八幡side
4度目の授業が終了の鐘が鳴り、号令の元授業の終了を告げる。漸く昼休みの時間だ、これで少しは寛げる………と思える筈もなく、2つの視線が俺の背中に突き刺さっているのがよく分かる。何?なんなのアイツ等?俺が何をした?ただ依頼を受けて協力をしただけだ、なのに何で俺は睨まれなきゃならないんだ?
1度だけ後ろに視線を向けてみたが、由比ヶ浜は睨む、というよりかはジト目で見ているような感じだった。いや、睨むでいいのか?葉山は何か物言いだけな表情をしていた。うん、知りません。俺には管轄外です。
だから俺は………
八幡「さて、昼飯何処で食う?」
柊「場所無いんだよね〜。八幡君のベストプレイスは今の時期だと少し寒いし。」
八幡「仕方ない、視線に耐えながら食べるか……」
涼風「でしたらちょうど良い場所があるかもしれません。そちらはどうでしょうか?」
八幡/柊「ちょうど良い場所?」
涼風「はい。ですがその前に寄りたい所があるので、それが終わってからになりますが……」
八幡「場所があるならそれに越した事はないな。涼風、お前の用事が終わったら案内してくれ。」
涼風「分かりました。では向かいましょう。」
ーーー3-D組ーーー
柊「涼風、何で3年生の教室?」
涼風「森崎さんの事件で大変ご迷惑をお掛けした方がこのクラスにいますので、そのお礼という形で修学旅行のお土産を渡そうと思ったんです。」
八幡「………っ!新堂先輩か?」
涼風「はい。私達はあの方にお礼は言いましたが、何もしてあげられていませんので。」
涼風のこういう所は美徳だろうな。ちゃんと受けた恩は忘れない、受けたらその分を返す。しっかりしてるなぁ、俺と違って。
涼風「す、すみません!あの、新堂先輩はいらっしゃいますか?」
新堂「夜十神さん?」
涼風「ご無沙汰しています、あれからお身体の方はどうでしょうか?」
新堂「大丈夫だよ、心配してくれてありがとう。それで、どうかしたのかい?君のお姉さんに比企谷君も一緒のようだけど………」
涼風「はい。親からのお気持ちの品はお渡ししましたが、私達は新堂先輩に何もお返しできていませんでしたので、つまらないものではありますが、修学旅行のお土産をと思いまして………こちらよろしければ。」
新堂「いいのかい?」
涼風「はい、その為に来ましたから。」
新堂「わざわざありがとう、じゃあ気持ちと一緒に頂くよ。」
涼風「いいえ、こちらこそ。では私達も昼食がありますから、これで失礼します。」
新堂「うん、ごゆっくりね。」
………あの人見知りで内気な涼風が3年生の教室の前であんなに堂々と………成長したもんだ。
涼風「では、参りましょう……どうしました?」
八幡「いや、涼風も成長したなぁって。」
柊「うん、私もすっごくそう思う!」
涼風「?」
ーーー家庭科室ーーー
柊「ちょうど良い場所って此処?」
涼風「はい、そうです。」
八幡「いや、流石に鍵が無いと開かないだろう。」
涼風「大丈夫ですよ。」
ガラカラッ
涼風「開いていますから。」
八幡/柊「………嘘。」
え………なんで開いてんの?
涼風「実は2年の家庭科を担当している先生にボソッと言われた事があったんです。『もし、教室で居づらくなったら家庭科室に来なさい。いつでも入れるようにしておくから。貴方のお姉さんと比企谷君にも伝えておいてね。』っと。」
柊「流石は私の妹!!ナイスッ!!」ダキッ!!
涼風「お、お姉様!!お弁当が崩れてしまいますからお止め下さい!」
八幡「いや、けどこれはファインプレーだろ。俺もあの教室ではあまり食いたくなかったしな。ありがとうな涼風。」ナデナデ
涼風「は、はいぃ………/////」
柊「……ちょっとズルいって思っちゃったけど、涼風のおかげだからナデナデは許します。じゃあ時間も勿体無いから食べよっか!」
こうして俺等は事実上、平和な昼食を取る事が出来た。いやぁ……平和だわぁ。
柊「あっ、そういえば八幡君は今日の部活はどうするの?一応昨日の月曜日は振替休日でお休みだったから、今日参加するの?」
八幡「いや、しない。特に特別な理由がない限りは、月曜が休みだったとしても火曜に参加したりはしない。まぁ俺の部活参加もいつまで続くか分からんけどな。」
涼風「?それはどういう意味でしょうか?」
柊「そっか、涼風は居なかったもんね。京都から千葉に戻る前に、私と八幡君は京都駅の展望台に登ったんだ。その時に八幡君が奉仕部内でまた問題が起きるようだったら、その時は部活を辞めるって言ったんだよ。」
八幡「まっ、正確には由比ヶ浜が、だけどな。雪ノ下は見る限り、そこまで問題では無いしな。」
涼風「そうだったのですか………」
だが実際、どうなるかなんて分からない。この先依頼が来ないなんて事はあり得ないだろうし、俺がいない間に来る可能性だってあるんだ。そこで俺に白羽の矢が飛んでくる可能性も低くはない。むしろ高いと言ってもいいだろう。平塚先生は俺の立場をピンチヒッターとも言っていたしな。内容次第では由比ヶ浜がまた暴走してもおかしくは無い。その時に止められる奴は奉仕部の中には居ない。雪ノ下ではあまりアテにならんしな。かといって俺の言う事を聞く程、アイツは利口でも無いだろうし。
八幡「先が思いやられるな、こりゃ。」
柊「もう辞めちゃえば?」
八幡「出来るならそうしたい。」
柊「じゃあして!!」
八幡「次の依頼で問題が起きたらな。」
柊「むぅ〜!」プクー!