。俺も断る理由なんてねぇし、将来的にも結婚するつもりだったんだろ?まぁ、俺もそう見据えてたからな………少し早い結婚の前準備だと思えば良いだろう。」
柊「………八幡君ありがとう!!」
八幡「いいんだよ、気にするな。」
ーーー回想終了ーーー
八幡「っていう事があったんですけど………もしかして柊からは何も聞いてませんでしたか?」
御影「………」
紫苑「………御影。」
御影「うん、紫苑。」
御影/紫苑「帰ったら柊を問い詰める。」
八幡「あ、あの……言わなかった俺も悪いので、程々にお願いします。」
御影「いやいや、こんなにも大事な事を言わなかったんだからしっかりと、みっちりと聞かせてもらうよ。言い訳があるならたっぷりと聞かせてもらうとするしね。」
柊、どうやらおじさんとおばさんが少しご立腹みたいだ………一応止めてはおいたからな?
紫苑「まぁ柊の件は後にして、八幡君は柊との婚約は前向きと言うことで間違い無いのね?」
八幡「はい、俺は反対しません。寧ろ柊の婚約を断ったら次は誰かいるのかと聞きたいくらいです。」
御影「それなら居るよ、涼風がね。」
あ、そうだった………
御影「でも君からその言葉が聞けて嬉しいよ。後は君のご両親ともお話をしてから正式に婚約だね。いやぁ〜僕も漸く義息子が出来るのかぁ〜♪」
紫苑「はぁ………御影、はしゃぐのは分かるけれど程々にね?でもそうね………肩でも揉んでもらおうかしらね?」
おばさん、貴女も充分なくらいはしゃいでます……