八幡side
6時限目の授業も終わってジャージに着替えた後、2-F組の全員はグラウンドに集まっている。理由は100mのタイム測定をするからである。まぁ選抜リレーの選手を決める為の選考だな。けどあんまし考える必要なんてないと思うんだがなぁ………だってよ、サッカー部の葉山や戸部も居るし、他にも部活やってる奴がいるんだから、その中からチョイスすればいいと思うんだけよなぁ。
柊「ねぇ、八幡君はどうするの?」
八幡「ん?何が?」
涼風「真面目に走るのかどうかです。八幡さんは運動神経も良いではありませんか。」
八幡「いや、運動神経が良い=走りが速いは直結しないと思うんだが?」
そう、実際に俺はテニスのラリーとかサッカーのリフティング、バレーの1人トス、バスケのシュートとかはした事はあるが、趣味程度でしかない。所謂、器用貧乏みたいなものだ。
八幡「俺は普通に走るわ。」
柊「じゃあ私は抑えるね。」
涼風「私は遅いのでいつも通りで。」
八幡「………お前等って俺が居ないと参加したくないわけ?」
そうこうやり取りをしている内に女子が走り始めていた。どうでもいいが、選抜って何人なんだ?ウチのクラスで30人くらいだろ?3人は少ないし、5人くらいか?
委員長「よし、女子は決まったよ。えっと………川崎さん、高橋さん、富岡さん、三浦さん、夜十神……えっと、お姉さんの方の5人になりました。じゃあ次は男子ね。誰かストップウォッチとスタート変わってくれないかな?」
おいおい柊さんよ、さっき抑えるって言ってなかったっけ?本当に抑えたの?バッチリ名前呼ばれちゃってるじゃないの。え、何?『本気で走らないと許さない。』?嘘でしょ、俺もガチでやるの?すっごく手を抜きたいんだけど?しかも出席番号順的に俺って葉山と一緒だろ?マジでやりたくねぇ………
柊「八幡君、本気で走ってね?走らないと許さないよ?八幡君も選抜になるんだからね?」
八幡「あのよ、俺が本気で走ったとしても選抜に入れる保証なんてどこにもないぞ?その事を忘れるなよ?いや本当に。」
涼風「そうですよお姉様、八幡さんにだって不可能はあるのですから。」
柊「………ウチのクラスの女子が遅過ぎるんだよ、レベル低すぎだよ、もう!」ボソッ
あっ、柊の奴こっそりと言ってはならん事を言ってたな?1人愚痴ってヤツだな。あっ、次俺か………
女子「位置について、よぉ〜い……ドンッ!!」
………やっぱ葉山速いだろ、コイツについていける2年っていないんじゃねぇの?陸上部の中でも居るかいないかじゃね?
八幡「はぁ……はぁ……」
葉山「はぁ……ふぅ、意外と速いんだな。」
八幡「俺より速いお前に言われると嫌味にしか聞こえねぇよ。」
葉山「けど後ろには君が居たじゃないか。実力を隠してたのかい?」
八幡「本気出さないと、後がうるさい奴がいたから仕方なくだ。俺の意思じゃねぇよ。」
葉山「夜十神さんか……本気で走るわけだね。けどこれで君も選抜リレーは確定じゃないかな?」
八幡「目立ちたくねぇってのによ………」
委員長「男子も決定したよ。加藤くん、戸部くん、葉山くん、比企谷くん、松田くんになったよ。それじゃあ皆、今日はありがとう。体育祭までの練習は授業でもやるけど、放課後で残れる人は練習しても良いから。それじゃあ解散〜。」
柊「いやぁ私は信じてたよ♪八幡君はやれば出来る人だって!流石は私の彼氏だよね!うん、よく出来ました♪褒めてあげましょう!」
涼風「本当に調子が良いんだから、お姉様は。」
柊「良いじゃん別にぃ!ほら私達も帰ろ?」
その意見には賛成だ。無駄に全力疾走したから無駄に疲れた。だから無駄な事をせずに早く帰りたい。
涼風「それにしてもお姉様、男子達の目線は本当に卑しいものでしたね。」
柊「ホンットだよね!!走る姿じゃなくて、胸にばっかり!!スケベしか居ないのかな、ウチのクラスの男子って?」
八幡「あのー、俺の前でそういう会話しないでくれない?俺も一応男なんですけど?」
ーーー数分後ーーー
八幡「柊達は玄関前に居る筈だし、急ぐ必要もねぇから休みがてらのんびり行くか。」
更衣室から玄関まではそんなに遠くねぇしな。おっ、2人ももう居るみたいだな………ん?何かモメてるのか?話してるだけか?
「困ってる事があったら相談に乗るから。」
涼風「お気遣いありがとうございます。ですが、今の所は特にございませんので。」
「そう?ならいいんだけど。」
八幡「涼風、柊、待たせた。」
柊「男子なのに遅いぞ八幡君!」
涼風「いえ、そんなに待っていませんので。」
八幡「………その人は?」
涼風「この方は3年の新堂さんです。私達が1週間くらい絡まれているのを遠目で見ていたらしくて、困っていたら協力してくれると言ってくださってましたので。」
八幡「そうなのか……どうも、比企谷です。」
新堂「3年の新堂だよ、よろしくね。困ってたら相談に乗るから、いつでも来てね。あっ、因みにクラスは3-D組だから。」
八幡「よろしくお願いします。」
新堂「それじゃ、またね。」
そう言って新堂先輩は去って行った。そういや俺って城廻先輩以外の先輩の知り合いってあの人で2人目だな。ある意味貴重かもしれん。