俺、実は彼女がいるんだ………   作:生焼け肉

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八幡のお願い

 

 

八幡side

 

 

ーーーホテルーーー

 

 

まさかこんな事になるなんてな………柊と少しだけ夜の京都を散歩したと思ったら、訳の分からない事を言う変な奴(天之川)が現れてから、ちょっとした言い合いになった。そして柊の我慢の臨界点を超えたのか、天之川の事が見えなくなった。しかもこれまで見えなくなる事はあっても、その場所に嫌悪感を示す事なんて今までで1度も無かった。故に柊が今、どれだけ天之川を嫌っているかが俺には分かる。しかもその柊だが………

 

 

柊「………」プルプル

 

 

小刻みに震えている。俺もこうなっている柊は初めて見た。今も俺にしがみついて離れない。これは柊をそのまま女子部屋に戻しても落ち着くとは思えない。だからといって俺の独断で男子部屋に連れて行くわけにもいかない。くそっ、どうすりゃいい?

 

 

柊「……八幡君?」プルプル

 

八幡「っ!何でもない、大丈夫だ。」

 

 

柊に心配を掛けさせてどうする!?取り敢えず今はソファに座らせて少しでも落ち着かせよう。昨日、自販機の近くにあった所に座ったからそこにしよう。ついでにあったかい飲み物も買ってな。

 

 

八幡「柊、座れるか?」

 

柊「うん……」プルプル

 

八幡「……何か飲むか?あったかい飲み物の方が良いだろ?コーンポタージュ、コーヒー、ココア、お汁粉、色んなのあるけど、どうする?」

 

柊「……じゃあココアを頂戴。」

 

八幡「分かった。手を離すがすぐ側に居るからな。何処にも行かないから安心しろ。」

 

 

柊を座らせた後、俺はすぐ隣の自販機でココアを購入したが、その間も柊は俺の制服を掴んで離さなかった。これは流石に目を離せない。今はまだ外出可能な時間だが、後30分だ。それまでに柊がいつもの調子に戻れるとは到底思えないし、無理だろう。

 

 

八幡「柊、ほら。これで暖まれ。」

 

柊「………うん、ありがとう。」プルプル

 

八幡「隣、座るぞ………っ!?」

 

 

俺が座った途端、柊は俺の腕に抱き着いて胸に顔を埋めてきた。俺も柊の頭に手を添えて撫でる事にした。誰が見ていようと今は柊が最優先だ。

 

 

八幡「大丈夫だ、もう天………幽霊は居ない。安心しろ、大丈夫だ。」ナデナデ

 

柊「………」フルフル

 

八幡「………」ナデナデ

 

 

………涼風にも連絡を入れておこう。おじさんとおばさんが居ないんだ、1番の身内である涼風には連絡を入れておかないとな。取り敢えずメールだけ打っておくか。

 

 

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・To:夜十神 涼風

・From:比企谷 八幡

 

 

内容:涼風、一応報告しておく。柊と嵐山の散歩をしてる時に天之川と出くわした。内容は省くが、柊の我慢が限界になったせいで天之川が幽霊化した。しかも柊が小刻みに震える程にだ。今はホテルのロビーにあるソファで休ませてるが、余程嫌だったのか、今日は多分俺から離れないと思う。一応先生にもこの事は言うつもりだ。何かあったらまたメールか連絡する。

 

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………こんな所だろう。さて、次は平塚先生だ。あの人なら何とかしてくれるだろう。

 

 

八幡「柊、今から少し平塚先生と電話するが、いいか?」

 

柊「……うん、大丈夫。」フルフル

 

八幡「ありがとな。」

 

 

prrr…prrr…prrっ!

 

 

平塚『平塚だ、どうした比企谷?ラーメンなら今日は奢らないぞ。』

 

八幡「いえ、実は少しだけお願いがありまして。こんな事他の教師には頼めないので、平塚先生に連絡しました。」

 

平塚『訳ありのようだな。分かった、私がそっちに向かおう。今何処だね?』

 

八幡「昨日会った自販機のあるソファです。そこでひいら……夜十神姉と一緒に居ます。」

 

平塚『そうか、分かった。じゃあ私が行くまで待っていてくれ。ではまた後でな。』

 

八幡「はい、また後で………話は聞いてくれるようだな。『♪〜』ん、涼風からか。」

 

 

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・To:比企谷 八幡

・From:夜十神 涼風

 

 

内容:そんな事があったのですね………わかりました。本来なら今すぐにでもお姉様にお会いしたい所ですが、あまり刺激してはお姉様に負担がかかるかもしれませんので、今日はやめておきます。私にできる事がございましたら、遠慮なくご連絡下さい。いつでも力になります。他ならぬ八幡さんとお姉様の為に!

 

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……本当に良い妹だな、柊。

 

 

平塚「比企谷、待たせ………何があった?」

 

八幡「説明しますので、場所を変えましょう。此処だと目立ち過ぎます。」

 

平塚「いいだろう、生徒指導の為に貸し与えられた客室がある。そこで話そう。」

 

八幡「ありがとうございます。柊、行けるか?」

 

柊「……うん。」フルフル

 

 

ーーー客室(生徒指導用)ーーー

 

 

平塚「それで、どうしたんだ?夜十神がそんな風になるとは………怖い事でもしたのか?」

 

八幡「そうではないんですが、柊のこれは………恐怖というよりも怯えに近いものです。」

 

平塚「……要領を得ないな。詳しく話を聞きたい。それは構わないか?」

 

八幡「………分かりました。この際、先生には俺と柊の中学時代の事もお話します。それには今回起きた事に少なからず影響してますので。」

 

平塚「分かった。」

 

 

俺は平塚先生に中学3年生に起きた【幽霊ごっこ】の事と今回の事を出来るだけ分かりやすく説明した。平塚先生もこの出来事が予想外の事だったのか、かなり複雑そうな顔をしていた。

 

 

平塚「そうか……そんな過去があったのか。それでさっき他校の生徒の姿が見えなくなった、というわけなのか。」

 

八幡「はい。そうなんですけど、今まではただ見えなくなるだけで、こんなに怯える事はなかったんです。余程その相手に向ける嫌悪感が強いって事の表れなんだと、自分は思ってます。」

 

平塚「ふむ………恐らくだが、夜十神は1種のPTSD、所謂ストレス障害なのだろう。親御さんもその事は把握しているのかね?」

 

八幡「いや、俺は何とも……ただ、こうなると柊をこのまま帰すのは少しだけ不安が残るという事です。なので、平塚先生にお願いがあります。」

 

平塚「言ってみたまえ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「今夜、俺と柊の2人を同室にさせてもらえませんか?お願いします!」

 

 

 

 




さぁ、平塚先生にこのお願いは届くのか!?

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