俺、実は彼女がいるんだ………   作:生焼け肉

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電話

 

 

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千葉市立総武高等学校。千葉県内で進学校と言われている高校であり、学力でも県内トップを誇る学校である。生徒の自主性を重視しており、伝統行事においても生徒達で思考、計画、実行させる事にしている。

 

そんな総武高校の職員室では……いや、校長室では少しだけ殺伐とした雰囲気になっていた。厳密に言うと、校長先生がである。

 

 

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茅ヶ崎side

 

 

さて、私の済ませるべき業務も終わりましたし、そろそろお電話を掛けるべきでしょうか。天之川君が在籍している高校も分かった事ですし、済ませるべき面倒事は早い方がいいですからね。

 

そうですね……折角です、私1人では不安ですから平塚先生も同室させましょう。彼女も教育熱心な方ですから、夜十神さんのあの後の様子も知っているでしょう。

 

 

ーーー職員室ーーー

 

 

茅ヶ崎「平塚先生、少しよろしいですか?」

 

平塚「っ!校長先生、何でしょう?」

 

茅ヶ崎「えぇ。あの2人の事についてお話があるのと、少し同行してもらいたいのですが、今はお時間は空いてますか?」

 

平塚「私の預かる生徒の為なら、時間は幾らでも使えます。伺います。」

 

茅ヶ崎「ありがとうございます、では校長室までお願いします。」

 

 

流石は平塚先生だ、こんな生徒想いの教師は近年では珍しい……教育者として鑑であるべき方の姿と言ってもいいでしょう。

 

 

………まぁ、少し乱暴な所はなくは無いですが。

 

 

ーーー校長室ーーー

 

 

茅ヶ崎「夜十神さんのあの後の容態はどうでしたか?私も確認したかったのですが。」

 

平塚「昨日は落ち着いてました。比企谷と過ごしたのが効いたのでしょう。いつも通りの彼女に戻ってました。」

 

茅ヶ崎「そうですか、それは何よりです。それでですね、その件についてお話があります。本校の生徒に危害を加えた生徒の在籍校が分りました。千葉市立京葉高等学校2年所属、天之川光輝君。彼は京葉高校に在籍しているみたいです。」

 

平塚「……今からそちらに向かうと?」

 

茅ヶ崎「いえ、まだその段階までには。ですが今から今回の事についてお電話をさせてもらう予定です。恐らくは保護者同伴での話し合いになると私は踏んでいます。そうならなくても、当人同士での話し合いは必ず起きるでしょう。そこで平塚先生には私が電話をかける前に、改めてその時の状況を説明して欲しいのです。そして電話の最中の同行もお願いしたい。恐らく向こう側もこの事は知らないでしょう、こちら側が丁寧な説明をすれば少しは納得するでしょう。」

 

平塚「分かりました、では改めて説明します。」

 

 

今考えても恐ろしい事です、その気が無いとはいえ人に恐怖を植え付けるなど。天之川光輝君、一体どのような人物なのでしょうか?

 

 

ーーー30分後ーーー

 

 

平塚「以上が今回の概要です。」

 

茅ヶ崎「ありがとうございます。おかげで状況が分かりました。では早速「校長先生!」電……何ですか平塚先生?」

 

平塚「その……相手側がこの話を鵜呑みにするとは思えません。その辺りはどうするつもりですか?」

 

茅ヶ崎「はっはっは……平塚先生、私くらいにならないと分からないとは思いますが、目の前に相手が居ない、口だけでの対話なら、嘘も方便も何とでも言えます。それに私も当事者ではありませんからね、あり得る嘘くらいならつけられますよ。よく言うではありませんか、大人は汚いと。」

 

 

私も存外、酷い人間なのかもしれませんね。

 

 

茅ヶ崎「もしもし、千葉市立京葉高等学校でしょうか?私は千葉市立総武高等学校校長の茅ヶ崎です、お世話になっております……えぇ、畑山先生という方はお手隙でしょうか?」

 

 

平塚(担任の先生まで特定していたのか?一体何処まで調べてるんだ!?しかもその隙にスピーカーにもしてる………っ!?録音機!?)

 

 

畑山『お電話代わりました、畑山です!』

 

茅ヶ崎「お忙しい中申し訳ございません。改めまして、総武高校校長の茅ヶ崎です。日々の業務、お疲れ様です。」

 

畑山『あ、ありがとうございます!』

 

茅ヶ崎「それで、今お時間は大丈夫でしょうか?」

 

畑山『はい、大丈夫ですけど。』

 

茅ヶ崎「実は少しお聞きしたい事がありましてね、畑山先生が受け持っている生徒の中に天之川君という生徒はいらっしゃいませんか?」

 

畑山『はい、居ますけど………』

 

茅ヶ崎「その生徒の特徴を……先生の見た限りで構いませんので、教えては頂けませんか?」

 

畑山『は、はい。天之川君は学校の人気者です。成績も優秀でスポーツもよく出来る凄い子です。それにとても強い正義感を持っている良い生徒ですよ。』

 

茅ヶ崎「なる程、とても優秀な生徒さんのようですね。担任としても誇らしいでしょう。」

 

畑山『はい、とても!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、それではダメですね。生徒の表面しか知らない、教科書通りの教師のようですね。

 

 

畑山『あの、天之川君の事で何か?』

 

茅ヶ崎「えぇ。実は先日にあった修学旅行の事なのですけどね、ウチの生徒が彼から被害を受けたと、その生徒の担任から聞きましてね。それで畑山先生から天之川君の人柄を聞かせて頂きました。」

 

畑山『天之川君が!?な、何かの間違いでは?そうでは無いのですか?』

 

茅ヶ崎「えぇ、ウチの生徒が名指しでそう言ってましたからね。間違いはありません。それに面識もあったようですので。私は当事者ではありませんが、流石にこの事態を放っておくわけにはいきませんので。」

 

畑山『……詳しい内容を聞かせて頂けませんか?』

 

茅ヶ崎「勿論ですとも。しかし長くなりますが、大丈夫ですかな?」

 

畑山『自分の生徒が関わっているんです、放ってなどおけません!』

 

 

………先程の言葉は撤回しましょう。生徒想いであるのは間違い無いでしょう。

 

 

そして私は畑山先生に今回起きた事を事細かに説明しました。畑山先生は被害の内容を暴力と履き違えていたみたいですが、説明の内に精神的である事を理解してくれたようで何よりです。

 

 

畑山『そんな事が。まさか彼が………』

 

茅ヶ崎「意図せずしてやった事とはいえ、こちらの生徒はその日、震えていたと聞きました。それに怯えるようにしていたと。」

 

畑山『……そちらの生徒は無事なのでしょうか?』

 

茅ヶ崎「えぇ、翌日には本調子に戻りました。今は自宅で休養をとっているでしょう。それで畑山先生、一通りの説明はしましたが、担任として貴女はどうするおつもりですかな?私共としても大事にはしたくありません。ですがそちらの動き次第では、という事にもなります。」

 

畑山『私は………』

 

 

お願いしますよ、畑山先生。正当な評価と決断をして下さいね。

 

 

 

 





【ありふれ】の原作では畑山愛子さんは彼等の担任ではありませんが、今作では担任にしました。

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