目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
炭治郎のように岩に頭突きをかましながら嘆いてなかったから錆兎が来るとは思わなかった。
てっきりあれがトリガーとなって、錆兎が出てくるのだとばかり。
だが、錆兎は私の前に現れた。
うるさいと怒鳴ることなく、どうしたのかと質問をしてきた。
「うーん……実はさ。どうやったら岩を斬れるのかなって思ってね。水の呼吸……どこで躓いてるのかわからなくて……。鱗滝さんが教えてくれたことは、何度も繰り返してはいるんだけど……。」
この岩がある場所でしばらく過ごしていると彼はやってくるのか……なんてゲームのメインイベント的なノリで考えながらも、私は素直に錆兎に自分が躓いていることを話した。
すると錆兎は岩の上から地面に降り立った。
片手に一本の木刀……じゃなくて真剣持ってんだけどこいつ!?
「ん?」
「それなら手伝ってやる。かつては俺も岩を斬ったことがあるからな。優緋。お前のことはしばらく見ていた。どこでお前が躓いているのかも、大体はわかる。まずは剣を構えろ。少しばかりの手合わせだ。」
「マジか……。」
あれぇ……?
原作では確か錆兎が持ってたの木刀だったよな?
真剣は最後だったよな……?
え?
いきなり真剣でやんの……?
「あー……あのさぁ、錆兎。」
「なんだ?」
「真剣同士で手合わせすんのはいいよ、うん。その方が緊迫感もあるし、鍛錬のやり甲斐がある。けど、真剣同士の手合わせはもちろん怪我の可能性もある。なるべく私も避けるけどさ、念のためにこれだけは言わせてくれ。……お手柔らかに頼むよ。怪我なんかしちゃったら、弟と妹が悲しむ。流石にそんな二人は見たくないし、下手したら修行をすることすらダメだって抗議されてしまうかもしれない。だから……。」
それだったらと、私は念のために彼にあまり怪我をするわけにはいかないから、お手柔らかに頼むと告げる。
「……そうか。わかった。こちらも努力しよう。」
私の抗議を聞いた錆兎はすぐに小さく頷いたあと、手にしていた真剣を抜刀する。
それに合わせて私も鞘から真剣を抜刀して、何度も素振りをし続けたことによりすっかりと持ち方も身についてしまったそれを静かに構える。
辺りに満ちるは静寂。
私と錆兎は互いに相手を見据え、そして、同時に足を踏み込んだ。
静寂を壊して響くのは刃同士がぶつかることにより発生する金属音と、錆兎と私の呼吸音だった。
「優緋。お前は全集中・水の呼吸以外にも別の全集中の呼吸を使っていた。だから基礎は理解しているはずだ。だが、水の呼吸の呼吸法がうまくできていない。」
「なるほど。基礎的なものは身についているけど、いまいち水の呼吸に必要な呼吸法ができてないのか。それじゃあ斬れないわな。」
「ああ。」
鍔迫り合いや、刃同士の押し合いなどで距離が近くなるたびに、私と錆兎は会話する。
とはいっても、錆兎が全般的にアドバイスを口にして、それを聞いた私が、問題点を見つけていくのが主なやりとりだけど。
「無駄な動きも多い。もう一つの呼吸の方では、そんな無駄は見当たらなかった。水の呼吸を身につけたいのであれば、その無駄をなくす必要がある。」
「了解、錆兎。ところでどうやって無駄をなくしたらいい?」
「そんなものは自分の目で、俺の技から盗んでみろ。」
「はは。鱗滝さんみたいに自分で考えろってやつか。はいはい。了解しましたよ。」
錆兎が水の呼吸の型を使用しての攻撃。
私はそれを見ると同時に反射的に同じものを使う。
一応相殺できなくもないが、かなりきつい。
フラついてしまう。
それだけ錆兎の水の呼吸の練度が高いということなんだろう。
まぁ、そうであっても、私のお手柔らかにという頼みは反映してくれているのか、こちらが怪我をするまでには至らないけど。
「水の呼吸の型はしっかりとできてはいる。だが隙がある。そんなのでは鬼を狩るなど夢のまた夢だ!!」
「手厳しいことで。まぁ、多分だけど、水の呼吸に私はあまり適してないんだろうな。」
「ならばなぜ水の呼吸を使う? もう一つの呼吸の方がやりやすいんじゃないのか?」
「あれ、意外と体力持ってかれるやつでね。今の私の体力じゃ、一部追い付かないんだよ。その点、水の呼吸は体力をそこまで消耗しない。威力はもちろんもう一つの方が高いけど、体力の消費を考えれば、まずはこちらを実戦に活用できるくらいにはしておきたい。だから私は水の呼吸を身につけようとしてるんだ。もう一つの呼吸は、体力をしっかりとつけてから実用しようとしてる。」
水の呼吸をなぜ身につけようとしているのか……という質問に素直に答えを紡ぎながらも、水の呼吸を何度か使っていく。
が、スピードも練度も錆兎の方が上である今は、私が敵うはずもなく。
ガキュイィンッ!!
「…………あ。」
「…………。」
私の真剣は錆兎の真剣により後方へと弾き飛ばされてしまい、丸腰の状態に陥らされた上、私の首元には錆兎が手にしていた真剣の峰の部分が添えられていた。
「………怪我の配慮ありがとう。」
「弟と妹を心配させたくないと言っていたからな。それを尊重したまでだ。」
それに感謝の言葉を述べつつも、そっと峰を手のひらで押して、自分の首元から引き離す。
「よいしょっと……。」
そして、後方に飛ばされた刀を拾い上げては、それを鞘に収めた。
「やっぱり一度岩を斬ってる奴相手にはまだまだ敵わないな。」
「当然だ。まぁ、お前も筋は悪くないが……。ああ、来たか。見ていただろう、今のを。」
「うん。」
おや、また新たな聞き覚えのある声が……。
そう思いながら顔を上げてみると、どことなくフワフワしてる印象を抱く花柄の着物の女の子が一人。
間違いなく真菰だろう。
「お前にはいくつか悪いところがある。それを直さない限り、岩なんて斬れやしないぞ。」
「具体的には?」
「自分で考えろ。俺が教えるつもりはない。まぁ、どうしてもわからないというのならば、真菰に聞け。一日に二回……お前の元には手合わせのためだけに訪れる。」
「………なんだよそれ。」
なんかやな感じだな、と思いつつ、真菰と入れ替わるようにして姿を消した錆兎に対しての文句を吐き捨てるように口にすると、小さな笑い声が聞こえてきた。
笑い声の方を向けば、そこには真菰。
「……初めまして、優緋。私は真菰。ここからは、私が優緋と一緒だよ。」
小さく笑う真菰を見つめながら、首を傾げていると、彼女は笑うのをやめたあと、小さく微笑みながら、自分の名前を口にした。
「……真菰か。ああ。初めまして。私は竈門優緋。これからお相手頼むよ。」
それに続けるように自分の名前を彼女に告げては、握手を求めるように手を差し伸べる。
真菰は一瞬目を丸くしたが、すぐに小さく笑っては、握手に応じるように手を握ってきた。
触れた手は柔らかかったけど、暖かさは感じれなかった。