涼風side
柊「………」
涼風「………」
柊「………」
涼風「えっと……お姉様、体調がよろしくないのでしょうか?」
柊「ううん、そういうわけじゃないんだ。ただ今日の放課後が憂鬱なだけ。はぁ………車での送迎とはいえ、不安なんだ。」
涼風「そ、そうですよね………」
あうぅ……こんな時八幡さんやお父様ならどうするでしょう?お姉様、励ます事すら出来ないバカな妹で本当に申し訳ございません!
柊「……中学みたいにならないと良いなぁ。」
涼風「え?」
柊「中学では八幡君と涼風の顔以外、誰も分からなかったから。高校ではそんな風になりたくないの。誰かの顔はハッキリと覚えていたい。名前は知らなくてもいいから、誰がどんな顔をしていたのかは知っていたい。中学の同級生や後輩なんかはアルバムですら影の姿だから。」
涼風「お姉様………」
柊「私の我儘なんだけどね。」
涼風「……いえ!お姉様の事を考えれば、そのくらいの我儘なんて無いようなものです!」
柊「……ありがと、涼風。あっ!八幡君のお家見えた〜八幡君は居るかなぁ〜?」
私はこの姿のお姉様が好きです。明るく元気なお姉様が………その姿になるのは家族と一緒に居る時か、八幡さんと一緒に居る時かのどちらかです。昔に戻って欲しい、なんて思った事は少なからずありますが、私は今のお姉様も充分好きです。
ーーー学校・教室ーーー
平塚「私からの報告は以上だ。それから比企谷、夜十神姉妹。少し話がある、HRが終わったら生徒指導室まで着いて来てくれ。では挨拶。」
挨拶が終わってから私達は言われた通り、先生に着いて行きました。恐らく天之川さんのお話でしょう。そうとしか考えられません。
平塚「そのまま入って正面のソファがあるだろ、そこに座っていたまえ。」
柊「は、はい……え!?校長先生!?」
茅ヶ崎「おはようございます、比企谷君、夜十神さん達も。朝早くからすみませんね。」
柊「い、いえ……でも何で校長先生が?」
茅ヶ崎「君達の一件に少なからず私も関係していますので、同席しているまでです。そして報告もありますからね。君達の耳にも入れておいた方が良いと思ったので。」
涼風「進展があった、という事ですか?」
平塚「その事に関しても今から説明する。少し長くなるだろうから、1時限目の先生にはもう訳を話している。遅れて出席するか、欠席する事になるとな。」
そこまで長くなるお話なのですか………
平塚「先日の件で校長が天之川という生徒が在籍している高校に連絡をつけて指導してもらうように依頼をした。修学旅行の事も話してな。そして昨日にそれが実行された。だが結果としては天之川の心に火をつけてしまった、というのがオチになる。」
涼風「え?」
柊「………」キュッ
八幡「………」
平塚「担任の先生は充分な説明をしたそうだ。それは私も校長から聞いている。だが天之川はその説明をこう解釈したそうだ。夜十神さん達が可哀想、先生だけでなく学校まで巻き込んだ、そして………お前だ比企谷、お前を許さない、と言ったそうだ。」
八幡「………」
茅ヶ崎「私達もそれを聞いて耳を疑いました。間違った説明をしたのではないかとも思いましたが、彼女はそのような先生ではない。君達の言う『ご都合解釈』によって、比企谷君が加害者、夜十神さんや我々教師が被害者という事になっているのでしょう。そしてこれはあくまでも予想でしかないのですが、今日の放課後にでも天之川君は総武高に来るでしょう。」
八幡「やっぱりそうなりますか。それはソイツの担任がそう言ってたんですか?」
茅ヶ崎「いえ、それは言ってませんでしたが、可能性としては非常に高いです。」
柊「っ………」
お姉様………
平塚「校長も私も何とかしたいのだが、下手に手を出せば天之川がまた何かを言い出すだろう。となるとだ………」
八幡「教師の介入はあまり好ましくない、アイツが何かをしない限りは、という事ですね?」
茅ヶ崎「その通りです。ですから比企谷君、この中で彼とお話が出来るのは君しかいません。しつこく付き纏うようであれば、その時は我々も対処します。なので少しの間だけ、彼のお相手をお願いしてもよろしいでしょうか?」
八幡「………平塚先生のさっきの話を聞く限りだと、アイツは人の言葉を理解出来ないと思うんですが、それでもですか?というよりかは自分は悪くない、ですかね?」
平塚「比企谷、お前の言いたい事も分かる。だが現状、この学校の中でこの2人が心を開いている人物は君だけだ。いや、君を除いて他にはいない。夜十神姉妹の過去の事を聞けば誰でもそれが理解出来る。その2人を守る為にも、頼めないだろうか?」
八幡「2人の為なら仕方ないですね、分かりました。すっげぇ嫌ですけどやってみます。」
茅ヶ崎「……ありがとうございます。」
平塚「比企谷、頼むぞ。」
涼風「八幡さん、ご承知だとは思いますが、無理だけはなさらないでくださいね?」
八幡「あぁ、分かってる。お前達は教室で待っていてくれ。取り敢えず追っ払うだけだからな。」
柊「八幡君……ゴメンね?」
八幡「謝るなよ、謝るのはアイツの方だ。自分が何をしたのかまるで分かってない、それを分からせてやるだけだ。」
柊「……うん。」