目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
01.いきなり鬼化した竈門兄妹ってどんな展開だ。
私はなんの変哲もない高校生だった。
友人達とワイワイ騒いで、好きな漫画やアニメやゲーム、そう言ったもので盛り上がるような、二次元好きの。
でも、その日常にはもう戻れそうにないなこれ。
「………なーんで、私は竈門家のご実家前にいるのか。」
しかも、目の前で六太と六太を庇った禰豆子とな・ぜ・か!その二人を庇って倒れている炭治郎の図があるし。
あるぇ?
「おい、炭治郎。禰豆子。六太も大丈夫か?」
……なんかものすごく嫌な予感しかしないんだが、とりあえず目の前で倒れている三人に声をかける。
が、すぐに地面は血に濡れており、明らかに原作最初のあの話の部分であることがわかった。
念のため、元々は縁壱さんとうたさんが暮らしていた家だった竈門家を覗き込む。
うん、ケチャッp……いや、血塗れでした。
「マジか……。」
ていうか、なんで炭治郎が禰豆子たち庇って……?
あれ?
原作だと炭治郎がこの惨殺現場を見てなかったっけ?
「あ、炭治郎と禰豆子はまだ温度がある。」
………そういえば、無意識のうちに三人の名前を呼んでいたけど、これ、原作知識を持ち合わせているせいか?
いや、違う。
私は確実にこの子たちと繋がりがある。
今わかった。
今の私は、竈門家の一番最初に生まれた女の子、
自分の名前を思い出した瞬間、一気に脳裏にこの肉体の記憶が流れ込んできた。
私が生まれたのは炭治郎が生まれる二年前。
今年で十五歳になる長女で、綺麗な夕陽が印象的な秋に生まれたことにより、優緋という名前をつけられた。
ゆうひという読み方は夕陽を元に、名前に当てられている漢字の優は優しい子に育つようにという願いが込められ、もう一つの緋という漢字は夕焼けの赤を元にした。
どんどん記憶が入り込んでくる。
父親である炭十郎の死、ヒノカミ神楽、炭焼きを行っては炭治郎と町に売りに行く生活を送っていたこと……。
この現状を見る前の記憶は原作で炭治郎が経験していた内容だな……。
……つまり、今私がいるこの世界はいわゆるパラレルワールド……か。
ていうか、耳でチラチラ揺れてるこれって、もしかしなくても緑壱さんの耳飾りでは……?
おいおい勘弁してくれよ……。
何?
つまりこの世界の私は炭治郎のポジションってわけ……?
「って、ぶつくさ言ってる場合じゃない。」
とりあえず体温がある禰豆子と炭治郎を町に連れて……行ったらダメだな……。
だって二人して鬼化しちゃってるみたいだし。
しっかりとまだ生きてるし。
「……持ち上がるかな、この二人?」
よいしょ……と小さく呟きながら、禰豆子を背負い、炭治郎を抱っこしてみる。
……意外と持ち上がったよ、クッソ重いけど。
「ちっこくないから腰やりそう〜……。」
でも持ち上げることができたのなら話は早い。
とっとと人気のないところまで連れて行きますか……。
だってこの場に置いていたら、母さんたちが喰われてしまいそうで怖い。
「……雪で足取られるけど仕方ない。この世界の私の記憶はしっかりと刻まれたから、道はわかるし、とりあえず義勇さんと邂逅することになる場所まで向かうとしようか。」
原作知識がしっかりとあるから、場所はなんとなくわかるしね。
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「……よっこいせっと。」
足を進めること数じゅ……いや、それ以上か……?
計ってなかったからわかんないや。
まぁいいか。
しばらく歩いたところで、私は見事に足を滑らせた。
炭治郎と禰豆子の二人が重たかったし、しょうがないといえばしょうがないけど。
原作通りの場所で落下したから結構びっくりしたよ。
本当に私は炭治郎のポジションだったらしい。
まぁ、炭治郎の時とは違って、咆哮を聞いて驚きからの落下じゃなくて、二人分の十代の子供の体重のせいによる落下だったけど。
「グ……ウウ……っ!!」
「グアウアァアッ!!」
「おわっふ!?」
なんて考えていたら炭治郎と禰豆子(どちらも鬼化中)が恐ろしいと思えるような声を上げて起き上がってきた。
思わず驚いて肩を震わす。
けど、すぐに冷静になっては、腰に携えておいた斧の柄を掴む。
あ、待って。
鬼二人相手に訓練も何もしてないのに立ち回れんの私!?
「「ガァアァアァアア!!」」
「やっぱり兄妹だなあんたら!!」
軽くパニックを起こしながら怒鳴る。
だって同時に襲ってきたもん!!
なんとか体を翻すことでダメージを喰らうことはなかったけど、理性がぶっ飛んでるこの二人をどうやって大人しくさせるべきなんだ!?
兄妹鬼が絶妙に連携する中、ひょいひょいとそれを回避しながらどうするべきか考える。
うん、思いつかないな!!
「チッ……炭治郎!! 禰豆子!! 自身の中にいる鬼に負けるな!! あんたらなら必ず乗り越えられる!! 抑えることができるはずだ!!」
しかたないので二人の攻撃を回避しながら呼びかけることに専念する。
なんでか知らないけど二人の動きがわかるから、今のところノーダメージだ。
「鬼になるな! 鬼に負けるな!! 頑張れ炭治郎!! 頑張れ禰豆子!! こらえろ!! 頑張ってくれ!!」
「「!!」」
何度も何度も呼びかけていると、炭治郎と禰豆子はハッとしたような表情をする。
同時に両眼から涙を流し始めた。
次第に動きも遅くなり、ついには静かにその場にたたずむ。
「………よく頑張ったな。怖かったろう。苦しかったろう。大丈夫。二人には姉ちゃんがついてる。……ごめんな……。私がぬくぬくと休んでる間……二人は辛かったよな……。」
それを確認して、私は穏やかに話しかけながら、そっと二人を抱きしめる。
一瞬、二人の手が無意識のうちにこちらを襲おうとしていたが、二人は拳を握りしめることで何とか耐えきり、私の背中に手を回してきた。
縋るように抱きついて、声を出すことなく泣き始める。
子供をあやすように、二人の背中を優しく叩き、そのままさすれば、徐々に力は抜けていき、私に抱きついたまま眠りに落ちてしまった。
「…………。」
その様子を見ながら小さく溜息を吐く。
うん、今気づいたけど、やっぱり私は、原作でいう炭治郎のポジションのようだ。
だって、二人からは妙な匂いがするから。
それに、なんとなくだけど、二人が悲しんでいるのがよくわかる。
不思議な匂いがする。
不快な匂いがする。
多分、この不思議な匂いが感情で、どことなく不快感を感じる匂いがパワハラ上司系ラスボスこと、鬼舞辻無惨のものなんだろう。
あと、木の影から第三者の匂いとカラスの匂いがする。
「………そこに隠れてるのは誰だ? こっちは今、なかなかに暴れてくれた駄々っ子たちを寝かしつけたばかりなんだが。」
おそらく彼なんだろうなぁ……と思いながら木の方へと声をかけてみると、少しだけ驚いた匂いがして、すぐに消えた。
同時に木陰から一人の青年が現れた。
うん、完全に冨岡義勇だな。
原作では切り掛かってきて、それで彼に気づく炭治郎の姿が描かれていたが、原作知識のせいで変に冷静になってしまっているせいか、斬りかかられる前に気づくことができた。
「………。」
「……その刀で、私の可愛い弟と妹を斬るつもりか?だとしたらこちらも黙っていられないんだが……?」
無言でこちらを見つめてくる義勇に、落ち着いた口調で話しかける。
義勇はなんの言葉も発しない……が、なにかを思案している様子だった。
「……なにがあった?」
「…………。」
なにを考えてんだか、と義勇を見つめていると、彼は静かに口を開いた。
……櫻○ボイスはイケボだな。
って、くだらないことを考えている場合じゃない。
……冷静に話を聞いてくれるみたいだし、とりあえず素直になにがあったか説明するとしよう。